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プログレおすすめ:Gentle Knife「1st Album」(2015年ノルウェー)

公開日: : 最終更新日:2015/12/30 2015年, シンフォニック, ノルウェー, フルート, メロトロン, 女性ボーカル


Gentle Knife -「1st Album」

第151回目おすすめアルバムは、ノルウェーのシンフォニック系のプログレッシブ・バンド:Gentle Knifeが2015年5月に発表した1st同名アルバム「Gentle Knife」をご紹介します。
Gentle Knife「1st Album」
Gentle Knifeは、ノルウェーの首都オスロで、2012年にギタリスト3人(Ove Christian Owe、Eivind Lorentzen、Ole Michael)が集い、後に、Eivind Lorentzenの呼びかけに応え、Odd Grønvold(ベース)、Ole Martin Svendsen(ドラム)、Brian M. Talgo(ビジュアル、歌詞、メロトロン)、Pål Bjørseth(キーボード、フルート)の7人編成になります。

2013年春に、この7人で当アルバムの最終楽曲「Coda-Impetus」をスタジオで演奏したことを皮切りに、2014年春には「Eventide」、「Tear Away The Cords That Bind」、「Beneath The Waning Moon」、「The Gentle Knife」などの楽曲が録音されます。元々EP制作を目的にプロジェクトは進行していましたが、最終的に、当アルバムの残りの楽曲(「Our Quiet Footsteps」、「Remnants of Pride」、「Epilogue-Locus Amoenu」)を仕上げます。

途中、Ole Michael(ギター)の脱退がありながら、Astraea Antal(フルート、ビジョン)とThomas Hylland Eriksen(サックス)の管弦奏者に、男性ボーカル:Håkon Kavli、女性ボーカル:Melina Ozの男女2人のボーカリストが加わることで、10人編成のバンドとして、当1stアルバム「Gentle Knife」は発売されました。

その音楽性の特徴は、バンドのメンバーが揃って語るイギリスの5大プログレバンド:King Crimson、Genesis、Yesをはじめとした、1970年代前半のプログレッシブ・ロック隆盛期に対する思慕ではないでしょうか。特に、King Crimson第1期のアルバム(3rd「Lizard」や4th「Islands」)で感じえるジャズ的な解釈のアプローチや第2期のアルバム「Red」に垣間見える硬質なギターのリフ、YesやGenesisのメロウさの側面を受け継ぐポップさあるネオ・プログレ系のアプローチなど、ヴィンテージなサウンドを醸し出す楽器群(フルート、メロトロン、サックス)を含め、1970年代へのリスペクトを強く感じさせてくれるんです。

コンセプト「呪われた森の奥深くに迷いこむ不運な放浪者の物語」をアルバムを聴き終える頃には、スウェーデンのプログレッシブ・ロックの先達のスタイルを意識するよりも、メンバーが影響を受けた1970年代のプログレの造詣さを純粋に奏で聴かせることが心に痛いほど伝わってくると思います。

楽曲について

悠々とシンセは鳴り響き、冒頭曲「Eventide」は幕を上げます。ギターのリフが段階をなぞるかのようなオープニングには、King Crimsonのアルバム「Red」の楽曲を彷彿とさせるメタリックさに仄かな抒情さを感じるため、おそらく、1970年代のプログレのファンであれば、オープニングからして心躍らずにいられなくなるはずです。そして、リリカルなピアノとフルートが寂しげに響き合いつつ、1分30秒前後からのヴァースのアンサンブルへ繋がっていきます。イタリア・プログレの大らかさかを感じえるHåkon Kavliのボーカリゼーションと、キュートに高音を聴かせつつもたおやかに唄うMelina Ozによる男女混成ボーカルにも耳を奪われがちですが、アコースティック・ギターのストロークとミニマルなピアノのシークエンスのアンサンブルに、ヴァースの合間を埋め尽くすサックスの音色で、楽曲のタイトルを和訳した「夕暮れ」に似つかわしいサウンドスケープを感じさせてくれます。ヴァースの唄メロをなぞるギターのソロ・フレーズとともに、大編成の利を得て、ミニマルなピアノのシークエンスに代わり、ギターのミニマルなシークエンスやエレクトロなリフなど、ヴァースごとに様々な音色やフレーズを変えることに気が付けば、「夕暮れ」が消えゆく瞬間まで表現するかのような繊細なサウンド・メイキングはまるでロックの小オーケストラのようにも感じます。

