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プログレおすすめ:Camel「Moonmadness(邦題:月夜のファンタジア)」(1976年イギリス)

公開日: : 最終更新日:2015/12/13 1970年代, イギリス, シンフォニック, フルート


Camel -「Moonmadness」

第220回目おすすめアルバムは、イギリスのシンフォニック系のプログレッシブ・ロックバンド:Camelが1976年に発表した4thアルバム「Moonmadness」をご紹介します。

Camel -「Moonmadness」

聴いた記憶が素敵に思い出してしまう

ふと冬の季節になると、思い出してしまいます。

本来、当アルバム「Moonmadness」は、雪解け過ぎの春深まりつつある3月26日に発表されたにも関わらず、こうも冬と云うイメージが思い描入してしまうのは、アートワークに漂う、まさに冬の景色によるものかしれません。

1974年発表の3rdアルバム「Mirage」、1975年発表の名作の誉れ高い4thアルバム「The Snow Goose」と、Doug Fergusonが脱退し、元CaravanのRichard Sinclair(ベース、ボーカル)、元king CrimsonnのMel Collins(フルート、サックス)が参加することで、仄かなサイケデリックさにジャズ系やフュージュン系により、メリハリあるサウンドが際立つ1977年発表の5thアルバム「Rain Dances」、1978年発表の6thアルバム「Breathless」の4枚に挟まるアルバムです。いずれのアルバムも甲乙つけがたい傑作アルバムですが・・・

・・・バンド結成時から固定メンバーで続けて制作した最後のアルバム・・・

・・・Andy Latimerのフルートやギターが奏でる甘美にもマイルドさ・・・

・・・Peter Bardensの包み込むようなストリングスアンサンブル・・・

・・・時として程よく変拍子が軽やかさに舞う展開・・・

に、アートワークやタイトル「月夜」を含め、最もCamelのサウンドスケープを表現しきったアルバム

と、一般的にも最高傑作の1枚にあげられるアルバムです。

個人的には、CDを手に取り、気難しいことを考えず、あたたかみもあるファンタジーさやスペーシ―さに溢れた叙情さに身を委ね、その聴いた記憶がアートワークとともに脳裏に残り、また冬の季節に想い出してしまう、そんな素敵な1枚です。

さあ、Andy Ward(ドラム、パーカッション)、Doug Ferguson(ベース)、Peter Bardens(キーボード)、Andy Latimer(ギター、フルート、リコーダー)の4人が描く音楽に耳を傾けてみましょう。

楽曲について

心美良いムーグ・シンセサイザーとAndy Wardのヴォイシングによる冒頭曲1「Aristillus」によるファンタジックさはどうだろうか。はじまりを告げ、行進曲をイメージさせるかのようなサウンドスケープがたまらないですね。

2「Song Within a Song」でのふわふわとゆったりと流れるキーボードに、フルートのメロディックな旋律は、どこまでも優しげに、エフェクトかかったDoug Fergusonのボーカルがより一層ファンタジックさに色を添える楽曲です。3分前後から変拍子で繰り返されるギターのリフ、4分15秒前後からの躍動さあるアンサンブルなども、決して楽曲前半部の優しげなイメージを壊さないように、冒頭曲1「Aristillus」のイメージもあるからこそ、ファンタジックなシンフォニックで聴かせてくれると思うんです。昔、Camelのコピーバンドのライブ観戦したのが、Camelのサウンドを知るきっかけであり、気に留まった瞬間でした、

そう、はじめて気に留め、出逢ったことに感謝してしまう楽曲なんです。

3「Chord Change」は、ギターをメインにフュージュン系のアンサンブルがオープニングとクロージングを挟む楽曲です。フュージュン系だとしても、そのギターの音色に感じるマイルドさ、カンタベリー系のCaravanを彷彿とさせるスキャットや仄かなオルガンの旋律など、気が付けば、スローテンポに、メロウなギター・ソロを聴いていることにハッとさせられてしまいます。そして、3分55秒前後からのオルガン・ソロにしても、他の叙情さのあるバンドにはないCamelならではの、マイルドで優しさに溢れています。

4「Spirit of the Water」は、リコーダーに導かれ、リリカルなピアノをアンサンブルに、Peter Bardensによるボーカルが聴ける楽曲です。やはり、エフェクトかかったボーカリゼーションも合い間って、約2分ほどの短い楽曲ですが、聴き逃せない味わい深さがあります。

5「Another Night」は、ギターとキーボードのミニマルなフレーズがユニゾンで幕を上げるのが印象的な楽曲です。当アルバム中では最もダンサンブルなリズムセクションで、ほどよくメロディックなダンサンブルさに、1970年代のイギリスで一世を風靡したロック・バンド:Sweetに代表されるグラムロック系を想起してしまいます。1分30秒前後の短めのブリッジなどに魅せるCamelのメロウさにも、ここでは、ギター・リフや5分20秒前後のオルガン・ソロも含め、クールな印象が強く、どことなくオリエンタルなイメージもしてしまいます。

