プログレおすすめ:Steven Wilson「4 1/2」(2016年イギリス)
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最終更新日:2016/03/22
2016年, イギリス, フルート, メロトロン, ロック Guthrie Govan, Marco Minnemann, Nick Beggs, Steven Wilson, Theo Travis
Steven Wilson -「4 1/2」
第259回目おすすめアルバムは、イギリスのプログレッシブ・ロックバンド:Porcupine Treeのメイン・コンポンザーであるSteven Wilsonが2016年1月20日に発表したミニ・アルバム「4 1/2」をご紹介します。
当アルバム「4 1/2」は、そのアルバム・タイトルが示す通り、2015年に発表された前作4thアルバム「Hand. Cannot. Erase.」と、次作アルバムをリンクさせる重要な意味合いを持つと、Steve Wilson自ら語っています。
・・・Porcupine Treeが1999年に発表したアルバム「Stupid Dream」の収録楽曲「Don’t Hate Me」・・・
・・・ソロ・アルバムとして2013年に発表された前々作のアルバム「The Raven That Refused To Sing (and other
stories)(邦題:レイブンは語らない)」のセッション時から1曲・・・
・・・前作アルバム「Hand. Cannot. Erase.」のセッション時から4曲・・・
・・・2015年のライブ音源をもとにしたスタジオ音源・・・
・・・そして、日本盤のボーナス・トラックとして、Porcupine Treeが2005年に発表したアルバム「Deadwing」収録の楽曲「Lazarus」の2015年のニュー・バージョン・・・
・・・
そう、ここ数年のクリエイティブが冴えわたる音の断片が聴ける素敵なアルバムなのです。
当然のことながら、取り巻く音源には、Steven Wilson(ボーカル、ギター、キーボード、メロトロン、ベース・ギター、バンジョ)自身以外にも、Guthrie Govan(ギター)、Nick Beggs(ベース・ギター)、Adam Holzman(キーボード、ハモンド、ムーグ・シンセ)、Marco Minnemann(ドラム)、Theo Travis(サックス、フルート)というソロ・アルバムに関わってきたメンバーが連なっています。他にも、アルバム「Hand. Cannot. Erase.」の楽曲「Routine」で美声を聴かせていたイスラエルの女性歌手:Ninet Tayebや、Dave Kilminster(ギター)、Craig Blundell(ドラム)とChad Wackerman(ドラム)がゲストとして参加しています。
楽曲について
冒頭曲1「My Book of Regrets」は、その楽曲タイトルからアルバム「Hand. Cannot. Erase.」の楽曲「Regret #9」や「First Regret」を連想してしまいます。冒頭部のフィードバックからはじまるギターのざらついたリフからも連想してしまいますが、ヴァースの唄メロのメロディラインに、ハモンド・オルガンの音色が聴けることで、より飛躍した楽曲としての印象を抱かせてくれます。3分前後のムーグ・シンセによるソロ、3分30秒前後からのギターのソロなどをまじえ、タイトなリズムセクションによる前半部と、5分25秒前後からのコーラスワークによる浮遊ささえアンサンブルの一部となった心地良さの後半部に分かれますが、前半部を楽曲「Regret #9」、後半部を楽曲「First Regret」の延長し飛躍した楽曲のイメージと捉えると、聴き受けるイメージは異なるかもしれませんね。
2「Year of the Plague」は、アルバム「Hand. Cannot. Erase.」のサウンド・メイキングで感じえた、優美なメロディラインがビジュアルイメージを豊かにサウンドスケープさせてくれるインストルメンタルの楽曲です。ヴァイオリンの旋律に、途中からアンサンブルとして加わるアコースティック・ギターのストロークやピアノのフレーズによる繊細な音使いには、3分前後からかすかにこだまする女性スキャットのような音の断片などもまじえ、やはりサウンド・メイキングのクオリティの高さを際立ってます。
3「Happiness 3」は、フォーキ―な冒頭部から、歯切れ良いギターのカッティングをメインとしたアンサンブルは、心地良いリズムセクションとともに、メロディックな唄メロや随所に溢れるコーラスワークなど、メロウさには、5大プログレバンド:Yesの2010年代近年のサウンド感を想起させてくれます。
