プログレおすすめ:Porcupine Tree「Nil Recurring」(2007年イギリス)
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最終更新日:2016/04/17
2000年代, イギリス, ヴァイオリン, プログレッシブ・メタル Colin Edwin, Porcupine Tree, Robert Fripp, Steven Wilson
Porcupine Tree -「Nil Recurring」
第117回目おすすめアルバムは、イギリスのプログレッシブ・ロックバンド:Porcupine Treeが2007年に発表したEP「Nil Recurring」をご紹介します。
Porcupine Treeは、現代のプログレッシブ・ロックのシーンでも重要な存在の1人であるSteve Willson(ボーカル、ギター、ピアノ、キーボード)が率いるバンドで、Colin Edwin(ベースギター)、Gavin Harrison(ドラム、パーカッション)に、イギリスで1970年代後半から1980年代初頭にかけて活躍したJapanのキーボード奏者:Richard Barbieriの4人構成です。
バンド初期では、サイケデリック/スペース系のエッセンスが強かったものの、プログレッシブ・ロックとしては、ヘビィ系、サイケデリック/スペース系、オルタナティブ系のエッセンスがあるのが特徴です。ポスト・ロック系のように、アンビエントさのあるパートや、メタリックな質感のパートを1つの楽曲で展開する構成力には、俗に、5大プログレバンドの1つ:Pink Floydを陰鬱にした「未来形のPink Floyd」と評されることが多いようです。
アコースティック・ギターも含め繊細で柔らかみ感じさせてくる静のパートと、ニュートラルで徹底されたメタリックの冷たさに代表される動のパートに、Steve Willsonの深みがありつつも憂いを帯びたボーカリゼーションの繊細さには、巷に溢れるプログレッシブ・メタル系のロック・バンドの中でも群を抜くクオリティがあります。Toolと同様にPorcupine Treeのイメージに近しいバンドとして引き合いにだされることが多いバンドでもあります。
個人的には、アンビエントさ醸し出すサウンドには、Japanの「Swing」(1980年発表のアルバム「Gentlemen Take Polaroids(邦題:孤独な影)」収録)や「Sons of Pioneers」、「Ghosts」(1981年発表のアルバム「Tin Drum(邦題:錻力の太鼓)」収録)といった楽曲で魅せたRichard Barbieriの抽象的でいて耽美さもあるキーボードのサウンドからの延長上も感じずにはいれません。
当EPには同2007年発表の9thアルバム「Fear of a Blank Planet」に収録されることのなかったアウトテイクとアルバム・タイトル曲のエディット・バージョンが収録されていますが、
アウトテイクと云う言葉を忘れさせてくれるクオリティの高い楽曲ばかりです。
また、海外ではコンサート会場や通販での販売に留められ、日本のみ市場販売が許可された1枚として、King CrimsonのRobert Frippがエレキ・ギターで参加するEPタイトル楽曲といい、抑えておくべき重要な1枚です。
楽曲について
冒頭曲「Nil Recurring」は約6分のインストルメンタル楽曲で、いかにも陰鬱さや不穏さを醸し出すサイケデリック/スペース系のサウンドの比重が高い前半部から、メタリックの比重が高いギターによる後半部に驚きを隠せない楽曲です。当楽曲には、Robert Frippがリード・ギターで参加していますが、そのギター・フレーズとともに、当時期にあたるメタリック・クリムゾンを脳裏に掠めてしまったとしても、狂気に乱舞するかのようなヘビィなギターのアンサンブルにはただただ圧倒されます。
心に突き刺さり絶句してしまうほどに、アウトテイクという言葉は相応しくないと感じるはずです。
2「Normal」は楽曲「Sentimental」(アルバム「「Fear of a Blank Planet」収録)の原型であろう楽曲で、儚げで刹那さあるヴァースの一部はそのままに「素」を感じさせてくれる楽曲です。楽曲「Sentimental」が空間処理された陰鬱なPink Floyd的なアンビエントさで包括した構成力を感じさせてくれる一方で、当楽曲は、メタリックさだけではなく、アメリカのアンダーグラウンド系のガレージさも感じえるギターのアンサンブルに、ざらざらとした叙情さを感じさせてくれるんです。そのアンサンブルが楽曲「Sentimental」よりも唄メロのメロディラインの持つ儚げさを一層際立たせていると思います。
3「Cheating The Polygraph」は、5分前後から数秒のサイケデリック/スペース系のエッセンスをアクセントにしつつも、ギターのストロークの一閃が印象的にも音数の少ない静のパートと、呪文のようになぞるヴァースと畳み掛ける一定のギターのフレーズの動のパートが印象的な楽曲です。
4「What Happens Now」はポリリズムなパーカッシブさにエレクトロなサウンドが交錯したアンサンブルに、楽曲中盤からギターのカッティングのパートが加わり、メタリックなギターのフレーズやヴァイオリンが充満し、そして、断末魔のように後味の悪いシークエンスでクロージングします。強いて言えば、アルバム「Fear Of A Blank Planet」からはかけ離れ、Porcupine Treeの次なる世界観ともいうべきものでしょか。
そして、当EPの最終曲5「Fear Of A Blank Planet」は、アルバム「Fear Of A Blank Planet」のタイトル曲にして冒頭を飾る楽曲のエディットであることは分かっていても、このドライブ感に腫れてしまいます。
[収録曲]
1. Nil Recurring
2. Normal
3. Cheating The Polygraph
4. What Happens Now
5. Fear Of A Blank Planet (Edit)
どの楽曲自体もアルバム「Fear of a Blank Planet」の世界観を彷彿とさせる陰鬱さを感じますので、本篇の世界観が気に入った方におすすめです。
また、いままでPorcupine Treeを聴いたことがない方であれば、たとえば、陰鬱さのあるPink Floydとメタル・クリムゾンともいうべきKing Crimsonを同時に聴くことに興味があればおすすめです。
「繊細さ」、「メタリック」、「アンビエント」というキーワードに紐付き、メタル系に括るとしても異質のクオリティの高さに耳を傾けてみてはいかがでしょか。King CrimsonのRobert Frippがリード・ギターで参加した楽曲を聴くというきっかけでも良いと思います。
アルバム「Nil Recurring」のおすすめ曲
1曲目は、2曲目「Normal」
アルバム「Fear Of A Blank Planet」の楽曲「Normal」を聴いているからこそ、冒頭部から溢れるギターのフレーズに心を掻き毟らせるアンサンブルに、いつも心が掻き毟られるかの如く陥るようなサウンドスケープを感じるからです。
2曲目は、冒頭曲「Nil Recurring」
アルバム「Fear Of A Blank Planet」の冒頭を飾っていたら、どうアルバムの顔は変わっていただろうか、と感じにいられないぐらいに、切迫さよりも狂気さに圧倒されてしまうからです。
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