プログレおすすめ:CICCADA「The Finest of Miracles」(2015年ギリシャ)
CICCADA -「The Finest of Miracles」
第80回目おすすめアルバムは、ギリシャのプログレッシブ・ロックバンド:CICCADAが2015年2月28日年に発表した2ndアルバム「The Finest of Miracles」をご紹介します。
2005年に、ギリシャのアテネで結成されたCICCADAは、女性ボーカルにEvangelina Kozoni、フルート、サックス、メロトロンシンセ、ピアノなどにNicolas Nikolopoulosの2人を中心としたグループです。2010年発表の1stアルバム「A Child in the Mirror」でデビュし、当アルバムは、ギターにYorgos Mouhosをメンバーに加えた2ndアルバムです。
フルートやメロトロンシンセなどのアコースティカルでいてチェンバーロックな響きから、穏やかなシンフォニック系と感じながらも、独特なコーラス感や、どことなくイギリスの5大プログレバンドの初期King Crimsonをはじめとし、GRYPHONやGENTLE GIANTを想起させる折衷派のアンサンブルを感じさせてくれます。
楽曲について
インストの冒頭曲「A Night Ride」はクリーントーンのギターとメロトロンシンセが絡み合う憂いを帯びたイントロで幕を上げ、途中から加わるエレキギターによるリフと、その2分50分前後のソロに力強さを感じさせて、さらに当バンドの特徴とも云うべき3分前後からのフルートソロと、マーチ風にたたみかけるドラム音によるアルバム発売時期の初春に似つかわしい躍動感で聴かせてくれます。いっぽうで、4分40分前後から、当バンドの特徴ともいうべき折衷派な不穏なアンサンブルも響かせることも当楽曲の1つのアクセントと思うんです。その後、楽曲前半のイメージに沿うアレンジによりクロージングします。
2「Eternal」は、アコースティックギターの印象的なイントロのフレーズからフルートが重なり、女性ボーカルにEvangelina Kozoniにより優しげに唄い上げられる楽曲。スネアを中心としたドラムのドタンドタンに、アコースティカルなアンサンブル、ヴァースの合間に響く不穏なフレーズの数々など、ただただ優しげな楽曲では終わらせない構成からは、1stアルバムの寓話的でいて折衷派を感じさせてくれたサウンドを心待ちにしたファンの期待を裏切らないプログレ要素が詰まっていると感じました。約8分の長尺を飽きることなく聴かせるだけのアイデアに溢れています。フルートやメロトロンシンセによるアコーディオン音の根源にあるギリシャの地特有の音楽性がブレンドされていると感じるのではないでしょうか。
3「At the Death of Winer」のイントロは冒頭曲や2よりも不穏さを増し、1stアルバムで感じ得たCICCADAの音楽感により惹き込まれていくんです。たとえば、Evangelina Kozoniのヴァースに、ユニークな男性のコーラスに耳を奪われていれば、メドレーかのようにスムーズにリンクする次曲4「Around the fire」のイントロのフルートにいちど安堵します。そして、4もチェンバーロックを基調とし、めくるめく変わるモチーフの数々にたただた圧倒されます。特に、フルートはイントロ、ソロ、ヴァースと様々なフレージングで聴かせてくれます。
5曲目から最終曲10までは「The Finest of Miracles」という組曲形式の楽曲たち。まさにチェンバーロックと感じにいられない5「Lemnos (lover Dancer) 」、ピアノの不協なフレージングにディスト―ションがかかったギターのアンサンブルの前半部と、クリーントーンのギターやフルートのクリアな後半部がシメトリカルな6「Birth of the lights」の小曲が続いた後、ここまでの楽曲では、最も初期King Crimsonの折衷的な響きを聴かせる7「Wandering」に繋がります。アルバムでもハイライトと思わせるようなインストのアンサンブルを堪能出来ます。
2「Eternal」のイントロも含めた前半部に近いイメージのインストの8「Sirens Call」とボーカル曲9「As Fall the Leaves」を挟み、同アルバムでは最もテンポアップされたイントロの10「Song for an Island」へリンクします。
Evangelina Kozoniの伸びやかでいて優しげなボーカリゼーションや、ヴァースのエレキギターとタイトなリズムセクションも合いまって、不思議な感覚を得ますが、アルバム冒頭曲の1「A Night Ride」とは異なるアプローチで、躍動的にアルバムをクロージングします。
女性ボーカルによるシンフォニック系とプログレフォーク系のアンサンブルに、折衷派とチェンバーロックがブレンドさせて、アルバム1枚を通じ、聴かせてくれる好アルバムです。
[収録曲]
1. A Night Ride
2. Eternal
3. At the Death of Winer
4. Around the Fire
5. Lemnos (Lover Dancer)
6. Birth of the Lights
7. Wandering
8. Sirens Call
9. As Fall the Leaves
10. Song for an Island
1stアルバム「A Child in the Mirror」よりもボーカル比重の楽曲が少なく、後半部(5、6、7、8、9、10)の組曲型式などもありますが、CICCADAをいちど聴いた方には溜息をつかせてしまうプログレ要素(シンフォニック系、折衷派、チェンバーロック)は健在ですので、おすすめであることに間違いはありません。
憂いを帯びた、メロウで優しげ、繊細もある躍動感のあるシンフォニック系の女性ボーカルのプログレ以上に、優雅でいて初期King Crimson、GRYPHONやGENTLE GIANTを聴きたいという方におすすめです。
ギリシャの地特有と思われる音楽性も聴きどころです。
アルバム「The Finest of Miracles」のおすすめ曲
1曲目は、冒頭曲「A Night Ride」
「A Night Ride」を文字づらでイメージするよりも、アルバムタイトル「The Finest of Miracles」の和訳「奇跡の極み、最上の奇跡」や当アルバムが発表された春先をイメージさせてくれる躍動さや爽快さを感じて素敵だからです。
2曲目は、10曲目の「Song for an Island」
チェンバーロックや折衷派によるアクセントはあるものの、日本のヴィジュアル系バンドのマイナー調のアップテンポのキラーチューンをどこか感じさせてくれる楽曲の構成美を感じてしまいます。
このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。
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