4「Sunday Rain Sets In」は、唐突にも聴こえる3分前後のエッジの効いたギターのフレーズもアクセントに、冒頭部のハモンド・オルガンやフルートの旋律が仄かに浮遊さを漂わせサイケデリック感さや、ピアノとアコースティック・ギターが織りなす音のタペストリー的な展開に、1970年代前半のアートロック系からカンタベリー系へのエッセンスを強く感じるインストルメンタルな楽曲です。
5「Vermillioncore」は、当アルバムの中では、メタル系のエッセンス以外にも、ベースラインの印象も含め、アルバム「Hand. Cannot. Erase.」よりもアルバム「The Raven That Refused To Sing (and other stories)」のサウンド・メイキングを感じてしまうインストルメンタルな楽曲です。クロージング直前まで一寸たがわぬメタル系のエッジの効いたアンサンブルを聴かせてくれます。
最終曲6「Don’t Hate Me」は、Steven WilsonとNinet Tayebによるデュエットで聴かせるミディアム・テンポによる幻想的な仕上がりの楽曲です。原曲にもあるPorcupine TreeでのColin Edwinによる独特なベースラインを意識したかのようなパートではフュージュン系に近いアンサンブルもまじえ、4分前後からはサックスのソロ、6分前後からのフルートの音の断片やギターのフィードバックなど、よりアルバム「The Raven That Refused To Sing」やアルバム「Hand. Cannot. Erase.」の浮遊さ溢れるサウンド・メイキングが活かされ、幻想さをより際立たせてます。
アルバム全篇に、前作4thアルバム「Hand. Cannot. Erase.」でのメロディックな唄メロのメロディラインを際立たせていた各メンバーのスキルフルなアンサンブルと、サウンド・メイキングが十分に感じられるとともに、やはり1970年代のプログレッシブ・ロックのヴィンテージなサウンドやエッセンスをSteve Wilsonのソロワークとしてのフィルターを通じ、あらためて感じさせてくれます。また、アルバム発表前からわかっていたものの、そのアルバムのタイトルを「4」と「1/2」としたような意味合いに納得してしまいますね。
そして、日本語盤のボーナストラック楽曲7「Lazarus」は、当アルバムの楽曲が制作された時系列と並行し仕上がったバージョンであるため、発表当時には日本未発売となった2015年発表の「Transience」に収録された楽曲が聴けることは、やはりファンにとっては嬉しい1曲ではないでしょうか。2つ目のヴァースから加わるエレガントなピアノのフレーズやコーラスワークなどをまじえ、浮遊さ溢れるサウンド・メイキングともに心地良いアンサンブルが聴けますが、それもこれも、原曲のもつメロディックな唄メロのメロディラインがあってこそと思うのです。
[収録曲]
1. My Book of Regrets
2. Year of the Plague
3. Happiness 3
4. Sunday Rain Sets In
5. Vermillioncore
6. Don’t Hate Me
7. Lazarus
まず、2015年発表の4thアルバム「Hand. Cannot. Erase.」でのメロディックな唄メロのメロディラインを際立たせていたアンサンブルやサウンド・メイキングが好きな方にはおすすめです。
もちろん、Steve WilsonやPorcupine Treeを好きな方だけでなく、1970年代のプログレッシブ・ロックのエッセンス(アート・ロック系、サイケデリックさ、カンタベリー系)をサウンドに盛り込みつつ、素敵なコーラスワークと優美なメロディを聴きたい方におすすめです。
・・・出来れば、4thアルバム「Hand. Cannot. Erase.」を聴いてから、手にして欲しいアルバムでもあります。
アルバム「4 1/2」のおすすめ曲
1曲目は、6「Don’t Hate Me」
過去の楽曲のリメイクとはいえ、男女によるデュエットと云うスタイルで聴かせてくれる点や、Porcupine Treeに現在のSteve Wilsonの目指す音楽のクリエイティビティが活かされた楽曲と感じました。
2曲目は、1「My Book of Regrets」
動から静という前半部と後半部の構成も、アルバム楽曲中で最もアルバム「Hand. Cannot. Erase.」からの延長上を感じさせてくれた楽曲です。次作アルバムが楽しみでなりませんね。
このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。
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