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プログレおすすめ:La’cryma Christi「Lhasa」(1998年日本)


La’cryma Christi -「Lhasa」

第256回目おすすめアルバムは、日本のロックバンド:La’cryma Christiが1998年に発表した2ndアルバム「Lhasa」をご紹介します。

La'cryma Christi「Lhasa」

演奏技巧重視のアンサンブルよりもプログレッシブな展開

当アルバム「Lhasa」は、前作「Sculpture of Time」から1年振りのアルバムで、口ずさみやすさあるポップな楽曲にはより磨きをかけた楽曲が中心の前半5曲(「未来航路」「月の瞼」「With-You」「Shy」「Lhasa」)を「yours」、リズム・チェンジやテンポ・チェンジなどプログレッシブなエッセンスはよりジャンルの幅広げたような後半5曲(「Green」「PSYCHO STALKER」「Fronzen Spring」「鳥になる日」「Zambara」)を「ours」と振り分けています。

個人的に、前作アルバム「Sculpture of Time」に収録されたシングル(「南国」、「Ivory trees」、「THE SCENT」)による一連のヒットからは、当時の音楽シーンによりメジャー的なアプローチも求められていたのではないかと思います。いっぽうで、シングル楽曲も含めて耳をすれば「おや?」とそのアンサンブルの妙(リズム・チェンジ、テンポ・チェンジ、変拍子など)の演奏技巧の高さに裏付けされたプログレッシブ・ロック的なアプローチは、非シングル楽曲にはより顕著でした。この2つの相反する要素が、アルバム全篇にオリエンタルなムードで統一感さえあったのがアルバム「Sculpture of Time」と思うんです。

音楽性のボーダーラインを「yours」と「ours」で分けた当アルバムは、ヒット曲を中心としてLa’cryma Christiに出逢ったファンと、プログレッシブ・ロックでのテクニカルさに興味があるLa’cryma Christiに出逢ったファンとでは、お互いに戸惑いを感じてしまうかもしれません。

あらためて、否定的な見解は、人の意見を口撃するのではなく、自分自身で何もないところから語るべきであろうと思ってしまいます。ただ、自分は稀な人間なのか、時期は違えど「yours」にも「ours」にも遜色なく好きなのです。

当時のビジュアル・ロックシーンで、メロディックなメロディラインだけでなく、演奏技術の高さをサウンド・メイキング以上にアンサンブルで感じえたい希有の存在であるLa’cryma Christiは、

後半「ours」で魅せる楽曲構成でのプログレッシブ・ロックらしさに魅了されるアルバムです。

ただそれだけでなく・・・

インディーズで1996年に発表されたミニアルバム「Dwellers of a sandcastle」と前作アルバム「Sculpture of Time」から順を追って聴くことで、アグレッシブに音楽性の幅を効かせていることは、プログレッシブな感性以外にも立ち会える素敵なアルバムなのです。

・・・特徴あるTAKAのハイトーン・ヴォイスの最高域への到達・・・

・・・キーボードを極力排除したギター・オリエンテッドなアンサンブル・・・

・・・SHUSEやHIROだけでない、TAKAとKOJIの作曲によるヒット楽曲・・・

など、プログレッシブ・ロックの殻を被った技巧集団から様々な音楽ジャンルへ拡げる2000年発表の次作アルバム「magic theatre」の音楽性手前に出逢えます。

楽曲について

当アルバムには、バンド史上オリコンチャート10位圏内にランクインした3「With-You」と、最高位に到達した1「未来航路」が収録されています。ただ、この2曲とも、前作アルバム「Sculpture of Time」でのSHUSE作曲の楽曲(「南国」)とHIRO作曲の楽曲(「Ivory trees」と「THE SCENT」)のヒット曲とは作曲家が異なっています。

クラシックの作曲家:Johann Pachelbelが生涯に唯一作曲した有名曲「パッフェルベルのカノン(原題:Canon in D)」の旋律を盛り込んだ3「With-You」は、TAKA作曲によるものです。他メンバーの作曲では見られない、ボーカリスト:TAKA自身のボーカリゼーションを活かしたような起伏あるメロディラインは、ヴァース、ブリッジ、サビとも印象的過ぎます。メルヘンチックで可愛らしさから儚げで切なく綴るメロディラインは、そのTAKAのボーカリゼーションがもってすれば成せるスキルフルに溢れており、聴いていてうっとりとしてしまいます。もちろん、マーチ風のリズム・セクションや、2分20秒前後からのアコースティック・ギターのフレーズを活かしたアトモスフェリックなパートなど、La’cryma Christiらしさ溢れる楽曲構成も聴けます。

