プログレおすすめ:Can「Future Days」(1973年ドイツ)
Can -「Future Days」
第236回目おすすめアルバムは、ドイツのクラウトロック系のプログレッシブ・ロックバンド:Canが1973年に発表した5thアルバム「Future Days」をご紹介します。
映画「ノルウェイの森」挿入歌に利用された初期作からの最高傑作
2010年10月にトラン・アン・ユン脚本・監督が村上春樹原作「ノルウェイの森」の映画化した同サウンドトラックに、1970年に発表した2ndアルバム「Soundtracks」を中心に、1969年に発表した1stアルバム「Monster Movie」、1971年に発表した3rdアルバム「Tago Mago」の3枚から選曲され、映画を彩っていました。
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プログレおすすめ:松山ケンイチ主演映画「ノルウェイの森」サウンドトラック
アヴァンギャルドさ、反復されるビート、延々なるノイズ、呟き、メカニカルさ、サイケデリックさなど、実験音楽的にも前衛音楽的にもさまざまなアプローチを繰り返してきた先に、Canのアルバムの中では最高傑作にもあげられる1枚が当アルバム「Future Days」なのです。
Canは、1968年に、ドイツで、Holger Czukay(ベース)、Michael Karoli(ギター)、Jaki Liebezeit(ドラム)、Irmin Schmidt(キーボード)、Malcolm Mooney(ボーカル)の5人で結成されたバンドです。
1969年に発表した1stアルバム「Monster Movie」に次ぐ、まさに映画のサウンドトラックのように映像描写をサウンドスケープさせてくれる音の断片が満載だった1970年に発表した2ndアルバム「Soundtracks」の制作途中で、ボーカルはダモ鈴木(ボーカル)に代わります。
その音楽の特徴は、クラシック、ジャズ、ロックなどのジャンルにリズムと音の断片が有機的に絡み合い、実験音楽的入にも前衛音楽的にもさまざまなアプローチを繰り返しており、クラウトロック系のプログレッシブ・ロックに括られます。バンド初期からもメロディックな唄メロの楽曲もありますが、ほぼフリー・ジャズ、アシッド・ロック、チェンバー・ロックなどで一種感じえる催眠さを呼び覚ますようなアンサンブルやサウンド・メイキングに溢れ、
アンビエント風の浮遊感も満載に聴きやすさもあるバンドの最高傑作ともいうべきアルバムです。
その後、世に出るポストロックと云われる未来を先取りしたかのような先見さ溢れる音楽に触れてみましょう。
楽曲について
冒頭曲1「Future Days」は、効果音となるSEに紛れ、しなやかでパーカッシブさに溢れたアフロビートで進行していく楽曲です。随所に効果音の断片も、通常なら耳障りと感じるところなのに、心地良く、楽曲にスムーズに溶け込み独特の浮遊さを感じるんです。無表情にもピースフルな感覚を憶える唄メロのメロディライン、ラテンタッチのギターのアプローチを交え、軽快な曲調は約9分半にも及ぶ楽曲をだれることなく聴かせてくれます。
2「Spray」は、オルガンの旋律とパーカッションやシンバルが醸し出すサウンドが進行していく楽曲です。サイケデリック/スペース系さを感じさせながらも、3連符のリズムセクションとシンバルの繊細にも大胆なタッチ、徐々にテンポアップしながら、ギターのミステリアスな旋律と呪文を唱えるかのようなメロディラインなど、独特の世界観に溢れ、音と音との混沌さから陶酔さを十分に感じさせてくれる演奏が堪能出来ます。
3「Moonshake」は、ブギービートのクールな楽曲です。テクノ・ポップを先取りしたかのようにしなやかさに、効果音が絡むだけで、反復されるメロディラインとのシンプルさの潔さ良さを強く感じてしまいます。そして、後年、たとえば、イギリスのバンド:Primal Screamが手を出したクラウトロックを基を辿れば、Canに通じるのかと、あらためて素晴らしいクリエイティブを約3分ほどの楽曲に感じてしまいます。
最終曲4「Bel Air」は約19分強にも及ぶ大作です。冒頭部からシンセサイザーの旋律に響き、残響さを醸し出しつつ繰り広げられるパーカッシブさ、ユニークなベースライン、様々な技巧を盛り込んだギターのフレーズなど、アンビエント風のサウンドで進行していきます。4分30秒前後からは、テンポアップし、ラガーロック風味にも感じる新鮮なるユニークなベースラインがリードし、アラビックなギターのフレーズにも、徐々にカタチを変えながら、アシッド系やラウンジ系を感じるサウンドで進行していきます。いったん9分前後にサウンドは落ち着き、小鳥のさえずりのSEはなり続け、9分45秒前後からは朗らかサウンドから徐々にノイジーさを伴うサウンドへと変化し、14分30秒前後にいっそうテンポアップされ、ギターのフレーズが交錯し合うさまは、ミニマルさと不穏さが生み出す浮遊さにまみれたプログレッシブ・ロックそのものへと変貌します。変貌した先には混沌さしかないといわんばかりに音はうずまき、徐々に宇宙の果てへ消えていってしまうかと思いきや、混沌さがリプライズされるかのようにフェードインし再現され、約20分の時間を経て、やっとサウンドの旅は終息します。
アルバム全篇、どの音1つとっても、古さを感じさせず、逆に、現在のポストロックやロックを奏でるミュージシャンやバンドの音楽の元祖と感じずにいられないサウンドが満載の極めてクオリティの高いアルバムです。
[収録曲]
1. Future Days
2. Spray
3. Moonshake
4. Bel Air
クラウトロック、アンビエント、アシッド、サイケデリックが好きな方におすすめです。
また、ポストロックを聴く方には、ぜひ聴いて欲しいサウンドですのでおすすめです。
個人的には、イギリスのパンク・バンド:The Clashの1980年発表の4thアルバム「Sandinista」の特にアルバム後半の楽曲群、The Stone Rosesの1989年の名盤アルバム「The Stone Roses」などを聴いた時の衝動にかられてしまいましたね。1980年代以降、現在の多くのロックバンドに多大な影響を与えているだろう、もしくは、自然と踏襲されているだろう、と納得するだけの音楽の1つの到達点に達したアルバムであると思うため、ぜひ、聴いて頂きたい1枚です。
アルバム「Future Days」のおすすめ曲
※インストルメンタルな楽曲がメインのため、ひかえさせていただきます※
このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。
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