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プログレおすすめ:King Crimson「Discipline」(1981年イギリス)


King Crimson -「Discipline」

第211回目おすすめアルバムは、イギリスのプログレッシブ・ロックバンド:King Crimsonが1981年に発表した8thアルバム「Discipline」をご紹介します。
King Crimson「Larks' Tongues in Aspic」

規律(=「Discipline」)と云うリズムの中で・・・

Robert Frippは、1974年にKing Crimsonを解散するものの、第2期King Crimsonでともに活動していたBill Bruford(ドラム)に、Adrian Brew(ボーカル、ギター)とTony Levin(スティック、ベース)の4人でバンド形態での音楽活動はじめます。当初は、当アルバムに冠した「Discipline」をバンド名にしながらも、商業的理由でKing Crimsonを名乗ります。

その音楽性の特徴は、フリー・ジャズまで発展したハードなアプローチと牧歌的にも陰鬱さある儚い抒情さがあった「第1期King Crimson」と、インプロビゼーションを主体にメカニカルでヘビーなアプローチのアンサンブルがあった「第2期KIng Crimson」とは異なり、一聴すると軽やかなイメージです。

当8thアルバム「Discipline」を含め、続く9thアルバム「Beat」、10thアルバム「Three Of A Perfet Pair」の計3枚のスタジオアルバムは、King Crimsonファンにとって賛否両論あるとは思いますが、バンド史を振り返ってもラストライブを迎える1984年までの4年間にメンバーを固定した事実からは、どれほどにバンドが結束していたかを物語りますし、King Crimson史上でも外せないクリエイティビティな期間だったと思うのです。

軽やかさに形容されるリズム要素には、1970年代のプログレッシブ・ロックバンドもクロスオーバーし近づいたラテンアメリカよりもアフリカ寄りの民族的ポリリズムがあり、到底、パーカッシブさと云う言葉では片づけることは出来ません。また、当時のパンク隆盛期を経て、1970年代後半から1980年初頭にかけて、たとえば、イギリスのミュージシャンでいえば、Rod Stewartの「Do Ya I’m A Sexy」、The Rolling Stonesの「Miss You」、The Bee Geesの「Stayin’ Alive」などのシングル・ヒット曲に代表されるディスコ寄りのサウンド・アプローチも導入してます。Adrian Brewのボーカルの声質も含めた表面上で感じる音楽性に、1970年代のKing Crimsonのアルバムを好むファンの方々には、戸惑いがあったのかもしれません。

ただし、4人のメンバーによるスキルフルでテクニカルなアンサンブルには、1980年代初頭の音楽背景を反映させながら、第2期King Crimsonの名曲「Larks’ Tongues In Aspic Part Two(邦題:太陽と戦慄パート2)」で魅せたギターとベースによるミニマルなフレーズの延長上と感じさせる素晴らしいクオリティを感じるのです。そう、

アルバム・タイトルの和訳「規律」(=「Discipline」)なリズムの高揚さを感じるアルバムと思います。

楽曲について

King Crimson新体制でのアクティビティを強く感じさせてくれる冒頭曲1「Elephant Talk」は、ただでさえ複雑なリズムを刻むBill Brufordのドラミングを先入観にもちながらも、Tony Levinによる聴き慣れないスティックでのプレイとAdrian Brewが像を表現しうるか如く弾きっぷりのエフェクトを効かせたギターのフレーズなどに、聴き慣れないうちには、ただただ驚かされます。聴き慣れたとしても、Robert Frippを含めた4人のアンサンブルは、超絶プレイと云う言葉が相応しく、まさに、現代音楽とのクロスオーバーや複雑な変拍子やリズムチェンジを多用する、本来のプログレッシブ・ロックを体現するかのような楽曲です。

さらに、執拗なまでにミニマルなフレーズを非人間的にも2人のギターのフレーズが時に重なり時にずれを繰り返す超絶なアンサンブルが聴けるのが2「Frame By Frame」だと思います。ギター、ベース、ドラムがそれぞれに異なるリズムで拍でずれていきながらも、ただただ変拍子による徹頭徹尾規律さを感じてしまいますね。

ハワイの夕闇の海岸にうつろう様がサウンドスケープさせてくれる3「Matte Kudasai」、非人間的かと感じさせるナレーションを交えながら、第2期King Crimsonを彷彿とさせるヘビーなアンサンブルが聴ける4「Indiscipline」、エスニックなメロディラインの断片と後のジャングル・ビートを予見させる5「Thela Hun Ginjeet」、Bill Brufordの電子ドラム:シモンズが発揮しエキゾチックな雰囲気を醸し出す6「The Sheltering Sky」など、刺激的なアンサンブルを堪能出来ます。

ギター奏法に関して、「クール」冷静沈着で冷徹さと云う言葉が似つかわしいRober Frippと、「トリッキー」変幻自在の変態さと云う言葉が似つかわしいAdrian Brewとで、異なるギタリストが共存するプレイは、聴けば聴き込むほどに難解と思うかもしれませんが、それを思わせないメカニカルで緻密さに溢れてます。最終曲7「Discipline」では、エキゾチックな雰囲気を醸し出しながらも、そのメカニカルで緻密さあるプレイが思う存分堪能出来る楽曲です。第2期King Crimsonでの擦り切れるかのようなメカニカルさよりも、張り裂けそけそうな感覚を憶え、混沌さよりも凶暴さを感じずにいられません。突如として楽曲がクロージングしてしまうのは、第2期King Crimsonの6thアルバム「Starless And Bible Black」に収録されたいくつかの楽曲での感覚を思いださずにもいられません。

アルバム全篇、アメリカの現代音楽家:Steve Reichのミニマルミュージック(短い同じフレーズを反復する音楽の総称)を大胆にも楽曲に取り入れたポリリズムやダンサンブルなリズム感覚は、ミニマルなフレーズを音のずれをともないファーストタッチでテクニカルに執拗なまでに繰り広げられものだから、第2期King Crimsonのアンサンブルとは異なる空虚な無機質さを醸し出す、時代性を切り裂いた素晴らしいクオリティのアルバムと思います。

また、Robert Frippは当アルバムでのメンバー(Tony Levin、Adrian Brew、Bill Bruford)とともに、1990年代に入り、「メタル・クリムゾン」と形容する名盤「Thrak」を皮切りに、各種アルバムの発表やライブを重ねていくこととなるため、どうしても外せないターニング・ポイントとなる1枚であり、傑作です。

[収録曲]

1. Elephant Talk
2. Frame By Frame
3. Matte Kudasai
4. Indiscipline
5. Thela Hun Ginjeet
6. The Sheltering Sky
7. Discipline

アフリカ系のポリリズムなど、ワールド・ミュージックを好む方や、パーカッシブなエッセンスのあるプログレッシブ・ロックが好きな方におすすめです。

当アルバムを聴き、1980年代King Crimsonの音楽性を好きになった方は、続けて、1982年に発表した9thアルバム「Beat」、1984年に発表した10thアルバム「Three Of A Perfet Pair」のスタジオ・アルバム2枚と、1984年のラスト・ツアーのライブ実況版となる1998年に発表したライブ・アルバム「Absent Lovers – Live In Montreal 1984」がおすすめです。

「Discipline」のおすすめ曲

1曲目は最終曲7の「Discipline」
当時の音楽時流のなかに溢れながらも、第2期King Crimsonにないエッセンスと第2期King Crimsonにあったエッセンスの両方を感じずにいられません。

2曲目は冒頭曲1の「Elephant Talk」
レビューにも触れたメンバー4人の個々のテクニックやスキルフルさの特徴を活かした楽曲です。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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