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プログレおすすめ:Barock Project「Skyline」(2015年イタリア)

公開日: : 最終更新日:2017/10/01 2015年, イタリア, イタリアン・プログレ, フルート ,


Barock Project – 「Skyline」

第119回目おすすめアルバムは、イタリアのシンフォニックなプログレッシブバンド:Barock Projectが2015年6月8日に発表した4thアルバム「Skyline」をご紹介します。

Barock Project「Skyline」
Barock Projectは、1970年代の古き良きプログレッシブ・ロックのエッセンス、特にクラシカルなバロック音楽にジャズ系のハーモニーが加わる楽器のアンサンブルと、ポップさのあるメロディラインの印象が強いバンドです。バンドの創設者であるLuca Zabbini(ピアニスト兼コンポーザー)は、5大プログレバンドのうちの1つ:Emerson Lale & Palmerのキーボード奏者:Keith Emersonの音楽性に影響を受け、クラシカルなロックからジャズまで幅広いジャンルに触れ、楽曲に反映させています。2012年発表の3rdアルバム「Coffee In Neukolln」はその代表作ともいうべき1枚だと思います。

当アルバムは、前作のメンバーに、Eric Ombelli(ドラム)、Marco Mazzuoccolo(ギター)が加わり制作に入ります。制作途中でGiambattista Giorgi(ベース)が脱退してしまいますが、アルバムのクレジットでは、Luca Zabbiniがベースも担当し、最終的に4人編成のアルバムとして制作されています。また、ゲストとして、チェロ&ヴィオラ奏者(Giuseppe Franchellucci)が全篇に、フルート奏者(Onelio Zabbini)が4「Roadkill」に参加していますが、それだけでなく、往年のイタリア・プログレファンには嬉しいNew TrollsのVittorio De Scalziが3「Skyline」に参加(ボーカル&フルート)しているんです!

更に、アルバムジャケットには、Genesisの名盤3rdアルバム「Nursery Cryme(邦題:怪奇骨董音楽箱)」を手掛けたPaul Whiteheadというところも注目してしまいますよね。

話題性だけでなく、3rdアルバムで垣間見えたNew Troll、Emerson Lale & Palmer、GENESIS、Dream Theatreを彷彿させるサウンドからどこまで進化を果たしているのだろうか。Luca Zabbiniはアルバム発売前のインタビューで過去最高作と提示し、

「プログレへの深い愛を持つ世界の方々の耳と心に音楽を届けたいのです。」

と語っています。

楽曲について

冒頭曲「Gold」は、Barock Projectの特徴の1つともいえる、たとえば、スウェーデンのプログレッシブ・ロックバンド:Moon Safariのようなコーラスワークで幕を上げます。前作の冒頭曲1「Back to You」に勝るとも劣らないオープニングと、前半部はタイトなアンサンブルとヴァースが印象的です。中間部では、随所にダイナミックにストリングスセクションを交え、流麗でリリカルなピアノのフレーズに導かれとともに、ロマンシズム溢れる唄メロが聴けます。まるで、前作の2「Coffee in Neukolln」と冒頭曲1「Back to You」を足して2で割り、洗練さを増した構成力には舌を巻かずにいれません。7分以降、クロージングまで空間処理を意識したエレクトロなサウンドが充満していく様は、アルバムジャケットで表現されたチャックの向こう側に見える宇宙を想起させるようなサウンドスケープです。これまでになく拡がりを感じさせてくれます。

2「Overture」は楽曲タイトル通りに序曲ともいうべきインストルメンタルの楽曲です。クラシカルな交響曲を連想させるフレーズも垣間見せながら、後半部ではオルガンによるインプレとともに、リズムチェンジと変拍子をともなうタイトなリズムセクションで聴きごたえは十分です。

3「Skyline」は、New TrollsのVittorio De Scalziのボーカルとフルートをメインにした楽曲です。前半2分間のアコースティックギターのみによるアンサンブルに、Vittorio De Scalziの渋さのある独特なヴォーカリゼーションが楽曲を深みへと導き、2分以降はパーカッション、3分以降はチェロ、ヴィオラがアンサンブルに加わり、楽曲に色添えます。4分前後にエレキギターも加わり、ドラマチックさを増したサウンドには、イタリア・プログレというだけでなく、アメリカのプレグレ・ハード系でも代表的なKansasの構成力を感じてしまいます。6分以降のギターのフレーズにユニゾンするストリングセクション、7分以降のブリティッシュ・ハードなエッセンスのエレクトリック・ギターのフレーズなど、聴き手にプログレッシブ・ロックやクラシカルなロックの多種多様なアプローチを1分ごとにめくるめく展開する素敵な仕上がりです。

4「Roadkill」はアンニュイなイントロから、バロック音調のクラシカルさを基調としたようなギターのフレーズをアンサンブルと哀愁を帯びた唄メロも印象的に、ヴァースのところどころを埋め尽くすようにチェロ、ヴィオラのストリングス・セクションやハードエッジなギターのリフ、オルガンの音色、3分40秒前後からのフルートの大胆さあるソロなども交え、ハード・テイストなNew Trollを彷彿させる素敵な楽曲です。

5「The Silence Of Our Wake」は4「Roadkill」のよりもいくぶんリズミカルにアコースティカルなアンサンブルではじまり、変拍子を多用したいくぶんジャージなアンサンブルもまじりながら、ミドルテンポでクロージングまで一気に聴かせてくれる構成力です。

