プログレおすすめ:Edhels「Saltimbanques」(2003年モナコ)
Edhels – Saltimbanques
第129回目おすすめアルバムは、モナコのネオ・プログレ系のプログレッシブ・ロックバンド:Edhelsが2003年に発表した7thアルバム「Saltimbanques」をご紹介します。
Edhelsは、1980年に、Marc Ceccotti(エレクトリック・ギター、アコースティック・ギター)とJean-Luis Suzzoni(エレクトリック・ギター、ベース・ギター)の2人を中心に結成されたバンドです。
1981年に発表された1stアルバム「The Bursting」制作時から参加していたNoel Damon(キーボード、パーカッション)が、1991年発表の4thアルバム「Astro – Logical」以降、脱退してしまい、あらたにJean-Marc Bastianelliをキーボード奏者に迎え、当アルバムまで活躍を続けています。
1998年発表の2ndアルバム「Still Dream」や3rdアルバム「Astro – Logical」に代表される、バンド初期からギターをメインとしたシンセサイザーとのアンサンブルで聴かせるインストルメンタル中心の演奏に変わりはありませんが、当アルバムは、シンセサイザーやキーボードの比重を下げ、アコースティック・ギターとエレクトリック・ギターによるフュージュン寄りでいてサイケデリックさがかかったサウンド・メイキングが特徴のアルバムです。
アルバムタイトル「Saltimbanques」が意味する「大道芸師」が何を意味するのか?
King CrimsonのRobert Frippに強く影響を受けたであろう、ミニマルなギターのフレーズを弾き構築するスタイルは、歌詞のないインストルメンタルだけのサウンドに思い描くサウンドスケープは測りしれなく、いつまでも心の迷宮をさまよってしまう、アルバムです。
楽曲について
アルバムの大半の楽曲は、プログラミングによる打込み中心のリズムに、アコースティック・ギターとエレクトリック・ギターがミニマルなアルペジオのモチーフを重ねながら、伸びやかなトーンで聴かせるエレクトリック・ギターのテーマが中心です。といっても、そのアンサンブルから醸し出されるイメージは、冒頭曲「Saltimbanques」や3「Schizo-Scherzo」など、メタリック調なエッセンスはないまでも5大プログレバンド:King CrimsonのRobert Frippを彷彿とさせる陰鬱さにも刺々しいフレーズの数々を聴くことが出来ます。
荒涼とした殺風景なサウンドスケープを魅せてくれるに十分なアンサンブルは、時として、単調な印象も感じてしまうかもしれません。
しかしながら、陰鬱としたサウンドの中でも、4「Rever avec to」と8「Nomad’s Joke」には、どことなく東ヨーロッパ寄りのロマンチシズムさを感じます。また、10「Siena」では陰鬱よりもメランコリックという言葉が似つかわしい佇まいのギター独奏を聴かせてくれます。
いっぽうで、9「Paradoxical Intentions」のシンセサイザーによるプレイには、ギリシャの作曲家:Vangelisを彷彿とさせるエキゾチックでいてエレクトロな残響さや、2ndアルバム「Still Dream」でも感じ得たエッセンスも堪能出来ます。
最終曲11「Mare Temporis」は、冒頭曲1「Saltimbanques」と同様に、スリリングさが希薄でスローテンポな前半部で進行しながらも、約11分の長尺にも緊張感もって聴かせてくれます。たぶんに、メロトロンやクワイアが醸し出す尊厳なサウンド・メイキングによる雰囲気かのものと思われます。しかし、8分前後までのピアノが一定のシークエンスでミニマルなフレーズを繰り返しつつ、アコースティック・ギターの旋律が絡み合うアンサンブルは聴き手の心を鷲掴みするかのような感触さえするんです。8分前後以降、エレクトリック・ギターによる最後の咆哮ともいうべき独奏が展開し、アルバムはクロージングを迎えます。
過去アルバムと比べてギターをメインとしたアンサンブルには変わりがないものの、冒頭曲と最終曲に代表される陰鬱さ溢れるギターをメインとしたアンサンブルには、終始張りつめた空気感があり、独特の雰囲気をもったアンビエント風のアルバムと思います。
[収録曲]
1. Saltimbanques
2. Legende-III
3. Schizo-Scherzo
4. Rever avec toi
5. Avignon
6. Bruxelles
7. Paradoxical Intentions
8. Nomad’s Joke
9. Eternelle
10. Siena
11. Mare Temporis
Robert Frippを彷彿とさせる陰鬱さあるギターのアンサンブル、および、1981年のアルバム「Discipline」を聴きたい方におすすめです。
また、現代イギリスで重要なバンドのPorcupine Treeのメタリックさある動のイメージよりも、メランコリックさある静に残響さを抑え気味にしたイメージです。Porcupine Treeのミッドテンポやスローテンポのメランコリックさのあるパートが好きな方にもおすすめです。
当アルバムでEdhelsにご興味を持たれた方は、GenesisやCamelを彷彿とさせるファンタジックさが垣間見える3rdアルバム「Still Drema」や、よりダイナミックなアンサンブルが心地良い4thアルバム「Astro Logical」もおすすめです。
アルバム「Saltimbanques」のおすすめ曲
※アルバム1枚を通じ全インストルメンタルな楽曲ですの、おすすめ曲は控えさせていただきます。
このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。
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