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プログレおすすめ:Anekdoten「Until All The Ghosts Are Gone」(2015年スウェーデン)

公開日: : 最終更新日:2015/12/02 2015年, スウェーデン, フルート, ヘビー・プログレ, メロトロン ,


Anekdoten -「Until All The Ghosts Are Gone」

第94回目おすすめアルバムは、スウェーデンのプログレッシブ・バンド:Anekdotenが2015年4月10日に発表した6thアルバム「Until All The Ghosts Are Gone」をご紹介します。
Anekdoten「Until All The Ghosts Are Gone」
2007年発表の5thアルバム「A Time Of Day」から8年ぶりのアルバムです。2ndアルバム「Nucleus」以降、5thアルバムまで4年置きにアルバム発売されていたものだから、8年ぶりというのは、ファンにはとても驚きがあったと思います。

メンバーは、Nicklas Barker(ボーカル、ギター、メロトロン、キーボード)、Anna Sofi Dahlberg(ボーカル、メロトロン、ヴァイオリン、シンセサイザー)、Jan Erik Liljestrom(ボーカル、ベース・ギター)、Peter Nordins(ドラム、パーカッション)の4人構成は3rdアルバム以降、不変です。また、当アルバムには、5大プログレバンドの1つ:King CrimsonのTheo Travisがサックス、フルートで、All About EveのMarty Wilson-Piperがギターで参加しているので、サウンドの質感がどのように変貌しているのか、興味がわきますよね。

楽曲について

ローズによるフィードバック感のあるSEではじまる冒頭曲1「Shooting Star」は、イントロではKing Crimsonを想起させるメタリック感溢れるテクニカルなギターのリフが炸裂し、不穏さを駆り立てていきます。仄かにオルガンの音色とともに、いったん2分20秒前後での第1ヴァース直前で落ち着き、歪みを抑えたギターのフレーズにフルートによるアンサンブルは安堵する瞬間でもありますが、4分10秒前後からのディスト―ションの効いたギター、5分20秒前後からのオルガンによる其々のハードなソロの応酬には、前作以上にハードさが増していると感じます。それでいて、6分17分前後でのメロトロンをアンサンブルに聴かれるトレモロギターによるフレーズのリリカルさは、7分前後からの第2ヴァースへスムーズに移行する構成力がありますね。この第2ヴァースは、前半部の不穏さがあるからこそ、エンディングのパートも含め、穏やかさがあるんです。「Shooting Star」という言葉から連想するロマンチシズムさを感じさせてくれます。

2「Get Out Alive」は全曲1「Shooting Star」よりもギターのフレーズにメタリック感溢れるエッジさを抑え、ミドルテンポでありながらも、ギターも含めたアンサンブルのリズム感がタイトで心地良さを感じる演奏が聴けます。アンサンブルでは他楽器パートより抑えられたオルガンのフレーズが印象的で、そして、5分前後からクロージングまでのAnekdotenの特徴の1つであるアナログ楽器や管楽器によるアンサンブルが堪能出来ます。一定の薄暗さを維持しながらクロージングまで演奏する構成力には、ただただ聴き入ってしまいます。

3「If It All Comes Down to You」は、全曲2「Get Out Alive」よりもイントロからメロウなアンサンブルが聴けます。終始、メロトロンが流れ、2分前後のギターソロも3分前後のフルートも楽曲に合わせたメロディアスなフレーズが聴けて、クロージングまでのフルートには、メタリックなKing Crimsonではない、例えば名曲「Talk To The Wind(邦題:風に語りて」のようなサウンドスケープを感じさせてくれるのは筆者だけでしょうか。フルートとともにクロージングを彩るエコー処理されエッジの効いたギターでさえ、1つのアクセントと思えるぐらいです。

ハードなギターとメンバーによるコーラス、そしてメロトロンが重なるイントロで幕を上げる4「Writing On the Wall」は、その後の第1ヴァースに逆に驚かされますね。アルバム中、最もアンサンブルの音厚みが少なく、アコースティックギターのストロークとシンバルに新鮮すら感じえます。第2ヴァースでも、仄かにオルガンが流れ、それほど音厚みを拡げることのない展開も構成力の凄さをひしひしと感じるのではないでしょうか。4分30秒前後からのメロトロンをアンサンブルにギターのソロフレーズが聴け、さらにギターのソロフレーズが続いても、冒頭曲1「Shooting Star」のようにハードさを増していきはしない。と思いきや、6分30秒前後のヴィブラフォンとギターによる淡々としたパートが終わると同時に、メロトロンにギターのハードな展開のパートがあります。直前のパートがあることでこのクロージング前の轟音ともいうべき、混沌寸前の世界観は際立ってます。

