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プログレおすすめ:White Willow「Sacrament」(2000年ノルウェー)


White Willow -「Sacrament」

第12回目おすすめアルバムは、ノルウェーのWhite Willowが2000年に発表した3rdアルバム「Sacrament」をご紹介します。
White Willow「Sacrament」
当アルバム「Sacrament」は、Jacob Holm-Lupo(ギター、ベース、キーボード)と前作1998年発表の2ndアルバム「Ex Tnebris」に参加していた女性ボーカル:Sylvia Erichsenの2人だけを残し、Brynjar Dambo(キーボード)、Aage Motke Schou(ドラム、パーカッション)、Johannes Sæbøe(ベース)、Ketil Vestrum Einarsen(フルート、リコーダー)を加え、5人編成で制作しています。

メンバーをほぼ刷新した新たな音楽の特徴は、1995年発表の1stアルバム「Ignis Fatuus(邦題:鬼火)」と1998年発表の2ndアルバム「Ex Tnebris」でのスウェーデンの地特有のトラッド・フォーク系や5大プログレバンドのKing CrimsonとGenesisのフォーキーさに加え、ギターがエッジの効いたフレーズの比重を上げ、ゴシックさのあるサウンド・メイキングとなります。

フォーク系とゴシックさによる静寂と歪みによるコントラストを描く色彩によるダミナミックなアンサンブルが展開するアルバムを生み出しました。

楽曲について

冒頭曲1「Anamnesis」は、静寂さに妖精をイメージしてしまう前半部と邪悪さに堕天使をイメージしてしまう後半部とでコントラストを成す楽曲です。

グロッケンスペルやアコースティック・ギターによるアンサンブルに、ほんわりとした歌声が印象的なSylvia Erichsenによるボーカルが聴けるヴァースは、流麗にも唄メロのメロディラインを盛り込むフルートの旋律も交え、淡々と綴られていきます。優雅にもトラッド・フォーク系の雰囲気には、まるでアルバム・ジャケットのアートワークの女性が妖精をイメージさせてくれます。

4分30秒前後に、オルガンがアンサンブルに加わり、5分15秒前後に、エクレトリック・ギターが唄メロのメロディラインをフレーズが辿れば、徐々にオルガンの旋律が響き渡るや、6分前後に、Sylvia Erichsenはヒステリックにも咆哮し、曲調は一転します。そう、オルガンとギターが交錯し合い、スティール・ギターによるソロが響き渡っていきます。7分45以降のシンセの起伏激しく高速なフレーズは物憂げさや焦燥さに埋め尽くされ、タイトなリズムも合わさり、絶望さを感じえるようにして、クロージングを迎えます。まるで妖精はこの5分15秒前後から6分前後までに徐々に姿を変え、6分前後には妖精ではなく堕天使が舞っているのかのように、そして最後は地に伏せるかのようなサウンドスケープを魅せてくれます。

静から動へゴシックさによるコントラストがより明確にダイナミックなシンフォニックさを醸し出す。

ピアノの旋律で幕をあげる2「Paper Moon」はシンセサイザーによる残響さが幻想さを漂わせながら、ピアノから申請サイザーにテーマが引き継がれ、ヴァースへと繋がります。楽曲全体を埋め尽くす幻想さに、Sylvia Erichsenがメランコリックさ溢れる唄メロのメロディラインを物憂げなボーカリゼーションだから、ただただ感傷的な気分になって聴き入ってしまいます。クロージングにかけてリフレインされる一定のアンサンブルがさらに余韻に追い打ちをかけていくような心地になりますね。

3「The Crucible」は、アコースティック・ギターとフルートがトラッド溢れるアンサンブルを展開し、オルガン、クワイア、リコーダーの旋律が加わり、物憂げな曲調へうつろいながらも、3分22秒前後に、フルートがメインの旋律を奏でるとともに、さまざまなパートが重ねられていきます。突如としてフルートやリコーダーの歯切れ良い旋律にもダンサンブルなアンサンブル、5分前後からシンセサイザーによるソロ、ゴリゴリしたベースラインにフルート、哀愁漂うギター・ソロへと各楽器ごとに様々なパートはゴシックさと云う観点とは異なり異彩を放ってます。

