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プログレおすすめ:YES「Tales from Topographic Oceans(邦題:海洋地形学の物語)」(1973年イギリス)


YES – 「Tales from Topographic Oceans」

第84回目おすすめアルバムは、イギリスのプログレッシブ・ロックバンド:YESが1973年に発表したアルバム「Tales from Topographic Oceans(邦題:海洋地形学の物語)」をご紹介します。
YES「Tales from Topographic Oceans(邦題:海洋地形学の物語)」
YESの6枚目にあたるアルバム「Tales from Topographic Oceans」は、1973年発表のライブ・レコーディングの3枚組アルバム「Yesssongs」に続き、スタジオアルバムとしては、名盤の4thアルバム「Close To The Edge(邦題:危機)」に続くアルバムであるため、1973年当時のYESファンの期待値はどれほどのものだったかと思われます。

4thアルバム「Close To The Edge(邦題:危機)」を制作後、いっぽうで、その他、ボーカルにJon Anderson、ベースにChris Squire、ギターにSteve Howe、キーボードにRick Wakemanのメンバーは変わらず、ドラマーだけがBill BrufordからAlan Whiteに代わります。

・・・Roger Deanによる「らしき」ジャケット

・・・2枚組によるボリューム感

・・・隆盛期を迎えたプログレ

それでも、俗に、YESのアルバムの中でも問題作と云われている一枚です。

アルバム発表後のツアーが終了次第、Rick Wakemanは脱退してしまうのです。

本当に問題視されて敬遠してしまっていい一枚であるのか?

これからプログレッシブ・ロックを聴く方、もしくは、プログレッシブ・ロックバンド:YESの音楽に初めて触れたい方におすすめすることは出来ないかもしれません。プログレ隆盛期で、YESの黄金時代に制作されたアルバムとして、聴き込むほどにプログレの素敵な要素がつまっています!

楽曲について

当アルバムは、4つの楽曲(1曲目が約20分半、2曲目が約20分半、3曲目が約18分半、4曲目が約21分半)で構成されており、収録時間:計80分です。一聴すると、名盤の4thアルバム「Close To The Edge」よりも演奏に切迫感はなく、無調による起伏(テープノイズ、パーカッションなど)はあるものの、緩やかなロック色の薄い印象のアルバムです。

個々の曲は、Rick Wakemanの幻想さも感じるクラシカルでスリリングな鍵盤弾きや、Chris Squireのうねるリード・タッチのベースは少なく、Jon Andersonのボーカルでさえ、高音を活かした通常フォーマットのヴァースよりも、冒頭曲のように楽器の一部とも捉えがちに感じえません。バンドのアンサンブルよりも各メンバーのソロを重視したかのように見える演奏には本来のイエスの魅力であったはずの切迫感を抑えさせているのかもしれません。

いっぽうで、Rick Wakemanによるメロトロンの使用度は、YESのどのアルバムよりも比重は高く、いずれの楽曲でも鳴り響いており、アンビエント的な空間芸術的をも創出してるのではないかと思うんです。

[収録曲]

1「The Revealing Science Of God – Dance Of The Dawn(邦題:神の啓示)」
2「The Remembering – High The Memory(邦題:追憶)」
3「The Ancient – Giants Under The Sun(邦題:古代文明)」
4「Ritual – Nous Sommes Du Soleil(邦題:儀式)」

あらためて収録曲4曲を振り返れば「YESの交響曲」として趣きがあります。演奏に切迫感がありつつもメロウでいてシンフォニック系を求めるよりも、アルバム全体でコンセプト立てたシンフォニック系として重視した楽曲たちです。

それぞれの楽曲を交響曲で、
第1楽章:アレグロ
第2楽章:アダージョ
第3楽章:スケルツォ
第4楽章:フィナーレ
と捉えれば、
オーストリアの作曲家:マーラーやブルックナーといったモダンなクラシック作曲家にイメージが近しいシンフォニックの1枚とも思うんです。

計80分の世界を超えて

楽曲のアイデアは、YES来日公演時に、東京滞在中にJon Andersonがヒンドゥー教の経典から読み、ギターのSteve Howeと共同作業で構想をまとめたものです。

当時、「長尺なアルバムを制作したい」とは全メンバーに共通していませんでした。Rick Wakemanが「楽曲やアルバム構成が長すぎる」と問うても、Steve Howeは「長尺の構成に意味がある」といって譲らなかったというエピソードが残っています。結果的に、4「Ritual – Nous Sommes Du Soleil(邦題:儀式)」の後半部で聴けるピアノはドラマーのAlan Whiteが弾いていたことから、アルバム制作過程でどのようなことがあったか察しがつきます。

きっとプログレッシブ・ロックのファンであれば「そこに何かある」という感覚でとらえ、おそらくこのアルバム全篇に渡る「音の迷宮」へと誘われずにはいられないでしょう。筆者は、3「The Ancient – Giants Under The Sun(邦題:古代文明)」の後半12分30秒前後から17分50秒前後までのスパニッシュギターとボーカルに癒されてしまうんです。そのために、当アルバムを聴いてみては、いつでも前半すべての楽曲を飛ばすことなく、当楽曲まで辿りつき聴くことにしています。

「海洋地形学の物語」はイエスの数々の作品の中でも「異色」のものだと言えるのかもしれないが、この作品を愛するファンでさえ、理解しづらく難解にとらえ、何度も何度も耳に傾けていると思います。このアルバムが当時のYESのメンバーでしか造り得なかったアルバムであることもまた事実です。当時のYESが向かおうとしていた姿勢が反映されたアルバムと思います。Rick Wakemanが脱退してしまうという結果を招きましたが、YESをより知りたい方は是非聴いてみてください。

YESの「Fragile」、「Close To The Edge」、「Relayer」、「Going For The One」などの一連の名盤、傑作を聴いたうえで、ゆるやかな抒情性シンフォニック系のプログレとして辿りついて欲しい一枚です。

紛れもなく当アルバムは傑作です!そんな「プログレな気持ち」・・・

みなさんはどう思いましたか?

アルバム「Tales from Topographic Oceans」のおすすめ曲

※当アルバムは、組曲というよりも、4つの楽曲による交響曲を思わせるため、いずれかを選択することは避けさせて頂きます。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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