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プログレおすすめ:Moon Safari「Himlabacken vol.1」(2013年スウェーデン)

公開日: : 最終更新日:2015/12/02 2010年‐2013年, シンフォニック, スウェーデン, メロトロン


Moon Safari -「Himlabacken vol.1」

第62回目おすすめアルバムは、スウェーデンのシンフォニック系のプログレッシブ・ロックバンド:Moon Safariが2010年に発表した4thアルバム「Himlabacken vol.1」をご紹介します。
Moon Safari「Himlabacken vol.1」
2010年に発表され、おそらく2010年代だけでなく傑作アルバムと云われる3rdアルバム「Lover’s End」に続くアルバムです。
アルバムに関わるメンバーは、ヴィンテージ系の鍵盤(ピアノ、オルガン、ムーグ、メロトロン)を兼務するメインボーカルのSimon Akessonや、ハーモニカとギターを担当するPetter Sandstromをはじめ、その他、ギター、ベース、ドラム、キーボードによる6人編成であることに代わりはありません。

Moon Safariの楽曲で最も特徴的なのは、メンバー全員がコーラスワークに参加し楽曲を彩ることや、プログレッシブというファクターを取っ払っても成り立つ素敵なメロディラインをもつ楽曲と思っています。ただ、3rdアルバム「Lover’s End」にリアルタイムで体感していた筆者としては、その傑作とされたアルバムの流れを踏襲するのか、それとも、新しいサウンドの探求にいくのかCDを購入するまで気になっていました。

楽曲について

冒頭曲1「Kids」は、3rdアルバム「Lover’s End」の3曲目「Southern Belle」にあったような讃美歌のようなアカペラを主体とした小曲のはじまりに、これまでと同じ感覚を憶え、ホッと安堵をつきました。それはたぶん「踏襲」という観点なのかもしれません。続く2「Too Young To Say Goodbye」もギターとシンセが変拍子で絡み合いながら進行するイントロや、ヴァースとサビの唄メロにも「らしさ」が溢れていると思いました。ヴァースの裏で響くコミカルなフレーズと奏でる鍵盤のフレーズもどこまでも突き抜けていくようなメロウなメロディラインが印象的な楽曲です。それ以上に、驚いたのはブリッジ部のメロディラインでしょうか。これまで以上にしっかり構築されたようなポップさと躍動さに溢れている気がします。

3「Mega Moon」は、クラシック感を漂わせたピアノのシークエンスのイントロからはじまり、ヴァースのメロディラインやヴォーカリゼーションに、イギリスのプログレッシブ・ロックバンド:10ccの楽曲を想起してしまいました。続くヴァースのコーラスワークも優美で軽やかに響くところへ、1分55秒前後に、突然オペラチックなコーラスワークがアクセントをつけた瞬間、イギリスのバンド:Queenを想起してしまったのは自分だけでしょうか。さらに2分50秒前後にまたリズムチェンジしたと同時に、変拍子にドラムとギター、シンセが不穏な空気を包み込み、オペラチックなコーラスワークが再提示され、5分過ぎからは張りのあるボーカリゼーションにオルガンがアンサンブルが加わり、ヴァースもワルツのリズムを挟み込み、突き進んでいきます。耳にする1つ1つのフレーズには、これまでにアルバムで触れることのなかったエッジを効かせたエッセンスですが、7分過ぎからの唄メロにMoon Safariらしさがあることで一息つけましたが、これまでのアルバムにない新機軸を感じさせてくれます。

4「Barfly」もヘビィ―なギターのリフとメロトロンのイントロに驚かされます。3dアルバムまでは曲中のどこかにエッセンスとして散りばめられていたエッセンスが、楽曲の冒頭部からメインで表現されているんです。さらに、約1分30秒前後のギターのフレーズには、元BeatlesのGeorge Harrisonを彷彿とさせるギターのトーンやフレーズを感じました。後半の「Don’t Bring Me Down」のコーラスワークに従来のサウンドで引き合いに出されるQueenを彷彿とさせるコーラスワークやMoon Safariらしきギターソロが聴けても、イギリスのロックバンド:Electric Light Orchestraを想起させる感覚を憶えるとともに、ヘビィ―なギター・リフによるクロージングが耳に残ります。

