プログレおすすめ:King Crimson「In The Wake Of Poseidon(邦題:ポセイドンのめざめ)」(1970年イギリス)
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最終更新日:2015/12/06
1970年代, King Crimson(5大プログレ), イギリス, フルート, メロトロン Greg Lake, Ian McDonald, Keith Tippett, king Crimson, Michael Giles, Peter Giles, Peter Sinfield, Robert Fripp
King Crimson – 「In The Wake Of Poseidon(邦題:ポセイドンのめざめ)」
第22回目おすすめアルバムは、イギリスのKing Crimsonが1970年に発表した2ndアルバム「In The Wake Of Poseidon(邦題:ポセイドンのめざめ)」をご紹介します。
1stアルバム「In The Court Of The Crimson King(邦題:クリムゾン・キングの宮殿)」発表後、Ian McDonald(キーボード、フルート、サックス)が脱退します。と同時にGreg Lake(ボーカル、ベース)、Michael Giles(ドラム、パーカッション)も脱退してしまいます。
当アルバムでは、Robert Fripp(ギター)、Mel Colins(サックス、フルート、キーボード)、Peter Giles(ベース)、Peter Sinfield(詩、照明)に、新たにKeith Tippett(ピアノ)、Gordon Haskell(ボーカル)がメンバーに加わります。ただ、Greg LakeとMichael Gilesはアルバムの録音に参加しています。ただ、Greg Lakeは、2「Cadence And Cascade(邦題:ケイデンスとカスケイド)」ではボーカルを担当するGordon Haskellを除く全てのボーカルのみです。
収録楽曲の特徴から、とかく1stアルバムと比較されてしまい、評価が分かれるアルバムです。音楽的には決して駄作が一切なく、以降緊張感の高い楽曲群を発表していく数々のアルバムの1枚であるにも関わらずです。
個人的には、長いライブツアー後に疲弊し脱退してしまったIan McDonald(キーボード、フルート、サックス)の存在は大きいのではないかと思いました。このバンドにメロトロンや管楽器(サックス、フルートなど)をもたらしたことや、2007年のライブアルバム「エピタフ」のライナーノーツにも記載されてますが「メロディアスなフレーズ」という点です。自分がこのバンドが好きだと感じるポイントがポロっと剥がれ落ちた感覚だったんです。
楽曲について
当アルバムは1stアルバムのメンバーによる1968年フィルモアイーストでのラストライブでもレパートリーに入っていた「A Man, A City」(2の原曲)と「Mars」(7の原曲)が含まれてます。
Keith Tippettが加わることで、1stアルバムで感じられたJazz色はより濃く感じます。3rdアルバム「Lizard」が好きな自分には、この2ndアルバムは過渡期であり、プログレッシブに成長し続けるバンドとしての1つの財産と1つの未来と考えてしまうんです。如実にでているのが6「Cat Food」だと思います。The Beatlesの1968年発表シングル曲「Come Together」のようなフレーズに、猫の動作のように思えるKeith Tippettのピアノの音階は、3rdアルバム「Lizard」を予兆させるのに十分な演奏です。Peter GilesのベースやMichael Gilesのドラムも呼応するかのように他楽曲も含め、フリージャズな即興さも溢れています。
いっぽうで、「Peace」をアルバムのテーマとした、冒頭曲1「Peace – A Beginning」、7「Peace – A Theme」、最終曲8「Peace – An End」がアルバムの冒頭、中間、最後に散りばめられてます。アルバムの始まりと終わりでコンセプト感を提示するよりも、それぞれが印象的なギターのフレーズを奏で、アルバム全体にバランスを与えている気がしました。また、アコースティックギターで独奏をする小曲という点で、Robert Frippによる珍しい演奏ですよね。さらには、7「The Devil’s Triangle」の後半部には1stアルバムの最終曲5「In The Court Of The Crimson King(邦題:クリムゾン・キングの宮殿)」のリフレインが聴けます。
7「The Devil’s Triangle」はホルストの「火星」をモチーフとしメロトロンの多重録音での表現となっていますが、インストルメンタルであり、音が大きく小さくを繰り返しているだけに聴こえることで、人によっては好き嫌いが分かれるかもしれません。個人的には、約11分をかけ各楽器パートが緊張感を保ち演奏し続けることに鳥肌がたつほどに驚きを隠せなくなるんですよ。
「21st Century Schizoid Man」をよりJazz色強く変奏したと思われる2「Pictures Of A City(including 42nd At Treadmill)」、「epitaph(邦題:エピタフ(墓碑銘))」と同様にメロトロンが鳴り響き、無音の間が緊張感を産む4「In The Wake Of Poseidon」、Greg Lakeのボーカル曲「I Talk To The Wind(邦題:風に語りて)」よりも少年っぽさを感じさせるGordon Haskellのボーカルで素朴さが冴える曲3「Cadence And Cascade」など、1stアルバムと対をなす印象の楽曲があるため、比較してしまう気持ちは分かるけれども、素晴らしいアルバムであることに変わりはありません。
[収録曲]
1. Peace – A Beginning(邦題:平和/序章)
2. Pictures Of A City(including 42nd At Treadmill)(邦題:冷たい街の情景(インクルーディング:トレッドミル42番街))
3. Cadence And Cascade(邦題:ケイデンスとカスケイド)
4. In The Wake Of Poseidon (including Libra’s Theme)(邦題:ポセイドンのめざめ(インクルーディング:リブラのテーマ)
5. Peace – A Theme(邦題:平和/テーマ)
6. Cat Food
7. The Devil’s Triangle
– a. Merday Morn
– b. Hand Of Sceiron
– c. Garden Of Worm
8. Peace – An End(邦題:平和/終章)
1stアルバム「In The Court Of The Crimson King(邦題:クリムゾン・キングの宮殿)」が全てと思っている方には厳しいかもしれませんが、その前後の抒情性が好む方で、まだ当2ndアルバムを聴いていない方におすすめです。第1期のキングクリムゾンすべてを感じえたい方にはぜひお聴き頂きたいですね。
Ian McDonaldの存在
King CrimsonはIan McDonald脱退後のアルバムでも好きなアルバムが多くあります。これからも「おすすめプログレアルバム」として紹介していく一方で、Ian McDonaldの音楽性も好きなんです。脱退後に続くサウンド・クリエイトは、いろいろな場所で表現されています。プログレッシブ・ロックの著名なミュージシャンが結成したForeignerは「プログレ」という概念や音楽性を知らずに出逢ったバンドでした。アルバムを聴けば聴くほど、「プログレ」を知れば知るほど、そのサウンド・クリエイトに魅了されてしまうんです。
みなさまはいかがですか?
「In The Wake Of Poseidon」のおすすめ曲
1曲目は5曲目「Peace – A Theme」
どの楽曲にも緊張感が溢れてますが、当曲が異なるのは、Robert Frippの清涼感あるギターのフレーズが聴ける小品だからです。ほんの短めな楽曲ですが、心を奪われてしまいます。
2曲目は4曲目「In The Wake Of Poseidon (including Libra’s Theme)」
1stアルバムの「epitaph(邦題:エピタフ(墓碑銘))」と比較し聴きがちになってしまいます。ただ、ふとしたことで邦題「ポセイドンのめざめ」の「目覚め」にあたるwakeは、動詞wakeの訳「めざめ」と名詞wakeの訳「航跡」「通夜」「徹夜祭」を取り違えた誤訳と知りました。本来は「ポセイドンの跡を追って」、「ポセイドンに続いて」らしいです。それをきっかけに、当曲に新しい視野を向け聴くようになっていました。
このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。
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