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プログレおすすめ:King Crimson Projekct「Scarcity Of Miracles」(2011年イギリス)


King Crimson Projekct -「Scarcity Of Miracles」

第6回目おすすめアルバムは、イギリスの5大プログレバンドのうちの1つ:King Crimsonの過去メンバーが主に集結し、2011年に発表したアルバム「Scarcity Of Miracles」をご紹介します。
King Crimson Projekct「Scarcity Of Miracles」
2015年12月現在もなおメンバーを入れ替えながらもKing Crimsonは活動を続けています。

当アルバムは、King Crimsonの1stアルバム「In The Court Of The Crimson King(邦題:クリムゾン・キングの宮殿)」を発表後に脱退したIan McDonaldとMickael Gilesの二人が、1970年代初期のKing Crimsonの音楽を再現しようとバンド:21st Century Schizoid Bandの結成がきっかけとなっている気がします。21st Century Schizoid Bandのギターは、Mickael Gilesの娘と結婚したJakko M Jakszykでボーカルを兼務し、他にも、Mel Colins(サックス、フルート、キーボード)、Peter Giles(ベース)、Ian McDonald(キーボード、フルート、サックス)、Mickael Giles(ドラム、パーカッション)など、King Crimsonの同窓会的な錚々たるメンバーが集いました。

21st Century Schizoid Bandは来日公演も実施し、ライブ・アルバムを発表後していますが、その後、Jakko M Jakszyk(ボーカル、ギター)は、Robert Fripp(ギター、サウンドスケープ)が原曲を提供し、Mel Colins(サックス、フルート、キーボード)、Tony Levin(ベース)、Gavin Harrison(ドラム、パーカッション)らと2011年に集結しレコーディングしたのが当アルバムです。

アルバムのイメージについて

このアルバムのサウンドは、King Crimsonの過去アルバムでは4thアルバム「Islands」が最も近しいかもしれません。ただし、King Crimsonならではの「棘」らしきサウンドが抑えられ、個人的には幻想的や牧歌的な抒情性のイメージさえ薄れていると感じています。たとえば、1stアルバム「In The Court Of The Crimson King(邦題:クリムゾン・キングの宮殿)」の挿入歌「Moon child」や3rdアルバム「Lizard」の挿入歌「Prince Rupert Awakes(邦題:ルパート王子の目覚め)」のような幻想風、2ndアルバム「In The Wake Of Poseidon(邦題:ポセイドンのめざめ)」の挿入曲「Cadence And Cascade(邦題:ケイデンスとカスケード)」のような牧歌風な曲のイメージではないんです。また、Jakko M Jakszykの声は、個人的に21st Century Schizoid Bandでのライブ音源でも違和感なく聴き入れたため、1stアルバム「In The Court Of The Crimson King」から7thアルバム「Red」までに垣間見れた抒情さ溢れるサウンドにもフィットするのではないかと思いました。特に、第2期King Crimsonの3枚のアルバム(5thアルバム「Larks’ Tongues In Aspic(邦題:太陽と戦慄)」から7thアルバム「Red」まで)のボーカル:John Wettonがより近い存在に思えてなりません。

発表年2011年という年号や曲に対するメンバー間のイニシアチブもあったかと思いますが、個人的にはロマンチシズム溢れるモダンなサウンド・メイキングがなされていると思います、。King Crimsonの抒情さや静寂さの側面の延長上のサウンドするとイメージがつきやすいかもしれません。その意味でも、4thアルバム「Islands」が最も近しいイメージと辿りつくかもしれません。

冒頭曲1「A Scarcity Of Miracles」は、Robert Frippのつま弾くギターとシンセ、サックスが抒情さ溢れるアンサンブルの幻想的なオープニングが印象的な楽曲です。そのオープニングのイメージのままに、Jakko M Jakszykの唄メロのメロディラインに、ギター、ベース、ドラム、サックスが絡み合うか如く展開していきます。ゆったりとしたテンポの曲調にじわじわと各楽器が奏でるアンサンブルには力強さがあり、終始、霞みかかった音色で浮遊さを表現しうるキーボードが楽曲に幻想さを際立たせてます。

