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プログレおすすめ:The Opium Cartel「Night Blooms」(2009年ノルウェー)


The Opium Cartel -「Night Blooms」

第254回目おすすめアルバムは、ノルウェーのプロジェクト・バンド:The Opium Cartelが2009年に発表した1stアルバム「Night Blooms」をご紹介します。
The Opium Cartel「Night Blooms」
The Opium Cartelは、ノルウェーのプログレッシブ・ロックバンド:White Willowのリーダーとして知られるJacob Holm-Lupo(ギター、キーボード、ベース、コンポンザー)によるプロジェクト・バンドで、2006年に、スウェーデンのプログレッシブ・ロックバンド:Änglagårdやポップ・グループ:Pineforest Crunchの一員として有名なMattias Olsson(ドラム、メロトロン、ギター)らと共に結成したプロジェクト・バンドです。

プロジェクトのメンバーに、楽器奏者では、White Willowのアルバム制作に参加していたLars Fredrik Frøislie(シンセサイザー、メロトロン)、Ellen Andrea Wang(ベース)、Sigrun Eng(チェロ)、Ketil Einarsen(フルート)らのメンバーに、Trondheim Jazz OrchestraのErik Johannesen(トロンボーン)とアメリカ人のScott McGill(ギター)が参加しています。また、ボーカリストでは、White Willowに参加していた女性歌手:Sylvia Skjellestadに、That Dog、Todd Rundgren、Weezer、Jimmy Eat Worldと共演したアメリカの女性歌手:Rachel Hadenと、イギリスのポップ・デュオ:No-ManのTim BownessとStephen Bennettや、女性歌手:Rhys Marshで、男性2人女性3人が参加しています。

複数の管楽器奏者やボーカリストが参加し制作された2009年に発表された当アルバム「Night Blooms」では、たとえば、Japan、Roxy Music、Prefab Sprout、The Blue Nileなどの1980年前後にイギリスで隆盛したロマンチック・ムーブメント期のニュー・ウェーブ系のバンドや、Sandy DennyやNick Drakeといった1970年代のフォーク・ロック系などに影響を受けた音楽を聴かせてくれます。

ニュー・ウェーブ系のバンドに見られたエレクトロを利用したリズムやエッセンスを交えたデジタル・サウンドに、有機的な楽器群(フルート、チェロ、トロンボーンなど)や、1970年代のヴィンテージなアナログ機材(ローズ・ピアノやメロトロンなど)が絡み合い、日本のイラストレーター:MAKOによるアートワークも印象的に、

幻想さや耽美さに溢れるデジタル感覚のサウンドが聴けます。

楽曲について

冒頭曲1「Heavenman」は、薄曇ったメロトロンの旋律、波打つかのようなチェロの旋律、ロングトーンのコーラスワーク、チェロの旋律をなぞるメロトロンの旋律、繊細なアルペジオのアコースティック・ギターのプレイ、マイルドな音色のスティール・ギター・ソロ、淡いシンセにフルートの寂しげな旋律など、奏でられる各楽器の音色や旋律は淡い色彩に溢れ、同様に霞かったように囁く男性の歌唱とともに、幻想的な展開が進行していきます。4分前後からの5分前後にリズムが入ろうとも、クロージングはあくまで幻想さを物語るように、消え入るようです。

2「Better Days Ahead」は、仄かにゴシックさに溢れつつも、エコライジングされたボーカルやギターをメインとしたアンサンブルが展開する楽曲です。途中、水のSEが入りつつも、エコライジングされたボーカルとサウンドからは、アシッド系にも危ういサイケデリックさに溢れています。

3「Skinnydip」は、エレガントなピアノの旋律で幕を上げ、男女ボーカルのデュエットで進行する楽曲です。チェロ、トロンボーン、アコースティック・ギターが随所に印象的な旋律を聴かせ、前曲までと比べて、音色や加工による幻想さよりも、よりリアルな音使いで仄かな幻想さを感じえるサウンド・メイキングの妙を堪能出来ます。

4「By This River」は、ヴィブラフォンの1音1音による残響さに、チェロとピアノをメインとしたアンサンブルによる男女ボーカルのデュエットにて、メロディラインとともにノルウェーの地となる北欧の薄暗さに溢れ、ゆったりと綴られていきます。

