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プログレおすすめ:Premiata Forneria Marconi「Photos of Ghosts(邦題:幻の映像)」(1973年イタリア)


Premiata Forneria Marconi -「Photos of Ghosts」

第223回目おすすめアルバムは、イタリアのプログレッシブ・ロックバンド:Premiata Forneria Marconi(以下略、PFM)が1973年に英詞で発表した3rdアルバム「Photos of Ghosts」をご紹介します。

Premiata Forneria Marconi -「Photos of Ghosts」

コマーシャルな音楽はいらない、新しい音楽を

PFMは、ワールドワイドに名を轟かせたイタリアのプログレッシブ・ロックのバンドです。

1969年末期、Franz Di Cioccio(ドラム、ボーカル)、Franco Mussida(エレクトリック・ギター、アコースティック・ギター、ボーカル)、Giorgio Piazza(ベース)、Flavio Premoli(キーボード、ハモンド・オルガン、ピアノ、メロトロン、ムーグ・シンセサイザー、ボーカル)の4人は、1964年に結成したバンド:I Quelliで、ビート・バンドのスタイルで活動していく一方で、1969年後半期にプログレッシブ・ロックの波がじわじわと各国境を越え、押し寄せるやタイミングで、自らのオリジナリティのある新しい音楽の方向性を見出そうとします。

そして、バンド:Daltonでロックとしての先進的な姿勢を魅せるMauro Pagani(フルート、ヴァイオリン、木琴、ボーカル)と会うやいなや意気投合し、PFMの原型である5人が集結したのです。

初期に目指していた音楽性は、当時ライブレパートリーにもしていたアメリカのロック・バンド:Chicago、イギリスのプログレッシブ・ロックのバンド:King CrimsonやJethro Tullからも、その方向性と独自性は伺えます。

1972年には1stアルバム「Storia Di Un Minuto(邦題:幻想物語)」と2ndアルバム「Per Un Amico(邦題:友よ)」を順調に発表するなかで、イタリアでライブを行ったEmerson Lake & Pamlerの前座として出演した際に、Greg Lakeの目に留まり、イギリスへ招待されます。そこで、Peter Shinfiledに見出され、Emerson Lake & Pamlerが設立したレーベル「マンティコア」からPeter Shinfiled自身による英詞とプロデュースで、1973年に発売されたのが、当アルバム「Photos of Ghosts」なのです。

個人的に、ある種のアタタカミを感じるイタリアのロック・バンドのうち、PFMには、数少ない朗らかさも感じてしまいます。ただただ驚くばかりに、1つの楽曲にメロディックさ溢れ贅沢に詰め込んだモチーフやサウンド・メイキングに、King CrimsonやJethro Tullに比較されるアンサンブルにも、時としてGenesisをも想起させてくれます。

当アルバム「Photos of Ghosts」は、イタリアで既に発売されたアルバム2枚から選曲され、一部英詞への変更に新曲を織り交ぜていますが、流麗なギター、ユニークなシンセサイザーの音色と旋律に、甘美なヴァイオリンとフルートも合い間って、

リリカルさやロマンシズムさと起伏の激しき展開が愉しめるエレガントなアルバムと思います。

ビート・バンドとしてのコマーシャルな音楽ではなく、新しい音楽を目指そうとしたPFMがワールドワイドに知名度をあげるきっかけとなった傑作アルバムを聴いてみましょう。

楽曲について

バロック調のギターのフレーズで幕を上げる冒頭曲1「River of life」は、タイトなリズムセクションをまじえハードなアプローチを含め、静と動のメリハリが効いた約7分の大作です。

バロック調のギターに、チェンバロ、フルートが加わるアンサンブルのクラシカルな佇まいにも、約1分30秒前後に、ギター、チェンバロ、フルートはハードなアプローチへ展開し、2分前後からの第1ヴァースでは、アコースティック・ギターとフルートを交えた穏やかなアンサンブルで綴られる儚くも寂しげな唄メロのメロディライン、約3分前後からのメロトロンの旋律が盛り上げをみせ、3分40秒前後にはポリリズムさ溢れるギターとチェンバロによるチェンバー系のアプローチ、ユニゾンするフルート、4分55秒前後に再度ヴァースへ戻り、短いパースで5分30秒前後に全体を覆い尽くすか如くメロトロンの旋律が響き渡り、爆音のSEとともに突如クロージングを迎えます。

