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プログレおすすめ:The Light Year「Steps To Life」(2016年ジョージア)


The Light Year – Steps To Life

第291回目おすすめアルバムは、ジョージアのシンフォニック系とも折衷派とも括られるプログレッシブ・バンド:The Light Yearが2016年9月12日に発表した2ndアルバム「Steps To Life」をご紹介します。
The Light Year「Steps To Life」
The Light Yearは、ジョージア国の首都:トビリシにて、2004年に、Gigi Gegelashvili (ボーカル、キーボード、フルート、アコースティック・ギター)、David Keinashvili(キーボード)、Helen Mechitova(ヴァイオリン)、Natia Chugoshvili(ヴァイオリン)、Giorgi Kikabidze(チェロ)、Zaza Tsertsvadze(ドラム)の6人編成したバンドで、ライブ音源による1stアルバム「Sky Way」を制作し発表してます。また、2007年には、メンバー変更と追加をし、8人編成で2ndアルバム「Python’s Dream」を制作仕上げます。

その後、更にメンバー交代を経て、Gigi Gegelashvili (ボーカル、キーボード、フルート、アコースティック・ギター)、Guja Mchedlishvili (ギター)、Koba Manjgaladze (ギター)、Gia Surguladze (ベース)、Giorgi Lomidze (ドラム)、Natia Chugoshvili (ヴァイオリン)、Giorgi Ghambashidze (キーボード)の7人編成で制作されたのが当アルバム「Steps To Life」です。

バンドの音楽は、古き良きプログレッシブ・ロックの様々なエッセンスと、ジョージア(旧名称:グルジア)のオリエンタルなフォーク系のエッセンスが組み合わさったのが特徴です。彼らは、多くのプログレッシブ・ロックファンに向けて、本来、「Generation XXI」と命名したオーケストラと150名の聖歌隊を伴う讃美歌であるカンタータにて、壮観なシンフォニック系のエッセンスとミュージカル・スタイルが重なり合い生まれるケミストリーによる音楽を届けることでした。

不穏さや刺々しさあるサウンド・メイキングもただただありますが、メロウさやファンタジックさに溢れ豊かなサウンドスケープを魅せてくれるアルバムとして愉しめると思います。

楽曲について

冒頭曲1「Tornado Part I (Entry)」は、イントロ部での弦楽、ギター、鍵盤による尊厳な拡がりを魅せるアンサンブル、1分前後からヴァイオリンの旋律を皮切りにアップテンポへ移行し、3ピースをメインとしたロックなアンサンブルなど、シンフォニック系のエッセンスでダイナミックに迫るサウンド・メイキングがたまりません。3分前後でのイントロ部のアンサンブルを活かしたパートや3分50秒前後でのトリッキーなアプローチ、エモーショナルなギター・ソロやエンディング・パートで畳み掛けるドラムなど、随所にアクセントをもたせながら、アルバム冒頭の約4分30秒を一気に聴かせてくれるインストルメンタルの楽曲です。

2「Steps to life」は、ボーカルが語り調にアカペラで幕を上げます。まるで5大プログレバンドの名曲「Peace」(1970年発表の「In The Wake Of Poseidon(邦題:ポセイドンの目覚め)」収録曲)がふと脳裏をよぎってしまうのですが、1分15秒前後からのシンセの旋律と、エコー処理されたボーカルで情景は拡がり、2分前後のピアノとアコースティック・ギターとクリーン・トーンのギターによるフレーズなどで、ファンタジックなエッセンスが感じられれば、清涼なイメージのシンフォニック系のアンサンブルが聴けます。ランニングする独特なベースラインもアクセントに、5大プログレバンド:GenesisのPhil Collinsボーカル期を彷彿とさせる、煌びやかなパートを重ねながら徐々に躍動的なアンサンブルへ繋がっていく様が素敵過ぎますね。

3「Tornado Part II (Cognition)」は、エッジの効いたギターのリフで重々しくもメタル系のアンサンブルで幕を上げ、1分40秒前後からはギターの旋律と弦楽が絡み哀愁を帯びたパートへ移行します。ただそれも束の間に、ピアノの旋律がドラマチックなパートへと誘えば、期待を裏切るかのように、3分前後からは楽曲冒頭部のメタル系のエッセンスが楽曲全体のベースといわんばかりのアンサンブルへ繋がっていきます。尊厳なコーラスも含め、バンド本来が目指すオーケストラと声楽によるユニークなシンフォニック系を感じずにいられません。5分25秒前後からのギター・ソロも一層サウンドに色を添え、クロージング迎えます。

4「Steps to life (Reprise)」は、2「Steps to life」のリプライズで約1分20秒前後の小曲です。鍵盤をバックにボーカルのヴァースが入り、15秒前後から弦楽がメインのインストルメンタルのパートへ移行し、40秒前後からフルートの旋律が響くも1分前後を境に突如としてサウンドは途絶え、ただただサウンドの残響だけでクロージングしていきます。

本当に小曲でありながらも、冒頭部1と3の「Tornado」、2と4の「Steps to life」が交互に挟まれアルバム前半部を構成する様は、予備知識がなく、楽曲タイトルを眺めているだけでも、コンセプト感を感じずにいられません。

5「Side」は、冒頭部からアコースティック・ギターによるシンコペーションを効かせたアルペジオのリフをメインに、メロウで優しげなボーカリゼーションによる唄メロのメロディラインでヴァースは進行していきます。ボーカルに呼応するかのようなコーラスワークが穏やかなサウンドスケープを拡がらせ、1分20秒前後からのパーカッション、1分30秒前後からのアタックを効かせたベースライン、2分20秒からのマーチ風に躍動するリズム・セクションなど、徐々にメロウでファンタジックさ溢れるシンフォニック系のエッセンスが積み重なっていきます。特に、2分20秒前後からのリズム・セクションからのアンサンブルでは、Pink Floydのアルバム「The Divison Bell(邦題:対)」でのメロウでファンタジックなアプローチを想起せずにいられません。ほどよくタイトなリズム・セクションとアコースティック・ギターとクリーン・ギターによる統制されたアンサンブル、リード・ボーカルのメロディライン、ユニークなコーラスワークのバリエーションが重なっていき、クロージングまで綴られます。

