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プログレおすすめ:Astra「The Weirding」(2009年アメリカ)

公開日: : 最終更新日:2015/12/29 2000年代, アメリカ, ストーナー・ロック, フルート, メロトロン


Astra -「The Weirding」

第99回目おすすめアルバムは、アメリカのサイケデリック/スペース系のプログレッシブ・ロックバンド:Astraが2009年に発表した1stアルバム「The Weirding」をご紹介します。

Astra「The Weirding」
まず、熱心なプログレファンがジャケットを見たら、Yesの名盤(3rdアルバム「Fragle(邦題:こわれもの)」や4thアルバム「Close To The Edge(邦題:危機)」)に代表されるRoger Deanにより手掛けられたものなのかと感じるかもしれません。さらに、筆者には、イギリスのバンド:Asiaが1985年に発表した3rdアルバム「Astra」の本来の創造世界のジャケットであって欲しかったとも感じぐらいです。実際のジャケット・ワークは、アメリカのメタル・バンド:High On Fireなどのジャケットも手掛けるArik “Moonhawk” Roperによるクリエイティブ・ワークによるとのことです。Roger Deanへのリスペクトが感じられますね。

Astraのバンドの始まりは、2001年に、Richard Vaughan(ギター、メロトロン、エコーマシン、ボーカル)、Conor Riley(メロトロン、アナログ・シンセ(ARPODYSSEY)、オルガン、ギター、ボーカル)、Stuart Sclater(ベース)の3人が集まり、バンド「Silver Sunshine」として活動開始したのがきっかけです。2006年にバンド名を「Astra」にあらため、ほどなくDavid Hurley(ドラム、パーカッション、フルート)がメンバーに加わります。当楽曲のデモ制作に取り掛かったところで、Brian Ellis(ギター、ムーグ、ボーカル)が加入し、現在のAstraのフルメンバー編成となります。

Astraの音楽ルーツ

Astraの音楽ルーツは、ずばりサイケデリック/スペース系のプログレッシブ・ロックかと思います。サウンド・メイキングには、シンフォニック系で利用されるオルガン、メロトロン、フルートなどがあり、ヘビーなアンサンブルが中心です。個々のメンバーは技術やテクニック重視よりも、長尺なジャム・セッション風に演奏する1970年代の回顧的なスタイルに近しいのではないかと思います。

サイケデリック/スペース系のエッセンスやブルース・フィーリングあるギターのフレーズにはPink Floyd、緊迫感のある繊細なギターのフレーズやメロトロンに代表される翳りのある抒情性が醸し出すエッセンスにはKing Crimson、フルートでのフレーズにはJethro Tullを連想させてくれます。1970年代のブリティッシュ・ロックシーンをリスペクトした以上に、ヴィンテージ感満載のアナログ機器を利用しながら、アメリカのバンドと思えないぐらい、徹底的に自らの音楽性へと昇華吸収したイメージを持ちました。

冒頭曲1「The Rising Of The Black Sun」をはじめ、1970年代のオマージュに収まらないクオリティが伝わる。

楽曲について

冒頭曲1「The Rising Of The Black Sun」はサイケデリックな色彩が音域を包み込みながら、次第にメロトロン、オルガン、フルート、ギターの断片が浮遊し埋め尽くしていきます。2分40秒前後でドラム・スティックのカウントが入り、エコー処理が効いたファズ・ギターのフレーズが左右を行き来し、徐々にサウンドは高揚していきます。4分10秒から1つのモチーフをギターが繰り返しながら、転調を繰り返しクロージングしていきますが、

まるで暗黒の太陽が暗闇が薄れ昇るさまを劇的に描いているようなサウンドスケープに言葉を失ってしまう
ぐらいに、1曲まるごとサイケデリック感も豊かに迸る熱が発散していくようなアンサンブルは圧巻です。

