プログレおすすめ:YES「Magnification」(2001年イギリス)
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最終更新日:2016/05/04
2000年代, YES(5大プログレ), イギリス Alan White, Chris Squire, jon anderson, Steve Howe, YES
YES -「Magnification」
第89回目おすすめアルバムは、イギリスのプログレッシブ・ロックバンド:YESが2001年に発表したアルバム「Magnification」をご紹介します。
アメリカのハードロック・バンドで有名なBon Jovi、Aerosmith、Van HalenなどのアルバムをプロデューサーしたBruce Fairbairnによるプロデュース遺作となった1999年発表の16thアルバム「The Ladder」後に、2人のキーボード奏者(Billy Sherwood、Igor Khoroshev)が脱退します。
YESはアルバム「Magnification」を制作するにあたり、1973年発表の7thアルバム「Tales from Topographic Oceans(邦題:海洋地形学の物語)」でピアノを弾いたAlan Whiteはいるものの、新たなキーボード奏者を迎え入れず、オーケストラを起用することを選択します。
オーケストラのアレンジには、映画音楽で実績のあるLarry Groupが参加しています。初期YESからのファンであるらしく、2ndアルバム「Time And A Word(邦題:時間と言葉)」以来のオーケストラとの起用に合わせて、たとえば、4曲目「Give Love Each Day」の導入部のオーケストラのみのパートでは、映画音楽のイメージとともに、クラシックのアルバムを聴いているような印象も感じました。ただ、Rick Wakeman不在でも、ボーカルにJon Anderson、ギターにSteve Howe、ベース・ギターにChris Squire(※5曲目「Can You Imagine」のみ、ボーカル)、ドラムとピアノにAlan Whiteは健在のため、YESらしさが散りばめられています。
1970年代にYESの一側面であるテクニカルでいてメリハリのある切迫さやファンタジックのあるメロウさでシンフォニックに聴かせていた楽曲に対し、1980年代に入りテクノロジーの発達に伴う電子音の楽曲やハードレコーディングによる無機質さなどの比重が高まった楽曲の印象を抱いていました。
当アルバムでは、オーケストラを導入することで、物悲しい哀愁を帯びた楽曲でさえ、メロウでいて、どことなくあたたかみを感じつつも、映画のワンシーンなども思い描くサウンドスケープを感じさせてくれる楽曲に仕上がっているのではないかと思いました。
オーケストラが活きることで、Chris Squireの独特なベースのうねりなど、個々のメンバーによる楽器の演奏は控えめな印象ですが、YESの各メンバーの演奏にオーケストラがバランス良くミックスされるようプロデュースした共同プロデューサーのTim Weidnerの手腕によるものではないでしょうか。特に、冒頭曲1「Magnification」と続く2「Spirit Of Survival」では、YESのテクニカルなアンサンブルで成り立つ楽曲に、オーケストラが無理なく盛り込まれ、後付けされたイメージすら感じえないことが伝わります。そして、3「Don’t Go」でいったん気を落ち着かせ、あとは、残り7曲に身を委ねるだけですね。
当アルバムはリリース後、イギリスのチャートでは最高位71位ですが、もっとチャートの上位になっていてもおかしくないクリエイティブに溢れた素敵なアルバムです。
[収録曲]
1. Magnification
2. Spirit Of Survival
3. Don’t Go
4. Give Love Each Day
5. Can You Imagine
6. We Agree
7. Soft As A Dove
8. Dreamtime
9. In the Presence of
i) Deeper
ii) Death of Ego
iii) True Beginner
iv) Turn Around and Remember
10. Time Is Time
たとえば、Metalicaが1999年発表したライブ盤「S&M」、Deep Purpleが1969年発表したライブ盤「Concerto for Group and Orchestra(邦題:ディープ・パープル・アンド・ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラ)」などに代表されるオーケストラを導入したロックのアルバムを聴いている方におすすめです。
もちろん、オーケストラやYESのファンだけでなく、メロトロン、シンセサイザー、ギズモといった技術により楽曲に厚みや広がりを持ったシンフォニック系のプログレッシブ・ロックを聴いてる方々に、オーケストラをアレンジに加えたアルバムとして、ぜひ聴いて欲しいアルバムです。
アルバム「Magnification」のおすすめ曲
1曲目は「We Agree」
Steve Howeのアコースティックなギターに導かれ、オーケストラに包まれたアンニュイでいて哀愁部のある唄メロが素敵だからです。オーケストラを導入することで、物悲しい楽曲の刹那さをよりいっそう際立たせて、映画のワンシーンのようなサウンドスケープを感じます。
2曲目は「Dreamtime」
オーケストラの起用で、アルバムの他のどの楽曲よりも、ロック的なアンサンブルとオーケストラが積み上げていくシンフォニック性がとても素敵に響かせてくれるからです。
このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。
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