プログレッシブ・ロックのおすすめアルバム、楽曲、関連話など

   

プログレおすすめ:Emerson, Lake & Palmer「Love Beach」(1978年イギリス)


Emerson, Lake & Palmer -「Love Beach」

第277回目おすすめアルバムは、イギリスのプログレッシブ・ロックバンド:Emerson Lake & Palmerが、1978年に発表したアルバム「Love Beach」をご紹介します。
Emerson, Lake & Palmer「Love Beach」
既に、名盤アルバム「Brain Salad Surgery(邦題:恐怖の頭脳改革)」など、Emerson, Lake & Palmerの一連の傑作・名盤と呼ばれるアルバムを聴いたプログレ・ファンに・・・

・・・アルバム制作の地:バハマの地で奔放な雰囲気を醸し出すアルバム・ジャケットやタイトルは置いといて、ぜひ耳を傾けて欲しいと思うのです。

1973年に4枚目のスタジオ・アルバム「Brain Salad Surgery」を発表後、バンドは、1974年にかけてワールド・ツアーを行い、以降休止状態に入ります。

当アルバムは、活動休止から明け、1977年に3年振りに発表されたアルバム「Works, Vol.1(邦題:ELP四部作)」と続くアルバム「Works, Vol.2(邦題:作品第2番)」に次いで、1978年に発表されたアルバムです。

活動休止明けの作品は、メンバーを変えることなく、Greg Lake(ボーカル、ベース、ギター)、Keith Emerson(ピアノ、ハモンド・オルガン、ムーグ・シンセサイザー)、Carl Palmer(ドラム、パーカッション)のトリオ編成で制作されてますが、アルバム「Works, Vol.1」は、各メンバーがソロ制作のマテリアルを整えていて、久々に声を掛けあったら共に作品を出そうではないかと、個々のメンバーのソロ・ナンバーをレコードの各面(A面、B面、C面)に配置し、最後の面(D面)は名曲「庶民のファンファーレ」と「海賊」を収録したアルバムでした。また、アルバム「Works, Vol.2」に至っては、過去の未収録楽曲やメンバーのソロ名義の楽曲を寄せ集めたアルバムでした。

当時、活動休止前のクオリティを求めただろうプログレ・ファンにとっては、おそらくファンのアンケートから収集結果に基づいたとされるアルバム・タイトル「Love Beach」やアルバム・ジャケットによる第一印象からして、既に視線を逸らしてしまうアルバムだったかもしれません。

視線を逸らしつつも手を伸ばし購入したユーザーが耳にした「愛の歌」やブルーズをベースとした軽快なサウンド・メイキングなどは、アルバム「Works, Vol.1」とアルバム「Works, Vol.2」からの流れを考えれば想定出来うる範囲でしたが、大いに戸惑いを感じたことでしょう。リアルタイムで経験していない自分にだって同じですから。

さらに、当アルバムを制作段階に於いて、既にバンド解散は決定したともあり、その意思で制作されたアルバムには、もちろん感ずるものはあるはずのです。それでもなお、当アルバムを「おすすめアルバム」としてご紹介したいと思ったのは、

バンドが一体となった1970年代のプログレ終焉を飾ると同時に、既にこの世を去ったKeith Emersonのまだ若かりし頃のEmerson, Lake & Palmerの一員としてスタジオ・アルバムで鍵盤プレイが聴ける貴重なアルバムだからです。

楽曲について

5大プログレバンドのうち、同時期1978年に、Yesはアルバム「Tormato」を発表し、Genesisはアルバム「…And Then There Were Three…」を発表しています。それぞれにプログ・ポップな感覚の未来への可能性を感じつつも、Emerson, Lake & Palmerには、攻撃的でドラスチックな楽曲を求めてしまうのでしょうか・・・。

楽曲タイトルを連呼するサビと軽快な曲調がシンセ・ポップともとれる冒頭曲1「All I Want Is You」、The Beatlesの名曲「I Feel Fine」など、1960年代的な軽快なビート感とポップ感が満載な2「Love Beach」、カウベルとハーモニカ―がアンサンブルに加わり、リズムがシャッフルさとブギウギさにロカビリー調を感じずにいられない4「The Gambler」と続けば、南国バハマの地で得たインスピレーションの成果以上に、当時の音楽シーンの時流を乗り越えようとしたのかと想像もしてしまいます。ふと、同国イギリスのQueenがアメリカナイズされたポップさへと移行した1980年発表のアルバム「The Game」が脳裏をよぎりました。それでも、Yes、Genesis、Queenには共通しポップ・センスな楽曲を発表してきた過程でもあったのとは異なるかもしれません。

また、3「Taste Of My Love」や5「For You」などのシリアスな楽曲や、当アルバムではEmerson, Lake & Palmerらしさ溢れる6「Canario (From Fantasia Para Un Gentilhombre)」、約20分にも及ぶ大曲7「Memoirs Of An Officer And A Gentleman」の存在から、もしも、当アルバムの構成が、4thアルバム「Brain Salad Surgery」の構成のようではなく、2ndアルバム「Tarkus(タルカス)」の構成のようであれば、印象も違っていたのではないかと思うのです。

たとえば、
[レコードA面]
7「Memoirs Of An Officer And A Gentleman」
[レコードB面]
1「All I Want Is You」
2「Love Beach」
4「The Gambler」
5「For You」
3「Taste Of My Love」
6「Canario (From Fantasia Para Un Gentilhombre)」

