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プログレおすすめ:Big Big Train「Folklore」(2016年イギリス)


Big Big Train -「Folklore」

第289回目おすすめアルバムは、イギリスのプログレッシブ・ロックバンド:Big Big Trainが2016年5月27日に発表した9thアルバム「Folklore」をご紹介します。
Big Big Train「Folklore」
当アルバムは、EP盤に引き続き、David Longdon(ボーカル、フルート、アコースティック・ギター、マンドリン)、Andy Poole(アコースティック・ギター、マンドリン、キーボード)、Greg Spawton(ベース、アコースティック・ギター)、Nick D’Virgilio(ドラム、パーカッション)、Danny Manners(ベース、キーボード)、Dave Gregory(ギター)とともに、スウェーデンのシンフォニック系のプログレッシブ・ロックバンド:Beardfishの元メンバーであるRikard Sjpblom(キーボード、ギター、アコーディオン)と、前作アルバム・シリーズ「English Electric」で弦楽奏面で楽曲に色を添えていたRachel Hall(ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ)が加わり、計8人編成で制作されてます。

アンサンブルの面では、Dave Desmond(トロンボーン、ブラス)、Ben Godfrey(トランペット、コルネット)、Nick Stones(フレンチホーン)、John Storey(ユーフォニアム)、Jon Truscott(チューバ)、Lucy Curnow(ヴァイオリン)、Keith Hobday(ヴィオラ)、Evie Anderson(チェロ)ら管弦楽奏者を楽曲によって加えることで、前作アルバム・シリーズ「English Electric」以上に華やかさが増してます。

1960年代から1970年代にかけての古き良きブリティッシュ・ポップシーンのメロディアスさとサウンド・メイキングを感じさせてくれた2012年発表の7thアルバム「English Electric (Part One)」と2013年発表の8thアルバム「English Electric (Part Two)」を経て、正式メンバーが増え、管弦楽奏者が色を添え、サウンド・レンジが拡がることで、おそらく2015年発表のEP盤「Wassail」から紐解いては、ファンには期待をせずにいられなかったアルバムだったかと思います。

元々、XTC、The Beatles、The Beach Boysなどのイギリスやアメリカを代表するバンドが発表した楽曲が持つポップ・フィーリングや聴きやすさ、5大プログレバンド:Genesisが示す英国情緒溢れるエレガントさやジェントルさを併せ持つ希有な存在として、1990年代以降のプログレッシブ・ロックシーンでも重要なバンドに位置付けられると思うのですが、

直接的には『民俗学』を意味し、古くから伝えられた伝承や語りへと結ぶ『フォルクローレ』の英語表記「Folklore」や、楽曲タイトル名に英国に実在した地域名称(「London Plane」、「Along the Ridgeway」、「Brooklands」など)があることで、やはり

2010年代に制作しうる古き良き英国情緒を踏襲したスタイルを濃厚に感じさせてくれるアルバムと思います。リード・ボーカル:David Longdonのボーカリゼーションから醸し出す印象も含め、5大プログレバンド:GenesisでもPhil Collinsボーカル期のエッセンスを感じずにいられません。

楽曲について

ストリングに導かれ、続いて弦楽がファンファーレな印象で高らかにも奏でられ幕を上げる冒頭曲「Folklore」は、その弦楽が残響する様にピアノの五月雨となり、一瞬の静寂を迎えます。静寂後には、アナログ・シンセとタイトでリズミカルなベースラインがメインのアンサンブルに、オルガンが重厚にも重ねられ、いやがおうにも現在のメンバーと管弦楽奏者をゲストに迎えた充実さがひしひしと伝わってきます。リード・ボーカルと呼応するコーラス・ワークなど、Big Big Trainらしさ溢れるメロディラインが加わることで、英国伝承となるフォークロアっぽさを感じさせてくれます。

ボーカリゼーションも含め、英国5大プログレバンドであれば、やはり1876年発表の名作「A Trick Of The Tail」を想起してしまうかもしれませんね。ファンタジックさとダイナミックさが溢れるアンサンブルとサウンド・メイキングに、管弦楽器が奏でるフレーズが英国フォーク系を連想させるのですから、アルバム冒頭部から一気に心は惹き込まれていきます。

