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プログレおすすめ:Gerard「Sigh Of The Water」(2002年日本)

公開日: : 最終更新日:2015/12/02 2000年代, ネオ・プログレ, 日本 ,


Gerard -「Sigh Of The Water」

第111回目おすすめアルバムは、日本のプログレッシブ・ロックバンド:Gerardが2002年に発表した8thアルバム「Sigh Of The Water」をご紹介します。
Gerard「Sigh Of The Water」
元Novera、Earthshakerのキーボード奏者:永川敏郎によるバンドで、1984年に1stアルバム「Gerard」を制作しています。1980年代に、Noveraがプログレ・ハード系からハードロックへしだいに変貌するなかで、永川敏郎はギタリスト兼ボーカルの藤村幸宏らとともに彼自身が率いるバンドを並行し活動しはじめます。このバンドがGerardであり、いっぽうで、永川敏郎はEarthshakerでも活動します。

特に、ギターが編成となる藤村幸宏在籍時のアルバムには、重要なアルバムが多く、1stアルバム「Gerard」と1985年発表の2ndアルバム「Empty Lie, Empty Dream」は最高傑作と云われています。例えば、Rick Wakemanのクラシカルで優雅で大胆なタッチ、Keith Emersonの打楽的なアプローチなど、プログレッシブ・ロックの重要な地:イギリスの素晴らしきキーボード奏者に対するレスペクトが溢れてると感じます。さらに、5大プログレバンドでいえば、リズム・セクションを強めシンセ色系の濃いPhill Collinsボーカル期の幻想的でプログレッシブ・ロックのエッセンスの残り香もある1976年発表のアルバム「Wind & Wuthering(邦題:静寂の嵐)」前後のGenesisなど、1980年代に入り、ネオ・プログレ系とも云われるジャンルを想起させるイメージに近しいかもしれません。

1996年以降、藤村幸宏がバンドから離れ、ボーカルに何度か入れ替わりがあるものの、当アルバム「Sigh Of The Water」では、永川敏郎(キーボード)以外に、長谷川淳(ベース・ギター)、後藤マスヒロ(ドラム兼ボーカル)によるトリオ編成で制作されています。

先に、ギタリスト在籍時で、名作と云われる1stアルバム、2ndアルバムを引き合いに出したため、当アルバムを聴くことに心配を感じるところでしょうが、

ハード・ロック並に迫るキーボードの音圧にただただ圧倒されるアルバムです。

筆者が当アルバムを好きでおすすめしたい理由としては、トリオ編成に共通し、5大プログレバンドのうちの1つ:Emerson, Lake & Palmerのようなサウンド感もありながらも、いっぽうで、ネオ・プログレ系らしさ、強いては、イギリスのプログレッシブ・ロックの重要なミュージシャン:Eddie Jobsonのヴァイオリンを通じた流麗な構成美やファンタジックさのあるキーボードのクリエイティブ性を濃厚に感じるからです。

楽曲について

アルバムのジャケットの世界観を想起させるかのように、水の音のSEで冒頭曲「Remembering」は幕を上げ、煌びやかなクラビネット風のフレーズにはじまり、多種多様な音色(ピアノ、オルガン、メロトロン、シンセなど)をメロディアスでありながら、テクニカルに縦横無尽に弾きまくる永川敏郎の姿が思い浮かぶような躍動的な楽曲です。躍動さのあるサウンドで一気に聴かせながら、7分前後からクロージングまでのパートによる疾走感も含め、素晴らしい構成力ですね。

ドラムの後藤マスヒロがボーカルのパートを担う3曲(2「From The Deep」、4「Keep A Memory Green」、5「Cry For The Moon」)も含め、いずれの曲もファンタジックでメロウなパートが活かされています。特に、2「From The Deep」の後半部のメロトロンのサンプラーによる音色、4「Keep A Memory Green」の後半部の琴の音色を表現したかのようなフレーズなど、日本のバンドであることを感じさせてくれます。

そして、冒頭曲「Sights Of The Water」以上に、最終曲6「Aqua Dream Part One: Aqua Dream」とボーナストラック7「Aqua Dream Part Two: Spring」が強烈な印象を残してくれますね。不穏さのあるSEともとれるサウンド・メイキングを中間パートに交えながらも、オープニングとクロージングでドラマチックに響き渡るテーマが美しさを讃えたシンフォニック系とも取れる6「Aqua Dream Part One: Aqua Dream」に対し、後半部のテーマのメロディアスからクロージングまでに6「Aqua Dream Part One: Aqua Dream」に関連し「Aqua Drema」の続編ともなる展開を魅せながら、リズム・セクションも含めよりダイナミックに聴かせる前半部も印象的な7「Aqua Dream Part Two: Spring Tide」は、当アルバムを聴くうえで、ハイライトと云えるでしょう。

多種多様な音色によるキーボードのアルバムと一言で括るには難しいです。アルバム・タイトルの和訳「水の吐息」?とも取れる水のSEや、日本人が聴けば(少なくともレビューン筆者には)日本らしさとも取れる音色のフレーズを交えながらも、時にはダイナミックに、時にはミステリアスなど、表現したいサウンド・スケープを再現させるだけのクオリティが素晴らしいアルバムだと思います。

[収録曲]

1. Sights Of The Water
2. From The Deep
3. Pain In The Bubble
4. Keep A Memory Green
5. Cry For The Moon
6. Aqua Dream Part One: Aqua Dream
7. Aqua Dream Part Two: Spring Tide(※ボーナストラック)

キーボードを主体としたプログレッシブ・ロックが好きな方にはおすすめです。ボーカルのボーカリゼーションには好き嫌いが分かれるかもしれませんが、それを補って余りある鍵盤での多種多様な表現力は必聴です。

ファンタジックでメロウさであれば、イギリスのGenesisやドイツのNovalisなどのシンフォニック系のサウンド感のあるプログレッシブ・ロックバンドや、1980年代以降のネオプログレ系を聴く方におすすめです。
そして、多種多様な鍵盤での表現との観点からでは、Rick WakemanやKeith Emersonなどのプログレッシブ・ロックで大御所ともなるキーボード奏者が好きな方には、当アルバムでGerardを好きになった方には、1stアルバム「Gerard」と2ndアルバム「Empty Lie, Empty Dream」も聴いてみてはいかがでしょうか。

アルバム「Sigh Of The Water」のおすすめ曲

1曲目は、最終曲「Aqua Dream Part One: Aqua Dream」
1980年代以降のネオ・プログレ系を想起させるようなメインのテーマに一気に惹き込まれ、ボーナストラック「Aqua Dream Part Two: Spring Tide」ともに印象強く心に残ってしまったからです。

2曲目は、冒頭曲「Sights Of The Water」
当楽曲にめぐり逢ったからからこそ、当アルバムを全篇聴くきっかけともなりました。そして、1曲に溢れるキーボードの多種多様な表現力が決して散漫とならず、ダイナミックな前半部と、疾走さのある後半部の構成力が素敵と感じたからです。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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