5「The Other Man」では、当アルバム楽曲中では最もアヴァンギャルドさや不穏さを感じさせるメロディラインやアンサンブルを聴かせてくれますが、日本を想起させる琴の音色によるフレーズで幕を上げる2「The Price We Pay」、ドラムレスの前半部とドラムインにサックス・ソロが印象的な後半部の3「Secrets」、オリエンタルなリズムの後半部が印象的な4「This House」は、冒頭曲1「A Scarcity Of Miracles」のような抒情さをベースに浮遊さが幻想さを醸し出したサウンド・メイキングで聴かせてくれます。

最終曲6「The Light Of Day」は、前曲5「The Other Man」で感じえたアヴァンギャルドさや不穏さをいったん落ち着かせるか如く、ギターとベースをメインとした約1分にも近いインプロビゼーション的なパートで幕を上げます。1分にも近いインプロビゼーションのパート後、Jakko M JakszykのボーカルとMel Colinsのサックスがデュエットしているかのようにヴァースは展開していきます。ほぼドラムレスのままに、Jakko M Jakszykはほぼトーンを変えずに唄メロのメロディラインを続けながら、5分前後からのノイジーなギターのフレーズ、6分前後からの不協和音を醸し出すシンセなどが、心に焦燥感をあおうかのようにサウンドを重ねながら、クロージングを迎えます。

アルバム全篇、Robert Frippが弾くギターのフレーズには歪みが抑えられ、ギターよりも自己主張を強く感じさせてくれるMel Colinsのサックスの吹きっぷりが印象的です。そして、何よりもサウンドスケープというポジションを担うRobert Frippの存在は、たとえば、アメリカのロック・バンド:Dire Stratesの楽曲「Your Latest Trick」をはじめとする80年代発表の名盤アルバム「Brother In Arms」のように、ビジュアル・イメージが脳裏へ迫ってくるぐらいに、豊かな抒情さを感じ取れるアルバムの1枚と思います。

[収録曲]

1. A Scarcity Of Miracles
2. The Price We Pay
3. Secrets
4. This House
5. The Other Man
6. The Light Of Day

起伏激しく盛り上がる曲はないかもしれないけれど、叙情さと静寂さの側面を持つKing Crimsonの曲調に想いを馳せる人にはおすすめです。

もちろんこのアルバムをきっかけにKing Crimsonを知り、緊張感や切迫さに「棘」らしきサウンドも感じる第1期(1stアルバム~4thアルバム)、第2期(5thアルバム~7thアルバム)のKing Crimsonに手を伸ばすこともぜひおすすめしたいです。2014年に再活動を果たし、2015年現在、ライブ活動を続けるKing Crimsonのメンバーは当アルバムの参加メンバーが母体とも云えるため、そのライブでも聴ける冒頭曲「A Scarcity Of Miracles」をはじめ、King Crimsonのファンであれば、抑えておきたいアルバムの1枚です。

サウンドスケープとは?

楽曲を聴くことで想像や妄想が脳裏を掠めることがあると思います。その想像や妄想を楽曲の聴き手に抱かせるように曲を「創造する」担当がRobert Frippであるならば、素敵なことではないでしょうか。ここ最近(2000年以降)のKing Crimsonに感じる攻撃的なサウンドとは程遠い世界ですが、個人的にはサウンドスケープを魅せてくれてありがとうと伝えたいですね。King Crimsonのロックバンドとしてのアルバム発表でないかもしれませんが、抒情性の側面を持つKing Crimsonのエッセンスを伝えてくれた。それも過去の焼き回しではなく、ロマンチシズム溢れるモダンなサウンドでです。

みなさんの感じたサウンドスケープはいかがですか?

「Scarcity Of Miracles」のおすすめ曲

1曲目は、4曲目「This House」
他楽曲以上に唄メロが明確に感じるからかもしれません。その唄メロが循環していく。この曲では、約1分(4分前後から5分前後)にも及ぶサックスのソロも目立つが、3分45秒以降は、ギターの歪んだ音色のフレーズなども絡み合い、7分前後からはパーカッションがさらに盛り上げる。ゆったりと静かにそしてだんだん力強く曲が展開する様が聴けるのが好きです。

2曲目は、冒頭曲「A Scarcity Of Miracles」
後半のMel Colinsのサックスの吹きっぷりに魅了されます。ギターの演奏よりも際立ち、アルバムの序章に相応しい楽曲の構成を感じもするからです。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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