2「London Plane」は、アコースティック・ギターの一定のシークエンスのフレーズをメインのアンサンブルに、フルートがやはりエレガントに奏でられ幕を上げます。囁きかけるかのように撫でられる唄メロのメロディラインは、不安さを醸しながら進行する1番目のヴァースから、ストリングが加わることでメロディラインが拡がるサビまで、メロウで優しさに満ち溢れた印象です。オルガン、ストリングス、ベースライン、コーラスワークなどがアンサンブルに徐々に加わりながらも、メロウさが重ねられていき、特に、サビでカウンターメロディのように下降するストリングスのフレーズがとても切なく響き、琴線に触れてしまいます。3分前後からは、綴れ織りに響き渡るギター・ソロ、時折、ギターのフレーズにユニゾンするベース・ライン、そして、徐々にストリングの比重が増し、4分前後にはストリングスとギターの両フレーズがクライマックスに達し、ハミングと共に、再度、ボーカル・パートによるメロウなサビ部へ戻ります。

と思いきや、繊細さにもリズムは変拍子を刻み、4分44秒前後からは、オルガンをメインに、ベースラインがスピーディなアンサンブルへと移行します。途中、フルート、オルガン、アコースティック・ギター、ストリングスなどが代わる代わるカンタベリー系のエッセンスを想起させるインタープレイを聴かせてくれます。6分50秒からはローテンポへと移行し、ディスト―ション・ギターによるフレーズに導かれ、前半部のメロウなメロディラインに戻ります。

前半部よりはギターとベースラインによるダイナミックなアンサンブルでレンジが拡がったメロウなメロディラインは、9分前後に哀愁を帯びたギター・ソロとオルガンのフレーズが先導し、ボーカルの感極まったヴォイシングとともに、パーカッションやストリングスが奏でられ、約10分10秒前後の長尺な楽曲はクロージングを迎えます。

ブラスに導かれ当アルバムでも最も変拍子が凝った3「Along the Ridgeway」は、ワルツ風にも感じられるアンサンブルと、唄メロのメロディラインには、前曲2「London Plane」同様に優しさ溢れ、どこかしら郷愁さをサウンドスケープしてしまいます。やはりオルガン、ヴィオラなど、様々な楽器群を盛り込みながら、3分10秒前後からのジャズ・ロック風の展開など、やはり一筋縄ではいかない楽曲構成を呈してます。

4「Salisbury Giant」は、約3分30秒前後の尺でアルバム楽曲中では最も尺が短い構成です。ヴィオラとヴァイオリンによる弦楽に導かれ、オルガン、ストリングス、重々しいベースラインによる前半部のインストルメンタルのパートと、2分10秒前後からボーカルがメインでシンフォニック系の後半部のアンサンブルで構成されてます。

5「The Transit of Venus Across the Sun」は、まるで平穏な夕暮時の佇まいを想起させるかのようなブラス・セクションとストリングスのアンサンブルで幕を上げます。1分30秒前後からは2台のアコースティック・ギターによる一定のシークエンスを奏でるきめ細かなアルペジオがメインのアンサンブルに、唄メロも冒頭部のブラスとストリングの印象とシンクロさせるか如き、メロディラインでいくぶん幻想さを感じさせて進行していきます。ベースラインのランニングさ、ヴァースやサビ後のユニークにリフレインするコーラスワークなども印象的に、楽曲タイトルに相応しい雄大さ、穏やかさ、神秘さ、幻想さを感じさせてくれる世界観が感じえます。

2015年EP盤で表題曲として既発表曲6「Wassail」は、4分20秒前後のギター・ソロなど特徴的なパートがありつつも、1「Folklore」をコンパクトにサウンド・メイキングのバリエーションを持たせた印象を個人的に感じずにいられません。よく「トータルアルバム」や「コンセプトアルバム」というアルバムでは、メイン楽曲のリプライズ楽曲が存在するかと思います。楽曲のサウンド面の印象だけで言えば、当楽曲は。1「Folklore」のリプライズ楽曲のような印象を持ってしまうんです。そして、アルバムのキーポイントとなる楽曲が、アルバム・タイトル楽曲なのか、それとも既発表曲なのか、と考えていくと当楽曲を先行楽曲として発表し、当アルバムの中盤に配置したとしたら、想像とは云え、バンドのクリエイティビティに驚かされてしまうんです。

