イギリスプログレ誌「Prog Magazine」の「最も素晴らしいプログレ・アルバムTOP100」で想う。
公開日:
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最終更新日:2017/09/30
雑誌やWEBやラジオの特集 Anathema, Big Big Train, CAN, Caravan, Emerson Lake & Palmer, Genesis, Jethro Tull, kansas, king Crimson, Pink Floyd, Porcupine Tree, Rick Wakeman, Rush, Spock's Beard, Steve Hackett, Steven Wilson, YES
雑誌「Prog Magazine」とは
雑誌「Prog Magazine」は、1970年代から1980年代をメインに幅広いロック系アーティストをトピックに取り上げるイギリスRock雑誌「Classic Rock Magazine」の別冊枠として隔月発行されています。輸入盤で購入し、英語の誌面を閲覧してもプログレッシブ・ロック系が持つアートさがあるため、読み心地が良いんですよね。
「最も素晴らしいプログレ・アルバムTOP100(The 100 Greatest Prog Albums Of All Time)」に想いを馳せて
その「Prog Magazine」第48号で「最も素晴らしいプログレ・アルバム TOP100(The 100 Greatest Prog Albums Of All Time)」を発表しました。ランキングは雑誌の読者と雑誌、およびミュージシャンによる投票結果に基づくそうです。
当レビューはプログレッシブ・ロックを話題(おすすめアルバム、楽曲など)を扱っています。
おそらくイギリス中心だろうと思われる投票結果に、先入観をもちそうですが、最新のベスト・ランキングからいろいろと考察していきましょう。5大プログレバンドであるYes、Genesis、Pink Floyd、King Crimson、Emerson, Lake & PalmerはTOP100にしっかりとランキングされてますが、ランキングされたアルバムの数やその他アーティストのバランスが面白い?!
まずは、ベスト100をピックアップします。
(と同時に、当レビューで紹介している「プログレすすめアルバム」へのリンクも追加しています。)
「最も素晴らしいプログレ・アルバムTOP100」と「プログレおすすめ」のアルバム
「Prog Magazine」第48号リリース
順位 | アルバム(原題) | アルバム(邦題) | アーティスト | おすすめ |
1 | Close To The Edge | 危機 | Yes | ● |
2 | In The Court of the Crimson King | クリムゾン・キングの宮殿 | King Crimson | ● |
3 | Selling England By The Pound | 月影の騎士 | Genesis | ● |
4 | Dark Side of the Moon | 狂気 | Pink Floyd | ● |
5 | Thick As A Brick | ジェラルドの汚れなき世界 | Jethro Tull | ● |
6 | Foxtrot | フォックストロット | Genesis | ● |
7 | Wish You Were Here | 炎~あなたがここにいてほしい | Pink Floyd | ● |
8 | The Lamb Lies Down on Broadway | 眩惑のブロードウェイ | Genesis | ● |
9 | The Raven That Refused to Sing (And Other Stories) | レイブンは歌わない | Steven Wilson | ● |
10 | Fragile | こわれもの | Yes | ● |
11 | Brain Salad Surgery | 恐怖の頭脳改革 | Emerson, Lake &Palmer | ● |
12 | Red | レッド | King Crimson | ● |
13 | Moving Pictures | - | Rush | |
14 | Animals | アニマルズ | Pink Floyd | ● |
15 | 2112 | - | Rush | |
16 | The Wall | ザ・ウォール | Pink Floyd | ● |
17 | Scenes From A Memory | - | Dream Theater | |
18 | Fear of a Blank Planet | - | Porcupine Tree | |
19 | Relayer | リレイヤー | Yes | ● |
20 | Misplaced Childhood | 過ち色の記憶 | Marillion | |
21 | A Trick of the Tail | - | Genesis | ● |
22 | Tales from Topographic Oceans | 海洋地形学の物語 | Yes | ● |
23 | Hemispheres | - | Rush | |
24 | Pawn Hearts | - | Van Der Graaf Generator | |
25 | Images and Words | - | Dream Theater | |
26 | Going for the One | 究極 | Yes | ● |
27 | Deadwing | - | Porcupine Tree | |
28 | Tarkus | タルカス | Emerson, Lake &Palmer | ● |
29 | Brave | - | Marillion | |
30 | Larks Tongues In Aspic | 太陽と戦慄 | King Crimson | ● |
31 | The Snow Goose | - | Camel | |
32 | The Yes Album | - | Yes | ● |
33 | Lateralus | - | Tool | |
34 | Bridge Across Forever | - | Transatlantic | |
35 | In the Land of Pink and Grey | - | Caravan | |
36 | Blackwater Park | - | Opeth | |
