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プログレおすすめ:U.K.「Danger Money」(1979年イギリス)

公開日: : 最終更新日:2015/12/30 1970年代, イギリス, エクレクティック[折衷派] , , ,


U.K. -「Danger Money」

第226回目おすすめアルバムは、イギリスのプログレッシブ・ロックバンド:U.K.が1979年に発表した2ndアルバム「Danger Money」をご紹介します。
U.K.「Danger Money」

1970年代のプログレッシブ・ロックの終焉と・・・

このアルバムに辿りついたロック・ファンは、プログレッシブ・ロックと言われれば、1970年代をまず脳裏に思い浮かべ、当アルバムが最後の輝きであると、きっと意識してしまうかもしれません。

U.K.は、1978年に、John Wetton(ボーカル、ベース)、Eddie Jobson(キーボード、エレクトリック・ヴァイオリン)、Bill Bruford(ドラム)、Allan Holdsworth(ギター)の憂国の四士で結成され、同名1stアルバム「U.K.」で提示したジャズ系の即興性もあるスキルフルでテクニカルさ溢れるアンサンブルは、プログレッシブ・ロックが衰退期に入った感もある1970年代末期の音楽事情からいっても、まさに、スーパーグループとしてロック・シーンに迎え入れられたのだろうと思います。

しかし、翌年1979年に、当2ndアルバム「Danger Money」は発売され、バンドは解散することになります。1980年代直前の節目にして、たった2枚のアルバムでの解散は、音楽事情以上に、プログレッシブ・ロックの終焉の象徴としてインパクトを残したのではないでしょうか・・・。

John Wettonは、当時の音楽事情に合わせて、ポップ路線の傾倒と、マルチミュージシャンとしてヴァイオリン、シンセサイザー、オルガン、ポリフェニックを駆使するEddie Jobsonのプレイをフューチャリングすることが、当初、U.K.でのアクティビティ構想であり、当2ndアルバム「Danger Money」は念願叶うカタチで制作されたものとされています。

カンタベリー・ロック系のNational HealthとGongでセッション参加したBill Brufordと、Soft MachineとGongのメンバーであったAllan Holdsworthの2人が脱退し、代わりに、後年、Jeff Beckのアルバム「Guitar Shop」制作で組み、グラミー賞も受賞するテクニカルなロックのダイナミズムを体現するTerry Bozzio(ドラム、パーカッション)を迎えたトリオ編成で制作したアルバムには、フリー・ジャズ系のエッセンスの比重が高く難解さも感じられた1stアルバムから、ポップ路線もあるロックの比重が高くなったアンサンブルとなります。

プログレッシブ・ロックの1970年代に終焉と1980年代へのリンクとなるアルバムとして、重要なアルバムと思うのです。

楽曲について

冒頭曲1「Danger Money」は、オルガンの響きに、タイトなドラムとシンセサイザーの旋律が絡み合い、重厚なサウンドで幕を上げます。ヴァースでは、変拍子と転調を繰り返しながら緊張感を漂わせつつ、John Wettonの勇ましいボーカリゼーションでのメロディラインに絡みつくようなオルガンの旋律とタイトなリズムセクションには、妙に唄モノのポップさがコンパクトになった印象を受けてしまいます。また、3分40秒前後からの不気味に淡々と鳴り響くオルガンのパートではベースがメロディを弾き、オルガンがリフへと切り替わったパートでは、ベースとピアノがユニゾンでメロディを弾き、6分前後からサビ部を重厚になぞるさまなどに、King Crimsonの名曲「Red」(アルバム「Red」収録)を想起してしまいます。

2「Rendezvous 6:02」は、John Wettonが憂いを帯びた声質で淡々と唄うメロディラインを、いっそう儚く切なげなものへと仕立てるかのような、エレクトリック・ピアノのプレイが印象的な楽曲です。冒頭部の7/8拍子を活かした単音フレーズのリフ、ヴァースでのボーカルと掛け合い、ユニゾンともなるフレーズ、コーラス「Rendezvous 6:02」での冒頭部のリフレインとなるリフ、ソロ部の5/8拍子にリリカルにもフラットに弾かれる旋律など、終始、流麗に弾き続けていくんです。また、グリッサンド、スタッカート、チョッパーなど技巧を駆使したベースラインや、シンバルなど、楽曲にメロディアスさを大切にする繊細さに印象付けてる気がしてなりません。

3「The Only Thing She Needs」は、ポリリズムさあるパーカッシブなオープニングから、8/8拍子と7/8拍子をまじえることで、ダンサンブルで無機質な感覚で展開するファーストタッチの楽曲です。コーラスワークの手法には、のちのAsiaを彷彿とさせたりしつつも、3分50秒前後のピアノのミニマルなフレーズにドラスティックなドラムが絡み合い、5分前後からのベース、エレクトリック・ヴァイオリンのソロがあってもなお、終始、ダンサンブルで無機質なリズム感の超絶プレイが主役であると、クロージング直前でのドラミングで感じてしまんです。

