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プログレおすすめ:The Worm Ouroboros「Of Things that Never Were Worm」(2013年ベラルーシ)


The Worm Ouroboros -「Of Things that Never Were Worm」

第104回目おすすめアルバムは、ベラルーシの折衷系のプログレッシブ・ロックバンド:The Worm Ouroborosが2013年に発表した1stアルバム「Of Things that Never Were Worm」をご紹介します。
The Worm Ouroboros「Of Things that Never Were Worm」
2006年にベラルーシで結成されたThe Worm Ouroborosは、Sergey Gvozdyukevich(キーボード、アコースティックギター、ベース・ギター、フルート、ボーカル)を中心に、Vladimir Sobolevsky(ギター)、Alexey Zapolsky(ベース)、Eugene Zarkhin(ドラム)、Vitaly Appow(リード)の5人編成のバンドです。

The Worm Ouroborosの音楽の特徴は、フォークをベースとしながらも、イギリスのプログレッシブ・バンド:Caravanに代表されるカンタベリー系、イギリスのCamelに代表されるシンフォニック系、フランスのMagmaやドイツのArgosに代表されるZeuhl系が持つエッセンスがアンサンブルやサウンド・メイキングに感じられるため、エレガントで優美さを感じつつも何処となく不穏な肌触りのする仕上がりに聴こえるところでしょうか。

たとえば、当レビューでも取り上げているアメリカのバンド:Deluge Granderと同様に、折衷派のプログレにカテゴライズされる所以かもしれません。

メロウさ(フォーク系、シンフォニック系)と不穏さ(Zeuhl系)という「顔」を1つの楽曲で表裏一体のようにコロコロ変え展開する楽曲の構成に耳を傾けてみましょう。

楽曲について

ピアノ、フルート、ベースが交錯し合い醸し出す不穏な雰囲気のあるイントロで冒頭曲1「L’Impasse Sainte Beregonne」は幕を上げます。Zeuhl系ともいうべきこの不穏なアンサンブルには、フルートとギターが交互に奏でるメインのテーマも含め、暗黒で切迫さや殺伐さが溢れています。

冒頭から溜息つくのを忘れ悶絶しそうに、ただただ圧倒されてしまいますね。

2「Shelieth」は冒頭曲1と打って変わり、夢うつつのように幻想さを漂わせるかのように、エレクトリック・ギターと歪めた音色によるキーボードがフレーズを重ねていく様が印象的な楽曲です。各フレーズはテクニカルというよりも複雑に絡み合う構成力と感じました。Genesisでいえば、1973年発売のアルバム「The Lamb Lies Down on Broadway」前後でのシンセを導入し洗練さ溢れるアンサンブルを想起するかもしれません。

ギターとフルートによる小曲3「Ladybird On A Moebius Strip」に続き、4「The Pear-Shaped Man」は、Zeuhl系の冒頭曲1、シンフォニック系の2とはまた異なる世界観の楽曲です。強いていえば、シアトリカルさよりもアメリカのPHIDEAUXの唄メロにおけるボーカルゼーションやフランスのプログレッシブ・ロックバンド:Gongのアタック感の効いたカンタベリー性はブレンドされた印象です。捉え方によっては、メタル系とも捉えれるアンサンブルさともなるが、終始アンサンブルの中心を担うリードのフレーズも印象的です。

6「Pirates In Pingaree」は、前曲でエコーを効かせたギターのフレーズが心地良さで聴かせてくれた小曲5「Dawn Angel」からスムーズに繋がるような冒頭から2分前後あまりのパートが印象的です。フェーザーを効かせたようなギターのフレーズがよりいっそう楽曲に奥行きを活かしたと感じるのですが、ドラムに呼応するかのようにし、2分前後以降はアンサンブルの様相ががらっと変わるパートもあります。Zeuhl系のアンサンブルで魅せてくれながらも、特に、3分30秒前後からの数秒間でギターとキーボードによる1つのテーマを相互に弾き合うパートにはファンタジックさも垣間見えます。8分間の尺の中で、不穏さと優美さを相互に行き交う構成力に溜息をついてしまいますね。

