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プログレおすすめ:Atmosphera「Lady Of Shalott」(1977年イスラエル)

公開日: : 最終更新日:2015/12/02 1970年代, イスラエル, シンフォニック


Atmosphera -「Lady Of Shalott」

第74回目おすすめアルバムは、イスラエルのバンド:Atmospheraが1977年に発表予定だったアルバム「Lady Of Shalott」をご紹介します。
Atmosphera「Lady Of Shalott」

1977年当時、正式に発売はされず日の目を見ることなく、当時制作していた楽曲のバージョン違いやライブ音源を2枚目などに取りまとめられながら2002年に発表されたアルバムです。
たった一枚だけでも発売が叶わなかった。当時発売をされて、いつの間にか廃盤となり忘れた頃にCD化となった云うわけではないんです。25年の時を経て発売された当アルバムは本当の意味で「幻のアルバム」と云えるかもしれません。

当アルバムの楽曲を制作し演奏したメンバーは、ボーカル、ギター、ベース、キーボード、ドラムによる基本5人構成です。そのサウンドは、物憂げで退廃感を纏うのではなく、高音のボーカルとキーボードによるアレンジに艶があり、明るさを感じます。例えば、同年代であればフランスのAtollが「仏のイエス」と云われたのであれば、Atmospheraは「イスラエルのイエス」と呼べるかもしれません。
イギリスのプログレッシブ・ロックバンド:YESほど、テクニカルさやスキルフルはなく、またコンパクトに楽曲がまとまっているというのではなく、シンフォニックさのあるサウンドが想起させてくれるのかもしれません。

楽曲について

冒頭曲1「Lady of Shalott」はメランコリックさのある鍵盤のフィルインが印象的で、ユニークなベースのフレーズとドラムのリズムが重なり合う最初の30秒間のアンサンブルが耳に入ってきたんです。オリジナリティのあるメランコリックさのあるアレンジと感じ周囲の意識を忘れ聴きいってしまいました。。仄かなエコー処理がさらにアレンジを際立たせている気がします。

何故、正式版として発売されなかったのだろうと首を傾げてしまうぐらいに。

30秒前後からは、ギターもアンサンブルに加わり、高音のボーカルとともに明朗でファンタジックさのあるメロウなヴァースへなだれ込みます。全体的にゆったりとしたテンポながらも、よく耳を澄ませば、ドラムのハイハットはかなり小刻みでリズムの妙をうみ、またリズムチェンジをスムーズに重ねられていくのが印象的です。3分前後までのうっとりするようなメロウさから、エフェクティブなギターのフレーズ以降、ドラムの力感もあり、楽曲は大きな盛り上がりをみせます。小刻みなドラムのリズムとソロフレーズともとれるぐらいのベースのフレージングに、ギター、鍵盤が順々にソロを重ねていきます。7分30秒前後からギターのリフ、9分前後のチャイム風の音色による効果音などもアクセントにしながらも、楽曲は終始しファンタジックなサウンドを交えたシンフォニックな構成が素敵ですね。冒頭曲から、これでもかというぐらいに、ギター、ベース、ドラムのテクニカルでいて素敵な演奏が堪能出来ます。

2「Cuckoo (Love’s Labour’s Lost)」はマーチ風のドラミングとギターのフレーズによるイントロで幕を上げます。サイケデリック/スペース系を活かしたようなサウンド感でありながらも、どことなくユーモアさを感じるウイットなアレンジには、やはりYESの1974年発表のアルバム「close to the edge(邦題:危機)」の音の断片を感じずにはいられません。よりギターはエッジの効いたフレーズに、アンニュイさのある鍵盤の音作りがブレンドされた印象でしょうか。1「Lady of Shalott」と同様にゆったりとしたテンポにリズム拍子に小刻みなドラミングが印象的なのですが、もしも正式に発売され、以降、アルバムを発売していけばどのようなバンドになっていたのだろうかと思考せずにはいられないんです。4分以降のアンニュイさから拡がるメランコリックな唄メロから延長し、ギター、ピアノなどが順々にメインで奏でるパートはそれぞれに印象深く、特に、13分前後からの静寂さを活かしたパートでのコード進行にはオリジナリティさを感じずにいれませんね。

軽やかなリズムに、煌びやかな鍵盤の音色が重なるイントロの3「Tomorrow」は、冒頭の哀愁を帯びたギターのフレーズが印象的です。1と2と同様に素敵な構成力ですが、ただ悲しいことに、当時アルバムが発売されなかった理由が当楽曲の質感に、少し作りかけのデモっぽさを感じてしまうからかもしれません。楽曲全体にギターをメインとしたメランコリックさが十分に溢れていて、1や2まで、もしくはそれ以上に作り込まれていたなら、どれほどの曲になっていただろうと想いを馳せてしまいますね。このまま聴いても後半部のギターの哀愁を帯びつつも刺々しさもあるフレーズに痛々しいほど素敵なサウンドスケープが伝わってくるからこそ、期待せずにいられません。

4「Love Is waiting for a Lover」も3「Tomorrow」と同様な質感を感じてしまいます。2「Cuckoo (Love’s Labour’s Lost)」の前半部のどことなくユーモアさを感じるアレンジと同じような前半部から、アルバムのジャケットの湖畔に爽やかな佇まいを感ずる様には冒頭曲のような感覚もありますね。1と2と異なり、3と同様に感じてしまう印象は、鍵盤のアレンジもそうですが、ベースやドラムの独特なフレーズがまだ盛り込まれていないところでしょうか。完成されたバージョンで聴きたかった・・・。

本家YESよりは緊迫感はないまでも、ドラムのフレージングの多用さ、フレットベースのゴリゴリ感、ギターのテクニカルさを意識したフレージング、キーボードのアレンジなど、聴けば聴きこむほど、意識をしているのではないかと感じてしまうんです。そして、その意識を考えずに聴いても、ファンタジックさもあり、落ち着き聞かせてくれるアルバムですね。

本来、1977年当時に「完成されたカタチ」として発売され、今現在、当アルバム「Lady Of Shalott」に出逢いたかったと思いました。イスラエルの地で埋もれてしまったプログレに溜息をついてしまいますよ。

[収録曲]

1. Lady of Shalott
2. Cuckoo (Love’s Labour’s Lost)
3. Tomorrow
4. Love Is waiting for a Lover
5. Cuckoo – Alternate Version

1と2、3と4では、耳にすることで「未完成なアルバム」だと感じてしまうかもしれません。本当に完成されたバージョンがあったのなら聴きたいと思うアルバムです。2002年に発売された音源のままでも1つ1つの楽曲には素敵なプログレのエッセンスが感じ取れるからこそ、そう強く感じずにはいられません。

イギリスの5大プログレバンドのうちの1つ:YESを好きな方や、ファンタジックさのあるシンフォニックさのあるプログレが好きな方にはもちろんおすすめです。

アルバム「Lady Of Shalott」のおすすめ曲

1曲目は、冒頭曲1曲目の「Lady of Shalott」
正式に発売されなかったアルバムにも関わらず、ふとしたキッカケで聴いた当楽曲の最初の30秒のパート、そして、当レビューでも「プログレおすすめ」のアルバムとして紹介したいと感じたからです。艶がありエレガントに弾かれるキーボードのフレーズに耳を奪われがちですが、エンディング近くのギターのフレーズも一聴です。

2曲目は、3曲目の「Tomorrow」
完成されたバージョンと思えない。だからこそ、メンバーが本来完成版として描きたかった楽曲を聴きたいと思わせる芯を感じるんです。

このレビューを読み、ご興味を持たれましたら聴いてみて下さいね。ぜひぜひ。

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