5「Red White Blues」はシンガーソングライターが唄うようなつづれ織りなメロディラインが印象的な楽曲です。1分30秒前後からドラムやギターとともに、Moon Safariらしきファンタジックさ溢れるアンサンブルが聴ければ、バラードに捉えられないと思わせてくれるます。2番目のヴァースのテーマ直前のキラキラとしたカラフルな感触のアコースティックギターのソロもアクセントに、後半部もコーラスワークやクリーントーンのギターによる清涼感が溢れたフレーズが満載です。3や4までの楽曲から連想される当楽曲への先入観とタイトル中の文字「Blues」を見た瞬間、Blues調のアンサンブルに挑戦なのかと勘違いしてしまい、楽曲を聴くうえで良い意味で裏切きられた素敵な仕上がりの楽曲です。

6「My Little Man」は当アルバムで最も驚いた楽曲です。イギリスの重要なミュージシャン:Paul McCartneyが制作するアルバムに収録させる「ギター1本で弾き唄うような小曲」を想い出させてくれる弾き語り形式が新鮮です。ヴォーカルとオブリガードを活かしたアコースティックギターのフレーズに、ブラシだけを利用したアンサンブルは、どこまでも優しげに心に問いかけてきます。もしかすると、今まで聴いてきたMoon Safariらしきファンタジックさ溢れるシンフォニックな楽曲は、このように1本のギターから変貌していったのではないかと考え出したら心止まらなくなりますね。

7「Diamonds」もMoon Safariらしき唄メロのメロディラインを、イントロで鍵盤やギターで出し惜しみなく奏でられ、ヴァースではピアノが躍動的に弾かれ、ヴァースの唄メロ、ギターとシンセのブレイクのフレーズなど、清涼さが溢れ、心地よく聴けます。3分前後からのリズムチェンジも、3「Mega Moon」で見せたようなリズムチェンジとは異なり、これまでのMoon Safariらしさで聴かせてくれます。ただ、3rdアルバム「Lover’s End」で魅せたようなコーラスワークの重奏は控えめに、メロディラインを際立たせるような展開と感じたのは自分だけでしょうか。

最終曲8「Sugar Band」は、クラシカルなピアノのフレーズをガイドに、ヴォーカル、そして、オーケストレーションが徐々に拡がっていき、Moon Safariらしきコーラスワークとシンバルをアクセントに取り入れながら、3分30秒前後からリズムチェンジしギターとシンセによるソロに続き、メロウでいて疾走感のある唄メロが聴けます。6分前後に再度リズムチェンジし、同一のテーマをワルツ調にゆったりと唄い、7分前後の哀愁を帯びたギターソロや7分50秒前後のピアノのマイナー調の音階と絡み合うベル音など、随所にマイナー調の音階を脳裏に植えつけさせながら、ゆったりと余韻を残しクロージングさせる構成力ただただ溜息をつくばかりです。

これまでのMoon Safariで感じえた特徴(コーラスワーク、メロウなメロディライン、ヴィンテージな楽器の音色、ファンタジックな構成力)も期待する方々にもしっかりと伝えながらも、さらに、1960年代や1970年代のプログレッシブ・ロック以外のロックのエッセンスを表現するアレンジ力など、豊富なアイデアが満載です。新機軸なエッセンスが楽曲によってはみられることから、他バンドでは急な終わり方と思われがちかもしれないエンディングでさえ、素敵な宝石箱を時間が来たために閉じてしまった。と感じるような素敵な世界観のあるアルバムですね。

[収録曲]

1. Kids
2. Too Young To Say Goodbye
3. Mega Moon
4. Barfly
5. Red White Blues
6. My Little Man
7. Diamonds
8. Sugar Band

Moon Safariらしさに興味を持った方や、5大プログレバンドのYesやGenesisどのメロウさやファンタジックさだけでなく、ポストロックにあるメロディラインのロックを聴き、これからプログレッシブ・ロックを聴く方にもおすすめです。

アルバム「Himlabacken vol.1」のおすすめ曲

1曲目は最終曲の8「Sugar Band」
Moon Safariには珍しくマイナー調の展開も楽曲の中のアクセントにしか過ぎず、1曲を通じればシンフォニックさ溢れると構成力を感じるからです。

2曲目は7「Diamonds」
Moon Safariらしきエッセンスが満載の2「Too Young To Say Goodbye」とも甲乙つけがたいのですが、よりコーラスワークに唄メロのメロディラインを活かそうとするコーラスワークを当楽曲に感じたからです。3rdアルバム「Lover’s End」ではカウンターメロディ、輪唱、重奏などが散りばめられていながらも、当楽曲では少し抑制を効かせていたとしても素晴らしい仕上がりと思います。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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