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プログレおすすめ:Gazpacho「Molok」(2015年ノルウェー)

公開日: : 最終更新日:2015/12/29 2015年, アート・ロック, ヴァイオリン, ノルウェー


Gazpacho -「Molok」

第183回目おすすめアルバムは、ノルウェーのクロスオーヴァー系のプログレッシブ・ロックバンド:Gazpachoが2015年10月23日に発表した9thアルバム「Molok」をご紹介します。
Gazpacho「Molok」
1996年に、Jan Henrik Ohme(ボーカル)、Thomas Alexander Andersen(キーボード)、Jon Arne Vilbo(ギター)の3名を中心に結成され、当アルバムでは、2014年発表の前作アルバム「Demon」と同様に、Mikael Krimer(ヴァイオリン、マンドリン)、Kristian “Fido” Torp(ベース)、Lars Erik Asp(ドラム、パーカッション)の6人に、アコーディオン奏者やクワイアがゲストで参加しています。

ボーカリスト:Jan Henrik Ohmeの声質には、イギリスのロックバンド:Queenの元ボーカル:Freddie Mercuryの声質やボーカリゼーションを思い浮かべてしまったり、どことなくイギリスのRoxy Musicの前期をより物憂げに、退廃感を掘り下げたロマンチシズム溢れるサウンドを感じていました。

当アルバムでは、前作アルバムでの静寂さにある幽玄さのあるアンサンブルのアプローチを踏襲しつつも、さらに、音の密度をより少なくし、無機質な電子音を際立たせ、アトモスフェリックさと音と音との隙間に息を呑むようなメランコリックさ
で聴かせてくれるアルバムです。

楽曲について

パーカッシブに轟かし幕を上げる冒頭曲1「Park Bench」は、そのままヴァースは続くと思いきや、第2ヴァースでGazpacho特有の電子音やヴァイオリンを交えたアンサンブルへと展開していきます。変わらぬJan Henrik Ohmeによるボーカリゼーションがありながらも、4分10秒前後からのクワイアをアクセントにしつつ、5分10秒前後からのカラフルなサウンド・メイキングといい、クロージング直前のフレーズがひときわ不気味に感じさせるぐらいに、仄かにもアトモスフェリックさを感じさせてくれながら、当楽曲ではよりドリーミィーな感覚で漂う小舟の上でまどろむような軽やかさをサウンドスケープで魅せてくれます。

続く2「The Master’s Voice」や4「Know Your Time」の唄メロのメロディライン、特に後者の後半部のギターやヴァイオリンを交えた哀愁さや退廃さも溢れたアンサンブルなど、従来のGazpachoらしさに落ち着いた心地にさせてくれながらも、アルバム中盤では、アコーディオンやピアノによるタンゴが乱舞するか如く従来にない情熱さが同居する3「Bela Kiss」、女性コーラスもまじえ、どことなく朗らかさも感じさせるメロディラインの5「Choir of Ancestors」、ピアノがリズミカルにリードする6「ABC」など、シンセによる電子音の比重を上げたり、明朗さのある唄メロの楽曲を織りまぜ、バラエティ豊かに聴かせてくれます。

そして、アトモスフェリックさの比重が高い後半3曲の流れには、ただただ身を委ねて聴き入ってしまいます。
ハミングとエレクトリックさがアンビエント風に重ねられていく7「Algorithm」から8「Alarm」、そして、当アルバム全篇に醸し出す無機質さが集大成しているかのように幽玄さとエレクトリックさで綴られる約9分30秒にも及ぶ最終曲9「Molok Rising」でアルバムはクロージングします。

アルバム全篇、前作アルバム「Demon」の楽曲「The Wizard Of Altai Mountains」と最終曲「Death Room」の前半部のサウンドを延長した印象のアルバムです。従来のGazpachoのファンの方にとっては、楽器の演奏力をハードさやアコースティカルさと云う比重におくのではない、シンセによる電子音や音と音の隙間に息を呑むようなメランコリックさを感じさせるようなリズムの無機質さが印象的ではないでしょうか。個人的には、1960年代にサイケデリック・ロックと同時に隆盛したアート・ロックのように芸術性高いアルバムです。

[収録曲]

1. Park Bench
2. The Master’s Voice
3. Bela Kiss
4. Know Your Time
5. Choir of Ancestors
6. ABC
7. Algorithm
8. Alarm
9. Molok Rising

物憂げさや退廃感が溢れたメランコリックさある唄メロのメロディラインが好きな方におすすめです。

また、当アルバムでGazpachoに興味を持った方は、当アルバム前半部から中盤にかけての楽曲にも垣間見え、アート感覚でも無機質さとアコースティカルさがある2015年発表の8thアルバム「Demon」がまずおすすめです。さらに2005年発表の3rdアルバム「Firevbird」、2007年発表の4thアルバム「Night」、2009年発表の5thアルバム「Tick Tock」、2010年発表の「Missa Atropos」、2012年発表の7thアルバム「March of Ghosts」など、遡ってアルバムを聴くことをおすすめします。

アルバム「Molok」のおすすめ曲

1曲目は1曲目の「Park Bench」
前作アルバム「Demon」から違和感なく聴ける冒頭部、そして、さまざまな音の断片を交えながらも、Gazpachoらしさが充満した楽曲です。1分5秒以降の第2ヴァースのアンサンブルを最初に耳にした時、そのアンサンブルに違和感を憶えながら、聴き終える頃には、プログレッシブ・ロックとして繊細にも芸術性のある楽曲と感じさせてくれます。

2曲目は4曲目の「Know Your Time」
2012年発表の7thアルバム「March of Ghosts」以前も脳裏に浮かべる後半部のアンサンブルも聴けながら、前作アルバム「Demon」の世界観を発展させてメランコリックさとアトモスフェリックさの前半部が素敵に繋がった楽曲だからです。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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