プログレッシブ・ロックのおすすめアルバム、楽曲、関連話など

   

プログレおすすめ:YES「Time And A Word(邦題:時間と言葉)」(1970年イギリス)


YES -「Time And A Word」

第249回目おすすめアルバムは、イギリスのプログレッシブ・ロックバンド:YESが1970年に発表した2ndアルバム「Time And A Word」をご紹介します。
YES「Time And A Word」

オーケストラの導入アルバム

後年、Yesは、キーボード奏者不在のもと、2001年発表のアルバム「Magnification」でオーケストラとの共演によるアルバムを再度制作します。

・・・そこには、変拍子やリズムチェンジを踏まえたテクニカルさが溢れている・・・

・・・そこには、Chris Squire溢れるブリブリしたベースにジャズ系のエッセンス感じるリズムセクションが薄れ感じてしまう・・・

YESの2枚目にあたる1970年発表のアルバム「Time And A Word(邦題:時間と言葉)」には、まだプログレ黎明期以前ですが、独特のリズムセクションと、若さ溢れる野心的な進歩性を感じずにいられないのです。

同名1stアルバム「Yes(イエス・ファースト・アルバム」から引き続き、Jon Anderson(ボーカル)、Chris Squire(ベース)、Bill Bruford(ドラム)、Tony Kaye(キーボード、オルガン)、Peter Banks(ギター)の5人のメンバーで制作されていますが、たとえば、Deep Purpleが1969年発表したライブ盤「Concerto for Group and Orchestra(邦題:ディープ・パープル・アンド・ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラ)」など、当時のアートロック指向のミュージシャンと同様に、オーケストラを導入したアルバムへと仕上げています。

1stアルバムで魅せたサイケデリックさあるアートロック系のエッセンスに、ダイナミックなアンサンブルを追求しようとした音楽性は、Yesらしさ溢れるコーラスワークもまじえ、

オーケストラとの共演によるシンフォニックなアンサンブルが聴けるアルバムなのです。

楽曲について

冒頭曲1「No Opportunity Necessary, No Experience Needed」は、アメリカのフォーク・シンガー:Richie Havensの楽曲のカバーです。原曲でのフォーク・ギターによる激しきカッティングによるドラスティックなサウンドは、導入されたオーケストラと、Tony Kayeのオルガン、Chris Squiareのベースがメインによるアンサンブルで、同様にスリリングで躍動さをもって聴かせてくれます。冒頭部のオーケストラによる旋律の鮮やかさや中間部の1958年のアメリカの西部劇映画「大いなる西部(原題: The Big Country)」のテーマなども印象深いのですが、特に、Chris Squiareのブリブリしたベースの高速フレーズに、原曲でのフォーク・ギターの印象にも負けず劣らずな感覚にもなります。何も知らずに聴けば、YESのオリジナル楽曲とも感じてしまいそうです。

ウッドストックのオープニングを飾った原曲に対するYESならではのリスペクトを感じずにいられません。

2「Then」は、オーケストラ、Tony Kayeのオルガン、Chris SquiareとBill Brufordのリズムセクションが印象的にも静と動のメリハリが聞いた楽曲です。動のリズムセクションには、1「No Opportunity Necessary, No Experience Needed」とは異なり、第1ヴァースと第2ヴァースで微妙なリズムチェンジを効かせていて、1stアルバム以上の進化を感じずにいられません。ただ、それも、2分30秒前後のTony KayeのオルガンとPeter Banksのギター・ソロが聴けるのですが、まずはChris Squiareのベースが入るところに、YESらしさがあり、ニンマリしてしまいます。4分前後からのギターがSteve Howeに代わったYES黄金期でも聴けるスティール・ギターによるフレーズを含む静のパートを含め、よりプログレッシブ・ロックな思考を感じずにいられない素敵な仕上がりと思います。

3「Everydays」は、アメリカのバンド:Buffalo Springfieldが1967年に発表した佳曲「Everyday」のカバー楽曲です。Buffalo Springfieldの原曲の持つギターのフィードバックによるサイケデリックさは薄れ、ジャズ系のエッセンスを活かしたリズムセクションやコーラスワークでのスキャットなど、Yesらしさが溢れています。原曲よりも尺が2倍近い長さの楽曲には、2分10秒前後から4分30秒前後までのパートに、Peter Banksによるギター・ソロがドラスティックに盛り込まれた動のパートが、原曲の持つ静のパートを冒頭部とクロージングを挟みこんで、ドラマチックにもメリハリを効かせてます。

