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プログレおすすめ:Glass Hammer「The Breaking Of The World」(2015年アメリカ)


Glass Hammer -「The Breaking Of The World」

第96回目おすすめアルバムは、アメリカのシンフォニック系のプログレッシブ・ロックバンド:Glass Hammerが2015年4月25日に発表した15thアルバム「The Breaking Of The World」をご紹介します。
Glass Hammer「The Breaking Of The World」

2010年発表の11thアルバム「If」以降、Glass Hammerは、Jon Davisonがリード・ボーカルと担当していました。いっぽうで、5大プログレバンドのうちの1つ:YESの当時のボーカル:Benoit Davidが呼吸不全を患い脱退したことから、2012年に、YESのボーカルも兼任しはじめます。

ファンの方であればご存知の通り、Jon Davisonの声質は、YESの黄金期のボーカルを担ったjon Andersonの声質に似ています。アルバム「If」以前にもYESに近しいシンフォニック系のエッセンスはあったものの、よりYESっぽさも感じさせてくれます。

実は、筆者にとっては、巷で噂されるほど、YESっぽさが目立っている印象をもち、過去聴いていませんでした。どちらかというと、同国のKANSASなどのようにアナログ・シンセサイザーやメロトロン、ハモンド・オルガンによるプログレ・ハードなエッセンスの印象が強いんですよね。おそらく、それがテクニカルでいてメロウなYESに、クラシック音楽や変拍子の特徴でGentle Giantがコンパイルしていると印象をもつ所以でしょうか。

ただ、当アルバム「The Breaking Of The World」には、Jon Davisonは参加していないんです!

前作に引き続き、Steve Babb(ベース、キーボード)、Fred Schendel(キーボード)、Aaron Raulston(ドラム)の3人が残り、新たに、Carl Groves(男性ボーカル)、Susie Bogdanowicz(女性ボーカル)、Kamran Alan Shikoh(ギター)の加入で、フロントが一新しています。また、ゲストにフィンランドのプログレッシブ・ロックバンドのTHE SAMURAI OF PROGのSteve Unruh(ヴァイオリン、フルート)を迎えています。

Jon Davisonの不参加により、どのようなサウンドの展開を示すのか?

当バンドのメイン・ソングライティングは、Steve BabbとFred Schendelが中心であることは、デビュー時から変わらないことであり、これまでも素敵な楽曲を送り届けてくれてたのだから、5大プログレバンドの1つ:YESに加入した元ボーカルの所属バンドとしての肩書に甘んじることのないクリエイティブ性を見せてくれます。

楽曲について

冒頭曲「Mythopoeia」は、クラビネットをアンサンブルのメインに、明るめな曲調が印象的な楽曲です。4分前後から6分30秒前後のアコースティックギターのアンサンブルのみの静寂なパートでは、新たな男性ボーカル:Carl Grovesの声質がくっきりと伝わり、これまでのアルバムと比べてもGlass Hammerらしさを失わず、Glass Hammerのボーカルとしても違和感はないと感じました。後半部の変拍子を交えた手数の多い展開も、楽曲全体の印象を損なうことなく、オープニングに相応しい仕上がりです。

メインのボーカルやギターが変わったことも、これまでのGlass Hammerらしさあるメロウさやコーラスワークに、ドライブ感の効いたリズムが合わさって、良い方向へ結実しているのではないかと思います。

2「Third Floor」は、よりコンテンポラリーなサウンドメイキングがなされており、おそらくギター奏者の変更により、アルバム「IF」以前あったようなサウンド感が少し戻ってきたのではないかと思いました。中間部の女性ボーカル:Susie Bogdanowiczのヴァースがアクセントと思わせるぐらいに、ヴォーカルパート以外をGentle Giantのように変拍子を多用したギターとシンセによるリフが占めるのが印象的な楽曲です。

3「Babylon」は、ギターとフルート、ハモンド・オルガンとメロトロンなど、多種多様な楽器が絡み合うイントロからのパートが印象的な楽曲。1分30秒後からのヴァースは、そのイントロを受け、軽快さのある唄メロですが、ところどころに、メロトロンによる物悲しい音のフレーズに違和感を感じながら聴き入ってしまいます。ヴァースとともに躍動するフルートなども交え、軽快な曲調だけれど、どことなく不穏さや翳りのある不思議な感覚が新鮮ですね。

