プログレおすすめ:Il Volo「Essere O Non Essere?」(1975年イタリア)
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1970年代, イタリア, イタリアン・プログレ Il Volo
Il Volo -「Essere O Non Essere?」
第227回目おすすめアルバムは、イタリアのシンフォニックなプログレッシブバンド:Il Voloが1975年に発表した2ndアルバム「Essere O Non Essere?」をご紹介します。
スリリングさに唯一無比な高揚さを
Il Voloは、Pleasure MachineのVince Tempera(キーボード)に、Formula TreのAlberto Radius(ギター、ボーカル)とGabriele Lorenzi(キーボード、ボーカル)、Flora Fauna CementoのMario Lavezzi(ギター、ボーカル)、Osage TribeのBob Callero (Olov)(ベース)、RibelliのGianni Dall’Aglio(ドラム、ボーカル)と、イタリア・プログレのファン方であれば、錚々たるバンドで活躍したメンバーが集結したスーパー・グループです。
1974年に同名1stアルバム「Il Volo」を発表し、1年後に発売した当2ndアルバム「Essere O Non Essere?」をご紹介するのですが、Il Voloをアルバム2枚を残して解散してしまいます。
その音楽の特徴は、2枚のアルバムともジャズ・ロック系のエッセンスを含み、Formula Treに近しいアンサンブルですが、楽曲にヴァース(ボーカル・パート)が多かった1stアルバム「Il Volo」に比べて、当アルバムは、ボーカルも器楽の一つでアンサンブルに遜色なく組み込まれたイメージを与えます。
シンセサイザーによるアトモスフェリックさを漂わせつつ、ジャズ系やフュージュン系のアンサンブルを感じられても、他同系バンドと比べて、圧倒的に異なるのは、パーカッションを含めたリズム・セクションとキーボードによる音の錯綜にメリハリあるバランス感覚ではないでしょうか。1stアルバムよりも音の陶酔させるインストルメンタル部を充実させて、気が付けば30分と云う短い尺で途絶えてしまう
静から動へ投じるスリリングさに溢れる演奏は、唯一無比な音の高揚さを感じるアルバムで、イタリアン・プログレを代表する傑作アルバムと思います。
願わくば、より尺が多いアルバムとして完成して欲しかったと思いますが、その思いがあるこらこそ、忘れられずに、陶酔さに浸るだけでなく、何度も聴き返してしまう1枚です。
楽曲について
エレクトリックな管弦楽器のようにフレーズを弾くギターの音色で幕を上げる冒頭曲1「Gente In Amore」は、そのギターの旋律で、一気に心が惹き込まれ、めくるめく各楽器が奏でる怒涛の音に満ちた楽曲です。
カバーアートにうつる鳥の鳴き声かと思わしき独特のトーンのギターの旋律が脳裏にやきつく。
エレクトリック・ピアノのヴィブラフォンの音階を弾くかのような旋律、シンセサイザーの徐々に拡がる旋律、シンバル音使いなど、繊細なアンサンブルに、ギターの旋律がリフレインするさまは、静寂の中にロマンチックさを感じえます。そして、55秒前後のドラム一閃とともに、ベースやギターのワウを効かせたカッティングがはなれたれれば、パーカッシブさ溢れるリズムセクションに、鋭利な刃物のようにギターの旋律が弾かれ、いやがおうでも心は躍動させてくれます。いったん1分30秒前後にテンポを落とし、2台のアコースティック・ギターが力強いストロークで掛け合い、続いて抑制を効かせたスキャットが絡みつみ、うずまくシンセサイザーの音色とともに、何とも言えぬアトモスフェリックなサウンドを漂わせます。
そして、3分前後から、再度、鋭利な刃物のようにギターの旋律が弾かれれば、もうスリリングさに歯止めを効かせないアンサンブルが続いていきます。いちどは心を躍動させながらも落ち着かせてしまった心をあらためて煽るように、3分55秒前後からのアフリカン風のパーカッションが炸裂し、ギターとシンセサイザーが一定のシークエンスをさまざまなカタチで重ねていく、クールにも心を高揚さで煽るアンサンブルがたまりません!
