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プログレおすすめ:Kharmina Buranna「Seres Humanos」(2012年ペルー)

公開日: : 最終更新日:2015/12/29 2010年‐2013年, シンフォニック, ペルー, 女性ボーカル


Kharmina Buranna -「Seres Humanos」

第140回目おすすめアルバムは、ペルーの折衷派のプログレッシブ・ロックバンド:Kharmina Burannaが2012年に発表した2ndアルバム「Seres Humanos」をご紹介します。
Kharmina Buranna「Seres Humanos」
Kharmina Burannaは1996年にペルーの首都リマで結成されたバンドです。当アルバムは2008年に発表された1stアルバム「El Arte de Seguir Vivos」に続き、結成当初からメインとなるMauricio Hooker(ボーカル、フレットレス・ベース、アコースティック・ギター)に、Juan Carlos Rodroguez Casanova(エレクトリック・ギター、クラシック・ギター)、Daniel Lopez(ピアノ、ハモンドオルガン、ムーグ・シンセ、デジタル・シンセ、グロッケンシュピール)、Victor Otarola(ドラム、パーカッション)の5人構成に、女性のボーカリスト:Luciana DerteanoとDiego Sue(フレットレス・ベース、12弦ギター)をゲストに迎え、2012年に発表されたバンドの2枚目のアルバムです。

イギリスのプログレッシブ・バンドでJethro TullやGentle Giantsや5大プログレバンドの1つ:King Crimson、オランダに代表されるFocusなどの折衷派に影響を受けたというサウンドは、クラシカルで格調高いシンフォニック系のエッセンスを感じさせてくれます。いっぽうで、1stアルバム「El Arte de Seguir Vivos」よりは抑制された感があるものの、重厚でハードなアプローチもアンサンブルの特徴です。

1996年結成当初には、イギリスのミュージシャン:Jimi HendrixやDeep Purple、アメリカのGrand Funk Raikroadの楽曲をカバーし、1960年代と1970年代の古き良きアメリカとイギリスのブルース・ロックやハード・ロックのアプローチからの影響を魅せながらも、2001年以降、プログレッシブ・ロックなバンドへと転身していきますが、結成当初の音楽アプローチがまったく無くなるというのではなく、現在のサウンド・メイキングに活きているのではないでしょうか。

不思議と南米特有の地特有のラテン・フィーバーはあまり感じられず、繊細でいてクラシカルな格調さにハードなアプローチが融合したサウンドは、聴き応えのあるアルバムと思います。

楽曲について

冒頭曲1「Pasta Mental」は、フレットレス・ベースの一定のシークエンスで幕を上げ、ムーグ・シンセも清涼さもあるパートから、テクニカルなエレクトリック・ギターと、ギターにオブリガードを重ねたりリリカルなフレーズを奏でるピアノ、などのクラシカルで格調高さ溢れるアンサンブルには、ファンタジックさのエッセンスを感じます。特に、5分30秒前後からのフレットレス・ベースにアコースティック・ギターによるパートは数秒間だけでも流麗さが心に留まります。それほどまでに、楽曲の途中に移行するヴィンテージなトーンでエッジを効かせたギターのスリリングなパートも顕著であり、ファンタジックさのある「静」とハードな「動」によるダイナミックな展開が愉しめます。

2「Seres Humanos」は前半部のアコースティカルなパートと、後半部のハードなアプローチのパートに2部される約10分の長尺の楽曲です。前半部では、ムーグが高らかにテーマを奏で、ヴァースでは女性のゲスト・ボーカルによる清涼さを感じさせてくれながらも、どことなく物憂げな旋律をたおやかにも唄うボーカリゼーションのヴァースでも終始奏でられるアコースティック・ギターの一定のシークエンスのリフが印象的です。どことなく、ポーランドの地に代表される東欧のプログレにあるメランコリックさを感じえます。5分30秒前後からはファンキーなギターのリフが奏でられるとともに、より動の比重が高いパートへと移行します。ハードなアプローチの中でも7分30秒前後のギターとシンセがユニゾンするアンサンブルが印象的にも、晴やかな唄メロのメロディラインが印象的なんです。8分50秒前後から、ギターをメインとしシンセも絡み合うテクニカルなパートでは、まるでチェンバー・ロック系のエッセンスを感じさせる変拍子を重ねながらも緻密なアンサンブルとなりクロージングを迎えます。

3「Sublime Muerte」は、冒頭部から1分20秒前後まではクラシカル・ギターのフレーズが醸し出す、まさにクラシカルで格調高さのある、優しさを讃えた「静」のチェンバー・ロック系のエッセンスです。1分20秒前後からは、ギターとピアノをメインとするムーディさ、2分30秒前後からはベースやドラムも加わったアンサンブルによる優雅さ、など、他楽曲とは異なり、徐々にダイナミックな展開をする楽曲が、かえって印象的です。

