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プログレおすすめ:Renaissance「Ashes Are Burning(邦題:燃ゆる灰)」(1973年イギリス)

公開日: : 最終更新日:2015/12/13 1970年代, イギリス, シンフォニック, 女性ボーカル


Renaissance -「Ashes Are Burning」

第221回目おすすめアルバムは、イギリスのシンフォニック系のプログレッシブ・ロックバンド:Renaissanceが1973年に発表した2ndアルバム「Ashes Are Burning」をご紹介します。

Renaissance -「Ashes Are Burning」

もともと、元Yard BirdsのKeith RelfとJim McCartyらによって、1969年に結成し、2枚のアルバムを残して1971年に解散してしまう、のちに「第1期Renaissance」と云われるバンド:Renaissanceが母体となっています。その2枚目となるアルバム「Illusion」の制作途中でバンドは解散状態となりますが、当時、レコード会社側はバンドの存続を要求し、Michael Dunfordらに委ねられたアルバムは完成し、1971年に発表されました。

と同時に、1972年に、メンバーを総入れ替えし、新たに、Jon Camp(ベース、ギター、ボーカル)、Annie Haslam(ボーカル)、Terrence Sullivan(ドラム、パーカッション)、John Tout(キーボード)の4人編成で結成されたのが、今回の「プログレおすすめアルバム」となる2ndアルバム「Ashes Are Burning(邦題:燃ゆる灰)」を1973年に発表した、俗に「第2期Renaissance」と云われるプログレッシブ・ロックバンド:Renaissanceです。

契約上の問題で正式メンバーではなくもバンドに参加するMichael Dunford(アコースティック・ギター)を加えた5人編成による音楽は、「第1期Renaissance」でのトラディッショナルなフォーク系とピアノのリリカルなクラシカルさをよりシンフォニックにおすすめたアンサンブルと、音域が5オクターブと云われるAnnie Haslamの澄んだ歌声を活かし、メロディックなエレガントさとクラシカルさ溢れるアクテビティが特徴です。

当アルバム「Ashes Are Burning」は、Wishboune Ashのギタリスト:Andy Powellをゲストに迎え、

バンド史上だけでなく、プログレッシブ・ロックの名盤の1つにあげられるアルバムです。

1980年代以降も、女性ボーカルのバンドが出現しては、比較対象にされるAnnie Haslamの声質とボーカリゼーションを際立たせたかのような、本当にエレガントでクラシカルさも漂うアンサンブルに耳を傾けてみましょう。

楽曲について

銅鑼の音と共に、ピアノのリリカルな旋律をひときわ華麗に引き立たせるオープニングがあまりにも鮮烈な冒頭曲1「Can You Understand」は、随所にドラマチックさを際立たせるかのようにクールにキメを入れるリズムセクションも合い間って、一気に心惹き込まれてしまいます。

タイトなリズムでメリハリをつけつつも、ピアノのリリカルなリフレインにチェンバロが加わるアンサンブル、ソリッドで地を這うようなベースのライン、ピアノの三連符の旋律とともに、再度、銅鑼がなるまでの2分30秒前後までのパートがいつまでも心捉えて離れません。

2分30秒前後の銅鑼の音は、オープニングに惹き込まれた心をいったん落ち着かせるには十分で、続くコーラルに導かれ、エフェクトかかったアコースティック・ギターのストロークにピアノとユニゾンするフレーズをアンサンブルに、Annie Haslamによる伸びやかな歌声は、まさにトラディッショナルなメロディックさに溢れてます。4分20秒前後からはアコースティック・ギターに、タンバリンを交えカントリー調なヴァース、男性のアカペラに続き、ティンパニと弦楽器を交え、田園的で牧歌的なイメージにも、ほのかでシンフォニック系のアンサンブルのインストルメンタルのパートが聴けます。6分30秒前後のティンパニと弦楽器がドラマチックに響き渡るとともに、再度、弦楽器を交えた奥行きのあるアンサンブルのヴァースへと戻ります。

そして、8分30秒前後を皮切りに、オープニングの華麗なアンサンブルへと立ち戻り、クロージングを迎えます。

2「Let It Grow」は、ピアノをアンサンブルに、Annie Haslamの伸びやかにも華麗な歌声が一際堪能出来るフォーク系の楽曲です。ファルセットへと到達する歌声には、讃美歌のような趣きがあり、ヴァースでのピアノも印象的ですが、2分40秒前後からのインストルメンタル部でのピアノのリズミカルな力強さは可憐に、じわじわと拡がるコーラスとともにクロージングする展開が素敵すぎます。

3「On The Frontier」は、混成コーラスで唄うカントリー・ミュージック系の楽曲です。唄メロのメロディックさを損なうことないアコースティック・ギター、ピアノ、ベース、ドラムによるアンサンブルだけでなく、リフレインされる「On The Frontier…」のコーラスワーク、コミカルなピアノの旋律、ピアノとベースによる掛け合いなど、さまざまにクラシカルさを漂わせたパートを散りばめられているのも印象的です。

4「Carpet Of The Sun」は、唄メロのメロディラインに、ギターのストロークと弦楽器が絡み、晴やかなアンサンブルが映える楽曲です。クロージング直前の「See The Carpet Of The Sun」の一節と弦楽器が掛け合いも印象的に、ほど良いビート感のリズムセクションは朗らかなメロディラインと合い間って、明るく突き抜けていきます。冒頭曲1「Can You Understand」の中間部の唄メロと同様に、あたかも草原に吹く軽やかな風のようなサウンドスケープを魅せてくれます。

