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プログレおすすめ:Edensong「The Fruit Fallen」(2008年アメリカ)

公開日: : 最終更新日:2015/12/03 2000年代, アメリカ, ヴァイオリン, エクレクティック[折衷派], フルート


Edensong -「Fruit Fallen」

第138回目おすすめアルバムは、アメリカの折衷系のプログレッシブ・バンドの:Edensongが2008年に発表した1stアルバム「The Fruit Fallen」をご紹介します。
Edensong「The Fruit Fallen」
Edensongは、2002年に、大学に通うJames Byron Schoen(ボーカル、ギター)とMatt Cozin(ドラム)の2人が母体となり結成されたバンドです。「Surrealistic Pseudo-Rock-Opera」(=「超現実的 疑似ロック・オペラ」)をコンセプトに2人を中心に多くの楽曲を創作し、2003年4月前後からはライブ・ツアーを重ね、ツアー終了後には、遂にアルバム「The Fruit Fallen」の骨子が仕上がりました。

その後、紆余曲折を経て、5年後の2008年に1stアルバム「The Fruit Fallen」は発表されました。アルバム発表当時には、James Byron SchoenとMatt Cozin以外に、Matt Cozin(ドラム)、T.D. Towers(ベース・ギター)、Michael Drucker(ヴァイオリン)、Rachel Kiel(フルート)、Eve Harrison(フルート)、Arthur Sugden(ピアノ、オルガン)のメンバーと、楽曲によってギター、ピアノ、オルガン、チェロ、ヴァイオリン、ドラム、タブラー、チャーチオルガン、シンセ、パーカッションの各奏者が楽曲を彩っています。

バンドの音楽性は、「Surrealistic Pseudo-Rock-Opera」からも捉えるJethro Tull、Rush、Dream Theaterなどを彷彿とさせます。いくぶんRIO/Avant系のエッセンスがあるものの、ヘビー系、シンフォニック系、プログレ・フォーク系寄りのプログレッシブ・ロックのエッセンスです。アメリカの地でありながらも、イギリスをはじめとするユーロピアン・ロックを源流とするフォークやトラディッショナルな一端を感じえたり、いっぽうでメタリックなエッセンスによるアンサンブルのコントラストさがあるのが特徴です。

さらに、当アルバムの制作初期にもフルートやヴァイオリンなどの管弦楽器がアンサンブルに加わることで、よりドラマチックな展開を魅せ、プログレッシブ・ロックのジャンルでは、総じて折衷派とも捉えるべき多種多様なエッセンスが入り混じっています。

唄メロにも楽器1つ1つのフレーズにもメロディアスな展開があるものの、
混沌の寸前が醸し出す翳りのあるアンサンブル
が愉しめるアルバムと思います。

楽曲について

冒頭曲1「Water Run」は、既に当バンドのユニークな個性を十分に感じさせてくれます。イントロ冒頭部でアコースティック・ギターによる煌くフレーズにクールな質感の楽曲展開を予想しているところに、突如15秒前後からアンバランスなパーカッションが入り、30秒前後にはヴァイオリンがアンサンブルに加わります。

各楽器が変拍子で交錯しあうアンサンブルに混沌寸前のカタルシスを感じずにいられない。

1分25秒前後の緩急をつけたメロディアスな唄メロのパートでは、カナダのプログレッシブ・ロックバンド:Rushを、ヴァースで終始奏でられるフルートの調べにはJethro Tullを、それぞれ想起しました。また、4分前後からイントロ冒頭部のアコースティック・ギターのフレーズに、パーカッションとヴァイオリンのフレーズが再提示された時には、楽曲の違和感ささえ忘れ、先入観を持ちすぎて聴いてはいけないと感じえるはずです。

以降も一筋縄でいかないバンドが目指したアンサンブルが満載です。

2「The Baptism」は、チャーチ・オルガンやチェロの音色が不気味さを漂う前半部に、中間部以降のギターやアフリカン・ビートによるパーカッシブでハードな展開がコントラストを成す楽曲です。

3「Reflection」は、抒情さや刹那さ溢れるヴァースの唄メロと、タブラーによるパーカッシブなリズム、ギター、フルートのアンサンブルが印象的な楽曲です。唄メロのサビ部に充たるメイン・ボーカルに呼応するコーラスワークやクロージング直前のオルガンのフレーズにも、当楽曲が醸し出す叙情さや刹那さを崩すことのない展開がクロージングまで続いていきます。1「Water Run」や2「The Baptism」での楽曲の展開に驚かされていたので、かえって3「Reflection」を聴き入ってしまったんです。

