プログレおすすめ:Genesis「Spot The Pigeon」(1977年イギリス)
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最終更新日:2016/04/24
1970年代, GENESIS(5大プログレ), イギリス Genesis, Mike Rutherford, Phil Collins, Steve Hackett, Tony Banks
Genesis -「Spot The Pigeon」
第272回目おすすめアルバムは、イギリスのシンフォニック系のプログレッシブ・ロックバンド:Genesisが1977年6月に発表した12インチシングル/EP盤「Spot The Pigeon」をご紹介します。
英国文学の薫り高き終わりの「残り」
当EP盤は、1976年に発表された8thアルバム「Wind & Wuthering」が制作されるセッションで産まれた楽曲です。「おすすめのアルバム」と云うわけではありませんが、Genesisがバンド黎明期から目指してきたプログレッシブ・ロックのクリエイティブが聴ける最後の作品となったアルバム「Wind & Wuthering」のセッションの楽曲であるため、そのメロウでファンタジックなサウンドや、より複雑なリズムを活かしたテクニカルさある楽曲は重要だと思い、今回、レビューとして取り上げさせて頂きました。
Tony Banks(キーボード、シンセサイザー)、Mike Rutherford(ベースギター、12弦アコースティックギター)、Steve Hackett(ギター、12弦アコースティックギター)、Phil Collins(ドラム)の4人で制作されていますが、アルバム「Wind & Wuthering」を最後にバンドを離れてしまうSteve Hackettのクリエイティビティが聴ける音源が収録されている点でも、Genesisファンにとっては貴重だと思います。
英国文学の薫り高き終わりを告げる隠れた名作として触れて欲しい音源です。
楽曲について
1「Match of the Day」は、サッカーのファンでもあるPhil Collinsによる英国フットボール・マッチについて綴られる楽曲です。たとえば、楽曲「Robbery, Assault, and Battery」(1976年発表のアルバム「A Trick Of The Tail」収録)や楽曲「Eleventh Earl of Mar」(1976年発表のアルバム「Wind And Wuthering」収録)などのダイナミックにもアップビートな楽曲を彷彿とさせてくれますが、ギターとキーボードによるリフがメインで繰り返されるアンサンブルに軽快さを醸し出してくれます。そして、コーラス部でのヘビーなシンセサイザーの旋律をアクセントに、Mike Rutherfordによるユニークでキャッチ―さとメロディックさがあるベースラインが耳を捉えて離れませんね。フットボールの試合風景に、審判への罵声がところどころに盛り込まれていると云う風刺の効き方は、Peter Gabriel期のGenesisを想起もさせてくれます。
2「Pigeons」は、楽曲「Down and Out」(アルバム「And Then There Were Three」収録)や、のちの1983年のシングル・ヒットの楽曲「That’s All」のプロトタイプとも感じてしまうポップさに溢れた楽曲です。たとえば、同国イギリスのThe Beatles、The Kinks、強いては、XTCなどのカラフルなサイケデリック期の唄メロのメロディラインのようなキャッチさを感じずにいられません。おそらく、Mike RutherfordかSteve Hackettによるバンジョーのようなサウンドがトランディッショナルさも醸し出し、のちの同国イギリスのプログレッシブ・ロックバンド:Big Big Trainにも影響を与えたサウンド・メイキングやアンサンブルをふと脳裏をよぎります。
3「Inside and Out」は、冒頭部でのTony Banksのキーボードとシンセサイザー、Steve Hackettの12弦ギターがアコースティカルなパートから、3分30秒前後にドラマチックな展開を魅せ、4分前後からは、ダイナミックなインスト・パートへと雪崩込むるファンタジックさが聴ける約6分40秒にも及ぶ大曲です。そして、1「Match of the Day」と2「Pigeons」とは異なり、Steve Hackettが作曲に連ねる、Genesis在籍時の最後の楽曲とも云うべき楽曲でもあります。Phil Collinsは、アコースティカルで素朴なヴァースから盛り上がりを魅せるコーラスパートまでジェントルなボーカリゼーションを聴かせてくれるし、クリーン・トーンで艶かなギターとドリーミーさを誘うピアノ旋律のファンタジックさもたまりません。そして、4分前後からのギターのカッティングとシンセサイザーによるソロ、4分55秒前後からのギターソロ、その合間を埋め合わすようにベースはユニークなラインを刻み、アンサンブルは、徐々にギターのカッティングとシンセサイザーの煌びやかな旋律がこだましフェードアウトします。何度聴いてもアルバム「Wind & Wuthering」に収録されていてもおかしくないぐらいのクオリティに溢れていると思うのです。
[収録曲]
[Side A]
1. Match of the Day
2. Pigeons
[Side B]
3. Inside and Out
現在、2「Pigeons」と3「Inside and Out」は、2000年発表のボックスセット「Genesis Archive #2: 1976–1992」として、1「Match of the Day」は、1976年に発表されたアルバム「A Trick of the Tail」から1982年に発表されたアルバム「Abacab」までの5枚のアルバムを網羅したボックスセット「Genesis 1976–1982」の6枚目のエクストラ・アルバム「Extra Tracks 1976 to 1982」として、入手しやすいかもしれません。
1980年代に隆盛したGenesisフォロワーのネオ・プログレ系のバンド(Marillion、Pendragon、Twelfth Night、It Bits、Abel Ganz、Third Quardrant、IQ、Pallas、Quasarなど)を好きな方にも聴いて欲しい楽曲ばかりです。
そして、当楽曲を知る上で、当アルバムのメンバー体制ではじめて制作した前々作7thアルバム「A Trick of the Tail」や前作アルバム「Wind & Wuthering」を聴くことをおすすめします。
このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。
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