5「At The Harbour」は、ベースの打音もドラスティックな重厚さを醸し出すピアノの旋律に導かれるさまは、クレジットにもあるDebussyの前奏曲集第1巻より第10曲「La Cathedrale Engloutie(邦題:沈める寺)」が奏でられるのですが、一息ついて、オーボエとチェンバロが色を添えつつ、アコースティック・ギターのアルペジオをメインとしたアンサンブルには、重厚さよりもトラディッショナルなクラシカルさを醸し出しながら、やはり唄い上げるAnnie Haslamの流麗で歌声で、特に、物憂げで悩ましさに唄メロのメロディラインが印象的です。4分45秒前後には、再度、「La Cathedrale Engloutie(邦題:沈める寺)」へと立ち戻り、悲哀に満ちたようなコーラスとともに、クロージングへと向かいます。エレガントさよりもセンチメンタルさな様相がクロージング直前のピアノの一音まで溢れていますね。

吹き荒む風のSEに導かれはじまる最終曲6「Ashes Are Burning」は、ピアノがアンニュイで印象的なフレーズをアンサンブルにする第1ヴァースと、そのピアノのアンサンブルが目立たないサビでは、唄い上げるAnnie Haslamの歌声が変わらないと云うのに、まったく印象が異なるかのようにエレガントさがますのが印象的です。2分30秒前後からのアコースティック・ギターのストロークとともに、高らかにスキャットするAnnie Haslamの歌声など、唄モノとして素敵さが十分過ぎます。

そして、3分30秒前後のピアノチェンバロによるハードなアプローチによる迸るインタープレイによる幕をあげるプログレッシブ・ロックなインストルメンタル部の素晴らしさが堪能出来ます。5分前後のピアノの打音とともに、ピアノとチェンバロのソロに、ソリッドなベースのプレイとタイトなドラムのリズム感など、じわじわとドラスティックなアンサンブルが進行したかと思えば、7分20秒前後のハモンド・オルガンをアンサンブルに、Annie Haslamの囁くような声だけが響き渡ります。

そして、8分30秒前後に張り詰めた想いをファルセットで解き放つAnnie Haslamの歌声を合図にも、ゲスト参加によるWishboune Ashのギタリスト:Andy Powellによるメロディックなギターソロが、ハモンド・オルガンが醸し出す尊厳に、じわじわとマーチ風に盛り上がりをみせるドラミングに包まれながら炸裂していきます。1970年代のプログレッシブ・ハードロック系のバンドがアートロック系寄りのアプローチで魅せてくれる劇的な展開を想起してしまいます。

アルバム全篇、Annie Haslamの透き通る歌声に聴き入りながらも、ギター、ピアノ、管楽器によるクリスタルに形容される透明さ、エレガントさ、クラシカルさ、ドラスティックさ、ドラマチックさなど、静と動のメリハリを超越した素晴らしい音楽が聴けると思います。ドラマチックな展開を示すために、アヴァンギャルドさよりもアンサンブルで楽器の印象を強調させるドラスティックさは、エレガントと云う言葉が似つかわしいです。

さまざまな要素が積み重なった結果、「アート」と云う言葉が似つかわしいプログレッシブ・ロックな構成があると思えてならない傑作アルバムです。

[収録曲]

1. Can You Understand
2. Let It Grow
3. On The Frontier
4. Carpet Of The Sun
5. At The Harbour
6. Ashes Are Burning

プログレッシブ・ロックと思わずにも聴いて欲しいブリティッシュ・ロックとしての名盤とも思うため、透明もある音域の幅がある女性ボーカルと、ギター、ピアノ、管楽器が彩るエレガントでクラシカルな楽曲が聴きたい方におすすめです。

若干、ハードなアプローチはあるものの、プログレ・フォーク系、トラディッショナルなフォーク系、その延長上にあるシンフォニック系などのプログレッシブ・ロックが好きな方におすすめです。

また、5大プログレバンド(Yes、Genesis、Emerson, Lake & Palmer、King Crimson、Pink Floyd)を中心に聴いている方で、他にもプログレッシブ・ロックを聴いてみたいとてはじめに思う方にもおすすめです。このアルバムで、Renaissanceを好きになった方は、「第2期Renaissance」の1970年代のアルバムを中心に聴き、さらに、ボーカルが異なり、シンフォニック系の比重は低いですが、「第1期Renaissance」の2ndアルバム「Illusion」もおすすめです。

アルバム「Ashes Are Burning」のおすすめ曲

1曲目は、冒頭曲1の「Can You Understand」
はじめて聴いた時、ピアノのリリカルな旋律と、その旋律を際立たせるリズムセクションのオープニングのエレガントにもドラマチックな印象をもち、いっきに心惹かれたことを憶えています。5大プログレバンドにはない、程よい緊張感と、本来、トラディッショナルなフォーク系からのスキルフルを活かした存在に、驚きを隠せませんでした。

2曲目は、最終曲6の「Ashes Are Burning」
Andy Powellによるメロディックなギター・ソロは特筆ですが、そのギター・ソロを際立たせるインストルメンタルに、そのギター・ソロまでの流れを含め、名曲に花を添えるギター・ソロと云う言葉が似つかわしく、ゲストのパートが浮かない楽曲の構成力に脱帽です。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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