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プログレおすすめ:Asia「Aura」(2001年イギリス)


Asia -「Aura」

第155回目おすすめアルバムは、イギリスのバンド:Asiaが2001年に発表した7thアルバム「Aura」をご紹介します。
Asia「Aura」
Asiaの7枚目にあたるアルバム「Aura」は、布袋寅泰が楽曲「Into The Arena」にリード・ギターで参加した1996年発表の6thアルバム「Arena」から5年振りのアルバムです。

第1期Asiaのメイン・ボーカルでキー・パーソンとなるJohn Wettonが2001年に脱退以降、Geoffrey Downes(キーボード)がボーカルにJohn Payneを迎い入れ、第2期Asiaとして活動し続け、4枚目のアルバムにも当たります。

Geoffrey DownesとJohn Payneの2名を軸に制作発表していく数々のアルバムの中でも、当アルバムは、John Payneの作曲センスの特徴であるロック然としたハードな楽曲とハートフルな楽曲のうち、後者のハートフルな楽曲が多く、Geoffrey Downesのキーボードの伴奏も多種多様な七色の音色を駆使し、唄メロやアンサンブルがメロディアスな楽曲の印象が強いんです。

それを物語るかのように、第2期アルバムの中でも、Geoffrey DownesとJohn Payneの2人のメンバー以外は、楽曲ごとにゲスト・ミュージシャンのようにクレジットを変え、参加しています。

ギタリストには、第1期Asiaやアルバム「Aqua」にも参加していた現YESのSteve Howe、次作「Silent Nation」で正式メンバーとなる現プログレッシブ・ロックシーンでも重要人物のGuthrie Govan、第1期Asiaで一時期正式メンバーだったPat Thrall、前作アルバム「Arina」で正式メンバーだったElliott RandallやIan Crichtonらが参加してます。ベーシストには、元King CrimsonのTony LevinやGary Liedermanらが参加しています。ドラムには、これまた重要人物:Simon Phillips、前作アルバムのMichael SturgisやVinnie Colaiuta、前AC/DCのChris Sladeが参加しています。

「3分間プログレ」を掲げたAsiaは、第2期ともなり、よりストレートなハードロック思考ともなり、当アルバムでは、ばりばりの変拍子や転調など、既に純然たるプログレッシブ・ロックのカタチは見いだせないかもしれませんが、過去にプログレッシブ・ロックの重要なバンドに参加してきたミュージシャンや、現在のプログレッシブ・ロックでも名を馳せるミュージシャンが参加することで、メロディアスでクオリティの高い楽曲が聴けるアルバムなのです。

さらに、名曲「I’m Not In Love」で有名なイギリスのバンド:10ccのソングライターGraham GouldmanとAndrew Goldによる楽曲「Ready To Go Home」、その2人とGeoffrey DownesとJohn Payneの共作による楽曲「Whenever You Are」が収録されているところもアルバムの聴きどころの1つです。

楽曲について

冒頭曲「Awake」は、Geoffrey Downesによるデジタル・シンセのリフと、Gathrie Govanによるカッティング・ギターをアンサンブルにミドルテンポで聴かせる楽曲です。ヴァース間でLuis Jardimのパーカッションもアクセントに、これまでのハードロッカー寄りのボーカルぜーションを抑制し唄うJohn Payneに象徴されるように、

突き抜けるように進行する展開はどこまでも清々しさを感じさせてくれる。後半部のミックスを抑え気味のGathrie Govanのギター・ソロも聴きどころの1つだと思います。

2「Wherever You Are」は、刹那さ溢れるピアノのメロディアスな音階で幕を上げるマイナー調の楽曲です。ヴァースでのピアノのリフに憂いを帯びたメロディライン、1分50秒前後の第2期Asiaらしさ溢れる鍵盤によるフック、2分10秒前後のGathrie Govanによるメロディを軸に緩急をつけたスケールのギター・ソロ、繰り返される「We’ll Be with you Heart and soul」のリフレイン、リフレインのカウンター・メロディのように奏でられるイントロ部のピアノのフレーズなど、繊細にもメロディを大切にした唄メロとアンサンブルの良さがひしひしと伝わってきます。

3「Ready To Go Home」は、完全にAsiaのメンバーによる作曲ではないにしても、冒頭曲と前曲からの流れだったり、John Payneによるボーカリゼーション、短いながらもGathrie Govanによる速弾きによるギター・ソロが色を添え、Asiaの楽曲としてしっかりと聴かせてくれます。

4「The Last Time」は、開けた第2ヴァースで加わるSteve Howeのギターのフレーズ、3分前後やクロージング直前でIan Crichtonと分かち合うギター・ソロも聴かれますが、裏伯を意識したシンセの起伏あるリフが特徴的な楽曲です。

5「Forgive Me」は、Gathrie Govanによるカッティング・ギターも含め、パーカッシブなアンサンブル重視しているかのように、デジタル・ビートを組み込み展開するのが印象的な楽曲です。4分前後でストリング・シンセによるブレイク後も、サウンドに厚みを増しても、それほど起伏を持たせることなく、コーラスを加えながら抑制を効かせ、クロージングします。

6「Kings Of The Day」は、Simon Phillipsによるドラムに、前曲までの楽曲よりもいくぶんビートを感じさせてくれながらも、3分前後からGathrie Govanの流麗で憂いを帯びたギター・ソロや5分前後の断片的な鍵盤のフレーズ、そして、クロージング直前の「Time Waiting…Time Talking…Life」と、まるで嘆願するかのように進行するメロディラインが印象的です。個人的に、第1期Aisaの楽曲「Time Again」(1stアルバム「Aisa」)の2000年代ソングとも感じてしまいました。

