プログレおすすめ:Riverside「Love, Fear And The Time Machine」(2015年ポーランド)
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最終更新日:2015/12/03
2015年, プログレッシブ・メタル, ポーランド riverside
Riverside -「Love, Fear And The Time Machine」
第164回目おすすめアルバムは、ポーランドのプログレッシブ・メタル系のバンド:Riversideが2015年9月4日に発表した6thアルバム「Love, Fear And The Time Machine」をご紹介します。
Riversideは、全曲作詞を担うMariusz Duda(ボーカル、ベース、アコースティック・ギター、ウクレレ)に、Piotr Grudzinski(ギター)、Piotr Kozieradzki(ドラム)、Michal Lapaj(キーボード、ハモンド・オルガン)による4人編成のバンドです。
前作5thアルバム「Shrine of New Generation Slaves」以来2年振りとなる当アルバムを一聴した時に感じたのは、プログレ5大バンド:Pink Floydのサウンドにある浮遊さ、アメリカのプログレッシブ・メタル系のバンド:Dream Theaterのメタリックな質感、イギリスのPorcupine Treeにみる薄暗さを彷彿させるサウンドから、メタリックさが薄まった印象でした。というよりも、前々作アルバム以上に、オルガンなどヴィンテージなサウンドも交え、東欧のバンドらしさあるメロディラインを残しつつも、
過去の楽曲に見受けられたコラージュさのあるエフェクト感や起伏のあるメタリックさよりもメロディアスな唄メロとインストルメンタルなパートが際立つアルバムと思いました。
楽曲について
冒頭曲「Lost (Why Should I Be Frightened By a Hat?)」は、オルガンが鳴り響きわたり、目覚めが来たかのようにヴァースのメロディラインが綴られるさまが印象的な楽曲です。東欧のバンドらしさ溢れるメロディラインやハードなパートさえアクセントに、雄大なスケールをサウンドスケープさせてくれるし、特に冒頭部から終始鳴り響くオルガンとヴァースのメロディラインに、アルバム・ジャケットを彷彿とさせるおぼろげさを感じさせてくれる仄かにミステリアスさも感じました。
2「Under the Pillow」は、2ヴァース目からのオルガンの音色やミステリアスささえ感じるギターのリフなどが印象的にも、個人的にイギリスの1990年代を代表するバンド:Oasisを彷彿とさせる唄メロのメロディラインが脳裏を捉えて離れません。3分55秒前後からのつぼを抑えたメロディアスなギター・ソロ、5分10秒前後のリズムチェンジとともにリフレインされる哀愁を帯びたフレーズなど、聴きどころが多い楽曲です。
3「#Addicted」は、ベースラインがリードする楽曲で、アンサンブルにエッジの効いたギターのリフが聴けても、ボーカルの声質も合い間って軽快なサウンドに心地良さがあります。4分前後からクロージングまでのアコースティック・ギターの一定のシークエンスと鳴り響くシンセの音を遮るかのように開始する次曲4「Caterpillar and the Barbed Wire」もまた、ベースラインがリードする印象的な楽曲です。ゴリゴリとした質感のベースラインに、呼応するかのようにリフを刻むギターとのアンサンブル、アコースティック・ギターのストロークによるアンサンブルも交えながら、5分前後からのギター・ソロとともに展開される哀愁さあるパートには、等しく東欧のプログレッシブ・バンドが持つクリエイテビティを強く感じるとともに、従来のRiversideらしさ溢れるメロディアスさに聴き入ってしまいます。
ベースとギターがユニゾンでオリエンタルなリフが印象的に幕を上げる5「Saturate Me」は、従来のRiversideのもつメタリックさや、浮遊さにエフェクト感あるサウンドが聴ける楽曲です。ただ、従来の薄暗さよりも唄メロのメロディアスさに比重があると感じたのは自分だけでしょうか。いずれにしても浮遊さあるプログレッシブな展開には当アルバムの楽曲で、よく引き合いに出されるPorcupine Treeの薄暗さにメロディアスな一面を想起させてくれます。
6「Afloat」もまた前曲5「Saturate Me」や楽曲「The Depth Of Self-Delusion」(前作5thアルバム「Shrine of New Generation Slaves」収録)にアコースティカルな薄暗さを彷彿とさせる楽曲です。さらに1分前後からクロージングまで鳴り響くオルガンの音色は冒頭曲「Lost」で聴かれた印象とは異なる印象をもたせ、たとえば、ノルウェーのプログレッシブ・バンド:Gazpachoの幽玄さや物憂げで退廃感を想起もさせてくれます。