5「Three Sleepers」は、ゴシックさあるデジタル・サウンドとアコースティック・ギターがメインのアンサンブルで幕上げ、チェロを交えながらも、女性ボーカルの唄メロのメロディラインとユニークなコーラスワーク(カウンターメロディ)が儚さ寸前にも美しげに聴かせ、耽美な雰囲気をうみだしています。メロディラインに女性のボーカリゼーションに、ただただ聴き入ってしまいますね。5分前後からのゴシックさあるノイジーなサウンドにチェロの旋律にも、セピアな色彩をサウンドスケープしてしまいます。

6「Honeybee」は、ニュー・ウェーブを意識したかのような男性のボーカルに、2分前後からの変拍子を交えたパートを挟みつつ、ハードなギターのプレイとタイトなリズムには、当アルバムでも最もメリハリを効かせた楽曲です。ゴシックなサイバーチックな感触を憶えました。

7「Beach House」は、メロトロンの渦巻く旋律からはじまり、さまざまなデジタル・サウンドの断片、静と動を行き交うボーカルの唱法とアンサンブルには、終始、退廃的な雰囲気に溢れ、たただた絶望の底へと堕ちていくような北欧の薄暗さの高い展開が続きますが、徐々に呆然ともなるノイジーで混沌さな雰囲気へ変わり、クロージングします。プロジェクトの持ち合わせるクリエイティブを遺憾なく発揮した素晴らしいサウンドが聴けます。

8「Flicker Girl」は、幻想的な雰囲気にも、穏やかさから躍動さへ展開する女性ボーカルによる楽曲です。3分50秒前後からハードなギターのプレイ、5分20秒前後からのヴィヴフォンの音階による残響さにフルートの旋律など、他楽曲での幻想さのアプローチと異なり、さまざまな幻想的なパートを聴かせてくれるのが印象深いです。

最終曲9「The Last Rose of Summer」は、ノイジーなSEにフルートとトロンボーンが旋律を重ねるサウンド・クラウトの冒頭部に、1分55秒前後からのアコースティック・ギターとフルートによるアンサンブルによる女性ボーカルのヴァース、チェロのソロを挟み、デジタル・サウンドを伴うヴァースへ戻り、最後はフルートの旋律をもって、クロージングを迎えます。

アルバム全篇、ゴシックさやノイジーなサウンド、エレクトロの音の断片を盛り込みながら、ピアノ、チェロ、アコースティック・ギターをメインとしたアンサンブルには、幻想さや耽美さが溢れています。使い分けるボーカルや男女デュエットなどは、時として散漫なイメージになってしまうかもしれませんが、プロジェクトとして各楽曲に施したサウンド・メイキングのクリエイティビティに統一感さえ感じさせてくれるため、ボーカルもアンサンブルの一部のような印象も感じます。それだけ、アルバム全体でしっかりとした世界観を感じる素晴らしいアルバムと思います。

[収録曲]

1. Heavenman
2. Better Days Ahead
3. Skinnydip
4. By This River
5. Three Sleepers
6. Honeybee
7. Beach House
8. Flicker Girl
9. The Last Rose of Summer

当プロジェクトで影響を受けたJapan、Roxy Music、Prefab Sprout、The Blue Nileなどの1980年前後にイギリスで隆盛したロマンチック・ムーブメント期のニュー・ウェーブ系によるサウンドの表現にも、ドリーム・ポップ系のCocteau Twins、Orchestral Manoeuvres in the Darkを聴いてきた方々におすすめしたいです。

また、White Willowの全アルバムに連なるノイジーさや薄暗さのある楽曲が好きな方にもおすすめです。

当アルバムを聴き、The Opium Cartelが創造する音楽の世界観を好きになった方は、よりシャープなサウンドによる2013年発表の2ndアルバム「Ardor」もおすすめです。

アルバム「Night Blooms」のおすすめ曲

1曲目は、5「Three Sleepers」
女性ボーカルとコーラスワークに、アイルランドのMellow Candleのメロディラインを想起もしてしまい、プログレ・フォーク系によるアシッドさや耽美さを感じてしまいます。

2曲目は、7「Beach House」
モダンな音使いによるサイケデリックさと、崩壊寸前のカタルシスを感じずにいられません。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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