その冒頭曲とに曲間に無音がなく繋がるようにはじまる2「The Weirding」では、憂いを帯びたボーカリゼーションや、King Crimsonを彷彿とさせる翳りあるサウンド・メイキングがなされ、抒情性に浸っていきます。どこまでも堕ちていく救いようのない絶望とも感じとれるように現実逃避でもしてしまったかのようなサウンドスケープで魅せてくれます。サイケデリック/スペース系をベースとしているため、その色彩に醸し出すメロトロンやオルガンの音のバランスも特筆な楽曲です。

この2「The Weirding」をはじめ、当アルバムは、3「Silent Sleep」、5「Ouroboros」、8「Beyond To Slight The Maze」など、10分を超える長尺な楽曲が多いのも特徴です。冒頭曲「The Rising Of The Black Sun」と2「The Weirding」で当バンドの音楽の方向性を好きになった人は、約80分にもわたる長尺のアルバムを全篇聴き入ってしまうにちがいないでしょう。どっぷりと楽曲の世界に浸ってしまっても構わない・・・。そう思わせるぐらいに徹底的なヴィンテージ溢れるアンサンブルが堪能出来ます。

主要メンバーとなる3人がアメリカのサンディエゴ出身でありながらも、近年のアメリカ・ハード系のエッセンスを活かさず、自分らがやりたい音楽を探求し、再現させてしまう意欲を強く感じたアルバムです。

[収録曲]

1. The Rising Of The Black Sun
2. The Weirding
3. Silent Sleep
4. The River Under
5. Ouroboros
6. Broken Glass
7. The Dawning Of Ophiuchus
8. Beyond To Slight The Maze

単純に、Pink FloydとKing Crimsonの初期を好きな方におすすめしたいです。いっぽうで、1970年代イギリスで活躍したBlack Sabbath初期のヘヴィメタル性や同時代サイケデリック/スペース系のプログレッシブ・ロックに影響された、グルーヴ感に富み、ディスト―ションを効かせるストーナーロック系が好きな方におすすめです。

近年であれば、スウェーデンのAnekdotenやベルギーのHypnos 69などに代表される古き良き1970年代ブリティッシュ・ロックのヴィンテージ系のアナログ機器を活かしたアンサンブルのバンドが好きな方におすすめです。

当アルバムを気に入った方は、テクニカルさの比重が増え、ファズギター色よりもムーグ系の音色が濃厚な2012年発表の2ndアルバム「The Black Chord」もぜひ聴いてみて下さい。

2009年のプログレッシブ・ロックのアルバムの中で、筆者が指折りの大好きなアルバムです!

「ストーナーロック」との共通性について

ウィキペディアによれば、ハードロックの1ジャンルであるとのことです。

・ファズ、フェイザー、フランジャーなどのエフェクターを駆使したエレクトリック・ギターの演奏であること
・ジャンルの起源に、サイケデリック・ロック、アシッド・ロックなどのサイケデリック/スペース系であること
・レトロな楽器によるプロダクションであること
・グルーブ感を重視した荒いブルースフィーリングが強いこと
など、その音楽性に共通性が見出してしまいますね。

アルバム「The Weirding」のおすすめ曲

1曲目は、冒頭曲の「The Rising Of The Black Sun」
約5分40秒の音世界で、Astraの音楽の方向性に圧倒されてしまい、どっぷりと聴き入ってしまうきっかけとなったからです。2曲目以降の他7曲を聴く前に、心がワクワクされたというよりも、ただただその音の成り行きに自然と身を委ねてしまいたいと、全楽曲を聴き終えた時に、無意識に思いました。

2曲目は、5曲目の「Ouroboros」
約17分にも及ぶ当楽曲は、たとえば、サイケデリック系やガレージ系など、同国のミュージシャン:Iggy PopをメインとしたStoogesによるデトロイト・サウンドも連想させてくれますが、当アルバムのサウンドの一つ:混沌さが色濃いと同時に、当バンドがプログレッシブ・ロックバンドである所以が堪能出来るからです。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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