小曲7「The Magi」に続く8「Soleil Noir」もまた、前曲7の曲調を拡張したような冒頭が印象的な楽曲です。前半部のヴァースは、エコライジングされたキーボードのフレーズが夢うつつな効果を与えるようなアンサンブルに、当アルバムでも最もブリティッシュ・フォーク寄りな感覚を憶え、唄メロのメロディラインが一種の清涼さを感じさせてくれます。アルバム前半部の楽曲が同じバンドの楽曲が奏でたサウンドとも思えないぐらいな素敵な仕上がりです。ただ、そのサウンドスケープも、4分20秒前後からは、スクリーム的なボーカリゼーションとともに、ディスト―ションの効いたギターに切り裂かれ、5分30秒前後からは、複数のギターが重なり残響しながらクロージングしていきます。

9「The Curfew」は冒頭曲「L’Impasse Sainte Beregonne」よりは抑え気味に暗黒で切迫さや殺伐さが溢れた唄メロが印象的な楽曲です。他楽曲と異なるのは、ヴァースやソロパートなどに、それぞれ楽器が入れ替わりリレーのように特徴的なパートを聴かせてくれることでしょうか。ヴァースでは前半部の電子ピアノのアタック感にドラムのバスドラムの音、中間部はベース音にミュートを効かせたリズムのギターなども印象的に、ソロ・パートでは、電子ピアノやギターは複数のテーマを織りなしていき、楽曲はクロージングします。

10「Return To The Cold Sea Of Nothing」も全曲と同様ではあるが、よりカンタベリー系のエッセンスを感じながらも、唄メロとデュエットするかのようなフルートのフレーズが印象的な楽曲です。

最終曲11「Hope」もまた、3「Ladybird On A Moebius Strip」や5「Dawn Angel」に近しい楽曲の小曲です。ただ、アルバム全篇に散りばめられた他小曲は、その次に続く楽曲に繋がりがあるような配置をしているのですが、当楽曲はアルバムのクロージング曲と云う点です。思考を変えれば、当楽曲11「Hope」が、冒頭曲1「L’Impasse Sainte Beregonne」の序曲のようなイメージとしても捉えてしまいます。アルバムジャケットの世界観も合いまって、ベラルーシという地から発信された素敵な仕上がりです。

[収録曲]

1. L’Impasse Sainte Beregonne
2. Shelieth
3. Ladybird On A Moebius Strip
4. The Pear-Shaped Man
5. Dawn Angel
6. Pirates In Pingaree
7. The Magi
8. Soleil Noir
9. The Curfew
10. Return To The Cold Sea Of Nothing
11. Hope

楽曲の動にはZeuhl系をベースにしながらも、時にカンタベリー系、フォーク系、シンフォニック系のエッセンスが聴けるので、折衷派と呼ばれるプログレッシブ・ロックのジャンルが好きな方におすすめです。

または、冒頭部でも触れた、Caravan、Camel、Magma、Argos、Deluge Granderなどのバンド名から音楽性をふと連想し、聴いてみたいという方にもおすすめです。

アルバム「Of Things that Never Were Worm」のおすすめ曲

1曲目は、8曲目の「Soleil Noir」
楽曲後半部のギターのソロ・パートやZeuhl系なエッセンスを除いてみると、ボーカルのアプローチも含めたプログレ・フォーク系のエッセンスは、当アルバムの他楽曲と比べても新鮮に感じるんです。また、リードと電子ピアノをメインとしたアンサンブルも他バンドにはない当バンドならではであり新鮮です。

2曲目は、6曲の「Pirates In Pingaree」
メロウさ(フォーク系、シンフォニック系)と不穏さ(Zeuhl系)という「顔」を1つの楽曲で表裏一体のようにコロコロ変え展開する楽曲の構成力は、当バンドの特徴の1つとして挙げられます。特に、当楽曲は、メロウさ(フォーク系、シンフォニック系)と不穏さ(Zeuhl系)のバランスが半々とも取れる構成力で聴かせてくれます。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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