King Crimsonの叙情さを彷彿とさせるアンサンブルに、イタリアの地でのクラシカルな素養が融合したかのようで、

独自の音楽性を切り開きつつも、イギリスの叙情さを巧みに吸収した素敵な音楽が在る。

2「Celebration」は、ムーグ・シンセサイザーやフルートの旋律も印象的に、シャッフルのビートで進行する楽曲です。「La la la」のコーラスで魅せる朗らかさ、1分55秒前後のロマンチックさある唄メロのメロディライン、続くメロトロンとシンセサイザーのアンサンブルに、フルートのフレーズなど、ビートが効いた快活さのなかにも、PFMの独自さに、新鮮味を失うことがありません。

3「Photos of Ghosts」は、ミステリアスな雰囲気を醸し出すオープニングから、ユニークなベースラインが随所にアンサンブルに出て、そのたびに、さまざまなモチーフのアンサンブルが展開する楽曲です。

物憂げなフルートとピアノに、印象的にもリズムセクションがひきしめ、ヴァースの唄メロのメロディラインも含め、ミステリアスな雰囲気を醸し出す冒頭部から、第2ヴァースで加わるヴァイオリンの旋律とかすかに響くシンセサイザーの音色に、タイトル「幻=ゴースト」をサウンドスケープしてしまいます。そして、ヴァイオリンの幽玄な旋律とともに、2分50秒前後から3分15秒前後からの、たたかみかけると形容しがたいユニークなベースラインとドラミング、息つく暇なく、3分30秒前後、アコースティック・ギターの高速アルペジオに、あらなにユニークなベースラインとドラミングをアンサンブルに、ムーグ・シンセサイザーが勇壮なテーマを奏で、再度、アコースティック・ギターの高速アルペジオにも、4分40秒前後から、さらなるユニークなベースラインがでて、シンセサイザーによるオペラ風のサウンドでクロージングを迎えます。

ユニークなベースラインと、そのモチーフに場面へ入るタイミングの妙など、イタリアのバンド特有の奥ゆかしきクリエイテビティを感じずにいられないのです。

4「Old rain」は、アコースティック・ギターとピアノが宮廷音楽風に、リズムセクションはジャズ系のエッセンスを醸し出すアンサンブルに、独特の感覚を憶えながらも、入れ替わりメインのテーマを綴るヴァイオリンとフルートの独奏が聴こえれば、やはりKing Crimsonのヴァイオリンによる楽曲「Trio」、フルートによる「I Talk To The Wind」を想起してしまいます。聴き手によって受け止め方は異なるかもしれませんね。雨降る午後に、ふとカフェで優雅に浸るようなサウンドスケープを魅せてくれます。

5「Il banchetto」は、アコースティック・ギターのアルペジオで幕をあげ、ストロークによるヴァースでのファンタジックさもある唄メロのメロディラインも含め、Genesisを彷彿とさせてくれます。1分前後からリズムセクションが加われば、ユニークなベースラインや、どうしたものか、フュージュン系のエッセンスを感じてしまうのですが、2分前後からは、アコースティック・ギターのアルペジオとシンセサイザーによる深い霧の向こうから顔を出すか如く、ファンタジックさがたまりませんが、メロトロンとハーブをまじえ、ムーグ・シンセサイザーの音色や旋律などを聴くと、PFMらしさを感じずにいられません。そして、4分10秒前後のコミカルさもあるムーグ・シンセサイザーの旋律には、Emerson, Lake & Palmerを想起もさせてくれます。オーボエやフルートが加われば、やはり独自を強く感じてしまいますね。5分40秒前後からのピアノによる緩急をつけたエレガントな旋律に、7分20秒前後に、最初のヴァースへと戻り、透みきったハーモニーでクロージングを迎えます。ファンタジックさ溢れ、まくるめく万華鏡のような展開には、ただただ驚きを隠せないのですが、それも次曲6「Mr. 9 till 5」は更に凌いでいます・・・。

6「Mr. 9 till 5」は、緩急豊かに急転直下のさまざまなエッセンスに溢れたプログレッシブな展開に魅了される楽曲です。パーカッシブにリードされ、エレクトリック・ギターの凶暴さ寸前のリフと、ヴァイオリンもまじえ、忙しくアンサンブルが展開するエクセントリックさ、ファンキーなボーカリゼーションに、オブリガードで絡むエレクトリック・ギターとヴァイオリンのフレーズのヴァースに圧倒されるやいなや、2分前後からマーチ風のドラムとともに、心美良いフルート、ムーグ・シンセサイザー、アコースティック・ギターの旋律が醸し出すメルヘンさ、2分50秒前後からのチャーチ・オルガンによる尊厳さ、3分前後からのエクセントリックなギターをアンサンブルにしたヴァースのコミカルさ、3分前後から冒頭部のエクセントリックさに立ち戻り、凶暴さ寸前のギターのフレーズでフェードアウトしていきます。緩みかけたネジが吹っ飛んだかのようなアンサンブルに、驚きを超えるほどに技巧の高さを感じずにもいられませんね。

