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プログレおすすめ:Solar Project「Aquarmada」(2014年ドイツ)

公開日: : 最終更新日:2015/12/29 2014年, シンフォニック, ドイツ


Solar Project – 「Aquarmada」

第170回目おすすめアルバムは、ドイツのゴシックさが垣間見えながらもサイケデリック/スペース系のプログレッシブ・ロックを聴かせてくれるバンド:Solar Projectが2014年に発表した8thアルバム「Aquarmada」をご紹介します。
Solar Project「Aquarmada」
Solar Projectは、1988年にドイツの地で結成し、1989年に1stアルバム[The Final Solution」でデビューを飾っています。当アルバムは、2007年発表の前作7thアルバム「Chromagnitude」から7年振りのアルバムで、Sandra Baetzel(ボーカル、サックス)、Volker Janacek(ドラム)、Sebastian Jungermann(ベース)、Peter Terhoeven(エレクトリック&アコースティック・ギター)、Robert Valet(キーボード、アコースティック・ギター)の変わらぬメンバーに、男性ボーカル:Michael Hanhartと女性ボーカル:Olaf Kobbeの2人がゲスト参加しています。

そのサウンドの特徴は、抒情性溢れるギターと、ハモンド・オルガンやキーボードをメインとしたアンサンブルに、イギリスの5大プログレバンドの1つ:Pink Floydのギタリスト:David Gilmourを彷彿とさせるサスティーンを効かせたロング・トーンを奏でるギター奏法ではないでしょうか。ただし、基本となるギターとキーボードのアンサンブルは、David Gilmourを彷彿とさせるPeter Terhoevenによるギター奏法や、Sandra BaetzelがDavid Gilmourっぽさのあるボーカリゼーションなこともあり、濃厚にPink Floydを想起してしまうかもしれません。

それでもなお、クラウトロック発祥にてサイケデリック/スペース系を仄かに感じさせる浮遊さ、メロディアスな唄メロ、そして当アルバムでゲスト参加している女性ボーカルの印象もあり、

ブルージにもメランコリックさもある1970年代のサウンド感覚を愉しめる1枚
です。

楽曲について

Pink Floyd的なアプローチといいながらも、実は、当アルバムの冒頭曲1「What Have We Done?」と最終曲8「The Meaning Of It All – Back And Forth」は、メランコリックさある唄メロのメロディラインを活かし、プログレ・ハード的な展開が聴ける楽曲です。また、冒頭曲1の唄メロのメロディラインをインストルメンタルでリプライズする最終曲8の存在があることで、アルバムを1つのコンセプトを持たせたかのような印象があります。

水のSEに包まれるかのように、メインとなるメロディのモチーフを女性がスキャット「la la la~♪」で唄い幕を上げる冒頭曲1「What Have We Done?」は、そのメロディをなぞるロングギターのフレーズに導かれ、女性ボーカルによるヴァースへと展開します。抑制を効かせたボーカルの最初のヴァースと、ダイナミックに刻むエレクトリック・ギターのリフと絡み合うフレーズで展開するサビ部との唄メロは両者とも一度聴けば心にフックとなるメランコリックさが溢れてくるんです。2分40秒前後から5分55秒前後までのパートでは、ハモンド・オルガン、ギター、シンセをメインに、サイケデリック/スペース系の浮遊さあるパートも聴かせてくれます。そして、突如、5分5秒前後からは、アコースティック・ギターによる綴れ織りのソロとともに、楽曲前半のヴァースへと戻り、メランコリックな世界観へと戻ります。サイケデリック/スペース系の中間部がありながらも、メランコリックな唄メロだけでなく、

メランコリックさを忘れさせように、ロング・トーンを活かしたギターのフレーズが心にただただ染みわたる。

2「A Glimpse Of Purity」は、アルバム「Wish You Were Here」以降の情感を讃えたPink Flyodのサウンドの一端を担う、まるでDavid Gilmourかと思うかのようなギターの独奏が聴かれ、その2「A Glimpse Of Purity」が序曲であるかのように3「Detach Reminding Borders」がはじまります。男性ボーカルによるボーカルゼーションもDavid Gilmourの声質よりもライトでありながらも、女性ボーカルのコーラスもアクセントに、Pink Flyodを想起するメロディラインと、バンド特有のメランコリックさがブレンドしたかのような印象的です。

よりPink Floyd的なブルージさに包まれ、ギターとハモンドオルガンが交互にソロを分かち合う4「Clue Of Repetition」や5「Human Loves Failure (q.e.d.)」などに続き、サイケデリック/スペース系なサウンドが埋め尽くす6「The Subconscious And Its Reflections」や1970年代のブリティッシュ・ハードロック的なアンサンブルも垣間見せる7「The Bird Will Forge Ahead」は、サックスがアンサンブルに加わりブルージなサウンド・メイキングも印象的です。

そして、ギターのリフに、ハモンド・オルガンが冒頭曲1のメインのメロディラインをリプライズする最終曲8「The Meaning Of It All – Back And Forth」は、そのハモンド・オルガンがどことなくオリエンタル・ムードも感じさせながら、アルバムのクライマックスに相応しく縦横無尽に彩ります。

従来のアルバムと同様に、Pink Floydを彷彿とさせるサウンドを聴かせてくれながらも、1970年代の音楽をヴィンテージさで回顧的に振る舞うのではなく、ハモンド・オルガンやサックスでアンサンブルを彩ったり、サイケデリック/スペース系の浮遊さあるサウンドを取り入れている印象的があります。さらに、女性ボーカルを迎えることで、バンドが持つ特有のメランコリックさ溢れる唄メロのメロディラインに力点を置いたことが功を奏したのか、仄かなドリーミングを感じさせてくれる1枚といえます。

[収録曲]

1. What Have We Done?
2. A Glimpse Of Purity
3. Detach Reminding Borders
4. Clue Of Repetition
5. Human Loves Failure (q.e.d.)
6. The Subconscious And Its Reflections
7. The Bird Will Forge Ahead
8. The Meaning Of It All – Back And Forth

アルバム「Wish You Were Here」以降のPink Floydがもつ情感のあるサウンドを好む方におすすめです。そのアルバム「Wish You Were Here」以前に垣間見せたサイケデリック/スペース系の浮遊さよりは抑制されていますが、Pink Floydの音楽のエッセンスを再構築したようなサウンドも印象的です。

また、David Gilmourを彷彿とさせるギター奏法やハモンド・オルガンをアンサンブルにするバンド・サウンドが好きな方にもおすすめです。

アルバム「Aquarmada」のおすすめ曲

1曲目は冒頭曲「What Have We Done?」
はじめてアルバムを聴いた印象と、アルバム全篇を聴き再度聴いた印象が異なる楽曲です。楽曲冒頭部の女性ボーカルによる「La La La~♪」のスキャットが心捉えて離れないのですが、唄メロのメランコリックさはアルバムの楽曲中で最も際立っています。

2曲目は6曲目「The Subconscious And Its Reflections」

イギリスのPink Floydの影響があるだろうと思わせるサウンド・メイキングがあるからこそ、ドイツのバンドが根底に脈略となるクラウトロックが持つ電子音も含む浮遊さと、ドイツ以外で語られることが多いサイケデリック/スペース系の持つ浮遊さとが結実した1曲ではないかと想像してしまうと、「プログレッシブ・ロック」と云う言葉と、その派生する音楽ジャンルの奥ゆかしさをあらためて感じずにいられなくなります。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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