いくぶん前作アルバム「Sculpture of Time」のオリエンタルで異国情緒を漂わせたサウンド・メイキングにも、打込みドラムやシンセサイザーのサウンドの比重を上げた1「未来航路」は、KOJIの作曲によるものです。アルバム冒頭部を飾るアカペラによる唄メロのメロディラインは、その幕開けに相応しいですし、他メンバーには見られないスタッカートを効かせたメロディの組み立て方や2段階のサビなどが印象的です。リズム・セクションの一翼であるSHUREのドライビングが効いたベースラインは聴き心地良さをより一層際立たせています。

そして、「yours」でのポップなメロディラインの面で、SHUREは「yours」でのポップなメロディラインの面を、楽曲「Letters」(アルバム「Sculpture of Time」収録)をよりストレートで疾走さ溢れるマイナー調の2「月の瞼」、楽曲「南国」のオリエンタルなムードもイメージしてしまう4「SHY」で聴かせてくれます。

また、HIROの作曲家によるアルバム・タイトル楽曲5「Lhasa」は、「yours」と「ours」を繋ぐ存在としても、アルバム中盤で重要な楽曲と思います。名曲「偏西風」や楽曲「In Forest」など、個人的にバンドで最も切なげなメロディを作曲する存在と思っているのですが、そのメロディラインを唄うTAKAのボーカリゼーションによる

・・・さよなら 降り出した雨が こころ濡らす・・・

・・・さよなら 君の想い出が 僕に溶ける・・・

・・・さよなら もう出会うことは できないけど・・・

・・・さよなら せめてこの詩を 君に捧ぐ・・・

とともに、アコースティック・ギターが繊細さと激しさが同居したストロークをメインとしたアンサンブルに、メロディックなベースラインのパート、そして、綴れ織りのアコースティック・ギターのソロに、中国の伝統楽器:胡弓の弦による響きなど、楽曲のテーマである追悼歌に琴線が触れ、ふと聴き手の抱くノスタルジアな側面にサウンドスケープしてしまうかもしれません。名曲に相応しい、狂おしいまでに繊細で嘆きに満ちた1曲です。そして・・・

アルバム後半「ours」のプログレッシブ・ロックな展開へ辿りつく・・・

6「Green」は、冒頭部や随所にワルツ風のリズムによる不気味なアンサンブルを盛り込みつつミスティックさを醸し出しながらも、ハードなアプローチからドラマチックな唄メロのメロディラインへとプログレッシブな展開が愉しめます。いくぶんシアトリカルさへ通じる展開は、1990年代のビジュアル・ロックシーンで活躍するバンドの楽曲にただただ見受けられたものの、La’cryma Christiの楽曲には、ギター・オリエンテッドなサイケデリックなエッセンスに満ちたプログレッシブ・ロック然とした展開を感じずにいられません。「yours」の冒頭を飾る1「未来航路」と相反するほんのりとシアトリカルさあるサイケデリックさに驚きを隠せません。

7「PSYCHO STALKER」は、グランジ風のディープなアンサンブル、TAKAの実体験をもとにした詞など、妖しげにもハードなアプローチが冴えわたる楽曲です。サビ部でのクリーントーンのギターのアンサンブルを交えたメロディやテクニカルなギター・ソロのストレートなアプローチも含め、プログレッシブ・ロックよりもビジュアル・バンドの織りなすアンサンブルが聴けます。

8「Fronzen Spring」は、吐息が緊張感を醸し出す冒頭部から左右のPANを行き交うギターの旋律が不穏さを醸し出し、ドラスティックでタイトなドラムとともに、オリエンタルで異国情緒溢れるサウンドが積み重ねられていきます。不穏さに、ときおりみせる穏やかさ、壮大さ、不可思議さなど、各パートで聴かせる様々なアプローチは、現代のワールドワイドなプログレッシブ・ロックのシーンを見渡しても、オリエンタルなムードを讃えたクロスオーバー的なアプローチの先駆ではないかと思えるアンサンブルを堪能出来ます。