楽曲の後半部で性急なギターのソロが聴けますが、あくまでミドルテンポに夕暮れ時の淡い情景と、刻々と移りゆく色彩を繊細にも表現しているかのようです。

2「Our Quiet Footsteps」は、マーチ風のタイトなリズムで、冒頭部のサックスとギターによるユニゾンのリフからはKing Crimsonの3rdアルバム「Lizard」や4thアルバム「Islands」期のジャズ系のエッセンスを想起させてくれます。そして、サスティーンを効かせたトーンのギターと不穏な鍵盤にフルート絡むパートを挟み、男女ボーカルのデュエットによるアンニュイさか
ら大らかに拡がる唄メロのメロディラインが展開されていきます。ヴァースの合間を高らかに吹かれるトランペット、7分30秒前後の薄暗系のハードロック調のギター・リフにオルガンのソロ、10分前後のエモーショナルなギター・ソロなどをアクセントに、10分40秒からは、冒頭部のギターとサックスによるユニゾンのリフのパートへと戻ります。そして、テクニカルな速弾きのギター・ソロが当パートに交錯しながらも、続いて冒頭部のマーチ風のタイトなリズムが聴かれクロージングします。

3「Remnants of Pride」は、ムーディでメロウな楽曲の唄メロのメロディラインの展開には、混成男女ボーカルによるデュエットも合い間って、どことなくアジア映画の哀愁を帯びたテーマ曲のように、映画のワンシーンをサウンドスケープさせてくれます。短めのギター・ソロ後も、ヴァースの合間を埋め尽くすようなサックスのフレーズも含め、より一層哀愁さを讃え展開していきますが、4分40秒前後からの練り上げられたギターのソロに、フリーキーに鳴り響くサックスの音色には、Robert Frippがサウンドスケープで参加したKing Crimson Projektの「Scarcity Of Miracles」の楽曲のように、迸る熱情を抑えながらも、耐えきれず煮え切れない想いを表現しているかのように感じてしまいました。楽曲のタイトルを和訳した「プライドの残骸」を楽曲全体で表現するかのように、それが自然とKing Crimsonの薄暗系の叙情さの一端を垣間見せたと思うんです。

トレモロを効かせたフレーズを交えメタリックなフレーズを聴かせるギターで幕を上げる4「Tear Away the Cords That Bind」は、終始ミステリアスなメロディラインが印象的な楽曲です。前半部にHåkon Kavli、後半部にMelina Ozで分かち合うヴァース
も変わることのない楽曲の展開は、アルバムのコンセプト「呪われた森の奥深くに迷いこむ不運な放浪者の物語」をイメージするに十分過ぎるほど、感じさせてくれます。

5「Beneath the Waning Moon」は、アコースティック・ギターのストロークとギターのアルペジオをアンサンブルに、フルート、サックス、サスティーンを効かせたギター、変わる変わる叙情さのあるテーマを奏でていくインストルメンタルの楽曲です。Genesisのメロウさから派生したネオ・プログレ系を彷彿とさせる素敵な仕上がりです。

続く6「The Gentle Knife」もまた、メロトロンとクリーントーンの力強いギターのストロークをメインに、寂しげな唄メロのメロディラインを唄い上げるMelina Ozが印象的です。フリーキーに不穏にも絡み合うサックスの音色、2分前後のエッジの効いたギターのリフとのボーカルのブレイクにも、King Crimsonの楽曲「Circus」(アルバム「Lizards」収録)を彷彿とさせるアヴァンギャルドさも交え、同国スウェーデンのAnekdotenの構成美さを想起してしまいます。