4「Caesar’s Palace Blues」は、唸る低音のベースラインと手数の多いドラムに、不気味に響くエレクトリック・ヴァイオリンのオープニングに、1「Danger Money」の重厚なオープニングの再来と感じとながらも、1分前後からのタイトなリズムセクションのリフをはさみ、唄メロにオブリガードで、コーラス「Caesar’s Palace Blues」に呼応するリフで、クロージングに向けて弾き倒すかのような旋律で、縦横無尽に弾くエレクトリック・ヴァイオリンのプレイが圧巻です。

5「Nothing To Lose」は、シンセサイザーをメインにしたアンサンブルと、エレクトリック・ヴァイオリンのソロのパートの華麗さが際立つ楽曲ですが、コーラス「Nothing To Lose」の合間をぬうかのようなメインのメロディと、ミドル部でのメロディアスな唄メロの進行に、まさに1980年代初頭から現在のAsiaに連なるパターンの1つを感じ、微笑ましいですね。ミドル部の最後に張り上げるボーカリゼーションにも、John Wettonらしさに溢れていて、感慨深いですし、クロージングのパートは、そのまま楽曲「The Heat Goes On」へ繋がってしまえばいいのに・・・なんて、勝手な妄想に駆り立てられもします。

最終曲6「Carrying No Cross」は、シンセサイザーの音色やフレーズも感慨深い約12分にも及ぶ大作です。

シンセサイザーによるアトモスフェリックさが幻想さを醸し出し、John Wettonの「Stop」の一声とともに、ヴァースへと進行します。随所にスネアがアクセントで入りつつも、シンセサイザーは一定のシークエンスでリフを刻み、John Wettonによる唄メロのヴァースを含む1分25秒前後から4分15秒までのパートと、10分25秒前後からクロージングまでの展開には、King Crimsonの名曲「Starless」(アルバム「Red」収録)や、イタリアのプログレッシブ・バンド:Premiata Forneria Marconiの楽曲「The World Became The World」における叙情さあるメロディラインのパートが脳裏をよぎり、感慨深くなってしまいます。それでもなお、懐疑的にさせないのは、4分15秒前後から10分25秒前後のインストルメンタル部でのシンセサイザーによるドラスティックなプレイによるものではないでしょうか。変拍子やリズムチェンジを多用したプログレッシブ・ロックの展開が盛り込みながらも、1980年代の音楽シーンへのリンクは、5「Nothing To Lose」だけではないといわんばかりに、シンセサイザー、ベース、ドラムによる素晴らしきプレイが聴けます。

アルバム全篇、当時、John WettonがU.K.で実現したかった本来のカタチが創造されているとは思いますが、念願が叶ったとはいえ、当時の実現はアルバム1枚のみです。今後、再結成し新しいアルバムが発売されたら嬉しさはありますが、当時トリオ編成のままに2枚以上のアルバムを残して欲しかったとも思い描いてしまいます。

いっぽうで、

・・・2枚以上のアルバムを残していたら・・・

・・・John Wettonがフランスのプログレッシブ・ロックバンド:Atollで正式存続していたら・・・

・・・1980年代初頭にヒットチャートを賑わすAsiaのメンバーだっただろうか・・・

と複雑な想いを抱きつつも、プログレッシブ・ロックの1970年代に終焉と1980年代へのリンクとなるアルバムとして、忘れることの出来ない名作として受け止めたい重要なアルバムです。

[収録曲]

1. Danger Money
2. Rendezvous
3. The Only Thing She Needs
4. Caesar’s Palace Blues
5. Nothing To Lose
6. Carrying No Cross

ポップさもあるが、テクニカルなプログレッシブ・ロックを聴きたい方、5大プログレバンド:Emerson, Lake & Palmerを好きな方におすすめです。

また、John Wettonが1980年に発表したソロ・アルバム「Caught In The Crossfire」、フランスのプログレッシブ・ロック:Atollが1979年に発表した4thアルバム「Rock Puzzle」のボーナストラック、Eddie Jobsonがイギリスのプログレッシブ・ロックバンド:Curved Airに参加し1973年に発表した4thアルバム「Air Cut」でのヴァイオリンのプレイなどで、興味を持った方に、ぜひおすすめしたいです。

「Danger Money」のおすすめ曲

1曲目は、最終曲6「Carrying No Cross」
俗に、1970年代最後のプログレッシブ・ロックの楽曲と云われるまでもなく、1970年代のプログレッシブ・ロックを聴き、プログレのファンになった方であれば、自分が感じえたKing Crimsonの名曲「Starless」や、Premiata Forneria Marconiの名曲「The World Became The World」における叙情さと同じではなくても、異なるカタチでも感慨深くなるのではないかと思います。

2曲目は、2「Rendezvous 6:02」
淡々とした憂いのある唄メロ以上に、楽曲を切なく儚く彩るかのようなエレクトリック・ピアノ、ベース、シンバルの3つのパーツの各プレイが素敵すぎです。のちに、John WettonがソロやAsiaでカバーしようとも同じ感覚を感じえないスタジオ・バージョンだと思います。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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