フルートの儚げな旋律ではじまる6「Air Born」は、その冒頭部からあまりにも刹那さが溢れ、メロディックなギターとシンセサイザーによるアンサンブル、エフェクトかかった唄メロのメロディラインによるCamelらしさ溢れるファンタジックがあることで、独特の叙情さを醸し出している楽曲です。アコースティックギターのアルペジオの調べに、フルートのソロ、シンセサイザーのフライジングされた低音の旋律をまじえ、聴き心地は、ファンタジックさにも、よりスペーシーな世界へ誘われるでしょう。冒頭部のヴァースに戻る直前のエレクトリック・ピアノのリリカルにも短めのフレーズがスペーシ―さからファンタジックさに呼び戻させるさまにもただただ溜息ついてしまいます。そして、クロージングまでの煌びやかな抒情さに、なぜか5大プログレバンド:King Crimsonのメロトロンの音色も印象的な名曲「Epitph」が脳裏を掠めてしまいます。

ただただ、うっとりと聴き込んでしまいますね。

最終曲7「Lunar Sea」は、ストリングアンサンブルを利用した煌びやかなサウンドがスペーシ―なイメージをもたせ幕を上げる楽曲です。シンセサイザーの音色や響きに、時として「冷ややかなイメージ」をもってしまうのですが、その先入観を拭い去ってくれた楽曲でもあります。続くミニマルなベースに小刻みなシンバルをまじえたリズムセクションに、3「Chord Change」のように疾走感溢れてます。まるで仄かにあたたかみも感じられるシンセサイザーに包まれ、伸びやかに舞うギター・ソロ、ムーグ・シンセサイザーのソロ、荒れぶるうブルージ―なギターとオルガンのソロに続き、6分50秒前後からのギターによる変拍子によるミニマルなフレーズのシークエンスに、徐々にシンセサイザーの旋律が浮かび上がるようにフェード・インし、フォーカスされていく煌びやかさは、仄かなエフェクトかかったスペーシ―さにかき消されるかのようにクロージングを迎えます。

まさに楽曲タイトル「Lunar Sea」やアルバムタイトル「Moonmadness」、アートワークを含め表現しきうる世界観に包まれている気がします。

アルバム全篇、1曲たりともスキップし聞き逃さずに、聴き入りたい、聴き入って欲しい、Camelの優しさ、メロウさ、ファンタジックさに満ち、「月」を意識したスペーシ―な感覚が十二分に堪能出来る素晴らしいアルバムです。

[収録曲]

1. Aristillus(邦題:アリスティラスへの誘い)
2. Song Within a Song(邦題:永遠の調べ)
3. Chord Change(邦題:転移)
4. Spirit of the Water
5. Another Night
6. Air Born(邦題:ゆるやかな飛行)
7. Lunar Sea

ギター、フルートに、キーボードをメインとした、叙情さ、メロウさ、ファンタジックさ、に溢れたシンフォニック系のプログレッシブ・ロックを聴きたい方におすすめです。

また、そのキーワード(叙情さ、メロウさ、ファンタジックさ)と云う観点で、イギリスの5大プログレバンドでいえば、Genesisのアルバム「Selling England by the Pound(邦題:月影の騎士)」、フランスのPentacleが1975年に発表したアルバム「La Clef Des Songes」、Asia Noirが1980年に発表した2ndアルバム「Between Flesh And Divine」、スペインのGoticが1978年に発表したアルバム「Escenes」、スウェーデンのKaipaが1975年に発表した同名1stアルバム「Kaipa」などを聴く方におすすめです。

当アルバムを聴き、Camelを好きになった方は、1974年発表の3rdアルバム「Mirage」と1975年発表の4thアルバム「The Snow Goose」にも手を伸ばしてみてはいかがでしょうか。

最後に辿りついた「手触り感」

次作1977年発表の5thアルバム「Rain Dances」以降、元CaravanのRichard Sinclair(ベース、ボーカル)と元king CrimsonnのMel Collins(フルート、サックス)が加わることで、その2人の過去歩んできた音楽性も反映されていきますが、なによりもインストルメンタル部のアンサンブルやボーカルの「強化」というメンバー個々の「専門性分化」のイメージを抱いてしまいます。

もちろん、5thアルバム「Rain Dances」と6thアルバム「Breathless」で、十分過ぎるほどに、素晴らしい楽曲を創造していますが、当アルバムまでに各メンバーが個々に作曲し、ボーカルも取り、一部管楽器も携わっていたクリエイテビティに、「手触り感」を感じてしまいことも、決して外せない1枚です。

アルバム「Moonmadness」のおすすめ曲

1曲目は、2曲目の「Song Within a Song」
Camelの名を知りながらも「聴かず嫌い?」のなかで、コピーバンドが奏でる当楽曲を聴き、Camelを好きになるきっかけとなった思い出深き1曲です。フルートやギターのマイルドな旋律が脳裏を離れません。
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2曲目は、6曲目の「Air Born」
クロージングまでの煌びやかな抒情さに、なぜか5大プログレバンド:King Crimsonのメロトロンの音色も印象的な名曲「Epitph」が脳裏を掠めてしまうほどに、ためいきをついてしまう叙情さが好きな楽曲です。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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