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プログレおすすめ:Anathema「Weather Systems」(2012年イギリス)

公開日: : 最終更新日:2015/12/29 2010年‐2013年, イギリス, オルタナティヴ, 女性ボーカル ,


Anathema – 「Weather Systems」

第24回目おすすめアルバムは、イギリスのプログレッシブ・ロック系のバンド:Anathemaが2012年に発表した10thアルバム「Weather Systems」をご紹介します。
Anathema「Weather Systems」
このバンドはメインボーカルとなる男性のVincent Cavanagh、女性のLee Douglasの2人のボーカルが印象的であり、基本4人編成のメンバーです。

Vincent Cavanaghは、ボーカル以外にもキーボード、シンセ、ギター、ベースギターもこなしています。バンドの初期発売のアルバムではゴシック色が強いメタル系なサウンドでしたが、6thアルバム「A Fine Day To Exit」あたりからゴシック色よりも抒情的でたおやかなシンフォニック系のプログレッシブ・ロックへと変貌しています。個人的には、過去のゴシック色が強いサウンドが各楽曲のところどころにアクセントとし、ポストロック的な引き締めをしているのではないかと思っています。それでも唄メロ、ギター、シンセを含め1つ1つの曲を支配しているのは抒情なんです。

楽曲について

冒頭曲1「Untouchable Part 1」はクリーントーンのギターの高速アルペジオと半音階の下降スケールを繰り返すシーケンスで幕をあげます。このシークエンスが終始楽曲の骨子を形成しており、このイントロを一聴しただけで溜息ついてしまうぐらいにセンチメンタリズムを感じてしまうんです。そして、1分前後からドラム、2分途中から女性のコーラス、3分前後からディスト―ションを効かせたギターによる「歪み」、そして、抑制を解き放たれたボーカリゼーションにより、曲は感情を掻き毟るようにじわじわと昇りつめていきます。ラストはストリングスで幕を閉じますが、間髪入れずに「Untouchable Part 1」の第2幕ともいうべき2曲目「Untouchable Part 2」へ移行します。キーボードが奏でるしっとりとしたフレーズとストリングス、祈りを捧げるような唄メロ、男性と女性によるデュエットのスタイルが「Untouchable Part 1」とは異なる特徴を持つ楽曲ですが、特に、Lee Douglasの歌唱がいっそう素敵すぎますね。

流麗なストリングスは、カンタベリーロックで1972年にKhanの3rdアルバム「Space Shanty」にも参加していたDave stewartがオーケストラ・アレンジを手掛けたとも言われています。もともとシンセを利用するVincent Cavanaghに、シンセをメインとしないDave Stewartが関わることでサウンドを補完しあっているのではないかと思いました。Dave Stewartの参加がこれまで以上にプログレッシブ感を高め、バンドが持つサウンドの精度を高めているといえるのではないでしょうか。

3「The Gathering Of The Clouds」、4「Lightning Song」、5「Sunlight」は、冒頭曲1と2のようにクリーントーンのギターのアルペジオを活かしたシークエンスを活かした構成です。いずれも浮遊感のある独特な唄メロと同時に曲の後半にいくにつれて昇りつめていくのが印象的な楽曲です。

強いて言えば、6「The Storm Before The Calm」にしても、あくまで楽曲のイントロ部のパートに初期作品にあったゴシックさがエッセンスに含まれていますが、後半部分では、たとえばイギリスのバンド:Radioheadの「OK Comuptar」の世界観にも通ずるような忘却感で満ちたサウンドの印象もあり、やはり憂いを帯びた唄メロが提示されていきます。この曲を境にクリーントーンのギターのアルペジオは潜まり、7「The Beginning And The End」も8「The Lost Child」も異なったカタチでセンチメタリズムを感じるのではないかと思います。

最終曲9「Internal Landscapes」は、アルバム前半曲(1、2、3、4、5)のようにクリーントーンのギターのアルペジオは活かされてますが、曲の後半にいくにつれて昇り詰めていくようなサウンド感にはアルバムのクロージング曲として異なる感覚がするんです。5「Sunlight」をより夢心地で浮遊する世界であるかのように、アルバムジャケットのイメージをサウンドで表現したかのような感じともいうべきでしょうか。

[収録曲]

1. Untouchable Part 1
2. Untouchable Part 2
3. The Gathering Of The Clouds
4. Lightning Song
5. Sunlight
6. The Storm Before The Calm
7. The Beginning And The End
8. The Lost Child
9. Internal Landscapes

アルバムの前半と後半では異なる世界観と捉えるかもしれませんが、どこまでも透明でどこまでも躍動的でどこまでも抒情的です。プログレッシブなロックへと変貌する他ゴシックを聴く人や、プログレッシブ・ロックに対し、シンフォニック系だけれども抒情的で儚さや力強さ、男性と女性のボーカリゼーションを聴きたい方にもおすすめですね。

2012年発売のプログレ関連アルバムで最も聴き最も溜息をついたアルバム

冒頭曲1「Untouchable Part 1」だけを何度も聴き続けてしまった記憶があります。「透明」「浮遊感」「流麗」「抒情」など、溜息をついてしまうエッセンスがパッケージされていると思ったんです。ただそれだけでなく、このバンドが過去メタル寄りのゴシックバンドから派生し、その良さをアクセントとして活かしていることが曲に「美」を与えているのではないかとも思いました。バンドが新たなサウンドへ転身することは、聴き続けるリスナーには「裏切り」と捉えたり、初めて耳にしたリスナーには「先入観のない受け入れ」があるのではないかと思います。自分にとっては10thアルバム「Weather Systems」は後者としての出逢いでした。このバンドに出逢う瞬間が良かったのかもしれない。偶然の産物として素敵すぎですよね。

アルバム「Weather Systems」のおすすめ曲

1曲目は冒頭曲「Untouchable Part 1」と「Untouchable Part 2」
「Part 1」と「Part 2」。異なる曲のイントロとクロージング。いずれもこのアルバムを代表するかのような抒情的で儚さと力強さを感じて素敵なんです。言葉ではなんとでも言えるけれど、何度も何度も聴き続けたことは自分自身の心に嘘偽りなく、好きという気持ちであり、すすめたくなってしまったからです。

2曲目はラスト「Internal Landscapes」
音の「拡がり」よりも「浮遊」さが印象的な楽曲です。最後まで聴いた後に、また冒頭曲1「Untouchable Part 1」に耳を傾けてしまう衝動が抑えきれなってしまいます。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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