のように、並んでいたら、どうだっただろう、と考えてしまいます。

ブルーズをベースに、アンニュイなサウンドで進行する3「Taste Of My Love」、シンセ・ギターとドラムによるアンサンブルからミステリアスにはじまり、シンセとピアノの音色に哀愁を帯びた唄メロのメロディラインが展開する5「For You」など、プログレッシブ・ロックでの音使いを活かしたロックの楽曲とも素敵な仕上がりではないかと思います。

また、6「Canario (From Fantasia Para Un Gentilhombre)」は、シンセの音使いなどに、イタリア・プログレのエッセンスを逆輸入したかのような感覚を憶えるほどに、メンバーの一体化したインストルメンタルの演奏が聴けます。一本調子になることなく、1つのテーマをもとに曲調を変えていく起承転結な構成です。アルバムを通じ、この楽曲に辿り聴く頃には、前半部の1「All I Want Is You」や2「Love Beach」を忘れ、当アルバムを聴いて良かったと感じるのです。

そして、最終曲7「Memoirs Of An Officer And A Gentleman」は、4つのパートから成る約20分にも及ぶ大曲です。ここでは、長尺楽曲にあるような緊張感はありませんが、Keith Emersonのキーボードのプレイに着眼し、聴き入ってしまいます。

Greg Lakeが唄い上げる第1パート「a. Prologue / The Education Of A Gentleman」では、ヴァース部でのピアノの伴奏、続き響き渡るオルガンの音色に、シンセのソロ・パートなど、唄心を活かしたような音使いとプレイの数々が聴けます。同じくGreg Lakeが唄い上げる第2パート「b. Love At First Sight」では、クラシカルでエレガントな旋律が際立ち、まるでGreg Lakeの唄メロとともに唄っているか如く華麗なピアノの音色が堪能出来ます。途中からアコースティック・ギターのフレーズとビブラフォンの音色なども色を添えるソロ・パートを挟み、クロージング直前にドラマチックに唄い上げるGreg Lakeの唄メロに合わせて、ピアノの音色もいっそう華麗に舞うが如く弾く様に、それでいて、唄メロに並奏しつつも、唄メロとピアノの旋律が共存させる素晴らしきアンサンブルに、涙ぐみそうになります。

第3パート「c. Letters From The Front」では、冒頭部からのインストルメンタルのパートでは、多種多様なシンセの音色が彩り、フュージュン系のエッセンスも感じられる構成で聴かせてくれます。また、Greg Lakeの唄メロでは、第1パート「a. Prologue / The Education Of A Gentleman」とは異なり、エレクトリック・ピアノの音色やドラムのリズムとともに、軽快にも1「All I Want Is You」や2「Love Beach」とは異なるプログレッシブな感性を強く感じてしまいます。

第4パート「d. Honourable Company (A March)」は、シンセの音使いがファンタジックさを彩り、楽曲タイトルにもあるとおりマーチ風のリズムで進行する楽曲です。楽曲「Abaddon’s Bolero」(アルバム「Trilogy」収録)をふと思いだしてしまいますが、よりチャーミングな曲調は当アルバム前半部の流れの相応しいクロージングと思いました。

そして、この第4パートを聴き、再度、アルバムの冒頭曲1「All I Want Is You」から聴きなおしてみれば、自然とアルバムを聴けてしまう・・・。世の中では評価の低いアルバムと言われていても、自然と聴けてしまうと感じてしまうのが怖いぐらいに、Emerson, Lake & Palmerのクリエイティビティの高さなのだと思います。その高さゆえに、ファンからの評価基準も高い、あらためて素晴らしいバンドと感じずにいられません。

[収録曲]

1. All I Want Is You(邦題:欲しいのは君だけ)
2. Love Beach
3. Taste Of My Love(邦題:ラブ・ビーチ)
4. The Gambler
5. For You(邦題:おまえのために)
6. Canario (From Fantasia Para Un Gentilhombre) {J. Rodrigo}
7. Memoirs Of An Officer And A Gentleman(邦題:将校と紳士の回顧録)
– a. Prologue / The Education Of A Gentleman(邦題:プロローグ/紳士の教え)
– b. Love At First Sight(邦題:愛を感じた時)
– c. Letters From The Front(邦題:最前線からの手紙)
– d. Honourable Company (A March)(邦題:栄光の歩兵中隊(行進曲))

同国イギリスのハードロック・バンド「Led Zeppelin」のアルバム「In Through The Out Door」、Yesのアルバム「Tormato」など、前作アルバムよりも、バラエティ豊かな曲調やポップさの比重を増したアルバムでも、1つのバンドとしてのクリエイティビティを堪能したいと云う音楽ファンに、ぜひおすすめです。

偶然にも、当アルバムでEmerson, Lake & Palmerを聴き好きになった方は、サウンドのプロトタイプとして1977年発表の前々作アルバム「Works, Vol.1」が脳裏に思い浮かびますが、ぜひ、1st同名アルバム「Emerson, Lake & Palmer」から順を追って聴くことをおすすめします。

アルバム「…And Then There Were Three…」のおすすめ曲

1曲目は、最終曲7「Memoirs Of An Officer And A Gentleman」
Emerson, Lake & Palmerの一員として1970年代に残した正式なスタジオ・アルバムでの長尺な楽曲で、Keith Emersonのキーボードやシンセの華麗なるプレイが聴けるのが嬉しいです。

2曲目は、5「For You」
楽曲「C’est la vie」(アルバム「Works, Vol.1」収録)をバンド・サウンドへ発展系を感じてしまいます。アートロック系のバンドが魅せるミステリアスさや哀愁さあるマイナー調の展開がたまりません。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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