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プログレおすすめ:Anathema「Distant Satellites」(2014年イギリス)

公開日: : 最終更新日:2015/12/29 2014年, イギリス, オルタナティヴ, 女性ボーカル , ,


Anathema -「Distant Satellites」

第73回目おすすめアルバムは、イギリスのプログレッシブ・ロックバンド:Anathemaが2014年に発表した11thアルバム「Distant Satellites」をご紹介します。
Anathema -「Distant Satellites」
前作「Weather Systems」に続き、バンドはメインボーカルとなる男性のVincent Cavanaghと、女性のLee Douglasの2人のボーカルです。当アルバムもカンタベリーロックで1972年にKhanの3rdアルバム「Space Shanty」にも参加していたデイヴ・スチュワートがオーケストラ・アレンジを手掛け、前作「Weather Systems」と同様に、繊細でいて儚く、力強さ溢れるサウンドが聴けます。クリーントーンのギターよりもシンセやオーケストレーションの比重が高く、2011年発表の9thセルフカバーアルバム「Falling Deeper」の浮遊感溢れるヒーリング感のあるオーケストラと前作「Weather Systems」を足して2で割ったようなサウンドの印象をもちました。さらに、初期Anathemaを語る上で重要なエッセンスであるゴシックさやメタルさに変わり、前作「Weather Systems」の最終曲「Internal Landscapes」のようなエッセンスがキーポイントというべきでしょうか。

アルバムを聴く前から気になったのは曲目リストの「The Lost Song」です。冒頭曲1「The Lost Song, Part 1」、2「The Lost Song, Part 2」、5「The Lost Song, Part 3」の3曲分、各楽曲のアルバムでの並び順、日本語に直訳した「失われた歌」という言葉に心が留まって離れませんでした。

2012年に最も聴き最も溜息をついたプログレ関連のアルバムだった前作「Weather Systems」から待ち焦がれてた新作アルバムでした。

楽曲について

冒頭曲1「The Lost Song, Part 1」はオーケストレーションが漂うイントロの楽曲です。前作「Weather Systems」の冒頭曲「Untouchable Part 1」とは異なるアプローチですが、一定のリズムのシークエンスに、浮遊感を持ちつつもメロディアスなヴァースが耳に入れば、これからじわじわと儚さが琴線に触れるまでの時間を抑制しているのではないかと個人的に気持ちが抑えきれなくなります。当アルバムではじめてAnathemaを聴かれた方には次第に音の厚みをサウンドで感じて欲しいと思うんんです、

情けないぐらいに脳裏には前作アルバム「Weather Systems」の冒頭曲「Untouchable Part 1」のアプローチに捉われている。進化でも退化でもなく、求めるサウンドに向き合ってしまったからですね。

ただ、3分前後からディスト―ションを効かせたギターによる「歪み」、Vincent Cavanaghによる次第に張り上げるボーカリゼーションが聴けて、楽曲がクロージングに向かう様相には、前作「Weather Systems」とはアプローチを変えた冒頭から、しっかりとらしさで帰結していると感じました。自分と同じように楽曲「Untouchable Part 1」を好きになったであろう聴き手に向けてしっかりとです。

2「The Lost Song, Part 2」は冒頭曲1「The Lost Song, Part 1」と同様に翳りある儚さを讃えるかのようにピアノの一定のシークエンスではじまります。そのピアノの伴奏にLee Douglasによるコーラスに透明さを感じながら、目を瞑り聴き入ってしまいます。1分40秒からのヴァースは、Lee Douglasがメインボーカルで、サビ部にあたる箇所をVincent Cavanaghが微かにコーラスで添えた唄メロがとても流麗でいて、抒情さを感じるのは、「Untouchable Part 2」に近いイメージかもしれません。そして、冒頭曲1「The Lost Song, Part 1」同様に3分50秒前後からオーケストレーションの音の厚みが増していきます。この音の厚みがほんのアクセントのように、4分50秒前後からのクリーントーンのギター、そして、Lee Douglasがしっとりと歌い上げるラストのヴァースが聴ければ、当アルバム「Distance Satelites」を待ち焦がれていて良かったと強く感じるんです。

「The Lost Song」の「Part 1」と「Part 2」の一連の流れにもう惹きこまれてます。

イントロからギターをアンサンブルのメインとしたVincent Cavanaghのボーカル楽曲3「Dusk (Dark Is Descending)」とピアノでLee Douglasのボーカル楽曲4「Ariel」はこれまでのサウンドの踏襲感を濃厚に感じながら、「The Lost Song」の第3幕である5「The Lost Song, Part 3」では、これまで以上に電子音が響き、その電子音が楽曲のリズムを担うことで、クリーントーンなギターやピアノが一定のシークエンスで楽曲に与えていたリズムと異なる印象も与えています。よりオーケストレーションも抑制しつつ、電子音、ドラム、そして、エレキギターによる世界観が一気に耳から脳裏へ流れ込んできます。第3幕となる「The Lost Song, Part 3」で新機軸となるサウンド感に躊躇いを感じながら、聴き終えていました。