2「Medio Oriente 249000 Tutto Compreso – Canto Di Lavoro」は、「Medio Oriente 249000 Tutto Compreso」と「Canto Di Lavoro」の2部構成に分かれ、タイトル和訳での中近東風やコスミック風な感触のあるアンサンブルが聴けます。なぜか、シンセサイザーの旋律に、一瞬、同国イタリアのバンド:Le Ormeを想起してしまいますが、「Medio Oriente 249000 Tutto Compreso」では、中近東風にエキゾチックなギターのフレーズに、シンコペーションを効かせたギターのリフがハードなアプローチでファンキーなアンサンブルを聴かせてくれます。さらに、冒頭部のギターのメロディラインを再構築したかのように中近東風のスキャットが聴かれ、心美良いシンセサイザーのリフとギターのカッティングに続いて、哀愁溢れるギターのソロが炸裂します。「Canto Di Lavoro」では、パッションさを醸し出すパーカッシブなリズムセクションとギターのカッティングをアンサンブルに、中近東風のスキャットやシタール風のギターのソロ、シンセサイザーとギターによるアンサンブルは混沌さへ導かれ、クロージングします。ふと、アメリカのロック・バンド:Santanaの1971年発表のアルバム「SantanaⅢ」あたりを想起してしまいます。
3「Essere」は、エレクトリック・ピアノのイコライジングされた和音をメインとしたアンサンブルが浮遊さを醸し出しながら、明確にリリックを唄っていると分かる唄モノの楽曲です。徐々にフレーズがきめこまやかになるエレクトリック・ピアノ、シンセサイザーとクラビネットが加わり、リズミカルでファンキーなアンサンブルを聴かせてくれます。2分10秒前後からの哀愁を帯びたギターのソロや、シンセサイザーのソロとともに、パーカッシブなサウンドも高まり、さらに盛り上がりを魅せる高揚感がたまらないアンサンブルで、クロージングまで駆け抜けます。
ストリングスがミステリアスなサウンドをほのかに漂わせながら、ギターが哀愁を帯びた旋律で幕を上げる4「Alcune Scene」は、エレクトリック・ピアノに、ギターの旋律をまじえるミステリアスなパートを聴かせてくれます。2分前後に、きめこやかにもリズム・セクションが加わり、さらにミステリアスさをおしすすめていきますが、3分前後からは、アホモスフェリックなサウンドに、ギター・ソロが弾かれ、まるでイギリスのプログレッシブ・バンド:Camelの楽曲「Lunar Sea」(アルバム「Moonmadness」収録」)を想起させてくれます。再度、きめこやかなリズム・セクションが加われば、シンセサイザーが醸し出すスペーシ―とともに、徐々にテンポアップしていくジャズ・ロック系のアンサンブルに、やはり高揚感がたまりません。
5「Svegliandomi Con Te Alle 6 Del Mattino」は、アコースティック・ギターとシンセサイザーの旋律が交錯し合うアンサンブルに、オリエンタルなフュージュンっぽさや、ジャズ系のお洒落な雰囲気を醸し出しつつ、ゆったりとしたアフリカン・ビート風のリズムで展開していきますが、やはり、3分前後からは、リズム・チェンジし、アヴァンギャルド寸前のパートも絡めたアンサンブルも聴かせてくれます。
エレクトリック・ピアノの旋律に浮遊さを漂わせ幕を上げ、最終曲6「Canti E Suoni」は、震えたヴォイスでのスキャットに危うさを感じてしまい、ふとアシッド・フォーク系を想起させてしまう楽曲です。
1分10秒前後のメロトロン・シンセサイザーとギターのフレーズのサウンドに、英国プログレッシブ・ロックの叙情さを垣間見せつつも、シンバルが楽曲をきめこやかなプレイでリードしている印象を感じます。2分前後からは、シンセサイザーの旋律に、エフェクトかかったギターのフレーズとスキャットが合わさり音が渦めく開とへと移行していきますが、3分前後からは、徐々に3「Essere」のクロージング・パートをリフレインしているかのような展開をみせ、3分前後前までの危うい感覚を忘れさらせてくれるかのように、ただただ音の錯綜する高揚感がたまらないアンサンブルでクロージングします。
[収録曲]
1. Gente In Amore(邦題:愛につつまれて)
2. Medio Oriente 249000 Tutto Compreso – Canto Di Lavoro
3. Essere
4. Alcune Scene(邦題:あの情景)
5. Svegliandomi Con Te Alle 6 Del Mattino(邦題:朝の目覚め)
6. Canti E Suoni(邦題:歌声は響き渡る)
イタリアン・プログレやジャズ・ロック系と云うジャンルやエッセンスは考えずに、パーカッシブさに高揚さがたまらないと感じる方におすすめです。
また、メンバーがもともと所属していたバンドのうち、Formula Treが好きな方に聴いて欲しいアルバムです。
当アルバムを聴き、Il Voloを好きになった方は、インストルメンタル部よりもボーカル・パートに比重がある1stアルバム「Il Volo」に手を伸ばしてみてはいかがでしょうか。
アルバム「Essere O Non Essere?」のおすすめ曲
1曲目は、冒頭曲1「Gente In Amore」
楽曲に心奮わすスリリングなパーカッシブなアンサンブルが大好きなのですが、当楽曲では、いちど動のパートを短めにとどめ、静のパートで浮遊さを演出することで、よりいっそう緩急を効かせた華麗なるスリリングなアンサンブルのクールさに陶酔してしまうんです。
2曲目は、3曲目「Essere」
アルバム中では、スペーシ―な感覚のパートもまじえ、最もシンフォニック系のアンサンブルが聴けます。
このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。
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