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プログレおすすめ:Drifting Sun「Trip The Life Fantastic」(2015年イギリス)

公開日: : 最終更新日:2015/12/02 2015年, イギリス, ネオ・プログレ


Drifting Sun -「Trip The Life Fantastic」

第112回目おすすめアルバムは、イギリスの地で活躍するネオ・プログレ系のプログレッシブ・ロックバンド:Drifting Sunが2015年に発表した3rdアルバム「Trip The Life Fantastic」をご紹介します。
Drifting Sun「Trip The Life Fantastic」

当アルバム「Trip The Life Fantastic」は、1998年発表の2ndアルバム「On The Rebound」以来、18年振りのアルバムです。Drifting Sunは、現在はイギリスの地で活躍しているものの、1996年発表の1stアルバム「Drifting Sun」や2ndアルバムの発表時とはバンドの状況が大きく変化しています。

1970年代初期に、当時はDramaと名付けられていたバンドでフランス人のキーボード奏者:Pat SandersとManu Sibona(ベース)は、フランスからイギリスへ活動の拠点を変えます。イギリスの地で、アメリカ人のボーカリスト:Rafe Pomeroyらと出逢い、ロンドンのスタジオでレコーディングしたマテリアルをフランスのレーベル:Museaへ届ける前後からDrifting Sunとしての活動が開始したと云われています。

Museaはバンドのマテリアルに興味を示し、1stアルバム「Drifting Sun」の発表にこぎつけます。しかし、その後、別のアメリカ人のChris Martiniにボーカリストは変わり、2ndアルバム「On The Rebound」が発表されることとなりました。

そして、当アルバムでは、Pat Sanders以外のメンバーが刷新され、Pete Falconer(ボーカル)、Dan Storey(ギター兼ベース)、Will Jones(ドラム)、Andrew Howard(ギター)による5人編成で制作されています。

メンバーは、イギリスでも有数のプログレッシブ・ロックバンドであるGenesisやJethro Tullに音楽の影響を受けたと云われています。1stアルバムでは、その延長上とも云えるギターを中心としたネオ・プログレ系を想起させ、2ndアルバムでは、さらにアメリカのプログレッシブ・メタル系のバンド:QueensrycheやDream Theaterのようにプログレッシブ・メタルが魅せる抒情的な音の解釈によるダイナミックさの印象を感じました。

そして、18年振りに発表された3rdアルバムはどう変貌しているのか?
Drifting Sunにとっての焦点は18年という空白の時間によるサウンドの変貌ではないでしょうか。
筆者にとっては、ほぼリアルタイムで聴くのが当アルバムであることから先入観なしで聴けています。

楽曲について

リリカルなピアノのフレーズとボーカルのみで幕を上げる冒頭曲「Trip The Life Fantastic」は、アンサンブルの中心がギターにシフトするまでの3分前後までは、1stアルバムの冒頭曲「Thundering」や2ndアルバムの冒頭曲「The Cherade」のもつ印象よりも、穏やかであるが刹那さ溢れた印象です。過去のアルバムのトーンでみても、たとえば、楽曲「Foreigners at Heart」(1stアルバム収録)よりも洗練されソフィケイトされた詩情を讃えたような繊細さも感じます。

ボーカルも1stアルバムや2ndアルバムのボーカルよりもトーンが効き、楽曲の前半部のパートのアンサンブルがより強調され、後半部のギターを中心としたアンサンブルも楽曲全体に静と動のメリハリが効いたバランスの良い楽曲と思います。個人的には、過去アルバムの冒頭曲と比べても、ドラマチックな展開が素敵な仕上がりですね。

アルバム全11曲のうち、ラスト楽曲「Last Supper」を除き、偶数番号に当たる楽曲はインストルメンタルな楽曲です。シンセとギターのアンサンブルに、淡々といてリリカルさあるピアノのソロ・フレーズが聴ける2「Peach Blossoms」、ピアノと綴れ織りのギターのアンサンブルによる4「Sunsets」、2台のギターによる高音と低音が印象深い並奏による6「Ode To Nevermind」、まさにネオ・プログレ的ともいえるギターのトーンにピアノが絡む8「XXX Forever」は、それぞれが個性溢れる特徴的な演奏で聴かせてくれます。

ボーカル入りの楽曲では、冒頭曲の動の部分の延長ともいえる3「The Wizard」、素朴さあるアコースティカルな前半から穏やかな叙情性を讃えた5「Lady Night」、シンセをアンサンブルの中心にファルセットのボーカルぜーションも聴かせる7「Five Ever」などのミドルテンポの楽曲には、ネオ・プログレ的なメロウでドラマチックなサウンド感が堪能出来ます。

最終曲「Last Supper」のギターやシンセのアプローチが1stアルバムのサウンドを彷彿させるプログレッシブなエッセンスで聴かせてくれるため、従来のファンにとってはニンマリと感じながらも、当アルバムでDrift Sunをはじめて聴いたリスナーにとってはアルバム全篇からしたら違和感を感じるかもしれませんね。Queensrycheを彷彿させるプログレ・メタル系のアンサンブルも、当アルバム全篇に通じる、リリカルさの象徴ともいうべきピアノのフレーズによるクロージングに向かうにつれて、違和感は拭いされるはずです。疾走さともない、クロージングまで駆け抜け、アルバムはクロージングします。

18年振りの空白の時間に、ピアノのフレーズが特筆すべきものがあり、当バンドがPat Sanders(キーボード)中心のバンドであることをまざまざと魅せつけられたような叙情性溢れるファンタジックな力作と感じました。

[収録曲]

1. Trip The Life Fantastic
2. Peach Blossoms
3. The Wizard
4. Sunsets
5. Lady Night
6. Ode To Nevermind
7. Five Ever
8. XXX Forever
9. Tormented
10. Last Supper

ボーカル入りの楽曲には、激しさの中に垣間見えるDream TheaterやQueensrycheを彷彿させるパートがあるものの、全体的にはGenesisやJethro Tullからのネオ・プログレ系のサウンドを聴かせてくれます。例えば、1990年代に一世を風靡し、現在もなお活動をするMarillionが好きな方におすすめです。

また、過去アルバム以上に、煌びやかでいて繊細にフレーズを紡ぎ合うピアノの比重が増しているため、ピアノを中心としたオルタナティブ・ロックを聴いてきた方にもおすすめです。

当アルバムでDrifting Sunに興味をもち、ネオ・プログレ系のアルバムを聴きたい方には、、Phin Collins期Genesisでも1980年代のアルバムやMarillionの3rdアルバム「Misplaced Childhood」などを聴いてみてはいかがでしょうか。

アルバム「Trip The Life Fantastic」のおすすめ曲

1曲目は、最終曲「Trip the Life Fantastic」
唄心を感じさせてくれるピアノのフレーズにただただ聴き入ってしまう前半部に、ギターを中心としたプログレッシブなアンサンブルで聴かせる後半部も合わせて、劇的ともいえる静と動の展開が素敵だからです。

2曲目は、冒頭曲「Five Ever」
これぞ、ネオ・プログレ系のアンサンブルと感じさせてくれる、Genesisを彷彿させてくれて懐かしくなってしまったからです。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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