7「On The Coldest Day In Hell」は、アコースティック・ギターをメインのアンサンブルに浮遊さを感じさせてくれる楽曲です。3分50秒前後からのパートには、第2期Asiaらしさ溢れるメロウなアンサンブルを聴くことが出来ます。ポンプ・ロックにも通じるサウンド・メイキングに、吸い込まれていきそうなサウンド・スケープは身を委ねて聴き入ってしまう瞬間かもしれません。

8「Free」は、シンセとギターのリフが切迫さを讃えヴァースが進行していく様や3人のギタリスト(Steve Howe、Pat Thrall、Ian Crichton)によるソロも聴ける当アルバムでもハイライトともいうべき楽曲です。サビ部の「Free」のコーラスワークにカウンター・メロディを唄うJohn Payneに厚みを増していくアンサンブルはライブ映えする楽曲だと思います。第1期Aisaのハモンドオルガンのソロも印象的な楽曲「The Heat Goes On」よりも洗練されたファーストタッチの楽曲と感じました。

9「You’re The Stranger」は、Elliott RandallとPat Thrallによるギターのアンサンブルをメインに、クールなメロディラインの楽曲です。抑制を効かせたヴァースと熱をはらみながらも抑え気味のサビでのJohn Payneのボーカリゼーションには、楽曲の世界観を大切に唄うさまを強く感じさせてくれるし、そのサウンドは、他楽曲以上にAOR風なイメージを感じさせてくれます。

情感たっぷりに弾くGathrie Govanのギターのフレーズで幕を上げる10「The Longest Night」は、ほぼ「The Longest Night」をテーマ1つに唄われるヴァースの印象のみで、聴くたびに、インストルメンタル楽曲のラスト楽曲「Aura」も含め、アルバムを締めくくる1つの流れと感じ聴いてします。

楽曲によって、多くのギタリストやドラマーを迎えながらも、アルバム全篇にわたりメロディをポイントに置いてるのが特徴と思います。随所に、第2期Asiaのフックとも云えるアンサンブルも感じさせつつ、多彩なキーボードの音色やメロディセンスのGeoffrey Downesと抑制されたボーカリゼーションのJohn Payneを軸にした「メロディアスに聴かせるアルバム」として、素敵な仕上がりと思いました。

[収録曲]

1. Awake
2. Wherever You Are
3. Ready To Go Home
4. The Last Time
5. Forgive Me
6. Kings Of The Day
7. On The Coldest Day In Hell
8. Free
9. You’re The Stranger
10. The Longest Night
11. Aura
(Bonus Track)
12. Under The Gun
13. Come Make My Day
14. Hands Of Time

なお、再発アルバムには、ボーナストラックとして3曲追加されています。特に、5thアルバム「Area」にも通じる世界観の14「Hands Of Time」は一聴と思います。

Guthrie GovanやSimon Phillipsなどが楽曲に色を添えクオリティの高いアルバムとして、キーボードを軸にしたメロディアスな楽曲が好きな方におすすめです。

また、メロウでドラマチックさを感じさせてくれた第1期Asiaとは異なるけれども、第2期Asiaでもメロウなサウンドが聴ける好アルバムとして、ぜひ聴いて欲しい1枚です。

第2期Asiaで個人的に忘れらない1枚

Asiaのボーカルといえば、第1期のJohn Wettonのイメージが強いと思います。仰々しさのボーカリゼーションの印象も受けるJohn Payneのボーカルや、ハードロック調やオリエンタルなアプローチなど、アルバムを出すごとに新機軸を打ち出すことで、当アルバムが発表された2001年当時には、第1期Asiaのようなヒット・チャートからもほぼ離れ、あまりアルバムとしてのプロモーション展開も少なく、おそらく、ふとAsiaの新作が世に出たのかと感じたAsiaのファンも多かったのではないかと思います(自分がそうでした。)そして、その楽曲には、1stアルバム「Asia」発売時に掲げた「3分間プログレ」でのサウンドスケープとは異なる異質な感覚を感じた方も多かった。

個人的には、ハードロックな楽曲とメロウでドラマチックな楽曲が並ぶ4thアルバム「Aqua」、随所にヴィンテージなプログレ系のサウンドが盛り込まれハード・プログレ感のある5thアルバム「Aria」、オリエンタルな異質なムードを感じる6thアルバム「Arena」、「3分間プログレ」を意識した如く次作「Silent Nation」も含めると、第2期の最高傑作といかないまでも、Asiaの1つの特徴であるメロディアスな感覚が愉しめる楽曲が聴けるアルバムとして、忘れることが出来ない1枚なのです。

アルバム「Aura」のおすすめ曲

1曲目は、2曲目の「Wherever You Are」
個人的に、第1期と第2期のAsiaを含めても、印象深いほどの楽曲です。随所に「メロディ」を大切にしたことを強く感じさせてくれるだけでなく、聴いていて心落ち着かせてくれる「隠れた佳曲」「隠れた名曲」だと思います。

2曲目は、8曲目の「Free」
もしも、2015年現Asiaで第2期の楽曲をライブ演奏するリクエストが出来ると云われたら、楽曲「Wherever You Are」とともにリクエストしたいと思わせる楽曲です。スマートにもスタイリッシュさも感じさせてくれる切迫さがライブで聴けたら、どのようにライブ映えするのだろうと感じずにやみません。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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