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プログレおすすめ:Makara「Maureen」(2008年インドネシア)

公開日: : 最終更新日:2015/12/02 2000年代, インドネシア, ネオ・プログレ


Makara -「Maureed」

第103回目おすすめアルバムは、インドネシアのネオプログレ系のプログレッシブ・ロックバンド:Makaraが2008年に発表した2ndアルバム「Maureen」をご紹介します。
Makara「Maureen」
バンドの特徴は、1980年代初期に隆盛期を迎えたポンプ系やネオプロ系のプログレッシブなエッセンスに、ポップなメロディラインをKadri(ボーカル)とHarry Moekti(ボーカル)が唄いあげるツインボーカルです。他Agus Anwar(ギター)、Januaru Irawan(ベース)、Adi Adrian(キーボード)、Andy Julias(ドラム)によるメンバーが連なる6人編成でした。ただ、1986年に発表した1stアルバム「Larong Larong」以降、1年ほどの活動後、活動を休止しています。

2001年にAndy Juliasが中心に、当アルバムでも参加していないHarry Moektiを除くメンバーでバンドを再活動し、1stアルバムから22年ぶりに2008年に発売されたのでした。アルバム発売時には、インドネシアのプログレッシブ・ロックのシーンでも有名なDiscusのキーボード奏者:Fadhil Indra、ベース奏者:Kiki Calohの2名が参加しています。1stアルバム同様に、ツイン・ボーカル形態は変わることなく、もう1人のボーカルにJimmoなる人物が加わってます。

1stアルバムから22年振りのアルバムに想いを馳せてしまいますね。

楽曲について

躍動的なインストルメンタル小曲の冒頭曲「Granda Scora」から2「Senggigi」による流れを聴くことで、ポンプ系やネオ・プログレ系のエッセンスを強く感じさせてくれます。ギターもキーボードも変わったことで、1stアルバムよりもギターはよりアグレッシブさは増していますが、より唄メロのメロディラインを活かしたようなツボをおさえたフレーズが印象的です。4分前後のムーグによるキーボード・フレーズ、続くギターのソロ・フレーズにも、テクニカルなフレーズよりもロングトーンで聴かせてくれます。

いっぽうで、1989年の全米1ヒット曲「Right Here Waiting」などで有名なアメリカのミュージシャン:Richard Marxの声質を連想させるKadriのインドネシア語特有の唄い回しによるボーカリゼーションがあることで、楽曲にはエキゾチックさがうすら漂う印象すらあります。

アコースティックギターとピアノによるイントロからはじまる3「Kasih Dengarlah」は、ピアノの単音引きをメインのアンサンブルに、シンセ、ギター、ベース、ドラムが徐々に加わり、静から動へと拡がっていく約2分30秒ほどの楽曲です。

よりアジア特有のエキゾジックさを感じさせてくれるイントロのアンサンブルからはじまる4「Oh Bulan」も終始キーボードのきめこまやかなフレーズに進行していく楽曲です。さりげなくサビ部を変拍子に効かせる妙、ブレーク時のサウンド・メイキングなどもアクセントに、Kadriのインドネシア語特有の唄い回しによるボーカリゼーションがよりフィット、Makaraが奏でる世界観が当アルバムで最も濃厚に感じますね。5分前後からギターのソロ・フレーズ、6分30秒前後からのキーボード、6分50秒前後のポリリズム的なアプローチなど、さまざまなパートでさりげなく技巧をいれながら、プログレッシブ・ロックの素敵な仕上がりになっていると感じました。

この4「Oh Bulan」や2「Senggigi」だけでなく、キーボードの音色づかいが印象的な7「Prosesi」、ポップな唄メロのメロディラインが印象的にツインボーカルの掛け合いやハーモニウムをうまく活かせてると感じた8「Mahar Surga」など、尺8分前後の楽曲がアルバム中には4曲もあります。また、冒頭曲1「Granda Scora」や5「 Cartos por Mujer」、6「Emansipasi」など、1分前後にしかない次曲のInterludeともいうべき小曲がアルバムに同様に散りばめられています。

最終曲「Unfinished Song」はクラシカルなフレーズを活かした劇的なフレーズも聴かせてくれるピアノ・ソロの小曲です。楽曲タイトルを和訳した「終わらない唄」=「まだバンドは続いていく。」という意思表示をしているかのように、明らかに他楽曲とは趣きが異なる旋律を印象強く脳裏に残してくれます。また、この最終曲を聴いた後に、再度、当アルバム全楽曲をキーボードに焦点を置き聴けば、新たな発見が見つかるかもしれません。

[収録曲]

1. Granda Scora
2. Senggigi
3. Kasih Dengarlah
4. Oh Bulan
5. Cartos por Mujer
6. Emansipasi
7. Prosesi
8. Mahar Surga
9. Maureen
10. Kilas Balik
11. Unfinished Song

1stアルバム「Larong Larong」よりもアグレッシブなサウンドのアルバムですが、テクニカルさよりも、より唄メロのメロディラインに重点を置いているため、ポンプ系やネオプログレ系と云われるプログレッシブ・ロックが好きな方におすすめです。

もちろんシンフォニック系を好きな方にもおすすめですが、インドネシアの地特有の唄い回しやアンサンブルによりエキゾジックさも感じられることから、クロスオーバー系としても捉え、愉しむと良いかもしれません。

個人的な見解では、前者のポンプ系やネオプログレ系では、1980年代イギリスで有名なmarillionやpendragonなど、後者のクロスオーバー系とも捉えるシンフォニック系では、ポーランドのプログレッシブ・ロックバンド(Collage、Beleive、Satellite、Millenium)などが好きな方にはおすすめとも思いました。

アルバム「Maureeen」のおすすめ曲

1曲目は、4曲目曲の「Oh Bulan」
東アジアにあるインドネシアの地をも連想させるシンフォニックなアンサンブルの構成を感じえるからです。

2曲目は、8曲目の「Mahar Surga」
ツインボーカルによるパート分けも印象的に、当アルバム楽曲中でもメロディアスさとPOPが同居した唄メロのメロディラインが素敵だからです。かといって、甘酸っぱさの比重が大きいPOPさにまでいかず、うまく楽曲が構成されているのは、メインのメロディーメーカーの構成力の成せる業なんだろうなとも思いました。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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