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プログレおすすめ:Nucleus Torn「Neon Light Eternal」(2015年スイス)


Nucleus Torn -「Neon Light Eternal」

第229回目おすすめアルバムは、スイスのプログレッシブ・バンド:Nucleus Tornが2015年11月6日に発表した6thアルバム「Neon Light Eternal」をご紹介します。
Nucleus Torn「Neon Light Eternal」
Nucleus Tornは、1997年、スイスはイッティゲンを拠点に、マルチミュージシャンであるFrey Schnyderのソロ・プロジェクトとして活動をはじめました。

次第にプロジェクトは規模を大きくし、男性のPatrick Schaad (ボーカル)、女性のMaria D’Alessandro (ボーカル)、Rebecca Hagmann (チェロ)、Christine Schüpbach-Käser (ヴァイオリン)、Anouk Hiedl (フルート)、Cristoph Steiner (パーカッション)、男女混成ボーカルに管弦楽奏者を含む7人編成のバンドへと変貌します。

その音楽の特徴は、ソロ・プロジェクトとして開始したFrey Schnyderによるアクティビティの再現となりますが、ギター、ピアノ、チャーチ・オルガン、パーカッション以外に、ダルシマー、アイリッシュ・ブズーキ、マンドリン、ウード、バグパイプなどの民族楽器を駆使するサウンドには、独特の翳りを醸し出すアコースティック系とメタル系による静と動のアンサンブルでしょうか。前衛的な側面や弦楽器やキーボードによるサウンド・メイキングからアトモスフェリックさを漂わせ、プログレッシブ・メタル系の印象も高いことから、プログレッシブ・メタル系のジャンルとしても紹介されています。

2006年に発表した1stアルバム「Nihil」から順調にアルバムを発売していくものの、前作2014年に発表した5thアルバム「Street Lights Fail」に引き続き、デビュー当初の男女混成ボーカルではなく、女性ボーカル:Anna MurphyとAlain Ackermann(ドラム)に、フルート奏者とヴァイオリン奏者に、ベース、ドラムをゲストに迎えて、当アルバム「Neon Light Eternal」は制作されています。前衛的でアヴァンギャルドな一面をみせながらも、

前作の続編ともいうべき、随所にメタル系をまじえアコースティカルさと前衛さの深淵なるサウンドが聴けるアルバムと思います。

楽曲について

1「A Declaration of Mistrust」は、約23分にも及ぶNucleus Torn特有の感覚を濃厚に感じさせてくれる楽曲です。ダブル・ベースに、徐々にチャーチ・オルガンが響きわたるなか、ほぼリズムレスに、Anna Murphyのソプラノ・ヴォイスの唄メロが聴かれます。やや翳りに透明度もあるボーカリゼーションには深淵の奥底から問いかけるような錯覚さえ感じえます。2分10秒前後に、ギターの短めのフレーズを合図に、メロトロン・シンセ(と思われる)による仄かなスペーシーさ、不協和音による前衛さも交え、ギター、ダルシマー、ブズーキなどを交えたアンサンブルが展開します。途中、メタル系のギターのリフとともに、フルートによる旋律から徐々に音数を減らし、ピアノの前衛的なフレーズ、ピアノとフルートのアンサンブルによるヴァースのパート、チャーチ・オルガンとギターがメインによるヴァースのパートなど、深い闇に綴られるかごとく進行していきますが、19分前後からは、メロトロンとギターがメインのアンサンブルがダイナミックに奏で、高らかにボーカルのパートとともに、ハープシコードやギターのアルペジオの旋律が交錯し合いクロージングへと向かいます。

従来のメタル系のエッセンスを楽曲中盤にアクセントとして盛り込みながら、アコースティカルなアンサンブルをメインに、より深みのあう幻想よりも眩惑させる世界観を堪能出来ると思います。

2「Nothing Between You and Death」は、スラッシュ・メタル風のアンサンブルに、拡声器を交えたボーカリゼーションなども含め、語り調のヴァースが聴けます。徐々に、不協和音に満ちた前衛的なサウンドを盛り込みつつ、4分前後からは、ピアノによるアンサンブルとヴァースのボーカリゼーションでは眩惑な世界観を感じさせつつ、8分前後からはメロトロン・シンセにメタル系のアンサンブルへ移行します。ダークで陰鬱さは1「A Declaration of Mistrust」よりもメタル系の比重も豊かに聴かせてくれます。

3「Street Lights Fail」は、前作2014年発表の5thアルバム「Street Lights Fail」のアルバム・タイトルであり、当アルバムの最終曲に配置されていることに、続編のアルバムかと印象的な楽曲です。

ゆったりとアコースティック・ギターの旋律とシンセサイザーの浮遊さあるアンサンブルで幕をあげ、そのアンサンブルの印象を延長するかごとく、ヴァースの唄メロのメロディラインが聴けます。アコースティック・ギターのリリカルなフレーズ、ダークさに歪みを効かせたサウンド・エフェクト、ヴァイオリンの旋律などが印象的に、起伏なく、ほぼ淡々と音が次々に連鎖するかごとく綴られていきます。連鎖し綴られるも、最後は消え入るように、ふとクロージングします。

アルバム全篇、多種多様な民族楽器を利用しながらも、エキゾチックさやオリエンタルさではなく、北欧のプログレッシブ・ロックのミュージシャンが奏でる冷たい情景に近いサウンドが聴けます。メタル系のエッセンスを加えながらも、ハープシコード風のサウンドやメロトロン・シンセの旋律がアコースティカルな世界観の翳りや抒情さを際立たせ、Anna Murphyの透き通ったソプラノ・ヴォイスが心へ問いかけてくる眩惑さを感じ聴き入ってしまうアルバムです。

[収録曲]

1. A Declaration of Mistrust
2. Nothing Between You and Death
3. Street Lights Fail

メタル系や前衛的なエッセンスはあるものの、メタル系や前衛的なエッセンスは楽曲を彩る1つのモチーフ、パーツととらえ、主に、翳りや抒情さあるダークで薄暗いアコースティックさが好きな方におすすめです。

たとえば、北欧スウェーデンでいえば、Anekdoten、Agusa、Carptree、Kaukasus、Pattosなどの翳りに抒情さあるバンドから、リズムセクションのメリハリを除いた深淵な調べが好きな方におすすめです。

当アルバムを聴き、Nucleus Tornに興味を持った方は、メタル系のエッセンスの比重が高いですが前作の5thアルバム「Street Lights Fail」も合わせて聴くことをおすすめします。

アルバム「Neon Light Eternal」のおすすめ曲

※アルバム1枚を通じ全インストルメンタルな楽曲ですの、おすすめ曲は控えさせていただきます。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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