7「Epilogue: Locus Amoenus」の残響さを効かせたシンセのプレイからは、アンビエント風に浮遊する音の粒達に、森の奥深く精霊が揺れているかのごとくサウンドスケープさせてくれます。たとえば、アメリカのAlbum Leafに代表されるインストルメンタルなポスト・ロックの解釈とも取れるサウンド・メイキングも感じえますし、バンドが決して1970年代だけでなく現代のモダンなジャンルも吸収しようとする姿勢が伝わる一端とも思い、3分30秒前後からのスパニッシュ風のギターに、フルートやサックスがアンサンブルに加わる展開は、当バンドの楽器編成だからこそ出来るプログレッシブさと思いました。当アルバムの中では異色の展開にも、当バンドが持つスキルや嗜好の幅の広さを感じました。

最終曲「Coda-Impetus」は、Robert Frippを彷彿とさせるメタリック調なエッセンスよりも陰鬱さも含め、刺々しいギターのフレーズが溢れ、荒涼とした殺風景なサウンドスケープであり、3分前後からのフリーキーなサックスと2ビートのベースのライン、ミニマルにもハードエッジなギターのフレーズの断片など、たとえば、モナコのプログレッシブ・バンド:Edhelsが2003年に発表した「Saltimbanques」で展開した世界観を彷彿とさせてくれます。奏でられるギターが唐突に終わるクロージングには、アルバムのコンセプト「呪われた森の奥深くに迷いこむ不運な放浪者」を最も感じさせてくれる瞬間ではないでしょうか。

アルバム全篇にわたり、1970年代のヴィンテージ感溢れる楽器の音色や、特に、King Crimsonの陰鬱さやメタリックさなどを想起させるアンサンブルを感じえますが、いっぽうで、古き良きプログレッシブ・ロックの良さをリスペクトする姿勢をもち、さらに、モダンなエッセンス(ネオ・プログレ系、ポスト・ロック系、ミニマル系)をハイブリットさせる希有なアルバムと思いました。当スタイルを踏襲したアプローチで、まだ見ぬ2ndアルバムでの飛躍を感じずにいられません。

[収録曲]

1. Eventide
2. Our Quiet Footsteps
3. Remnants of Pride
4. Tear Away the Cords That Bind
5. Beneath the Waning Moon
6. The Gentle Knife
7. Epilogue: Locus Amoenus
8. Coda-Impetus

イギリスの5大プログレバンド:King Crimson、Genesis、Yesをはじめとした、1970年代前半のプログレッシブ・ロックの隆盛期のアンサンブルやヴィンテージなサウンドが好きな方におすすめです。特に、King Crimson的なアプローチを感じることから、モダンなアプローチへ展開したプログレッシブ・ロックとして聴いてみたい方におすすめです。

また、男性だけ、女性だけという数多くのプログレッシブ・ロックが溢れる世界に、男女混成ボーカルという存在は希有さがあります。イタリア・プログレの大らかさかを感じえるボーカリゼーションのHåkon Kavliと、たおやかに唄うMelina Ozの組み合わせは、当バンドにしか持ち合わせないユニークな個性の1つと思いますので、楽曲に溶け込む表現豊かなボーカリゼーションにぜひ耳を傾けて欲しいと感じます。

アルバム「Gentle Knife」のおすすめ曲

1曲目は、3曲目の「Remnants of Pride」
イギリスのプログレッシブ・ロックの重鎮:John Wettonが、盟友:Geoffrey Downesと組んだユニットのAiconで、Annie Haslam(as RENAISSANCE)とデュエットをした楽曲も感じさせてくれるブリティッシュな唄メロのメロディラインも脳裏に浮かんだからです。他にもヴァースのアンサンブルにどことこなく「和」を感じてしまったり、前述のアジア映画の哀愁を帯びたテーマ曲も含め、1つの楽曲で多種多様なイメージを感じること自体が不思議な経験であり、それだけ様々なサウンドスケープを魅せてくれる素敵な楽曲と思いました。

2曲目は、冒頭曲の「Eventide」
ヴァースごとに、アンサンブルで奏でるギター、フルート、サックスのプレイ・スタイルを緻密に切り替えている印象があり、楽曲がクロージングする瞬間まで、腰を据えて聴きたいと感じさせてくれた楽曲だからです。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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