7「Winkie」は、7つのパート(Part.1、Part.2「Sortie」、Part.3「The North Sea」、Part.4「Winkie’s Flight」、Part.5「RAF Leuchars」、Part.6「Winged Saviour」、Part.7「We Also Serve」)から構成される約8分30秒前後に及ぶ楽曲です。銅鑼の音からストリングスをバックにフルートとコーラスワークが展開する序章ともいうべき「Part.1」で幕を上げ、緩急をつけ起伏に富むパートが連なります。変拍子が凝った3「Along the Ridgeway」よりも、よりロック然としたベースラインと、ロック然とした印象だからこそ、各楽器が織りなすアタック感にロックのダイナミズムも濃厚に感じえてなりません。

8「Brooklands」は、ストリングスをバックに、左右に配された2台のエレクトリック・ギターがそれぞれに特徴的なフレーズを奏で、唄メロの刹那いメロディラインとともに、疾走感を交えつつ進行していきます。3分前後からの英国民謡的でいてパーカッシブなリズムによるヴァース部、5分45秒前後からのうねるベースラインにスピーディでインストルメンタルのパートは、たとえば、9分20秒前後に一瞬の静寂さで響き渡るピアノのエレガントでフレーズなどを挟みつつ、11分前後までテンションを上げていく楽曲構成がたまりません。そして、5分前後からや11分前後からのヴァースで聴かれるリード・ボーカルによる「Lucky Man」のフレーズが心にずっしりと響いてしまいますね。気が付けば、ワンフレーズをリフレインするコーラスワークに合わせて、「Lucky Man」のフレーズもリフレインされ、最後のヴォイシングでクロージングを迎えます。

そう、楽曲やスタイルは違えど、同じく英国の5大プログレバンド:Emerson, Lake & Palmerの名曲「Lucky Man」を思い浮かべてしまうのは個人的に感傷的かもしれません。

最終曲「Telling the Bees」は、5分前後からの「Na Na Na Na Na Na Na」のコーラスワークを含め、大らかな唄メロのメロディラインが印象的で、3分20秒前後からのストリングスも印象的に、アルバム・ラストを飾るに相応しい楽曲です。前曲8「Brooklands」の曲調もまたアルバム最終曲として成り立つ印象があるかと思いますが、こんなにも素敵な唄メロのメロディラインをアルバムの最後の最後に配置されるのは嬉しいです。

アルバム全篇、Big Big Trainを知るファンにとっては、2015年発表のEP盤「Wassail」で高まる期待感を十分に充足させてくれるアンサンブル、サウンド・メイキングを愉しめる作品ではないかと思います。現代の正統派のプログレッシブ・ロックのバンドとして、ポップ・フィーリングを損なうことなく、ストリング・アレンジなどに関わるメンバーなど、各メンバーのスキルフルさとテクニカルさが充実した素晴らしき仕上がりと思います。

[収録曲]

1. Folklore
2. London Plane
3. Along the Ridgeway
4. Salisbury Giant
5. The Transit of Venus Across the Sun
6. Folklore
7. Winkie
8. Brooklands
9. Telling the Bees

1970年代や1980年代中期にあたるGenesis初期や中期に感じ得るファンタジックさやダイナミックさのあるシンフォニック系のプログレッシブ・ロックが好きな人におすすめです。

当アルバムを聴き、Big Big Trainを好きになった方には、7thアルバム「English Electric Part One」と8thアルバム「English Electric Part Two」もおすすめです。その2作品から遡り全アルバムを聴くも良し、または、Big Big Trainの数々のアルバムに共通し、英国情緒溢れるメロウな唄メロのメロディラインが興味を持った方には、1994年発表の1stアルバム「Goodbye To The Age Of Steam」から聴き通すこともおすすめです。

アルバム「Folklore」のおすすめ曲

1曲目は、2曲目「Along the Ridgeway」

変拍子が凝っているとはいえ、決して緩急をつけ過ぎたジェットコースター風な展開よりも、楽曲全体を見据え不自然にならないようにスムーズに纏め仕上げてる展開が、「プログレッシブ・ロックの変拍子による繊細でメロウな唄心」をひしひしと伝わってくるんです。

2曲目は、2曲目「London Plane」
不安、優しさ、戸惑い、寂しさなど、憂いを帯びたBig Big Trainの唄メロのメロディラインと各楽器が織りなすアンサンブルとサウンド・メイキングは、当アルバムでも隋一の刹那さを感じてしまいますね。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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