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プログレおすすめ:YES「The Yes Album(サード・アルバム)」(1971年イギリス)

公開日: : 最終更新日:2015/12/02 1970年代, YES(5大プログレ), イギリス , , , , ,


YES – 「The Yes Album」

第85回目おすすめアルバムは、イギリスのプログレッシブ・ロックバンド:YESが1971年に発表したアルバム「The Yes Album(サード・アルバム)」をご紹介します。
YES「The Yes Album(サード・アルバム)」
YESの3枚目にあたるアルバム「The Yes Album」は、同年に発表される4thアルバム「Frigle(邦題:こわれもの)」、5thアルバム「Close to The Edge(邦題:危機)」と続く最高傑作への飛躍を感じさせる1枚です。

ボーカルにJon Anderson、ベースにChris Squire、ドラムにBill Bruford、キーボードにTony Kayeのメンバーに、ギターにSteve Howeを加えて制作されたアルバムです。Steve Howeが加わることで、各楽曲にテクニカルさが増し、4thアルバム「Frigle(邦題:こわれもの)」以降の楽曲に垣間見える切迫さを感じさせながらも、メロウでファンタスティックな展開の楽曲の礎が築かれたのではないでしょうか。

プログレッシブ・ロックを意識する楽曲以上に、聴きやすさ、メロディのキャッチさなどが耳に残り、2015年現在のYesのライブでもレパートリーとなる楽曲が物語っています。

楽曲について

冒頭曲「Yours Is No Disgrace」は、イントロの力強いギターのカッティングに、オルガンのリフが重なる疾走感をもつロックな楽曲です。Yesらしさのあるコーラスを伴うヴァースの唄メロといい、どことなく牧歌さもある印象は、「Roundabout」(4thアルバム「Frigle(邦題:こわれもの)」収録曲)のように切迫さやテクニカルさによるクールさはないまでも、プロト楽曲ともいうべき印象です。Jon Andersonのアカペラ、Chris Squiareのウォーキング・ベースによるJazzテイストなフレージングなど、テーマを様々なアプローチで展開する短い曲を繋げ合わせた様はプログレッシブ・ロックというよりも組曲のような印象ですが、Steve Howeのギターのフレーズは既に唯一無比にも独特なロック感を唄メロに絡ませています。それだけ、Steve Howeの存在は大きいと感じるんです。

冒頭曲「Yours Is No Disgrace」を聴けば、2ndアルバムまでのYesと違うと感じ得ずにいられない。

2「Clap」はSteve Howeによるチェット・アトキンス風のカントリー・ピッキングのソロが聴ける楽曲です。カントリー・アルバムでもなく、新加入メンバーのソロ・ナンバーがアルバム2曲目に配置することからも、どれほどバンドへの影響力があったのかと想像にかえません。

3「Starship Trooper: Life Seeker / Disillusion / Wurm」は、ライブのクロージングナンバーとして何度も位置付けされるナンバーで、Yesファンにどれほど人気であり、バンド:Yesとしてどれほど重要なナンバーと思わせてくれる楽曲です。アルバムとして2「Clap」の次に位置づけしているからこそ、その存在感は際立っており、イントロのSteve Howeのギターのフレーズのキラキラ感から、力強いJon Andersonのボーカルも印象的に、アルバムジャケットや楽曲タイトルからも連想させる宇宙へ飛翔しようとするテーマを具現化したような演奏が繰り広げられます。3分30秒前後からの牧歌的な展開では、やはり1「Yours Is No Disgrace」のように組曲のようだとも感じます。たとえそうだとしても、4分20秒には元の曲調へ戻る展開、以降、5分前後までのコーラスとギターによる音空間には溜息つかされます。特に5分40分前後の「Wurm」と云われるパートでのフライジングし、エコーも独特なアンサンブルを聴けば、混沌さとも取れる音空間には2ndアルバムまでのアートロック系、アシッド系よりも一歩進み、プログレッシブ・ロックな色彩を感じますよね。