コンテンポラリー色が強い40秒前後の短曲4「A Bird When it Sneezes」を挟み、エレガントなタッチのピアノのフレーズとともに5「Sand」は幕を上げます。ピアノだけをバックに唄い上げる世界観の透明度には、艶やかさや優雅さを5分間にコンパイルしており、前半部の楽曲(1、2、3)があるからこそ、前作アルバムにはなかった感覚を違和感なく聴けます。4分前後以降に弾かれるギターも1つのフレーズに過ぎないぐらいに、しっかりとしたクオリティで聴かせてくれますね。

6「Bandwagon」はドラムやオルガンのタッチに変則度の高さ、それに負けるとも劣らぬヴァイオリンの演奏も交え、当アルバム中でも最もアップテンポでパンキッシュな楽曲です。

コンテンポラリーの結実は、戦前ブルースを想起させるイントロの世界観に導かれ、メロトロンの物憂げな旋律を伴う、女性ボーカル:Susie Bogdanowiczのヴァースによる7「Haunted」でしょうか。

その7「Haunted」の物悲しさが強く心に残れば残るほどに、以降の2曲(8「North Wind」、9「Nothing, Everything」)に、従来のYES風のメロウでいて、ファンタジックなサウンドを強いて感じてしまいますね。

アルバム前半部から中間部の楽曲(1~7)には、唄メロも含めて11thアルバム「If」以降に垣間見えた物悲しさや、やや切迫感のあるシンフォニック系の比重よりも、12thアルバム「Cor Cordium」の楽曲「Salvation Station」にも垣間見えたサウンド・メイキングであるハモンド・オルガンが印象的なカンタベリー系とも思わせるコンテンポラリーなサウンド・メイキングが軽快な印象をもたせてくれます。それは、新旧のプログレッシブ・ロックの名曲をカバーするTHE SAMURAIOF PROGのSteve Unruh(ヴァイオリン、フルート)が加わり、アンサンブルを彩っていることも影響があるからかもしれません。

もちろん、完全にYES風のシンフォニックさや、クラシカルでハードなプログレ感がなくなったというわけではなく、これまでのアルバムにもある音楽性やアルバム後半の楽曲(5、7、8、9)のようなクリエイティブさがあるのもGlass Hammerならではないでしょうか。

Jon Davisonが抜けても後退したと思わせない、これまでのアルバムに溢れるGlass Hammerの良さを活かしつつ、まだまだ躍進していこうという素敵なアルバムに仕上がっていると思います。

[収録曲]

1. Mythopoeia
2. Third Floor
3. Babylon
4. A Bird When it Sneezes
5. Sand
6. Bandwagon
7. Haunted
8. North Wind
9. Nothing, Everything

プログレッシブ・ロックのジャンルでも、カンタベリー系に代表されるコンテンポラリーな作風を活かした楽曲の印象もあるため、メロディアスな唄メロを活かしたカンタベリー系やコンテンポラリー系のプログレッシブ・ロックが好きな方におすすめです。

また、メインでソング・ライティングを行うメンバーが健在であることから、YES風のシンフォニックさやクラシカルでハードなプログレのエッセンスが完全になくなったというわけではありませんので、メロウでシンフォニックなプログレッシブ・ロックが好きな方にもおすすめです。

Glass Hammerの多作さ

後世に、YESという著名なバンドに、ボーカルが引き抜かれたと、今後、印象が残るかどうか分かりません。
しかしながら、筆者が、Glass Hammerで最も凄いと感じているのは、1993年の1stアルバム「Journey Of The Dunadan」から当アルバムまでの約18年間で、ライブアルバム2枚を挟みながら、スタジオアルバムを16枚発売している点です。ライブアルバムを含めれば、1年に1枚のアルバムを発売し続けて、18年目を迎えてるんです!

新たなメンバーを加え、従来のGlass Hammerの音楽を活かしつつ、さらに創造していきたいという探究心溢れる姿勢に触れてる証拠だと思うんです。

アルバム「The Breaking Of The Wolrd」のおすすめ曲

1曲目は、7曲目の「Sand」
「箱庭プログレ」ともいうべき世界観。コンテンポラリーでいて、唄メロに物悲しさを感じながらも、優雅に聴こえてしまう強弱のバランスがほぼ一定のピアノの伴奏のみによるヴァースがとても印象深いんです。

2曲目は、8曲目の「North Wind」
Glass Hammerをリアルタイムで体感したのは、ボーカルがJon Davisonであったアルバムであるため、メロウでいてファンタジックなエッセンスのサウンドを求めてしまう心があり、当楽曲を聴けば、少し安堵してしまうのがもどかしいんです。そう分かっていても、素敵な楽曲に仕上がっています。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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