9「鳥になる日」は、エフェクトが効いたギターによる余韻をもたせた妖しげな冒頭部から、ストリングスの旋律が早大に絡み合い、やはりオリエンタルで異国情緒溢れるサウンドが聴けます。ただ、8「Fronzen Spring」よりも不穏さと優しさは洗練された楽曲の曲調は、同じくビジュアル・ロックシーンから輩出し初期にはプログレッシブ・ロック的な展開を魅せたL’Arc〜en〜Cielが得意とするストリングスの壮大なバラードも彷彿とさせてくれます。

最終曲10「Zambara」は、アコースティック・ギターとエフェクトかかったボーカルによる冒頭部からして、よりディープな異国情緒さを漂わせつつも、8「Fronzen Spring」以上、次作アルバム「Magic Theatre」の名曲「Magic Theatre」と双璧を成すプログレッシブ・ロックな展開が聴けます。リズム・チェンジを多用し、プログレ・ハード、スロー・ワルツ、サイケデリックさなど、まったく予測出来ない展開に魅了されますね。いっぽうで、この楽曲を好きになったLa’cryma Christiであれば、もうその音楽性の虜になるだろうと云う試金石ともなりますし、様々な音楽ジャンルがクロスオーバー的なアプローチするプログレッシブ・ロックの素晴らしさを感じえるはずです。

シンセサイザーや胡弓などを盛り込みながらも、前作アルバム「Sculpture of Time」でのシングル曲をはじめとするキャッチなメロディの楽曲に磨きをかけたアルバム前半部と、5大プログレバンド:YesやカナダのRushに代される変拍子やリズムチェンジなどによるテクニカルなアンサンブルは健在に、より楽曲自体がプログレッシブな展開を魅せるアルバム後半部で聴き応えのあるアルバムです。

[収録曲]

1.未来航路
2.月の瞼
3.With-You(Album Mix)
4.Shy
5.Lhasa
6.Green
7.PSYCHO STALKER
8.Fronzen Spring
9.鳥になる日
10.Zambara

ヴィジュアル系と先入観なくぜひ聞いて欲しいアルバムです。

YESやRushを想起してしまうツイン・ギターとベースやドラムによる演奏技巧を駆使したテクニカルなアンサンブルにも、それ以上に楽曲単位で様々な音楽ジャンルをクロスオーバーさせてプログレッシブ・ロックな展開を聴かせるバンド、たとえば、アメリカのNative ConstructやEdensongの演奏技巧にミュージカルのようにめくるめくプログレッシブな展開を魅せるバンドが好きな方におすすめです。

当アルバムで、「Fronzen Spring」、「Green」、「Zambara」などのプログレッシブな展開の楽曲を好きになった方は、ぜひ2000年発表の次作3rdアルバム「Magic Theatre」がおすすめです。いっぽうで、シングル楽曲でのポップさに惹かれ、よりプログレッシブ・ロックの技巧(リズム・チェンジやテンポ・チェンジ)を盛り込んだ楽曲を聴きたい方には、1997年発表の前作1stアルバム「Sculpture of Time」も同時におすすめです。

総じて、La’cryma Christiでプログレッシブな感性を感じるアルバムとして、インディーズで1996年に発表されたミニアルバム「Dwellers of a sandcastle」や、1997年発表の前作1stアルバム「Sculpture of Time」、1998年発表の当2ndアルバム「Lhasa」、2000年発表の次作3rdアルバム「Magic Theatre」の4枚は聴いて欲しいです。

アルバム「Lhasa」のおすすめ曲

1曲目は、10「Zambara」
予測出来ないプログレッシブな展開も然ることながら、後半部でのTAKAの高音域に達するボーカリゼーションは、そのハイトーン・ヴォイスも1つの特徴とし知っておきながらも、当楽曲を至高の楽曲へとたらしめる存在を感じると同時に、声も楽器の一部とあらためて感じてしまいます。

2曲目は、6「Lhasa」
繊細さと力強さは、シングルのカップリングよりも、アコースティカルなトーンに抑えられつつも、サビの歌詞のメッセージ性や嘆きにも満ちたボーカリゼーションは、日本語であるからこそ、あまりにもストレートに心へ問いかけてきます。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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