プログレおすすめ:The Gourishankar「2nd Hands」(2007年ロシア)
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最終更新日:2015/12/02
2000年代, エクレクティック[折衷派], ロシア The Gourishankar
The Gourishankar – 「2nd Hands」
第13回目おすすめアルバムは、ロシアのThe Gourishankarが2007年に発表した2ndアルバム「2nd Hands」をご紹介します。
男性ボーカルに、キーボード、ギター、ドラムを含めた4人編成のバンドです。また、ヴァイオリン、サックス、フルートなどの奏者がゲスト参加し、曲によって彩りを与えています。
ギターやキーボードはテクニカルでいて、サウンドは所謂プログレメタルほどではなくとも硬質さがあり、1フレーズというよりも1つのテーマ(モチーフ)を変拍子、転調、曲調を多用し、さらにテンポに緩急をつけて繰り返していきます。バラエティーに富む演奏スタイルの引出しの多さにただただ驚かされます。そして、全体的に陰鬱な曲調ではなく、明朗な印象すら受けるんです。1970年代の古き良きプログレッシブ・ロックの名残はほぼ感じえないが、プログレッシブな演奏スキルのエッセンスをエレクトリックを多用したシンフォニックなバンドととらえるべきでしょうか。エレクトリックな効果にルーピングする演奏スタイルも印象的です。
楽曲について
SE(男性の声)に導かれた冒頭曲1「Moon7」はSE(男性の声)はエッジの効いたギター、シンセ、ヴァイオリンによるインスト曲ですが、前述のようなバンドの演奏の特徴が大きく表現されている楽曲ではないかと思われます。
曲展開のアイディアが豊富に表現されつつも、2「Endless Drama」、3「Queer Forest」、5「The Inexpressible Chagrin」、7「…End」、8「Marvelous Choice」などの唄メロ入りの楽曲を聴けば、インストルメンタルに比重を置きながらも唄メロを持つ楽曲にも力を入れていることが分かります。また、メロディアスな印象の楽曲に対し、ボーカルはそれほどハイトーンな印象はありませんが、伸びやかのある声質でいて、ボーカリゼーションにはプログレメタルやポストロックに通ずる耽美的な佇まいも感じます。
※本当に豊富なアイディアが楽曲ごとに盛り込まれており、楽曲ごとにこまかな解説を行い難く、当ページの最後にあるアルバム「2nd Hands」のおすすめ曲で、2曲ほど解説させていただきます。
鍵盤ソロによる5「Taste A Cake」を除き、尺6分以上の楽曲でアルバムは構成されています。特に、10分を超える冒頭曲1「Moon7」、6「Syx」、最終曲8「Marvelous Choice」の3曲は、それぞれの曲のベースとなるアプローチは異なっている印象がありますが、アルバムを聴き返すたびに新たな発見をするぐらいに飽きがこない楽曲で構成されたアルバムといえます。
[収録曲]
1. Moon7
2. Endless Drama
3. Queer Forest
4. Taste A Cake
5. The Inexpressible Chagrin
6. Syx
7. …End
8. Marvelous Choice
変拍子、転調、曲調の豊富さを好まれる方や、アメリカのプログレッシブ・メタルなバンド:Dream Theaterなどのプログレメタルを好きな方にはぜひおすすめです。
現代的なプログレッシブ・ロック
当初、このアルバムを最初から最後まで一聴した時は、アメリカのプログレッシブ・ロックバンド:Rushが1984年に発表したアルバム「Grace Under Pressure」を想起しました。シンセサイザーをテクニカルに多用し複雑なフレーズと変拍子を繰り返す。特に冒頭1「Distant early warning(邦題:彼方なる叡智が教えるもの)」にも通ずるものがあるのかなと思ったぐらいです。しかしながら、当アルバム「2nd Hands」を聴けば聴くほど、変拍子、転調、曲調の多用さはとても新鮮で、The Gourishankarの演奏の特徴を知れば、全然異なるバンドではないかと思うようになりました。
1970年代以降、プログレの派生ジャンルが数多く産まれているようですが、プログレのもつ「先進性」のみが継承され、変拍子や転調が薄れていく派生ジャンルもあります。1970年代の古き良きプログレのもつ「変拍子、転調」をシンセを中心としエレクトリックに曲展開で散りばめているため、埋もれがちだけれど「現代的」とも云うべきプログレッシブ・ロックではないかと思います。
アルバム「2nd Hands」のおすすめ曲
1曲目は7曲目の「…End」
冒頭の2分前後までの独特なテーマからは印象を分かつように、2分前後からロマンシズム溢れる唄メロが流れてきます。ただし、2分前後以降もこのバンドの特徴である曲展開のバラエティの良さが強く表現されており、一筋縄ではいかない聴きごたえがあるんです。特に4分前後のテーマはあっさりと終わってしまうことがもったいないぐらい素敵なのに、もっと聴きたいと感じてしまう。
そして、メロディアスな楽曲を支えるベースの音率が印象的しすぎなんです。
2曲目はラスト8曲目の「Marvelous Choice」
当アルバムで最もリリカルな唄メロを感じるかもしれない。それでも長尺約18分の中でアイディアが豊富に溢れており、7曲目の「…End」と同様に聴き入ってしまうから。
6分50分前後の数少ないギターフレーズにも1984年当時のRushっぽさを感じてしまうけれど、それも約18分の中では束の間の時間に過ぎない。
このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。
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