7「Discard Your Fear」はアンニュイでミステリアスなヴァースの唄メロのメロディラインが印象的な楽曲です。ヴァースごとにベースとギターがそれぞれテクニカルなフレーズをリードしあうのも印象的に、メタリックな質感が少ないアンサンブルには、やはり、Gazpachoを彷彿とさせるサウンド・メイキングを感じずに入られなくなります。そして、サビ部の解放的なメロディアスさとトレモロを効かせたギターを交えたメタリックなブレイクもアクセントに、5分40秒前後からクロージングまでのRiversideらしさも感じ素敵な仕上がりですね。
8「Towards the Blue Horizon」は、アコースティック・ギターの軽快なフレーズで幕を上げ、2分50秒前後までは当アルバム中でもひとときの清涼さを感じさせてくれる第1パート、2分50秒以降テクニカルなギターのリフとともにメタリックな世界観を創出するインストルメンタルな第2パート、5分50秒前後からの第1パートに薄暗さを纏ったメロディ感の第3パート、7分1秒前後からの第2パートをリフレインする第4パートと、大きく4つのパートで、静と動を交互に行き交う世界観が印象的です。
9「Time Travelers」は、8「Towards the Blue Horizon」同様にアコースティック・ギターをメインとしたアンサンブルではじまりながらも、唄メロのメロディラインを際立たせるかのように弾かれるギターのフレーズが印象的な楽曲です。やはり鳴り響くオルガンとともに、哀愁溢れた唄メロのメロディラインは、5「Saturate Me」と同様な心地にさせてくれますね。
最終曲10「Found (The Unexpected Flaw of Searching)」はディレイを効かせたクリーントーンのギターのフレーズに導かれはじまり、サビ部の唄メロのメロディラインに、イギリスのプログレ5大バンドの1つ:Emerson, Lake & Palmerの名曲「Lucky Man」の一節を想起させてくれながらも、冒頭曲「Lost」と同様におぼろげなサウンドスケープを魅せてくれながら、アルバムは穏やかにクロージングを迎えます。
アルバムを聴き終えると、メタリックさよりもオルガンの音色の印象も濃いことや、唄メロのメロディアスさを際立たせる(もしくはリードする)ギターやベースのアンサンブルが印象的なアルバムと思いました。そのサウンド感は、アルバム・ジャケットやアルバム・タイトルの世界観を表現するために着手したサウンド・コンセプトであるかのように思えてなりません。
[収録曲]
1. Lost (Why Should I Be Frightened By a Hat?)
2. Under the Pillow
3. #Addicted
4. Caterpillar and the Barbed Wire
5. Saturate Me
6. Afloat
7. Discard Your Fear
8. Towards the Blue Horizon
9. Time Travelers
10. Found (The Unexpected Flaw of Searching)
同国ポーランドのBelieve、Collage、Lunatic Soulなどに代表される東欧らしさの翳りもあるメロディアスさや、引き合いに出されることが多いPorcupine Treeが好きな方におすすめです。
当アルバムを聴き、Riversideを好きになった方は、それほどオルガンの音色の印象が低い前作アルバム「Shrine of New Generation Slaves」もおすすめです。本来Riversideが持つ唄メロやインストルメンタルのメロディアスさは健在ですので、その観点であれば、メタリックやエフェクト感もある過去のアルバムすべてがおすすめです!
アルバム「Love, Fear And The Time Machine」のおすすめ曲
1曲目は、9曲目の「Time Travelers」
当アルバムのサウンド・メイキングを代表するかのように、オルガンに、メロディアスさを際立たせるアコースティカルなアンサンブルなどが印象的だからです。
2曲目は、5曲目の「Saturate Me」
ミステリアルさ、テクニカルさ、メタリックさ、薄暗さなど、起伏あるプログレッシブな展開が愉しめるからです。
このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。
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