プログレおすすめ:Delusion Squared「Ⅱ」(2010年フランス)
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最終更新日:2015/12/29
2010年‐2013年, シンフォニック, フランス, 女性ボーカル Delusion Squared
Delusion Squared -「Ⅱ」
第28回目おすすめアルバムは、フランスのゴシックさが垣間見えながらもシンフォニック系のプログレッシブ・ロックを聴かせてくれるバンド:Delusion Squaredが2010年に発表した2ndアルバム「Ⅱ」をご紹介します。
Steven Francis(ギター、キーボード、ドラム)、Emmanuel de Saint Meen(ベース、キーボード)に、ボーカル兼ギターのLorraine Youngによる3人編成のバンドです。
そのサウンドは、2010年発表の1st同名アルバム「Delusion Squared」でも垣間みえたゴシック系のアンサンブルに、プログレッシブ・ロックでもシンフォニック系のエッセンスが溢れています。アコースティック・ギターのサウンド・メイキングでの2つの要素(ストロークとアルペジオ)は楽曲全体を彩る重要なポイントだと思います。骨子にシンセがサウンドに厚みをもたせ、ドラムのシンバル音が鳴り響くと同時に、静から動へ展開するさまがドラマチックなんです。さらに、紅一点のLorraine Young(ボーカル)の透き通るようなソプラノのボーカリゼーションは決して浮わつかず、いっぽうで可愛いらしくとも取れるボーカリゼーションを感じられます。
女性ボーカルによるアコースティックなパートを活かしたクールなアンサンブルが素敵な1枚です。
楽曲について
Lorraine Youngによるアコースティック・ギターの物悲しさが漂うフレーズで幕をあける冒頭曲1「Double Visions」は、1stアルバムの冒頭部を飾った「The Very Day」とも甲乙つけ難い素敵な仕上がりの楽曲なのですが、よりサウンドに厚みを持たせるディスト―ションのかかったギターのリフをメインとしたアンサンブルが印象的な楽曲です。拡声器によるヴァースのパートと、ギター、ベース、ドラムという基本ピースが奏でるアンサンブルの切れ味は凄まじく、まさに「クール」という言葉が似つかわしいです。
冒頭曲からこれだけの切れ味のある演奏が聴けると、2曲目以降も期待せずにはいられません。
そして、2分弱のプログレッシブな展開のオープニングをもつ2「Necrogenesis」、アコースティック・ギターをメインのアンサンブルに幽玄なプログレ・フォーク的なアンサンブルが進行する3「Faith Mission」、ユニークなシンセのリフがリードする4「Recipe for Disaster」など、期待を裏切らないサウンドを聴かせてくれます。
ホッと一息をつくようなイントロではじまる5「Verdical Paradox」、6「Revelation」、7「Abduction」、8「Naked Solipsism」もまたアコースティックなパートを印象的にも、シンフォニック系のバンド・アンサンブルが楽曲を彩ります。なかでも6「Revelation」は、2分30秒前後からハードロックばりのギターのリフや4分前後の開けた展開、5分前後からのアコースティック・ギターのフラメンコ風のフレーズなど、他楽曲以上に躍動的です。8「Naked Solipsism」では、アコースティック・ギターのイントロでのストロークとヴァースでのアルペジオが凛として際立つのが印象的な楽曲です。開するさまがドラマチックですね。
最終曲9「Unexpected Messiah」は、8「Naked Solipsism」の少しくすんだイントロのフレーズよりもやや強めのクリーンなトーンのギターが、アコースティック・ギターのストロークにオブリガードに絡み合うアンサンブルが印象的な楽曲です。2分45秒前後からディスト―ションがかかったギターのフレーズ、5分30秒からのギターのフレーズなど、途中からユニゾンで奏でるギターとともにプログレッシブな展開を魅せてくれながらも、終始、アコースティック・ギターのストロークが醸し出すリズム感が躍動さで聴かせてくれますね。楽曲がクロージングしたと感じると同時に拡声器を通じた男性のヴォイスのコラージュと女性の短めのナレーションのSEでアルバムはクロージングします。
全篇、エレクトリックなギターを含む基本4ピースを活かしたバンドのアンサンブルにも、Lorraine Youngが奏でるアコースティック・ギターのフレーズ(アルペジオやストローク)がそれぞれの楽曲の重要な要素であることがじわじわと伝わるかと思います。アコースティック・ギターを含めたアンサンブルにゴシック系の演奏が融合するバンドのアプローチは、他のプログレッシブ系のバンドとは異なる特徴ではないでしょうか。
[収録曲]
1. Double Visions
2. Necrogenesis
3. Faith Mission
4. Recipe for Disaster
5. Verdical Paradox
6. Revelation
7. Abduction
8. Naked Solipsism
9. Unexpected Messiah
ディスト―ションの効いたハードな演奏でも、ベースやドラムとのアンサンブルが素敵であり、ゴシック系のバンドが好きな方にも、アコースティックなパートを巧みに取り入れたプログレッシブな楽曲構成を聴きたい方におすすめです。
当レビュでもDelusion Squaredに興味を持たれた方は、2010年の1st同名アルバム「Delusion Squared」や、その1stアルバムと当アルバム「Ⅱ」を含み3部作の最終作となる2014年発表の3rdアルバム「The Final Delusion」を聴いてみてはいかがでしょうか。
アルバム「Ⅱ」のおすすめ曲
1曲目は冒頭曲「Double Visions」
はじめて当アルバムを聴いた時にメリハリの効いた楽器のアンサンブルに対し、キュートさもあるボーカルが存在感に負けない印象を与え、それでいても可愛らしさも声質のギャップに驚きを隠せなかったからです。
2曲目は8曲目「Naked Solipsism」
アコースティックギターのアルペジオとストロークが楽曲を終始彩り、どことなくLed Zeppelinの1970年発表の「Starway To Heaven」を想像してしまい、静と動のメリハリや構成力が素晴らしいと感じたからです。
このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。
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