4「The Last Rose Of Summer」は、アコースティック・ギターとフルートをメインに男性のJacob c.holm-lupoがボーカルを取る楽曲です。ヴァースの途中からSylvia Erichsenが並奏でデュエットし、アルバム中で最もゆったりとしたフォーク寄りの曲調を感じえます。

5「Gnostalgia」もまた前曲4「The Last Rose Of Summer」と同様にアコースティック・ギターとフルートによるフォーク寄りの曲調でSylvia Erichsenがボーカルをとり進行していきつつも、中盤から物憂げで奥ゆかしさ溢れる展開となる楽曲です。3分30秒前後からのシンセサイザーとシンバルのみによるアンサンブルではSylvia Erichsenのボーカルゼーションの表情豊かに、4分前後から6分前後までアコースティック・ギターのアルペジオをアンサンブルにシンセサイザー、フルート、リコーダーが順に旋律を奏でるインストルメンタルの聴きどころと思います。徐々に奥ゆかしき叙情さは溢れ、5分45秒前後で転調をし、そのままヴァースへと繋がる展開は、仄かに鳴り響くメロトロン・シンセとともに、ますます叙情さに深みをましていくんです。7分45秒から7拍子による進行は忙しく心へ問いかけ、8分50秒前後からのフルートとリコーダーの掛け合いによるパートで物憂げさはピークへ達します。救いは短いが明朗なヴァースがフェードアウトするクロージングです。中間部での叙情さ、叙情さから転調に、転調からの変拍子、変拍子からメジャー調と、サウンド・メイキングとアンサンブルが巧みに活かされた楽曲と感じました。

最終曲6「The Reach」は、SEから子守唄のようなグロッケンスペルが響き、荒れぶるうフルートにヒステリックさあるボーカリゼーションからダイナミックに展開する楽曲です。無機質さに溢れたヴァース、不穏さを煽るフルート、リズムインとともにエッジの効いたギターの旋律など、ミステリアスさよりも醸し出す程よさと明確さによるゴシックな質感がアンサンブルを進行し、7分20秒前後では、遂にヒステリックなボーカルのパートへと達します。そして、続く殺伐とした風景は、約11分にわたってたえまなきサウンドスケープを魅せてくれますし、ゴシックさ溢れたシンフォニックによる展開は特筆しがたいです。

アルバム全篇、ゴシックさに溢れたサウンドの比重が増え、これまでのアルバム以上に、スウェーデンのプログレッシブ・ロックバンドであるANGLAGARDやAnekdotenなどのヴィンテージ系のバンドが奏でる物憂げでいて、緊張感や切迫感を感じてしまいます。

[収録曲]

1. Anamnesis
2. Paper Moon
3. The Crucible
4. The Last Rose Of Summer
5. Gnostalgia
6. The Reach

トラッド・フォーク系からゴシックさを醸し出す展開が好きな方におすすめです。

また、スウェーデンのヴィンテージ系のプログレッシブなバンドだるANGLAGARDやAnekdotenなどを好む方にもおすすめです。

アルバム「Sacrament」のおすすめ曲

1曲目は、冒頭曲1の「Anamnesis」
楽曲を聴くたびに、アルバムジャケットの女性が「妖精」なのか「堕天使」なのかと想像してしまうことや、サウンドのメリハリのつけ方に自分なりの解釈が出来てしまい、聴き続けてしまうからです。

2曲目は、5「Gnostalgia」
「Gnostalgia」というワードを「G」と「nostalgia」の2つのワードに分けた時、「郷愁」という言葉が似つかわしい曲なのかなとイメージをし聴いてみれば、他のどの曲よりも終始「妖精」さを感じるサウンドスケープが素敵だからです。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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