6「The Sound of Dreams」は、哀愁を帯びたピアノとストリングセクションの冒頭部が映画のワンシーンをサウンドスケープさせる、約2分の小曲です。冒頭部のアンサンブルのイメージを損なうことなくアコースティックギター、ピアノ、ストリングセクションのアンサンブルが絡み合うきめ細やかさは、楽曲全体の構成力を感じますし、小曲とはいえ聴き流せないクオリティの高さです。

7「Spinning Away」は、ファンキーなリズムセクションによるアンサンブルの楽曲です。特に、3分20秒前後のギターとピアノが掛け合うパートから、3分40秒前後のピアノ、3分50秒前後のギターの各フレーズに、その後のギター・ソロなど、オリエンタルなイメージもさながら大胆さ溢れ印象深いです。また、5分30秒前後からクロージングまでのリズムセクションの不穏なフレーズに度肝を抜かれつつ、楽曲全体でライブ映えすると感じました。

8「Tired」は、バロック調のピアノのフレーズの冒頭部が印象深いのですが、唄メロの出だしとともにドラマチックなフレーズへ切り替わり、ストリングセクションをメインとした音圧で迫るアンサンブルに大らかなイメージを抱かせてくれる楽曲です。2つ目のヴァースのマイナー調の唄メロやコーラスワークもアクセントに、まるで高らかに船出を謳うようなサウンドスケープです。5分50秒前後からのギター・ソロのメロディラインもスムーズでいてダイナミックに聴かせてくれるし、その後のギターを中心としたアンサンブルでもドラマチックさを失うことなく、クロージングまで突き抜けていき圧倒されてしまいます。

9「A Winter’s Night」は6「The Sound of Dreams」のように哀愁を帯びたピアノをアンサンブルに、ヴァースだけでなくシンセやアコースティックギターも含めメロウでロマンチックなアンサンブルを聴かせる楽曲です。アルバム前半部の各楽曲よりもメロウさの比重が増した楽器の音色やフレーズにただただ聞き入ってしまいます。

最終曲10「The Longest Sigh」は、冒頭曲「Gold」や8「Tired」と同様に、アルバムジャケットの世界観をサウンドスケープさせるドラマチックなアンサンブル、ヴァースのロマンチックな唄メロのメロディライン、コーラスワークでクロージングまで突き進むポジティブな気持ちにさせてくれる楽曲です。Moon Safariを彷彿させながらも、Barock Projectらしさあるロマンチシズムが溢れたメロディラインがあるのが特徴です。

アルバム全篇一聴した時に、久々にアルバム・ジャケットの世界観を多くの楽曲で感じさせてくれるアルバムに出逢った気がしました。また、前作「Coffee In Neukolln」と同様に、ストリングセクションや室内音楽的なピアノやギターによるクラシカルな演奏を随所に盛り込みながら、ダイナミックに聴かせてくれますが、同国のNew Troll、イギリスの5大プログレバンドのEmerson, Lake & Palmer、GENESISなどのアンサンブル、ボーカルの声質、構成力などを想起させるよりも、Barock Projectのバンドのアイデンティが結実した傑作となりうるアルバムと思います。

[収録曲]

1. Gold
2. Overture
3. Skyline
4. Roadkill
5. The Silence of Our Wake
6. The Sound of Dreams
7. Spinning Away
8. Tired
9. A Winter’s Night
10. The Longest Sigh

オーケストレーションやバロック調のクラシカルな演奏、ピアノのバッキング、ストリングセクションやコーラスなど、前作「Coffee In Neukolln」と同様に、ダイナミックな演奏のシンフォニック系が好きな方、もちろん、New Troll、GENESIS、Emerson, Lake & Palmerや、もしかするとTOTOやアメリカハードプログレが好きな方にもおすすめです。しかしながら、Luca Zabbiniのメロディセンスが前作アルバム以上に発揮されていると感じられるため、いつか他のロック・バンドの印象がBarock Projectみたいなアンサンブル、構成力、クリエイティブのイメージに近いと、逆に引き合いに出されてもおかしくないクオリティの高さを感じるんです。聴くきっかけは、上記のようなキーワード、近しいバンドのイメージでも良いかと思いますが、「プログレへの深い愛を持つ世界の方々の耳と心に音楽を届けたいのです。」というバンドのメッセージにただただ耳を傾けて欲しいとも思いました。

アルバム「Skyline」のおすすめ曲

1曲目は、最終曲「A Winter’s Night」
冒頭曲1「Gold」、8「Tired」、最終曲「The Longest Sigh」など、ドラマチックでロマンチシズム溢れるアンサンブルが素敵な楽曲が多いのですが、当楽曲は、より翳りを見せた哀愁を帯びた唄メロのメロディラインに、メロウさに比重を置いたかのようなアンサンブルでクロージングまで繋げていく構成だからです。

2曲目は、3曲目の「Skyline」
いちど、当楽曲を聴かれた方ならば、New TrollsのVittorio De Scalziをボーカルとフルートでゲストに迎えた楽曲で、当アルバムのダイナミックでロマンチシズムさ溢れる楽曲たちにまじり、異なった世界観を創りだしてる気がするんです。であれば、アルバムの中でも異色な楽曲とも思われがちですが、めくるめく一定の時間(ほぼ1分おき)でアンサンブルが変化する様に、やはりプログレッシブ・ロックを聴いていて良かったなと、あらためて感じさせてくれる、あらためて納得させてくれたんです。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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