4「The Prayer」は、よりフォーク系のアコースティカルなギターのイントロで開始し、1分前後からのギター、ドラムが高らかに歌い上げ、ヴァイオリン、チェロ、オルガン、フルートによるアンサンブルが強烈です。バッキングコーラスとアコースティカルなギターによる夢うつつのパートを何度も交えつつも、ごった煮とも思えるアンサンブルが展開されるのは、おそらくEdensongがアルバムで表現しようとするアンサンブルの真骨頂ともいえるでしょう。

5「Nocturne」は、イントロなしでピアノを伴奏にはじまるヴァースが印象的な楽曲です。50秒前後にリズムチェンジし、ほんの数秒間だけ聴かせるピアノを伴奏としたヴァースの展開には楽曲タイトル「Nocturne」に似つかわしいです。1分40秒前後からエレクトリック・パートへ移行しても、3「Reflection」と同様に楽曲の世界観を活かすようなサウンド・メイキングが冴えています。特に、動のパートで5分30秒前後に混沌さへ移行しようとも、1つのアクセントに過ぎないかのように、どことなく繊細さを失わないように心がけているような展開が伝わってきますね。

6「The Sixth Day」は、静と動を繰り返すイントロの冒頭部から、アコースティック・ギターとフルートのパート、その後のヴァースも含め、4「The Prayer」のようにごった煮とも取れるアンサンブルが愉しめる楽曲です。

7「One Breath To Breathe」は、退廃感を醸し出したイントロから物憂げなボーカリゼーション、そして、チェロとフルートのアンサンブルには、切迫さは感じえなくても、終始、陰鬱さに堕ちていきそうな感覚を憶えてしまいます。

最終曲8「The Reunion」は、前曲7「One Breath To Breathe」の世界観よりも少し抑制がかかった冒頭部から、他楽曲以上にフルートが楽曲をリードし、ヴァイオリンも交えたどことなく不穏さをもある躍動的なヴァースの展開には穏やかさもありつつ、動のパートでは、ギターやキーボードによるインタープレイもあり、当アルバムで展開するエッセンス(RIO/Avant系、ヘビー系、シンフォニック系、プログレ・フォーク系)を十人分に聴かせてくれる約21分にも及ぶ大曲です。管弦楽器を組み入れたアンサンブルは、時に不穏さ、時に優雅さを醸し出してくれますが、ボーカリゼーションではなく、楽曲全体やアルバム全篇で魅せるロック・オペラとも捉える展開力に、バンドが初期に掲げた「Surrealistic Pseudo-Rock-Opera」のコンセプトを十分に感じさせてくれるアルバムだと最終曲であらためて感じました。

いずれの楽曲も、他プログレッシブ・バンド以上に先が読めない展開が溢れており、最後まで一気に聴きたい聴き応えあるアルバムです。

[収録曲]

1. Water Run
2. The Baptism
3. Reflection
4. The Prayer
5. Nocturne
6. The Sixth Day
7. One Breath To Breathe
8. The Reunion

いくぶんRIO/Avant系のエッセンスがあるものの、ヘビー系、シンフォニック系、プログレ・フォーク系の音楽が好きな方におすすめです。

また、アルバムが発表された当時に「Jethro Tullが、Dream TheaterとYesに出逢った。その音は驚くべきサウンド(=「Jethro Tull meets Dream Theater meets Yes. It’s amazing-sounding stuff」)」から連想し、Jethro Tullが好きで、ヘビーさのあるDream Theater、テクニカルでシンフォニックさのあるYesという観点で興味を持った方にもおすすめです。

アルバム「The Fruit Fallen」のおすすめ曲

1曲目は最終曲1の「The Reunion」
当アルバムで展開するEdensongの音楽性が詰まった約21分の大曲だからです。

2曲目は5曲目の「Nocturne」
静と動のパートがありながらも、当楽曲タイトル「Nocturne」のイメージを損なうことなく聴かせようと云う気持ちが伝わってくるような楽曲だからです。また、一聴した時に、イントロ冒頭部で、イギリスの著名なアーティスト:John Lennonの子息:Julian Lennonが1998年発表のアルバム「Photograph smile」で聴かせる楽曲の佇まいを想起してしまったからです。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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