最終曲7「Promenade the puzzle」は、アコースティック・ギターとフルートのアンサンブルに、冒頭曲1のオープニングよりも穏やかなバロック調を感じ、静けさの向こう側から響くようなボーカリゼーションのヴァースとともに、深い森からの誘いのように聴こえてなりません。ただそれも、1分40秒前後から徐々に森の奥から這い出てくるようにして、カンタベリー系に魅せる独特なコーラスワークが拡がり、グルービ豊かなギターとベースのリフレインに、フルートとムーグシンセサイザーもせめぎ合うパート、4分前後からのヴァイオリンの優美な旋律、King Crimsonの名曲「In The Court Of Crimson King」のクロージング直前の印象的なホイッスルを彷彿とさせるフレーズに導かれ、不気味なワルツが幕を上げます。一定の木琴による鐘の音を想起させつつ、低音に響き渡るムーグ・シンセサイザーがミニマルな音色をリフレインさせてクロージングしていきます。まるでGentle Giantを彷彿とさせる繊細にも技巧を駆使しながら、King Crimsonの不穏さが展開するさまは、パズルに例えられる彷徨うさまをサウンドスケープさせてくれます。

彷徨い迷いながら、安堵感を与えずにアルバムをクロージングしていくさまは、冒頭部の楽曲「River of life」から少しずつ、各メンバ―のスキルフルでテクニカルさに溢れ、深みにはまっていく聴き心地を、アルバムを聴き終えても五感に印象強くうけつけられるような想いです。まさにエレガントと云う言葉が相応しい、素晴らしい音楽を堪能出来ると思います。

[収録曲]

1. River of life(邦題:人生は川のようなもの)★
—原曲「Appena Un Po’(邦題:ほんの少しだけ)

2. Celebration(邦題:セレブレイション)★★
—原曲「E’ Festa(邦題:祭典の時)」

3. Photos of Ghosts(邦題:幻の映像)★
—原曲「Per Un Amec O(邦題:友よ)」

4. Old rain

5. Il banchetto(邦題:晩餐会の三人の客)★
—原曲「Il banchetto(邦題:晩餐会)」

6. Mr. 9 till 5(邦題:ミスター9~5時)★
—原曲「Generale(邦題:生誕)」

7. Promenade the puzzle ★
—原曲「Geraino」

★★:1972年発表の1stアルバム「Storia Di Un Minuto(邦題:幻想物語))」収録曲のリメイク曲
 ★:1972年発表の2ndアルバム「Per Un Amico(邦題:友よ)」収録曲のリメイク曲

なお、イタリア詞の1stアルバム(★★)から1曲、2ndアルバム(★)から5曲が選ばれ、楽曲「Il banchetto」を除き英詞にリメイクされ、新曲「Old Rain」とともに計7曲を収録してます。

1970年代のイタリアのプログレッシブ・ロックにはじめて触れるきっかけの1枚として、Maxphoneの同名アルバムと同様に、おすすめです。

当アルバムで、PFMを好きになった方は、よりドラマチックにアンサンブルが幅をもたらす次作4thアルバム「The World Became the World(邦題:甦る世界)」に触れてみてはいかがでしょうか。また、当アルバムのベースとなる1972年発表の1stアルバム「Storia Di Un Minuto」と2ndアルバム「Per Un Amico」に収録された各原曲でのイタリア語での比較をしてみるのも良いかもしれません。

ワールドワイドに知名度を上げることで、アルバム発表毎に、楽曲のアプローチは変化していきますが、ベースとなるPFMの楽曲に対するアレンジや展開力にはユニークなエッセンスがあるかと思いますので、全アルバムに心惹かれてしまうかもしれませんね。

アルバム「Photos of Ghosts」のおすすめ曲

1曲目は、3曲目の「Photos of Ghosts」
ベースラインのユニークさと、モチーフに絡み合うタイミングにつきます。そのベースラインが活きる名曲と思います。ただし、そのベースラインに魅力を感じてしまうと、後半の3つの楽曲(5「Il banchetto」、6「Mr. 9 till 5」、7「Promenade the puzzle」)でのアンサンブルやサウンド・メイキングに唸らされてしまいます。当楽曲を軸に、アルバム全曲を俯瞰しみてみると、どの楽器もオーケストラの一つのように、それぞれに印象深さを感じさせてくれるのです。

2曲目は、冒頭曲1の「River of life」
当楽曲の冒頭部のバロック調のアンサンブルから、ハードなアプローチへ繋がる展開に、よりPFMの楽曲を、よりイタリア・プログレを聴くきっかけとなりました。日本のビジュアル系のミュージシャンが影響を受けたであろう、アンサンブルの一端を感じずにいられません。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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