4「Sweet Dreams」は、Yesらしさ溢れるポップさやコーラスワークが印象的な楽曲です。つい口ずさみたくなるようなフレーズのサビ部や、オルガン、ギター、リズムセクションによるアンサンブルのフックなど、忘れてはならない香しき音に満ち溢れてる気がしてなりません。

5「The Prophet」は、Tony Kayeのオルガンの旋律で幕を上げ、ギターとのユニゾンによるリフを経て、リズムセクションとのユニゾンによるアンサンブル、2分30秒前後から3分10秒までのヴァースのアンサンブルまでは、オルガンが印象的にもアンサンブルを占め、3分10秒前後からは、楽曲をより盛り上げるか如く、オーケストラが冴える展開を魅せてくれます。4分10秒前後からのギターのカッティングが加われば、もう各楽器の奏でるフレーズは、当アルバム中でも混沌寸前のアンバランスさに満ち溢れています。

6「Clear Days」は、オーケストラとピアノを活かしたバラード調の2分弱の小曲です。ロックの楽曲にオーケストラ導入とあれば、同国イギリスのGentle Giantsの名曲「Funny Ways」でのチェロとヴァイオリンによる感覚を脳裏に思い浮かべてしまいますが、YESにはよりメロウであたたかな優しさを感じずにいられません。クロージング直前のチェロの旋律が楽曲を盛り上げるさまは、ライブで綴られるインプレゼーションを聴きたいと想いを馳せてしまいます。

7「Astral Traveller」は、当アルバム中でも、リフやソロなど、ギターの印象強い楽曲です。2分前後から3分前後のオルガン、ギター、ベースによる音階をずらした掛け合いのアンサンブル、3分20秒前後のギター・ソロ、4分前後のギギターとベースの高速ユニゾンなど、YES黄金期のギタリスト:Steve Howeにはない、Peter Banksの土壇場と云える映えるプレイを堪能出来ます。

そして、アルバムのタイトル楽曲で最終曲8「Time And A Word」は、アコースティック・ギターのストロークをメインにはじまるヴァース、そのサビ部のメロディラインがあまりにも印象的な楽曲です。

・・・There’s a time and the time is now and it’s right for me.・・・

・・・It’s right for me, and the time is now.・・・

・・・There’s a word and the word is love and it’s right for me.・・・

・・・It’s right for me and the word is love.・・・

3分前後から加わるオーケストラ、そして、オルガンの旋律がこのサビ部のメロディラインを際立たせて、とても刹那く心へ響いてくるんです。以降のYesの楽曲に溢れるクロージング的に相応しいメロディラインのプロトタイプとも云えるのではないでしょうか。

そして、今、現在の時間を大切にしなくちゃ、いけない。とあらためて考えさせられ、感じてしまう楽曲でもあります。

アルバム全篇、カバー曲を盛り込みながら、オーケストラと共演し、シンフォニックなアンサンブルを構築しながら、YESらしきコーラスワークやギターに満ちた聞き逃してはならない楽曲が多いアルバムです。まだ、プログレッシブ・ロックに目覚めていない時期のアルバムかもしれない・・・それでも、当時のアートロック指向のバンドと比べても、劣らずとも素晴らしい楽曲が聴けると思うんです。

[収録曲]

1. No Opportunity Necessary, No Experience Needed(邦題:チャンスも経験もいらない)
2. Then
3. Everydays
4. Sweet Dreams
5. The Prophet(邦題:予言者)
6. Clear Days(邦題:澄みきった日々)
7. Astral Traveller(邦題:星を旅する人)
8. Time And A Word(邦題:時間と言葉)

オーケストラとの共演によるロックを聴きたい方には、ぜひ聴いて欲しい1枚です。

また、テクニカルでスキルフルなシンフォニック系のYes黄金期の楽曲を聴き、その楽曲の唄メロに溢れるキャッチさが好きな方には、ぜひ触れて欲しいアルバムとして、おすすめです。

アルバム「Time And A Word」のおすすめ曲

1曲目は、「Time And A Word」
サビ部のメッセージ性と、そのシンプルなメロディラインは、普遍なメロディとして後世に語り継ぎたい名曲として思わずにはいれません。

2曲目は、「Astral Traveller」
和訳「星を旅する人」とともに、2013年に亡くなった故Peter Banksのギターを活きたアンサンブルがあまりに印象的で忘れることが出来ないです。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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