6「Dark times」は、前曲から一転し、楽曲タイトルが物語るかのような不穏さを醸し出しつつメタル系のエッセンスを感じるアンサンブルが繰り広げられていきます。2分30秒前後の左右に配されたギターのリフのモチーフなど、1970年代第2期king Crimsonのメタル・クリムゾンもふと脳裏をよぎりますね。重々しさや軽快さなど様々なアプローチで変拍子を繰り広げる中間部のリズムセクションや移調していくコーラス部なども特筆です。

7「Damskerland」は、アコースティック・ギターによる旋律に続き、憂いを帯びた唄メロのメロディラインとボーカル・パートに並奏するヴァイオリンの旋律がヴァース部が展開していきます。ミドル部(1分10秒前後や2分20秒前後)の唄メロのメロディラインがフックし、いっそう楽曲に唄メロからも抱く物悲しさを感じてしまいます。

8「Love Without Love」は、その旋律と奏法が日本の琴を想起させるようなギターの独奏で幕を上げ、2分30秒前後からミニマルなギターのフレーズがメインのアンサンブルとなるボーカルパート、3分40秒前後からひきずるようなベースラインとシンセの旋律など、アルバム中では、ファンタジックさよりもミスティックさのエッセンスを感じ、サイケデリック/スペース系のサウンド・メイキングが展開していき、クロージングを迎えます。

9「Digitai Dream」は、前曲8「Love Without Love」以上に、ミニマルさや無機質なフレーズがアンサンブルを構築していきます。1980年代のKing CrimsonがDiscipline期を彷彿とさせるフリー・ジャズ的で折衷派に代表されるアプローチは、無機質なフレーズとリズム・セクションを中心に、ジョージアの地特有と思われるトランディショナルな唄メロのメロディラインとともに、7「Damskerland」までの楽曲には見受けられない異色な感触です。後半部のコーラスワークを聴けば、他楽曲とは異なるアプローチで示すカンタータのクリエイティビティを濃厚に感じられますね。

最終曲10「My lord」は、約15分にも及ぶ長尺な楽曲です。重厚なサウンドで幕を上げ、前曲までの様々なサウンド・メイキングが織り込まれ、アルバムの最後を飾るべく聴き応えのある大作に仕上がってます。

アルバム全篇、ところどころに、英国の5大プログレバンドでいえば、King Crimson、Pink Floyd、Genesisのサウンド・アプローチを想起させてくれます。東欧ヨーロッパらしさ溢れるメロウさと、いっぽうでトランディショナルさを使い分けた唄メロのメロディラインが印象的です。時としてメタル系を織り込みながら、メロウさやファンタジックさによる旋律が連なるアンサンブルと、唄メロに呼応するかのようなユニークなコーラスワークが心豊かに訴えかけてくる「オーケストラとミュージカルを足してケミストリーが生まれる音楽」との印象を持ち、プログレッシブ・ロックでは、シンフォニック系や折衷派ともいうべき素敵なアルバムです。

[収録曲]

1.Tornado Part I (Entry)
2.Steps to life
3.Tornado Part II (Cognition)
4.Steps to life (Reprise)
5.Side
6.Dark times
7.Damskerland
8.Love Without Love
9.Digitai Dream
10.My lord

プログレッシブ・ロックのジャンルでも、シンフォニック系や折衷派が好きな方におすすめです。

メロディアスで明朗さと奥行きあるサウンドでは、英国の5大プログレバンド:Pink Floydが1994年に発表したアルバム「The Divison Bell(邦題:対)」、5大プログレバンド:GenesisのPhil Collinsボーカル期のプログレッシブ・ロック時代の1970年代後半の各アルバム、1990年代のPendragonなどを好きな方におすすめです。

また、東欧ヨーロッパらしさ溢れるオリエンタルでメロウなメロディやリズムなどを考えれば、ウクライナのKarfagen、南米産のシンフォニック系のプログレッシブ・バンド(チリのAstralis、アルゼンチンのJinetes Negrosなど)を聴く方におすすめです。

アルバム「Steps To Life」のおすすめ曲

1曲目は、5曲目の「Side」
メロウさとファンタジックさ、そして、楽曲後半にクロージングへ向けたボーカルとコーラスワークの展開は、イギリスの元Beatlesのメンバー:Paul McCartneyが1970年代にWingsで発表した全米No1を飾った名曲「Silly Love Songs(邦題:心のラブ・ソング)」(1976年発表のアルバム「Speed Of Sound」収録)の唄メロのメロディラインとコーラスワークを想起させてくれる心地良さが印象的です。アルバム後半部の折衷派かジョージアの地特有のトランディショナルなメロディラインからは想像もし難いほどのふくよかなメロディラインは、アルバム全楽曲を聴くことであらためて感じてしまいます。

2曲目は、3曲目の「Steps to life」
バンド本来が目指す「オーケストラとミュージカルを足してケミストリー」をアンサンブルとサウンド・メイキングをアルバム後半部の折衷派なアプローチ寄りよりも聴きやすさの点で「Tornado Part II (Cognition)」、当楽曲よりもよりメロウで優しさがある感覚に包まれる点で「Side」もありますが、「Side」よりも躍動的でロックでタイトなリズムセクションの「Steps to life」も捨てがたいです。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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