アカペラからはじまる4「I’ve Seen All Good People: Your Move / All Good People」も3と同様に人気の楽曲。3よりも牧歌的な曲調ながらも、Jon Andersonのクリーンなボーカルに、Steve Howeの12弦アコースティック、そして、リコーダーが加わる「Your
Move」でのアンサンブルには「Close To The Edge – (iii)I Get Up, I Get Down」(5thアルバム「Close To The Edge」収録曲)に発展していくような瑞々しさを感じえます。それでも「Close To The Edge」の前後と異なるのはシャッフル風の「All Good People」との組曲型式を取っていることでしょうか。筆者にとって、3rdアルバム「Fragile(邦題:こわれもの)」から参加するRick Wakemanと、当アルバムでのキーボードのTony Kayeで明確な差が生じているのは「この感覚」ではないかと思うんです。メンバーのソロ楽曲を取り入れながらも、1つの楽曲で組曲とも取れる小曲をスムーズに繋げているアレンジ、構成力を要してると3rdアルバム「Fragile」の各楽曲には感じるのです。

Tony Kayeのピアノのフレーズ裏でChirs Squireのゴリゴリとしたベースが印象深く刻む5「A Venture」は当アルバムで最もプログレッシブ・ロック的な小品と感じます。そして、前半部と同様に牧歌的なヴァースではじまる6「Perpetual Change」はギターのフレーズも色を添え、それでいてジャズタッチなピアノとベースのアンサンブルがギャップを生じ、さらにイントロやヴァース間でのマーチ風にたたみかけるドラムとギターのリズムタッチ、Jon Andersonによるメインボーカルにかけあうコーラス感などには、アンサンブルで聴かせるプログレッシブさを感じえますね。コーラスがたゆまなくフェードアウトし楽曲はクロージングします。変拍子を効かせているのに無駄なく聴かせてくれて、アルバムに後味悪い印象を残さず、爽やかでいて、また聴きたくなる!

これぞプログレッシブ・ロックの楽曲というよりも小曲を繋げた組曲形式を取る楽曲の印象が強く、それでいて3「Starship Trooper」以降の楽曲では、エコーも独特なアンサンブルによる音空間をフライジングで創出しています。スペースを意識したような印象が強く、アートロック系から脱却し、空間処理を意識しプログレッシブ・ロックへ変貌しようとする姿が印象的なアルバムと感じました。

[収録曲]

1. Yours Is No Disgrace
2. The Clap
3. Starship Trooper: Life Seeker / Disillusion / Wurm
4. I’ve Seen All Good People: Your Move / All Good People
5. A Venture
6. Perpetual Change

4thアルバム「Frigle(邦題:こわれもの)」、5thアルバム「Close to The Edge(邦題:危機)」の楽曲が持つへの飛躍を感じさせる1枚です。切迫さではなく、開放的で未来にはプログレッシブ・ロックがあると感じさせてくれる素敵なアルバムです。Yesを聴き、楽曲の唄メロに溢れるキャッチさが好きな方にはぜひおすすめです。

アルバム「The Yes Album」のおすすめ曲

1曲目は4「I’ve Seen All Good People: Your Move / All Good People」
キャメロン・クロウ監督による映画「あの頃ペニーレインと」で挿入歌として利用されたことも印象強く残っているからです。イントロのアカペラからはじまり、アコースティックギターとヴァースの唄メロ、そして独特なコーラスに、牧歌的でメロウな側面を持つYesのクオリティの高さを感じるからです。

2曲目は3「Starship Trooper: Life Seeker / Disillusion / Wurm」
イントロからエコー処理されたアンサンブルや後半部のSteve Howeによるギターソロをメインとした音空間に、宇宙へと飛翔しようとするYesの姿が重なり、その後の4thアルバム「Frigle(邦題:こわれもの)」、5thアルバム「Close to The Edge(邦題:危機)」の楽曲を予見するようで素敵だからです。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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