4「10:27」は、前曲3「Sublime Muerte」の前半部を踏襲したイメージのままに幕をあげ、徐々に低音を効かせたピアノの独奏が印象的な冒頭部をもち、2分前後から本楽曲のメインパートと思わしきエレガントにもポップ・フィーリングもあるギターのフレーズを交えた動のパートは、全篇インストルメンタルで心地良く聴かせてくれます。現代でいえば、スウェーデンのMoon Safariの楽曲のもつリズミカルにもファンタジックさも溢れたアンサンブルの一端を想起させてくれます。

5「Odisea」は、煌びやかにも緩急を分けたピアノ、ハードなアプローチのギター、物憂げでアンニュイなリードのシンセなどのアンサンブルが1つのテーマを形変え繰り返し様相に退廃感や喪失感を醸し出すサウンドスケープを感じさせてくれます。それほど切迫さはないまでも、5大プログレバンドの1つ:King Crimsonの楽曲「Starless」(アルバム「Red」収録)の中間部から後半部にかけてのパートが一瞬でも脳裏を掠めたほどです。聴き手によって異なるサウンドスケープを感じさせてくれるにちがいありません。

最終曲6「Lenguas de Trapo」は、フレット・ベースによるチェンバー・ロック調にも独奏を聴かせてくれる冒頭部が印象的な楽曲です。奇をてらわず、テクニカルでもなくただただゆったりと弾かれるフレーズは、夕闇に消え入りそうな穏やかな情景をサウンドスケープさせてくれます。その冒頭部から2分40秒前後に間髪も入れず違和感なくエレクトリック・ギター、ピアノ、シンバルを中心としたアンサンブルで動のパートへと移行します。変拍子で展開されるアンサンブルにメインテーマを奏でるムーグ・シンセのパート、浮遊さのあるシンセに導かれ、冒頭部のベースのパートへと立ち戻ったようなギターのアルペジオをアンサンブルにメインテーマを奏でるベース・ギターのパートを続き、6分50秒前後からは女性ボーカルによるヴァースが聴けます。エレクトリック・ギターやオルガンの音色が飛び交うアンサンブルにも、2「Seres Humanos」と同様に清涼さにたおやかなボーカリゼーションのため、大らかでダイナミックにヴァースは展開していきます。11分40秒前後にデジタル・シンセの音が飛び交うパートとともに、リズミカルなアンサンブルでこれまでになく力強いボーカリゼーションのヴァースを聴かせ、13分30秒前後からは、より躍動的なシンセとギターのリフによるアプローチも交えながら、まるでイタリア・プログレを彷彿とさせるエッセンスを感じさせつつ、クロージングまで一気に聴かせてくれます。

フレットベースによるフレーズが印象的にも楽曲を彩りながらも、チェンバー・ロックにみるクラシカルで格調高い「静」とハードなアプローチによる「動」を、これまでになダイナミックに聴かせてくれる躍動的なアルバムです。

[収録曲]

1. Pasta Mental
2. Seres Humanos
3. Sublime Muerte
4. 10:27
5. Odisea
6. Lenguas de Trapo

イギリスのプログレッシブ・バンドでJethro TullやGentle Giantsや5大プログレバンドの1つ:King Crimson、オランダに代表されるFocusなどの折衷派に影響を受けたというサウンドを聴いてきた方におすすめです。

特に、当アルバムでは、Gentle Giantsのように緻密な展開、独特のポップセンスも感じえるギター、ピアノなどの音色やフレーズによるクリエイティブにMarillionなどに代表されるポンプ・ロック系、動のパートのダイナミックな構成に面影を感じずにいられないイタリア・プログレなど、さまざまなアプローチを魅せてくれるため、どれか1つのキーワードに固執することなく、耳を傾けて欲しいアルバムです。

アルバム「Seres Humanos」のおすすめ曲

1曲目は、2曲目の「Seres Humanos」
女性ボーカルによる物憂げな唄メロのメロディラインをもつヴァースとともに、楽曲後半の変拍子を重ねながらチェンバー・ロック的な緻密な展開、キーボードによるホルンの音色も含め、当アルバムの楽曲で最もさまざまな音色やサウンドが交錯しあう仕上げりに、バンドの代表曲ならこの曲!と感じたからです。

2曲目は、3曲目の「Sublime Muerte」
バンドが持つ静と動のパートを持つ楽曲ですが、静から動へ移行するパートの展開には、楽曲冒頭部からの構築美ともいうべき構成を感じるんです。徐々に盛り上がりを魅せていく展開が素敵です。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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