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プログレおすすめ:松山ケンイチ主演映画「ノルウェイの森」サウンドトラック


映画「ノルウェイの森」 – サウンドトラック

第21回目おすすめアルバムは、2010年10月にトラン・アン・ユン脚本・監督が村上春樹原作「ノルウェイの森」の映画化した同サウンドトラックをご紹介します。
松山ケンイチ主演映画「ノルウェイの森」サウンドトラック

映画タイトルでもわかるとおり、イギリスのバンド:ザ・ビートルズが1966年に発表したアルバム「Rubber Soul」の挿入歌「Norwegian Wood (This Bird Has Flown)(邦題:ノルウェイの森)」の印象が極端に強いです。でも「Norwegian Wood (This Bird Has Flown)(邦題:ノルウェイの森)」は主題歌としてエンディングクレジットで流れていて、映画全篇を彩る音楽の構成は、レディオヘッドのギタリスト:Johnny Greenwoodが作曲する音楽をメインにすえ、ドイツのプログレッシブ・ロックバンド:CANの楽曲がところどころに散りばめられてる点です。

Johnny Greenwoodの楽曲は、映画全篇に穏やかで儚げなサウンドスケープを感じさせてくれます。

今回の「プログレおすすめ」のアルバムとして取り上げるきっかけとなったCANの楽曲は3曲がおさめれています(他に本篇では2曲が流れているはず・・・)。

3「Mary, Mary, So Contrary」は、ジョニー・グリーンウッドが所属するバンド:Radioheadで、たとえば楽曲「Trickster」のサイドギターの質感に近く、そこにロングトーンを効かせたギターと物憂げに「Mary」を連呼していきます。刺々しさを感じるロングトーンのフレーズを弾くギターが印象的な12「Don’t Turn The Light On, Leave Me Alone」は、Rolling Stonesの「Monkey Man」のような上昇音階を想起させる楽曲。3と同様に陰鬱な唄メロとともにじわじわと楽曲を盛り上がっていきます。この2曲だけでCANのすべてを知る由は出来ないけれど、1970年代初期のCANの全盛期の演奏が堪能出来ます。

深く愛すること。強く生きること。

原作のストーリーもそうですが、松山ケンイチ、菊地凛子の主演映画にサウンドトラックの各楽曲は、そのキャッチコピーを願わずにはいられない想いが溢れている気がします。今回のレビューを書く際、あらためてDVDで映画を振り返ったのですが、他の映画と異なりカメラのフレームワークに少しずれた印象を感じました。シークエンスも長く、無音を活かしながら1つ1つのシーンがとても長く感じるんです。

原作では1960年代のフォークやジャズの楽曲が背景にあったかと思います。トラン・アン・ユン監督がCANの楽曲を選曲したところの意図がはっきりしませんが、原作以上に「映画」としての独自性へ持っていきたかったのかとも思いました。

カメラのフレームワークにしろ、楽曲にしろ、ある一定の既成観念を持つのではなく、「ノルウェイの森」の原作の世界観を大切にしたい。という監督の想いが伝わってくる感じがしたんです。その中でCANの楽曲が選ばれた意図を映画として楽しむことが良いかもしれません。

[収録曲]

1. もう少し自分のこと、きちんとしたいの ▼
2. 草原、風、雑木林 ▼
3. Mary, Mary, So Contrary ★
4. また会いに来るからね ▼
5. 時の洗礼を受けていないものを読むな ▼
6. レイコ ▼
7. Bring Me Coffee Or Tea ★
8. 直子が死んだ ▼
9. いい子だから黙ってて ▼
10. あてもなく歩き回った ▼
11. クォーター・トーン・ブルーム ▼
12. Don’t Turn The Light On, Leave Me Alone ★
13. 私をとるときは私だけをとってね ▼
14. 激しい幻聴 ▼

上記の楽曲のうち、「▼」がレディオヘッドのギタリスト:ジョニー・グリーンウッドの楽曲、そして、「★」がCANの楽曲です。
なお、映画本篇ではCANの楽曲は他に2曲(「Deadlock」、「She Brings the Rain」)取り上げられています。

CANの各楽曲の収録アルバムは、
1stアルバム「Monster Movie」の収録曲
3. Mary, Mary, So Contrary

2ndアルバム「Soundtracks」の収録曲
12. Don’t Turn The Light On, Leave Me Alone
+ Deadlock
+ She Brings the Rain

3rdアルバム「Tago Mago」の収録曲
7. Bring Me Coffee Or Tea

ちょうど、CANがサイケデリックな音像から個々のメンバーによる環境音楽、民族音楽による多角的な音楽性を発揮していた頃の楽曲が取り上げられているのではないかと思います。

映画「ノルウェイの森」の公開当時には、映画を観ていてもプログレッシブ・ロックの音楽として、クラウトロックとして気づきがなかった方や、この映画「ノルウェイの森」のサウンドトラックの曲を聴き、CANに興味をもった方がいらっしゃったら、ぜひオリジナル・アルバムに手を伸ばされてはいかがでしょうか。

「クラウトロック」について

ウィキペディアによれば、「プログレッシブ・ロック」を細分化したジャンルとのこと。細分化したとはいえ、イギリスのプログレッシブ・ロックが全盛期の同時期に、ドイツの地で実験性が高く、電子楽器の導入や民族的でもあり、ポリシズムな曲展開もある。1970年代の後半のテクノ音楽にも影響を与えたことによれば、「プログレッシブ・ロック」を纏める一つのカテゴリー手法であり、重要なジャンルではないかと思うんです。

CANの他にもTangerine Dream、Ash Ra Tempelなど、素晴らしいバンドが多くあります。

「クラウトロック」を知るきっかけ

のちに「テクノ音楽」に影響を与えた時期のバンドではなく、その後、イギリスのいろいろなアーティストに影響を及ぼしていた。自分自身はそれさえも知らず、影響を受けたアーティストが発表するアルバムで、そのサウンドに興味を持ち、暦を遡り辿ることで「クラウトロック」の存在を知りました。

そう、その先に「プログレッシブ・ロック」という意識づけは持ってなかったんです。

俗にいうベルリン三部作(10thアルバム「Low」、11thアルバム「Heroes」、12thアルバム「Lodger」)を提示した「David Bowie」。
カール・ハイドとリック・スミスの2人組によるテクノ音楽の創造ユニット「Underworld」。
多種多様なジャンルを吸収していくなかで、6thアルバム「XTRMNTR(邦題:エクスターミネーター)」や7thアルバム「Evil Heat」で無機質なテクノ、エレクトロニカを提示した「Primal Scream」。
長いキャリアの中で、常に音楽にプログレッシブに挑む姿勢がみえ、プログレ・フォークも内包しつつ、クラウトロックに接近した11thアルバム「Sonik Kicks」を発表し全英1位を獲得した「Paul Weller」。

上記は自分が「クラウトロック」という存在を知ることとなった主なアーティストを列挙させて頂きました。多くのアーティストのおかげで「クラウトロック」というジャンルに出逢えた。感謝せずにいらないですよね。

映画「ノルウェイの森」サウンドトラックでおすすめ曲

1曲目は3曲目「Mary Mary So Contrary」

ロングトーンを効かせたギターに、ボーカルが後半に「Mary」と連呼していく様が、ギターの音色もあいまって胸を「締め付ける」というよりも「ちくちく突き刺さる」から。

2曲目は12曲目「Don’t Turn The Light On, Leave Me Alone」

ポリリズム溢れるも、陰鬱さからじわじわと沁みてくるサウンドが切なすぎるから。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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