プログレおすすめ:Pink Floyd「Meddle(邦題:おせっかい)」(1971年イギリス)
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最終更新日:2016/03/29
1970年代, Pink Floyd(5大プログレ), イギリス David Gilmour, Nick Mason, Pink Floyd, Richard Wright, Roger Waters
Pink Floyd -「Meddle(邦題:おせっかい)」
第17回目おすすめアルバムは、イギリスのプログレッシブ・ロックバンド:Pink Floydが1971年に発表したアルバム「Meddle」をご紹介します。
Pink Floydの6thスタジオ・アルバム「Meddle(邦題:おせっかい)」は、4thスタジオ・アルバム「Atom Heart Mother(邦題:原子心母)」と次々作「Dark Side Of The Moon(邦題:狂気)」の間に位置し、その2つのアルバムの印象が良いと思う方が多く、印象を低くとられがちなアルバムではないかと思います。しかし、抑えておくべき特筆的な曲が多く含まれているんですよ。
バンドは、1968年からRoger Waters(ベース兼ボーカル)、David Gilmour(ギター)、Richard Wright(キーボード)、Nick Mason(ドラム、パーカッション)の4人構成です。
デビュー当時のSyd Barrett籍時のサイケデリック感やブルーズ感を脱却し、との評論も多いのですが、サイケデリックなサウンドをよりスペーシに、よりスタイリッシュなサウンドへ変換しているのではないかと思うんです。最終曲「Echos」の中間部のパートでは濃厚に感じます。
その他、フォークやブルースなフィーリングのある曲がラインナップにあることで、一聴するとバラエティ溢れ、プログレッシブ・ロックではないのではないかと錯覚もしがちです。アルバム全篇に前述のスタイリッシュさを増した幻想感が薄ら薄ら溢れており、俗にいう5大プログレバンド(King Crimson、YES、GENESIS、EL&P、Pink Floyd)のなかでは、幻想的なサウンドを追及したバンドに位置しているのではと思います。
楽曲について
風の音のSEに導かれ、Roger Watersの特徴的なベースのフレーズに、一シークエンスごとにこだまするシンセとギターのフレーズが印象的な冒頭曲1「One Of These Days(邦題:吹けよ風、呼べよ嵐)」は、2分前後から鳴り響くエッジの効いたギターのフレーズを耳にする頃には邦題の「吹けよ風、呼べよ嵐」がピタリと似つかわしいと納得してしまうんです。原曲の英語タイトルから的を得ていると思えない邦題タイトルが多い中でそう感じることはなかなか多くないものです。また、楽曲後半にかけて、David Gilmourによるギターはうねりをあげていきますが、その演奏が与える緊張感がたまらないんですよね。
冒頭曲1に続き、幻想感を多少含みながらもフォーク的な2「A Pillow Of Winds」、よりフォーク的にブレイクダウンしたような3「Fearless」、イギリスのミュージシャン:Paul McCartneyがボードビル調にジャズを取り入れたような感じの4「San Tropez」、さらに、犬のSEとともにブルーズ感のある展開の5「Seamus(邦題:シーマスのブルース)」の各楽曲を一聴した時には、冒頭で触れたとおり筆者が思い描くプログレッシブ・ロックの括りではないと勘違いしたぐらいです。しかし、最終曲6「Echos」のイントロのピアノの響きを耳にするだけで、それまでの楽曲で受けた勘違いを拭い去り、気持ちは一変してしまいます。3分前後からのほのかなアンニュイさに、抒情的なメロディ、きめ細やかなドラミングを聴けば、楽曲は「幻想感」だけでなく、5大プログレバンドの他4つのバンドとの共通項が見えてきそうです。ただそれだけで終わらない独特な「幻想感」をこの曲は中間部のパートに持ち合わせているため、約24分の長尺さは終始聴き入り圧倒されてしまうんです。
[収録曲]
1.One Of These Days(邦題:吹けよ風、呼べよ嵐)
2.A Pillow Of Winds
3.Fearless
4.San Tropez
5.Seamus(邦題:シーマスのブルース)
6.Echoes
最も売れた6thスタジオ・アルバム「Dark Side Of The Moon(邦題:狂気)」や9thスタジオ・アルバム「The Wall」もありますが、Pink Floydといえば、このアルバムをまずおすすめしたくなります。
冒頭曲1「One Of These Days」と最終曲6「Echos」がとても特筆するべき楽曲であるばかりでなく、他フォーク的な解釈の曲も合わせて、これまでのアルバム以上に楽曲の表情がくっきりとし、以降のアルバムでも骨子となっていると思えるからです。
「サイケデリック」なロックを聴き続け、さらにトリップ感を求める方に、もちろんプログレッシブさに「幻想感」を感じたい方にぜひおすすめのアルバムです。
プログレの幻想感
Syd Barrett時代の1stスタジオ・アルバム「The Piper At The Gates Of Dawn(邦題:夜明けの口笛吹き)」から変換ゆくサウンドを聴き続け、これまでにベストアルバムを除き9stスタジオ・アルバム「The Wall」までは取りあえず耳にしました。その変換ゆくサウンドの中で、1970年発表の4thスタジオ・アルバム「Atom Heart Mother(邦題:原子心母)」前後から、個人的に「スタリッシュさのあるサイケデリック、トリップ感」と形容しています。つまり「幻想性」ですよね。
Pink Floydは映画音楽も手がけており、フランスの映画監督:Barbet Schroederの1969年発表の映画「More(邦題:モア)」や1972年発表の映画「La Vallee(邦題:雲の影)」は映画全篇でサウンドトラックとして担っています。映画は男女2人を主軸に取り上げたサイケデリック・カルチャーをクールに退廃的に描いているのですが、ストーリーや展開はうまく理解出来なくとも、その映像に相応しいかのようなPink Floydの数々の楽曲には心を強く奮いたたせらえましたよ。気怠さ、妖しさ、虚無さ、なんともいえない不満足感というか、映像に「幻想性」で誘惑されるような心地でした。
以降のプログレッシブ・ロックのフォロワーとなるバンドのサウンドには、この「幻想性」のサウンドが多く溢れ、耳にするとニンマリするんです。
アルバム「Meddle」のおすすめ曲
1曲目は冒頭曲「One OF These Days」
イントロのベースによる音作り、徐々にその際立たせるギターのフレーズによるうねりには、緊張感を憶え、そのアンサンブルにはクールさも感じるインストルメンタルで素敵だからです。
2曲目は最終曲「Echos」
ほのかなアンニュイさに、抒情的なメロディが印象的に残るんです。中間部の深淵さにも「幻想性」あるトリップ感をパーカッシブさで演出し、ディレイのかかったギターをバッキングに、エッジがあるが煌めきが印象的になギター・フレーズ、特に、19分以降、再度前半の印象的なメロディを奏でる構成力が素敵なんです。また、ドラムを意識し聴けば聴くほど、楽曲の奥行きを感じ心地良いからです。
このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。
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いつもこのサイトをCD購入の参考にさせていただいています。この記事を読んでエコーズを聴くと今まで冗長に感じていたパートも幻想性を感じながら聴くことができました。これからも更新頑張ってください!