その躊躇いが何かしらの収束を迎えることなく、バンド名を冠した意味深な6「Anathema」を聴いていました。おそらくはじめて聴いた方には躊躇いもなく聴いていたかもしれません。もしくは、自分のように前作「Weather System」のサウンド感に浸る方々には、この6「The Lost Song, Part 3」はどのように感じたでしょうか(発売から2か月ほど経ち、やっとレビューを書けるようになったのもこの躊躇いに少しは落ち着いてきたからです。個人的にはその意味すら解決することも出来ずに聴き続けています。)。

オーケストレーションがこれまで以上に激しく起伏をうみ揺さぶられるようなアレンジの6「Anathema」を挟みながら、男性のユニークなコーラスとディストーンの効いた「歪み」のあるサウンドが退廃でいて混沌さが充満するインストルメンタルな楽曲7「You’re Not Alone」、電子音のみの短いインストルメンタルな楽曲8「Firelight」、そして、電子音によるリズムがここまでの楽曲以上に強調され展開するタイトル曲9「Distant Satellites」までインダストリアルな実験性を感じられる楽曲が連なっていると思いました。例えば、イギリスのポストロックなバンド:Radioheadが2001年に発売したアルバム「Amnesiac」のサウンド感に近しいかもしれません。

そして、最終曲9「Take Shelter」は実験性が静寂さに融合し前半部と電子音がオーケストレーションとともに次第に音の厚みをましていく後半部が印象的な楽曲です。これまでの楽曲なら力強さを感じた後半部のパートは、電子音による描かれるダイナミックさが印象的にも混沌さのままに終わってしまうかと感じせながらも、最後の1分はオーケストレーションのみで穏やかにクロージングしていきます。このクロージングに安堵を感じてしまいました。

「The Lost Song」=「失われた歌」とはなんだったのだろうか。前作「Weather Systems」による得られた音楽によって、本来創出されていた音楽性のことのなのか、それとも、既発曲のマテリアルで楽曲が完成するまでの過程を描いたかのような電子音なのかを考えながら聴くことで、当アルバムの前半部と後半部は異なるカタチで聴き手に問いかけてくるのではないかと思ったアルバムでした。

[収録曲]

1.The Lost Song, Part 1
2.The Lost Song, Part 2
3.Dusk (Dark Is Descending)
4.Ariel
5.The Lost Song, Part 3
6.Anathema
7.You’re Not Alone
8.Firelight
9.Distant Satellites
10.Take Shelter

Vincent CavanaghとLee Douglasの唄う儚くも力強さもある唄メロや、楽曲の後半にいくにつれて昇り詰めていくようなサウンド感には、特に前作で花開いたと云われるプログレッシブさと、ポストロック的な解釈にも取れるゴシックさのアクセントにAnathemaらしさを十分感じられて、これまでのファンは安心出来ると思いますし、唄メロのアンサンブルに比重を増したオーケストレーションや電子音の手法に新機軸を感じ、唄メロを損なうことなく、ヒーリング的に響かせる様も印象的なアルバムですね。

シンフォニック系のオーケストレーションを多用しながらも、抒情的で儚さや力強さ、男性と女性のボーカル楽曲を聴きたい方におすすめですね。

アルバム「Distant Satellites」を紐解くキー

透明さ、繊細さ、抒情的、儚さ、力強さと多くの印象を頂きます。前作「Weather Systems」のクリーントーンよりも電子音やオーケストレーションの印象が増していますが、過去のアルバムが有機的に絡み合い、初期Anathemaからの変貌に合わせて、さらにプログレッシブ・ロックに変化するバンドの音楽性に溜息をついてしまうんです。

当レビューでも前作、前々作についてレビューをしておりますので、当レビューと合わせてご確認頂くと、その変貌への返還が少しでも伝わるのではないかと思います。

9thアルバム「Falling Deeper」については、

▼アルバム「Falling Deeper」のレビューは下のリンクから▼
プログレおすすめ:Anathema「Falling Deeper」(2011年イギリス)

10thアルバム「Weather Systems」については、

▼アルバム「Weather Systems」のレビューは下のリンクから▼
プログレおすすめ:Anathema「Weather Systems」(2012年イギリス)

「The Lost Song」=「失われた歌」を探してみませんか?

アルバム「Distant Satellites」のおすすめ曲

1曲目は2曲目「The Lost Song, Part 2」
1曲目のオーケストレーションの比重が増したサウンド感にも、ピアノを基調としオーケストレーションとのアンサンブルに唄われるLee Douglasの歌唱が素敵すぎなんです。

2曲目は6曲目「Anathema」
他楽曲のオーケストレーションよりも起伏さを活かしたアレンジに、淡々とながらも、繊細さとは異なる狂おしき儚さを感じてしまうんです。4分前後のオーケストレーションにはその極みを強く感じたんです。最後の穏やかなオーケストレーションのクロージングに安堵すら感じるぐらいに、ギターソロも狂おしきまでに唄い上げるかのようなアレンジに心が吸い込まれていきそうになるんです。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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