5「Until All The Ghosts Are Gone」は、イントロのフルートによる不穏なフレーズが印象的な楽曲です。アコースティックギターのみのアンサンブルによる第1ヴァース、メロトロンをフルにアンサンブルにボーカルがチェンジする第2ヴァースと進行しつつも、その不穏なフルートによるフレーズは随所で聴かせてくれます。前曲4「Writing On the Wall」と同様にミドルテンポながらも、メロトロンの比重が高まることでより薄暗さのある幽玄さや幻想さを感じえます。そして、不穏なフレーズだけでなく3「If It All Comes Down to You」のようにメロディアスなフルートのソロがクロージングを色を添えると感じた時には、Anekdotenの構成力を思い知らされますね。

最終曲6「Our Days Are Numbered」は前曲を踏襲した曲調から始まりながらも、ギターがモチーフとなるフレーズ1つを多用に変貌させながら、ベースとドラムが絡むアンサンブルには冒頭曲のような勢いが戻ってきたと感じます。しかしながら、他曲と異なるのは、楽曲後半のサイケデリック/スペースなアンサンブルでしょうか。4分50秒前後から、一定のリズムによるシークエンスでギター、ベース、ドラムが展開する中、じわじわとサックスのフレーズが入り込むアンサンブルには、陶酔感ともいうべきサイケデリック/スペースな様相であり、さらに6分50秒以降、サックスが吹き荒れ、突如クロージングします。といっても、全体のアンサンブルをリードするサックスがもとに、楽曲をクライマックスへ導き、アルバム全篇のクロージングの合図をしているかのようです。

クロージングを体験することで、当アルバムを冒頭曲1「Shooting Star」から聴きなおしてみると、違和感なく入り込んでしまいます。

ブリティッシュハードさも感じながらも、今までのアルバム以上にアルバム全篇、楽曲個々でシンフォニック系となりうる構成力を強く感じたアルバムです。

[収録曲]

1. Shooting Star
2. Get Out Alive
3. If It All Comes Down to You
4. Writing On the Wall
5. Until All The Ghosts Are Gone
6. Our Days Are Numbered

メタリック感のあるギターのテクニカルなフレーズ、抒情性が垣間見えるフルート、薄暗さのあるメロトロンなどのアンサンブルの利用には、1970年代の古き良きヴィンテージ感のあるプログレ、特に、King Crimsonを引き合いに出されることが多いですが、まさにその通りだと思います。そして、そのヴィンテージ溢れるアンサンブルで利用される管楽器やアナログ楽器を含めたうえで、1つ1つの楽曲がきっちりと構成力を成しており、その演奏感は、他ヴィンテージ溢れるバンドの追随を許さないほど、クオリティが高いクリエイティブなプログレと思います。

ハードな演奏ながらも、ヴィンテージ感溢れるアンサンブルや、King Crimsonを好きな方にはおすすめです。もちろん、これからプログレを聴く人で、ハードな演奏に少しずつ触れていきたいという方にもおすすめです。

そして、このアルバムを期に、名作となる1stアルバム「Vemod」や2ndアルバム「Nucleus」にも手を伸ばしてみたらいかがでしょうか。メンバーをほぼ変えることなく、20年以上活動を続けるAnekdotenのアンサンブルや構成力を感じることでしょう。

アルバム「Until All The Ghosts Are Gone」のおすすめ曲

1曲目は、4曲目の「Writing On the Wall」
当アルバム中、1つの楽曲で静と動、整然さと混沌さを感じえます。いちど聴いた後に、もう一度聴き返して感じ得たいと思ったほど、楽曲が進むにつれて、予想を覆された楽曲だからです。

2曲目は、3曲目の「If It All Comes Down to You」
4曲目よりも混沌さのインパクトは抑えた印象で、アルバム中、叙情性のあるフルートのパートが聴けるからです。筆者はメロトロンの音色が好きですが、当曲ではメロトロンをアンサンブルのメインとし、それ以上にフルート、そしてギターのメロディアスなフレーズが聴けるのが素敵です。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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