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プログレおすすめ:The Neal Morse Band「The Grand Experiment」(2015年アメリカ)


The Neal Morse Band -「The Grand Experiment」

第98回目おすすめアルバムは、アメリカのプログレッシブ系のミュージシャン:Neal Morseが2015年2月16日に発表した20thアルバム「The Grand Experiment」をご紹介します。
Neal Morse「The Grand Experiment」

過去のアルバムでもNeal Morse(キーボード、ギター、ボーカル)に、Randy George(ベース)、Mike Portnoy(ドラム)によるトリオ編成はありましたが、当アルバムでは、Bill Hubauer(クラリネット、フルート、ギター)、Eric Gillette(ボーカル)を加えて、The Neal Morse bandなるバンド編成をとっています。

2014年には、Transatlanticで4thアルバム「Kaleidoscope(邦題:カレイドスコープ~万華鏡幻想)」の発表や、そのTransatlanticや、Mike Portnoyがメインで率いるハードロック・バンド:Flying Colorsとのツアー、そして、前作ソロアルバム「Songs From November」の発表などをしてたいと思いますので、どのようにして時間を確保し、創作をしていたのかと考えさせられます。

ただ、当アルバム「The Grand Experiment」の楽曲は前もって骨子(デモ)を作らず、スタジオにメンバーが集結し、何もなしの状態でセッション形式により制作されたとのことです。Transatlanticが捉えるジャムセッション的なニュアンスの回帰ともいうべき展開ですね。

楽曲について

清涼感たっぷりに、重厚なアカペラのコーラスでオープニングから幕を上げる冒頭曲「The Call」は、ギターとオルガンがオブリガードでリフを司りながらヴァースが展開されるパート、ベースギターのソロフレーズを下敷きに、さらに同パートが重ねられるパートなど、アップテンポで躍動的な展開の前半部(~4分40秒)と、楽曲の場面転換を担うスローなパート(4分40秒~5分30秒)後に、よりエッジが効いたギターとシンセによるユニゾンで展開されるアンニュイなアンサンブルが繰り広げられ、テクニカルさやジャージーなギターソロが縦横無尽に繰り広げられる中間部(5分30秒~8分)が印象的ですが、8分以降、再度、前半部の瑞々しさ溢れる唄メロのメロディラインやギターのフレーズがリフレインされ、各楽器が畳み掛けるように重ね演奏され、圧倒的なままに楽曲はクロージングします。

本当にセッションから生まれた楽曲のなのか、と首をかしげたくなるぐらいの構築美を感じてしまう。

2「The Grand Experiment」は、Neal Morseらしさ溢れるダイナミックで奔放さを感じさせる解放感溢れるハードロック的なアプローチの楽曲です。ヴァースのブレークとギターのリフのユニゾン、ヴォイスコーダーによるアカペラなどもアクセントに、アメリカン・ハード王道ともいうべき歌心に溢れてます。

3「Waterfall」は、イントロから聴かれるギター2台によるアルペジオをメインに、クラリネット、フルートによるアンサンブルと、Neal MorseとEric Gilletteによるハーモニーが素敵な楽曲です。伸びやかに唄われるヴァースの唄メロも含め、プログレ・フォーク系のエッセンスや牧歌的な側面を魅せる5大プログレバンド:YESのような楽曲に展開を感じさせてくれます。いっぽうで、イギリスのモッズ期の代表的なグループ:Small Facesや、現代でいえば、The Charlatansの奏でるナンバーを連想させます。セッションから生まれたと思えないぐらいに丹精でいて、繊細でいて優美な音作りにうっとりしますね。5分30秒前後からのシンセによるサウンド感、6分以降のフルートのフレーズが、より抒情性にも色添えています。

4「Agenda」は、エコー処理を効かせたボーカリゼーションを通じ、ふくよかな唄メロも印象的に、2「The Grand Experiment」よりもFlying Colorsに近しいポンプ・ロック的なサウンド展開が心地良く聴かせてくれる楽曲です。

最終曲「Alive Again」は、YES風のファンタジックなオープニングで幕を上げながらも、約26分前後にも及ぶ大曲にして、終始、Mike Portnoyが心身良く軽快にドラミングで先導していくため、ギターやヴァースの各パートが様々なモチーフで展開しても、楽曲がどっしりしていて、変にアレンジが浮ついた印象を受けないんです。当楽曲を通じ、元Dream TheatreとしてのMike Portnoyのスキルフルをあらためて感じさせられましたね。いっぽうで16分30秒前後に突如挿入されるKing Crimsonの「Red」の後半部のメロトロンパートを個人的に連想しニンマリもしてしまいますが。楽曲の中盤から後半は、クロージングに向けじわじわと大円壇へ高揚させていく唄メロが素晴らしいです。かと思っていたら、残り3分は、ボーカルなしで楽器のアンサンブルで高揚させていく。唄メロと楽器とそれぞれに分け準備された後半部の展開力といい、楽曲全体の構築美にはただただ溜息ついてしまいます。

その音1つ1つに、その瞬間々々に完全に構築されたとしか思えない印象があり、聴き手に、セッションから生まれたとは思えないぐらいに両耳へ訴えかけてくることでしょう。アルバム全篇、美しいコーラスワークに、ポップでキャッチなメロディラインの唄メロ、アップテンポで軽快な楽曲が中心であることから、KansasやBostonなど、アメリカのプログレッシブ・ロックシーンの持つ古き良きフィーリングも感じる方もいるからもしれません。そう、王道とも云われるプログレッシブ・ロックの良質なアルバムです。

[収録曲]

1. The Call
2. The Grand Experiment
3. Waterfall
4. Agenda
5. Alive Again

メロウさとダイナミックさが根底をなし、現代のプログレッシブ・ロックを代表する重厚なコーラス、コーラスワーク、ポップでキャッチなメロディラインなどが溢れており、プログレッシブ・ロックをはじめて聴く方にもぜひおすすめしたい1枚です。

Neil Morseの創作する万華鏡のような楽曲たちに触れ、愉しめた方々には、さらに、Transatlanticの4thアルバム「Kaleidoscope(邦題:カレイドスコープ~万華鏡幻想)」やFlying Colorsの1st同名アルバム「Flying Colors」など、よりソリッドなアルバムもおすすめします。

アルバム「The Grand Experiment」のおすすめ曲

1曲目は、3曲目の「Waterfall」
多楽曲とは異なる印象に、セッション形式で創作されたと思えないぐらいに異世界と、各メンバーの演奏技術の高さ、そこからうまれるサウンドスケープの素晴らしさを強く感じさせれられます。1960年代のブリティッシュ・ロックのモッズ期や、古き良きアメリカンPOPの世界へ誘われてしまいます。

2曲目は、ラスト楽曲「Alive Again」
前半部のめぐるめく展開に、唄メロと楽器とそれぞれに分けて高揚させていく楽曲のもつ構築美に、楽曲の和訳「もういちど生きよう」をなぞるポジティブさを強く感じるクロージングに相応しい大曲と感じたからです。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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