37 | Meddle | おせっかい | Pink Floyd | ● |
38 | English Electric | - | Big Big Train | |
39 | The Whirlwind | - | Transatlantic | |
40 | Script for a Jester’s Tear | - | Marillion | |
41 | Nursery Cryme | 怪奇骨董音楽箱 | Genesis | ● |
42 | Trilogy | トリロジー | Emerson, Lake &Palmer | ● |
43 | Aqualung | アクアラング | Jethro Tull | |
44 | Wind and Wuthering | 静寂の嵐 | Genesis | ● |
45 | Colours | - | Between The Buried and Me | |
46 | Ghost Reveries | - | Opeth | |
47 | Clutching at Straws | - | Marillion | |
48 | The Incident | - | Porcupine Tree | |
49 | A Passion Play | - | Jethro Tull | |
50 | Grace for Drowning | - | Steven Wilson | |
51 | Mirage | 蜃気楼 | Camel | |
52 | Marbles | - | Marillion | |
53 | A Farewell to Kings | - | Rush | |
54 | The Mountain | - | Haken | |
55 | Journey to the Centre of the Earth | 地底探検 | Rick Wakeman | |
56 | Acquiring the Taste | - | Gentle Giant | |
57 | Crack the Skye | - | Mastodon | |
58 | Moonmadness | - | Camel | ● |
59 | Weather Systems | - | Anathema | ● |
60 | Tubular Bells | チューブラー・ベルズ | Mike Oldfield | |
61 | De-loused in the Crematorium | - | The Mars Volta | |
62 | Aenima | - | Tool | |
63 | The Parallax II | - | Between The Buried and Me | |
64 | Operation Mindcrime | オペレーション・マインドクライム | Queensryche | |
65 | Octopus | - | Gentle Giant | |
66 | In Absentia | - | Porcupine Tree | |
67 | Insurgentes | - | Steven Wilson | |
68 | Rock Bottom | - | Robert Wyatt | |
69 | Permanent Waves | - | Rush | ● |
70 | Discipline | - | King Crimson | ● |
71 | Atom Heart Mother | 原子心母 | Pink Floyd | ● |
72 | Sgt Pepper’s Lonely Hearts Club Band | - | The Beatles | |
73 | Godbluff | - | Van Der Graaf Generator | |
74 | Hot Rats | - | Frank Zappa | |
75 | Free Hand | - | Gentle Giant | |
76 | Songs from the Wood | - | Jethro Tull | |
77 | Crime of the Century | - | Supertramp | |
78 | Still Life | - | Opeth | |
79 | Emerson, Lake & Palmer | - | Emerson, Lake & Palmer | ● |
80 | Six Degrees of Inner Turbulence | シックス・ディグリーズ・オブ・インナー・タービュランス | Dream Theater | |
81 | Leftoverture | 永遠の序曲 | Kansas | |
82 | Subterannea | - | IQ | |
83 | Still Life | - | Van Der Graaf Generator | |
84 | Remedy Lane | レメディ・レーン | Pain of Salvation | |
85 | UK | 憂国の四士 | UK | |
86 | Six | - | Mansun | |
87 | OK Computer | OK コンピューター | Radiohead | |
88 | Snow | - | Spock’s Beard | |
89 | Awake | アウェイク | Dream Theater | |
90 | Afraid of Sunlight | アフレイド・オブ・サンライト | Marillion | |
91 | Damnation | - | Opeth | |
92 | The Six Wives of Henry the Eighth | ヘンリー八世の六人の妻 | Rick Wakeman | |
93 | Storm Corrosion | - | Storm Corrosion | |
94 | War of the Worlds | - | Jeff Wayne | |
95 | To Our Children’s Children’s Children | 子供たちの子供たちの子供たちへ | The Moody Blues | |
96 | Lizard | - | King Crimson | ● |
97 | Voyage of the Acolyte | 侍祭の旅 | Steve Hackett | |
98 | Tago Mago | タゴ・マゴ | Can | |
99 | Moving Waves | - | Focus | |
100 | Drama | - | Yes | ● |
まずは個人的に考察してみる。
Yesのアルバム「Close To The Edge(邦題:危機)」はプログレッシブ・ロック系のアルバムでも好きなアルバムなので、ランキング1位は嬉しかったです。また、当レビューでも取り上げているAnathemaの「Weather System」がランキングされていたり、いつかは取り上げたい、好きなバンド:Haken、Big Big Trainがあるのもニンマリしますね。
いっぽうで驚いたのが、Radiohead、Mansunなどのプログレッシブ・ロック系よりも、オルタナティブ系やポストロック系のバンドと括られているだろうバンドの名前がちらほら見えたところです。前述のAnathemaもゴシックメタル系からプログレへクロスオーヴァーし、現在では抒情性のあるシンフォニック系、最新作ではポストロック系っぽさもあると思うんです。ここ最近のプログレ系へのジャンル定義が幅広くなってきたと感じずにはいれませんね。
反面、2000年代のプログレなバンドで有名なスウェーデンのプログレッシブ・ロックバンド:Moon Safariや1980年代のヴィンテージ系を活かしたバンド(Anekdoten、Anglagardなど)が1枚もランキングされていないのが少し不思議でしたね。
さらに考察してみる。
1.「5大プログレバンド」な存在
俗に云われる5大プログレバンドであるYes、Genesis、Pink Floyd、King Crimson、Emerson, Lake & PalmerはTOP100にしっかりとランキングされていましたね。ただ、Yesが7枚、Genesisが6枚、Pink Floydが6枚、King Crimsonが5枚、Emerson, Lake & Palmerが4枚です。ランキングされたアルバムの枚数で優越を判断してしまうのは少し厳しいかもしれません。
まずYes、Pink Floyd、Emerson, Lake & Palmerの3つのバンドは頭角を現した時期から人気が衰退したであろう時期までのアルバムが網羅されている印象があるんです。1stアルバムがアートロック系だったYes、サイケデリック系だったPink Floydからすれば納得がいきますし、1stアルバムから最強の4thアルバムまでのEmerson, Lake & Palmerは最初からプログレの最強トリオのような印象さえ納得せざろうえません。
Genesisは個人的に2nd「Trespass(邦題:侵入)」が好きなのですが、ランキングには3rdアルバム「Nursery Cryme(邦題:怪奇骨董音楽箱)」からランキングされています。そして、上記3つのバンドと同傾向です。
そして、King Crimsonは1st「In The Court of the Crimson King(邦題:クリムゾン・キングの宮殿)」や5thアルバム「Larks Tongues In Aspic(邦題:太陽と戦慄)」など、プログレ名盤と云われるアルバムはありますが、すべてが網羅されていない!個人的に好きな3rd「Lizard」がランキングされてはいますが・・・
2.「5大プログレバンド」に割入る存在
ランキングされたアルバム数が4枚以上で「5大プログレバンド」に数で割入る存在で、Marillionが6枚、Rushが5枚、Jethro Tullが4枚、Dream Theaterが4枚、Porcupine Treeが4枚、Opethが4枚でしょうか。特徴として、Jethro Tullが10位以内に1枚ランキングされていますが、「5大プログレバンド」のように1枚か2枚は10位以内にランキングされてはいないのです。それでも、イギリス以外の国や1980年代以降の世代を反映した内容がランキングに反映しているといえば反映しているのかな、とは思いました。ポンプロック系で隆盛したMarillionはとても印象深いかなと思いました。現在2014年8月のランキングですから、さらに時代が経ち、さらにプログレのファンが増えれば、もっと異なる「プログレの存在」が出てくるかもしれません。少なくとも、1970年代から約半世紀ほど経ち、それでも「5大プログレバンド」のアルバムが上位にあるということは、あらためてその存在が大きいとも感じられますね。
3.偏りな存在
当レビューではワールドワイドにプログレ系のバンドを取り上げています。お気づきな方も多いと思いますが「5大プログレバンド」やプログレで有名なバンドをまだまだ扱ってはいません。上記「最も素晴らしいプログレ・アルバムTOP100」と「プログレおすすめ」アルバムのランキング表の右側にある「●」で書かれたランキングが少ないです。それを抜きにしても、ドイツのクラウトロック、イタリアのプログレがあまりランキングされていないのが疑問的なところでしょうか。いずれもプログレのエッセンスにユニークさがあるのだから、投票の地での影響からなのか、時期が変われば変わるかもしれませんね。
たとえば、投票者1人につき、イギリス、アメリカ、フランス、ドイツ、イタリアでそれぞれ好きなアルバムを1枚ずつ投票など、国別やエリア別な投票があったら印象が異なっていたかもしれません。
結論
本来プログレッシブ・ロックが隆盛した国がイギリスであると個人的に考えています。そのイギリスで発行される「Prog Magazine」誌でのプログシッブ・ロックのランキングは興味深く、とてもためになりました。
プログレを発信する地域性にランキングに偏りがあると考えたとしても、これまでプログレッシブ・ロックのアルバムとして取り上げられていないバンドが取り上げられたことも含め、1960年代後半から現在2014年までの総合的なプログレのTOP100として、とても重要な結果だと思うんです。確かに変拍子や変調の楽曲も多いRadioheadのアルバム「OK Computar」をプログレ視点であらためて聴いてみようとも思いましたよ。
みなさんはいかがですか?
「当レビューのコンテンツ「プログレおすすめ」のアルバムの更新情報が遅くて、プログレが聴きたい気持ちがおさえらない!!」という方はぜひぜひご参考頂ければと思います。
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Comment
はじめまして。
興味深く本記事を拝見いたしました。
英国のプログレファンの現時点での嗜好、
こんな感じなのですね。
5大バンドやJethro Tullはともかくとして、
ELPはSteven Wilson よりも上位に組み込む事ができずTOP10の外なんですね。